2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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川上:でもナウシカっていうのは理想像でもあるわけですよね?
朝井:ナウシカに僕らの理想みたいなのが詰まってますよね。
川上:僕はナウシカになりたかったんですよ。
鈴木:男で?
川上:生き方というかそういうのが……。
鈴木:女性で多いですよね。
朝井:憧れの人がナウシカ、っていう人多いですよね、女性の方で。映画版は特に憧れが相当詰まってる感じですよね。
川上:テトに噛まれるシーンあるじゃないですか。あれを真似できるか? って高校生の時にすごい考えたんですよね。
朝井:怒らないで待てるか。
川上:噛まれて。あれ、テトがちっちゃいから我慢できるんですよ。あれがライオンだったら食いちぎられるじゃないですか。そこの境界線をどういう風に設定すればいいんだろうっていうのが、高校の時の課題だったんですよ(笑)。
朝井:一体何を考えてたんですか、高校生の時に(笑)。
川上:ナウシカみたいな生き方がしたいって考えた場合に……。
朝井:まずそこから入ろうと。
鈴木:宮さん(宮崎駿)だったら、まず自分の指を差し出すでしょうね。
朝井:噛まれても何も言わない?
鈴木:そういう気がする。犬が好きなんですよね、彼。犬が吠え立ててきた時って、指を出して奥へ入れてあげると大概静かになるんですけど、そういうことを身を持ってよく知ってる人っていうのか、そういう気がするんですけどね。
朝井:確かにテトのシーンって、それまで何の説明もない、ナウシカがどういう子なのかっていうのがたった5秒ぐらいでわかるすごいシーンですよね。説明しないからきっと何十年経ってもいろんな人が話したがるんですよ。
鈴木:彼はいろんなキャラ作ってきたけど、理想化した主人公って、もしかしたらこの人だけなのかなぁ。
朝井:確かに憧れの人物で挙がるようなのは……。「サンです」っていう人はあんまり出会ったことないですもんね。「ナウシカです」はありますけど。
鈴木:ナウシカだけだよね。メイちゃんはね、別の意味で。
朝井:あー、別ベクトルで純粋っていうところで憧れが。
鈴木:今ラピュタの話をするのも何ですけど、彼がこういう映画を作りたいって言ってきて、でも何しろ高畑勲から「ヒーロー物はダメ」って言われてきたから、主人公を普通の男の子に設定したんです。でも普通の男の子じゃ話にならないでしょ?(笑) それで悪戦苦闘したんですよね。
朝井:シータがいない設定として?
鈴木:シータもいたんだけど、男が主人公の物語を作りたい。特段、ある能力を持ってるわけじゃないじゃない。それでいて、どうやって主人公にするのか。それで苦しんでましたよ。
朝井:ナウシカはある種、特別な能力があるから。
鈴木:しかも族長の娘でしょ? 風の谷って500人でしたっけ。その人たちのために戦えばいいわけでしょ? そのことによってある種ヒーロー性が出るわけじゃないですか。
朝井:そうか、パズーは何にヒーロー性を託せばいいのか。工場で肉団子を食べてる少年ですよね。
鈴木:昔、彼はコナンっていうのを作って、みんなが親しみやすいキャラクターにするために、槍みたいなのを持たせてたんですよね。パズーの時には、何かそれに代わるものはないかってすんごい悩んでたんですよ。それでやっと、トランペットだって言って。「パーパーパパー♪」ってやるでしょ? その後見ていったら、なくなっちゃってね(笑)。
川上・朝井:(笑)。
鈴木:「あれ? 宮さん、トランペットどうしたんですか?」って言ったら、「めんどくさくなっちゃって……」って(笑)。
朝井:あれ、もともと相棒的な存在だったんですね。
鈴木:本当は最後まであれを持ち続ける予定だったんですよ。大変だからやめたって。
川上:トランペット持ってるシーンも記憶ないですよ。
鈴木・朝井:(笑)。
朝井:確かに、吹く以外で持ってたっけな? って。あの朝のシーン以外。
川上:普通の何の能力もない男の子が、そういう不思議な運命に巻き込まれていくっていう話って、ラピュタ以外はなかったんですかね?
