2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田玲司氏(以下、山田):これ話していいの? これ(『嫌われる勇気』)さ、すぐに出版しなかったんだよね、時期的にね。
柿内芳文氏(以下、柿内):あーそうですね。まず、成功したあとから振り返って思うのが、やっぱり納得いくまで時間かけて作ったってことですね。
乙君氏(以下、乙君):中身を?
柿内:中身もすべて。
山田:だから、机に原稿が、カッキーの手元にあって。
柿内:丸3年くらいかかってますね。
乙君:3年!
柿内:はい。
山田:実は俺らがやってる今プロジェクトも2年目だよね。
柿内:そうですね。もともと刊行スケジュールとか、いろいろノルマとかあるじゃないですか。というか、会社っていうのは計画でやっていかないといけないから、ラインナップみたいなのをやってるわけですよね。それでやっていくわけだけど、まあそれをやりつつ、これに関してはそこからあえて外して、納得いくまで。というのも、それぐらいすばらしい思想だなっていうのを、僕が一番影響を受けたからなんですね。
乙君:あーなるほどね。
柿内:そうなんです。だから実はできてからどうやって……。
乙君:これを世に出すか?
山田:出版社をどこにするかとか、デザインどうするかとか、っていうのはそのあとで。それまでずっと時間かけて。
柿内:そう。だから、ひたすら時間かけましたね。実際、この岸見さん(共著者の1人)は京都にいらっしゃるんですけど、岸見さんのもとに古賀さん(もう1人の共著者)と一緒に何度も通って膝を突き合わせて、まさにこのなかで行われている議論をしたので、この青年っていうのは僕であり古賀さんなんですよね。
で、哲人っていうのは岸見さん。ニアリーイコールではある。まあこういう口調はしないですけどね。僕らはこんなに口悪くわーっとは言わないですけど、ただ熱量としては一緒ですよね。
乙君:本当に対話式のような形で作りあげていったから。
柿内:そうです。
山田:これすごいことなんだよ。価値があるのにみんなが知らないことを、どうやって伝えるかっていうことで、チーム編成して、それをどういうバランスでやるかっていうのをやるのが編集だっていう話で。
柿内:だから最初の起点としては、まず古賀さんが、著者の岸見さんがすごいと。それはアドラー心理学の考えであり、岸見さんのフィルターを通すと、岸見アドラー学みたいな感じで解釈も入るわけですよね。もともとギリシャ哲学を専攻されていた方で、ギリシャ哲学とアドラー心理学を両方学んでいる方なので、ミックスしている部分もあるんですよね。
どちらかというとアップデートというか、独自のものがまたあって、それに惚れこんだ2人っていうのがまずあって。だから古賀さんは僕に話をする前に何人かの編集者に話したらしいんですけど、誰もピンとこなかったらしいんですよね。
山田:古賀さんは基本的にライターでずっとやってきた。
柿内:そうです。
で、この本の企画をスタートする10年前に、もともと『アドラー心理学入門』っていうまさに岸見さんの著書があって、それを読んで衝撃をうけて、いつかこの人の本を作りたい、書きたいっていうのがずっとあって、聞いて僕も読んでみたら、まあ1発ではまったんですよね。ぜひ会って話がしたいとなって、一緒に京都までいって話をして。
それで「これは」っていう感じで、その時はぜんぜん売れるとか売れないとか考えてなくて、とりあえず「目の前のこの人ともっと話したい」って感じですよね。
乙君:そうか、ビジネスから始まったわけじゃなくて。
柿内:ぜんぜん。逆算から「今、心理学がはやってるね」とかじゃなくて、単純に。で、岸見さんの書斎がすごくよくて、すごく狭いんですよ。マンションの1室に書斎を、自分だけの書斎があって3畳間くらいかな。
乙君:茶室ぐらいですね。
柿内:まあほかもあるんですけど、書斎だけ角部屋みたなところにあって、狭いほうが集中できるっていって机と本だながあって、哲学とか心理学の本がばーってあるわけですよね。で、3人が入ってやるとほんとに膝突き合わせて。
乙君:おー利休だ!
柿内:もうこの距離なんですよね。
乙君:なるほどなるほど。
柿内:だからこの距離で聞いてましたね。テープここに置いて。で、だいたいが、もちろん「アドラー心理学ってどういう学問ですか?」っていうこととか言うんだけど、途中から、はっきり言って半分人生相談みたいになるんですよ。
乙君:自然とそういうふうになっていったって感じですか。
柿内:そう。例えば僕だったら、「僕は今こういう人間関係に迷ってます」っていうことを、固有名詞バンバンみたいな感じで。
乙君:え、カッキーさんそういうのあるんですか?
