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WALKING | 5 Artists in 5 Minutes(全1記事)

国境線から万里の長城まで 歩き続けたアーティストたち

さまざまな交通機関が発達した現代でも、人は日々歩き続けています。健康のために意識的に歩く人も多いのではないでしょうか。しかし歩くことにはそれ以上の可能性があります。時に、歩くことは芸術にもなり得るのです。今回のアート系YouTubeチャンネル「Little Art Talks」では、歩くことをアートにしてしまった5人のアーティストに迫ります。

「歩く」という行為が芸術に

カリン・ユエン氏:1940年代に、パリで活動していた、国際的な前衛芸術家の集団や、思想家、文学者などが、「Derive」、つまり漂い、さまよい歩き、という概念を提示しました。シチュアシオニスト・インターナショナルという集団がこれに続きましたが、さまよい歩くという考え方は重要なコンセプトでした。

これは、周囲から及ぼされる個人の気持ちによって動かされ、都市景観の間を計画性なく歩き回ることと定義されます。そして、環境の調査をしながら、各々個人の理想的な地図を作製するのです。いわゆる慣習的な移動の方法とはかけ離れています。

みなさんは、一度も話しかけたこともない他人とすれ違いながら、毎日道路を同じ時間に歩くと思います。

さまよい歩きは、都市景観から感じ取れる雰囲気や感覚といった、全くの新しい可能性や経験を導入しました。歩くという単純な活動が、多くの近代、現代芸術家の中心的な実践になったのです。

さまよい歩くことによる直接の反応でないものもありますが、今日の「5 Artists in 5 Minutes」は、みなさんご想像の通り、このテーマをシェアしてみたく思います。

フランシス・アリス(1959~)はベルギー生まれで、メキシコを拠点とするアーティストです。彼は自分のプロジェクトの焦点として、幅広い媒体や場所を対象としながら、しばしば歩くことを実践しています。≪The Green Line≫(2007年)という作品では、アリスは、中東戦争の後、イスラエルと隣接するシリアと、ヨルダン、レバノン、エジプトの領土の間を公的に分断した、1997年の休戦協定(イスラエル・ヨルダン平和条約)の国境線を歩きました。

歩いている間中彼は、地図に描く色鉛筆の線を思い起こさせるように、鉛の缶に入った緑のペンキを運びました。交渉によって、地図に引かれた国境線がいかに固定的であり、理想的なものであるかを問題提起し、両側の地域に住む人々の反応を引き起こしました。

以前マリーナ・アブラモビッチについてお話したと思いますが、ニューヨークを拠点とする非常影響力のあるパフォーマンスアーティストです。1976年にアムステルダムに移動した後、アブラモビッチは西ドイツのパフォーマンスアーティストのウーレイに出会いました。そして、彼らは共働を始め、自分たちを「他者(The Other)」という共通名で呼び、「2つの頭部のある身体」と説明しました。そして、完全な信頼関係により、双子のような服装で振る舞いました。

この2人の関係は、1988年に≪長城を歩く(The Great Wall Walk)≫に結実しました。2人は、中国の万里の長城の両端から歩きだし、ウーレイはゴビ砂漠から始め、アブラモビッチは黄河から始めました。それぞれ2,500キロメートルを歩いた後、中央で出会いそして別れました。

47日で1,022マイルを歩いたアーティスト

ハミッシュ・フルトン(Hamish Fulton 1946~)は、1960年代後半リチャード・ロングや、ギルバート・ジョージなど、新しい種類の彫刻やランドスケープアートを探求したアーティストの間で際立った存在でした。しかしながら、彼らはランドアーティストと呼ばれるのを拒み、声明文では自分自身を歩くアーティストと定義しました。

フルトンは、その場にあるものを持ち帰ることはせず、代わりにその時々の写真や、文章、ヴィデオなどを展示しました。彼にとってアートとは、物体によって提起されるものではなく、どのように気づくかという思考を意味しました。彼の実践は、環境問題やアメリカ・インディアンの文化など、多大な関心から影響を受けています。

ダンカスビー・ヘッドからランズ・エンドまで、47日で1,022マイルを歩きました。彼のアートは、実際の景色の中に歩くことによる単純な反応を表現していて、「歩かなければ、作品にならない(no walk, no work)」と述べています。

次にお話しするプロジェクトは、歩くことではなく走ることです。ジョン・ディボラ(John Divola 1949~)は、セルフタイマーを10秒に設定し≪私が行ける限り(As far as I could get, 10 seconds)≫(1996~7年)という作品では、走ることによる、肉体的、精神的な戦いの緊張の結果、混乱した景観を提示しています。歩くアーティストと関係したプロジェクトとは程遠いかもしれませんが、観者は作品を動画や写真、テキストで受け取ることができます。

次のプロジェクトは歩く活動による観者の受容に関する作品です。ジャネット・カーディフ(Janet Cardiff 1957~)は、歩くオーディオツアーを制作します。参加者は持ち歩き可能な再生プレイヤーを配布され、特定の場所に案内されます。口頭のそして空間における経験が組み合わされ、それぞれの参加者は、現場で収録された音と、指示とそしてナレーションが、ヘッドホンの外の音も加えて、聞こえることになります。

≪Her Long Black Hair≫(2004年)も、写真や物語の描写と共に、謎のヒロインの足跡をめぐるオーディオツアーです。

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