鈴木:大概何か能力持ってますよね。大リーグボールが投げられるとか。
川上・朝井:(笑)。
朝井:普通の少年が少女を守るっていうところにヒーロー性が宿ったんですね。普通だけど、守りたいっていう。
鈴木:さっき話したように、主人公になる・ならないで悩んでるでしょ? やっと主人公になってきたっていうのは、そういうことと関係あるんだと思う。
朝井:物語がどんどん進んでいくに連れてヒーロー性が宿っていく。
鈴木:エスコートヒーローにすることによって、それを成立させた。
朝井:そのほうが観ている方も一緒に育っていく感じがして気持ちいいかもしれないですよね。
鈴木:今まで考えたことがなかったんだけど、宮﨑駿の主人公ってね、ナウシカはそういうものを一番持ってる人だとして、かたや今のパズーみたいなのがいて。いろんな段階の主人公がいるのかなぁって、ふと思ったんですよ。普通いろんな作家って、名前は違ったり姿形は違うけれど、だいたい、ね。
朝井:根底にあるものは同じっていうのが多いですよね。
鈴木:そうでしょ? それが毎回違う。だってハウルなんか全然違いますもんねぇ。いや、よくやってますね、あの人。
朝井:まさかのこの放送中に気づくっていう(笑)。
鈴木:珍しい人なんじゃないですかねぇ。
朝井:ナウシカを生んで、パズーを生んで……って考えると、ぜんぜん(頭の中の)違う部屋で考えてる気がしますね。
鈴木:あの時思ったんですよ、もののけ姫のアシタカ。ナウシカは風の谷の500人のために戦う。だからみんな共感できると思った。ところがアシタカは、ここに出来たアザを何とかしたくて、挙句の果てに村を追い出される。それでこの人に共感するのは難しいなぁって。宣伝の立場で言うとそう思っちゃうんですよ。
朝井:この人の使命感をどう説明しよう、と。
川上:そういう意味では、主人公の境遇的に共感を覚えるキャラクターっていうのは、これ以降ない気がしますね。
鈴木:それをやるためにはヒーロー性が必要ってことですよね。
朝井:ナウシカはヒーロー性抜群ですもんね。
鈴木:でも、次から次へと量産したらウンザリですよね?
朝井:まあファンとしては次から次へと観たい……。
川上:僕は観たかったですよね。僕はナウシカの「2」をずっと待ってましたもん。
朝井:あっ、賛成派の方ですか?
川上:賛成派って言うより、ナウシカ出て、ラピュタ出てっていう間に、漫画は連載が続いてたじゃないですか。「2が出てほしい」じゃなくて、「いつ出るんだろう?」って。僕はねぇ、いつ出るかだけを知りたかったんですよ(笑)。まさか予定もないなんて、思ってもなかったですよね。
鈴木:全く考えなかったですよね。周りが恵まれてたのかなぁ。ナウシカの2をやるって誰も言わなかったですね。
川上:じゃあなんで漫画を連載してたんですか? 映画作っちゃったのに、漫画連載する理由ないですよね。
鈴木:そりゃあ漫画は、さっき言ったやつですよ。
朝井:漫画に失礼だと。
鈴木:映画にはできないものを漫画にする。だから彼の中では、公開された映画はともかくとして、それ以降を作るっていうのは、やっぱり漫画に失礼なんですよ。だから漫画にしかできないことを描き続けたってことなんでしょうね。いやぁ、今日は勉強になるなぁ。
朝井:映画と原作を見て思ったんですけど、やっぱり映画のラストシーンってすごい揉めたんじゃないかなと思って。どういう風にしてあのラストに決まったのかなってずっと気になってたんですけど。
鈴木:宮﨑駿の絵コンテだと、王蟲が突進してきてあそこから飛び降りてきた時に、王蟲たちが急ブレーキですよ。ぶつからないんですよ。それでおしまい。
朝井:はぁ……(笑)。
鈴木:そりゃあねえ、高畑勲ならずとも、僕だってびっくりですよね。だってあっけないとかそういうのじゃない? 「映画としてなんでここで終われると思うの?」って。それで高畑さんが、できた次の日だったと思うんですけど、「2人でちょっと相談しませんか?」って。それで延々話したんですよね。
朝井:でも、そうだろうなってずっと思ってました。すごい話し合ってたんだろうなぁって。
鈴木:8時間ぐらい話し合ったんですよね。それで、高畑さんがいろいろ考えてくれて。その果てに、やっぱり宮さんのやりたいまま、それでいくのか。あるいは、死んじゃうっていうのがありますよね。それで伝説になる。しかし、死んで蘇るっていうのもあるんじゃないかって。
「娯楽映画として考えたらですよ」っていうことを前置きしたんだけど、高畑さんってそういう時、言葉を丁寧に言うんですけど……。「鈴木さん、どれがいいですか?」って。
朝井:うわぁ~、怖い怖い(笑)。
鈴木:それをねぇ……、人に選ばせるんですよね。それでまあ、「死んで蘇るですかねぇ」って。じゃあ宮さんのところへ言いに行きましょうか、って2人で言いに行った。そういう時の宮﨑駿っていう人は、考えないんですよね。「わかりました、じゃあそうします」って。ニコリともしない。
朝井:死んで蘇るっていうことが許せない人なのかなって思ってました。
鈴木:でもないんですよ。
朝井:即答で。ラストにしましょうって。
鈴木:それで、僕がなぜそうするかの理由を言おうと思ったんだけど、これは正確に覚えてるわけじゃないけど、聞かないんですよね。「わかりました」って。
川上:でもいちばん最初の時は、さっきの話だとラストは決めないまま作り始めてますよね。でもラストのところ、青くなるっていうのは最初から入ってたんですか?