柿内:あります、あります。けっこう悩みやすい。
山田:カッキーはあるよ。だってこの人、嫌われる勇気持ってるから。
柿内:持ってないですよ。
山田:え、そうか?
柿内:持ってるように見られることも多いんですけど、持ってないからできるんですよ。
山田:そうか。彼はもともと……、変わり者じゃん基本的に(笑)。
乙君:だから「誰がどう思おうがいいよ」って。
山田:そう。俺が光文社の時の君を見ていて、これを持ってるかと思っていたよ。へっちゃらだったからね。
柿内:そういう面もあるんですけど。
山田:あるよ。だって先輩でも関係なかったじゃん君。
柿内:ただそれって仕事のなかでの、それが正しいっていう論拠がある場合っていうか、そのなかで仮説がちゃんとしてるうちはそれを曲げないっていうか、この本のため、この作者のためにこれを突き通すっていうほうが優先順位が高かったと思うんですよ。
例えば組織のなかで良い評価を得るとかよりも、そっちが高かったからたぶんそういうのができるんだけれど、普段プライべートとかやってると、やっぱりちょっとなんかあって。
山田:あれだよね、サーファーだから「地元のサーファーのヤンキーの人たちとどうやって関係をもっていけばいいんですか」とかね。
柿内:サーファーとはいっても、25から始めたからローカリズムとかいったらめっちゃびくびくしてるわけですよ。そんな俺だ俺だみたいにとてもいけなくて、基本的に3人以上人がいるところとか苦手ですから。
山田:だったから。だってカッキーもともと高校の時に誰ともしゃべらなかった人じゃん。
柿内:基本そっちがもとなんです。素なんで。
山田:でもおもしろいのが、そこでローカルの人がいて、ヤンキーみたいなのがいると、この人たちはどういう生き物なんだって、知りたくってそれで本作ったりしたもんね。ヤンキーの研究みたいなの。
柿内:そうです。そういうのを全部企画化しちゃうんですけど。だから忘年会とかもダメなんです。忘年会とかね、前ひどい時は忘年会途中でちょっと抜けて、「てもみん」に行ってました。
(会場笑)
山田:マッサージしてもらってた。あんまりつらくて。
柿内:うん。ちょうど30分くらい「てもみん」して戻ってきたら、宴もたけなわになってるな、みたいな。
乙君:そういうセンシティブなカッキーだからこそ、このプロジェクトに。
山田:そうそう。
柿内:もともと嫌われる勇気を持ってたら、刺さらなかったというのもあると思うんです。
乙君:自分の一番欲しかったものなんだね。
柿内:そうです。だから僕がこの本を求めていたので。
山田:なるほどね。
乙君:まず人に惚れて、その人のあれをどういうふうに広めるかっていうほうにシフトしていった。
柿内:僕にとって切実だったんですよ。で、古賀さんにとっても切実だったんですよね。そういった意味ですごい……。
乙君:同じような人もいるんじゃないかと。
柿内:その時は同じような人がいるとかあまり考えないんですよ。
乙君:考えない。
柿内:できてから考えますね。もちろんやる途中にどういう形式にすれば、とかは考えますけど、本当の意味では、完成するまでは……。
乙君:完成してから考えるんだ。
柿内:読者のことも考えますけど……。
乙君:どういう層をターゲットに据えて、内容を決めていくんじゃなくて。
柿内:読者は僕なんですよ。
乙君:なるほどね。
柿内:だから僕のことだけ考えてればいいんですよ。そうやって言えばすごいエゴイスティックかもしれないけど。
山田:そこで、コスパだの。
乙君:本当にマーケティングは無視して。
山田:だからこの人はファミリーマートにメールするわけよ。その話はこの番組したっけ?
柿内:ファミリーマートにメール。
山田:おにぎりだっけ? ローソン?
柿内:あ、ファミリーマートですね。買収提案ですよね。
山田:この番組でしてない?
乙君:したした。
山田:おにぎり。前の金塊の話した流れでしたよね。したか。
乙君:金塊のなかで一番最初に。
柿内:(コメントを見て)「した」って言ってましたよ。
山田:そうかそうか。そこにつながってる話だよね。
柿内:あれはまた違うんですけどね。
山田:「こうすればいいのに」って思ったからじゃないの?
柿内:そうですね。「なんでこうしないんだろ」って思って。さっきのみんな金を買わないっていうのと、けっこう同じですね。
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