鈴木:そうですね。正確なことを覚えてないんだけど、それはやろうと思ってましたよ。
朝井:あの服の色の変化すごい。あれ、見事に……。キレイですよね。
川上:伝説になって。
鈴木:最初は、蘇ってそうなる、ではなかった気がしますね。それもわかんないなぁ。
朝井:そこはファンとして今日聞きたいなと思ってたことの1つが聞けた。ファン目線で普通に……。
鈴木:だって、編集者に「こう思うんですけどどうですか?」って言われたらどうします?
朝井:え~? 僕も同じ態度をとってしまうかもしれない。どうなんだろう。
鈴木:即決します? わかりましたって。
朝井:わかりました、って言っちゃうかもしれないと思いました。
鈴木:そうなんだ!
朝井:自分の考えた話に誰かから提案が入るって、基本的にちょっとムカつくじゃないですか。そこから議論しようっていうより、「わかりました、じゃそれで」って……。
鈴木:この問題を早く終わらせようと。
朝井:っていうのはちょっとあるかなあって、今思いました。
鈴木:「これでいいんだろうか」っていうのは薄々ある?
朝井:あるんですけど、人から言われるとちょっとムカッていうのはあります。
川上:ラストシーンは最初に決めるって言ってませんでした?
朝井:決めた上で「こうじゃないですか?」って言われた時に、つじつまが合うんだったらそれで行きましょうっていう。そっちのほうが見る人にとって開かれているんだったらそのほうがいいのかなと。映画のラストってすごい開かれてますよね。原作の場合はものすごい、文章で補足があるぐらいみんなで考えないとわからないようなものになってるけど、映画のラストってきれいなハッピーエンドですごい開かれたものになってますよね。
鈴木:それはわかりますよ。僕は個人的にはハッピーエンド好きじゃないくせに、自分の職業的にはそれを要求しますね(笑)。
朝井:それはしょうがないですよね。たくさんの人に観てもらうためにはっていうことを考えると。
鈴木:考えちゃうんだなぁ……。おもしろいですね。
川上:でもナウシカも、どちらかと言うとラストがどうのこうのっていうよりも「ここで終わるの?」って感じでしたよね。
鈴木:映画ですか?
川上:「映画もう終わっちゃうの?」って。どちらにせよ無理やり終わらされた感じがして。早く続きが……みたいな。
朝井:未だに待っていらっしゃる?
川上:いや、もうね、可能性がゼロだっていう……。
朝井:ゼロなんですかね?
鈴木:宮﨑駿は作らないでしょうね。僕はひどいことを言ったことがあるんですけどね、庵野秀明っていう、エヴァの彼が「ナウシカを俺に作らせろ」みたいなことをずっと言ってて。僕は彼のことをよく知ってるから、ことあるごとに宮さんにその話をしてきたんですよ。
そしたら「冗談じゃない」って。あるとき思いついて原作を読んでみると、映画の後のパート2に相当するところ、これはやっぱり殺戮の話なんですよね。それを庵野にやらせたらどうかと。それはそれで終わらせといて、最後にもう1回宮さんがそれをまとめるっていうのはどうか? と言ったらですね、宮さんが怒っちゃって(笑)。
川上・朝井:(笑)。
朝井:グチャって1回やったやつをまとめてくださいって(笑)。
鈴木:そうそう。第2作は誰がやっても楽かなぁって思ったんですよ。
朝井:宮﨑駿が第3作をやってくれるなら。
鈴木:だって3部作だから、問題解決する必要ないんだもん。
朝井:中間は次に渡すだけですもんね。
川上:でもどっちかって言うと、続編作るんだったら、最初の1作を作り直してほしいですよね。
朝井:おお~。
川上:だって1作目ってやっぱり、ジブリ作品の中でいちばん……なんて言うんですかね? ちょっと婉曲な言い方が思いつかなかったんでストレートに言うと、完成度低いと思うんですよね。
鈴木:そうですかぁ~?
川上:僕にはいろいろ納得いかない部分が多いですよ。
朝井:あっ、僕トイレに行こうかなぁ……。お腹痛いなぁ……(笑)。
鈴木:川上さん、なんか幻見てるんじゃないですか? 映画観てないでしょ!(笑)
川上:現実の映画じゃないものを観たいんですよ、もう少し。だってあれ、スケジュールに追われて作ったやつですよね?
鈴木:まあ、そうですよね。
川上:その他の作品と比べてもね、全然かけてる時間とか。
鈴木:まぁ、この話題はじゃあ……。
川上:え~?
鈴木:朝井さんがなんかあるみたいですけど。
朝井:じゃあ、この話題は「(笑)」でしたってことで(笑)。
鈴木:なんでそんなこと言うんですか? 川上さんは。追求しますよ、何が悪いって言うんですか?
川上:うーん……本当殺されそうな気がするので(笑)。やっぱりこの話、やめたほうがいいような気がしてきた……。
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