2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
6 Construction Failures, and What We Learned From Them(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
ハンク・グリーン氏: 科学者というものは、時に、期待を裏切られることに喜びを覚えます。それは、世界に関して、なにか新しいことを学ぶ機会になり得るからです。そして、いつでも若干の修正を加えて、再び挑戦することができます。
しかし、建設における失敗は少し異なります。設計者や技術者は、通常、建設後ではなく、建設前に間違いを見つけておきたいと考えます。なぜなら、建設における失敗は大惨事となる可能性があるからです!
しかし、建設上の失敗というのは、これまでにも起こりました。そして、少なくとも次になにをするべきではないかを学ぶことはできます。
1878年、イギリスのスコットランドで全長3.2キロメートルのテイ橋が開通しました。当時は世界で最も長い橋でした。
橋が完成して鉄道が走った後、ヴィクトリア女王は、すばらしい功績を称えてトーマス・バウチに騎士の称号を与え、橋の設計者として後援を与えました。しかし、1879年12月28日、嵐の中で列車がテイ橋を走行中、橋の中央部分が崩壊しました。
橋と列車そして60人を超える乗客は、橋の下の川に投げ出され、全員が犠牲となりました。
公式調査がなされ、橋の設計・建設にあたって、実に多くの問題があったことが判明しました。あまりに問題が多く、なにが最初の欠陥だったのか解明できないほどでした。しかし、報告書によると、バウチは、あらゆることに関して誤りを犯した、と言えます。
例えば、残った橋の部品を検査したところ、本来耐えうるべき重量からはほど遠い耐久性しかないことがわかりました。つまり、橋は遅かれ早かれ、やがては崩壊していたでしょう。嵐はそれを速めただけでした。捜査官たちが、橋を支える支柱を調査したところ、根本から折れていることがわかりました。橋の崩壊の原因は支柱にあったのかもしれません。
風によって走行中の列車が揺れ、橋の壁に押し付けられた可能性もあります。このようなことが起こり、支柱に余分な重量がかかり、支柱が壊れ、橋の崩壊を招いたのでしょう。
テイ橋の崩壊が、どのような理由であったにせよ、技術者たちがバウチのほかのプロジェクトを調査した際、さらに多くの問題を発見するに至りました。部品の一部は、テイ橋と同じくらい低い品質で作られており、必要な重量に耐えられない仕様で作られていました。明らかに、バウチは腕の良い技術者ではなかった、ということです。
テイ橋の崩壊によって明らかになったことは、このようなプロジェクトは時限爆弾のような危険をはらんでいる、ということです。そして、橋の調査は、このような事故を防止するためにより徹底的に行われるべきです。他の橋については、新たな大惨事を防ぐために、早急に修繕されるか、または、取り壊されました。
しかし、テイ橋は崩壊した最後の橋、というわけではありません。
カナダのケベック橋は、建設が始まった1900年代、世界最長のカンチレバー橋となるべく設計されました。しかし、1917年にその称号を得るまで、2度も崩壊しました。
カンチレバー橋は、比較的水平な中央部分と、それを支える両側の大きくて重い部分で成り立っています。
建設作業中、作業員はいくつかの支持部分に、あるべき状態よりも、歪みが生じていることに気が付いていました。そこには、設計された圧力以上の負荷がかかっていました。
その原因の1つは、当初の計画よりも、橋の長さが延長されたからです。しかし、時間と資金を削減するために、追加の支えが加えられることはありませんでした。設計者は、建設作業が進むにつれて、この問題は修正されるだろうと考えていました。
しかし、1907年8月29日、その日の作業の終わり頃、自らの重量により、橋の一部が崩壊。75人の作業員が犠牲となりました。
捜査官が原因を調査したのち、橋の建設は再開されました。調査の主な結論は、橋の部材の強度が十分でなかった、というものでした。そのため、より大きく高い強度で再建されることになりました。しかし、追加で使われた鋼もまた、非常に重たいものでした。
1916年、中央部分を吊り上げる際、持ち上げる機械が破損し、中央部分が川に落下。水没しました。この時、13人の作業員が犠牲となりました。
ケベック橋の大惨事から学ぶべきことは、建設物が、間違いなく重量に耐えうるかどうか、確認するべきだということです。おそらくこういったことは、現在は起こらないでしょう。
前世紀に渡って、技術者たちは、膨大な数学的手法やコンピュータープログラムを開発してきました。これによって、建設を始めるかなり前には、最初の崩壊の兆候が発見されていたでしょう。
アメリカ合衆国ワシントン州のタコマナローズ橋については、1940年に開通する以前にも、人々はなにかの異常を感じていました。それは揺れです!
少々の風であっても、長い吊り橋が、数メートルに渡り上下に揺れました。そんな時には、車の通行はもちろん、歩くことさえ困難でした。そこで、イギリス人技術者は、橋が大きく跳ねるのを防ぐために、衝撃吸収装置を導入しました。しかし、あまり効果はありませんでした。
一般向けに開通された約4ヶ月後、強風によって橋が大きく跳ね上がり、ケーブルの1本がちぎれ、他のケーブルも滑り落ち始めました。これによって、橋は上下に跳ねるだけでなく、大きくねじれ始ました。
そして、最後には中央から崩壊し、水面に落下しました。
テイ橋やケベック橋と異なる点は、今回の犠牲者はたった1人、トビーという犬でした。タコマナローズ橋の崩壊は、空力弾性振動(フラッタ振動)と呼ばれるものが原因でした。最初のケーブルがちぎれた時、支える力が弱くなったため、橋の片側が若干落ちました。他のケーブルは、まるでベルトを引き伸ばすように引っ張られたため、橋が大きくねじれるように動きました。
一つひとつの振動が風によって増幅され、朝のうちに積み重なったわずかな振動が、最終的には橋がねじれて崩壊するほどになったのです。
技術者たちは、素早く教訓を得て、ニューヨークのブロンクス・ホワイトストーン橋を補強しました。この橋もまた、風で揺れることが知られていました。そして、この橋は、現在もまだ落ちていません!
しかし、落ちたプロジェクトのすべでが、橋だというわけではありません。1980年代、ミズーリ州カンザスシティに、40階建てのハイアットリージェンシーホテルが開業しました。
開業してすぐ非常に画期的なロビーで有名になりました。ロビーには、特徴的な3つの長い空中通路があり、まるで空中に浮いているように見えまたことから、この空中通路は「スカイウォーク」と呼ばれました。
柱で支えるのではなく、それぞれのスカイウォークは天井から吊り下げ金具で吊り下げられていました。2階通路は4階通路の下に吊り下げられており、3階通路は離れた場所で個別に設置されていました。その独特なデザインによって、巨大なホテルホビーは、イベントやパーティの開催場所に理想的な場所だとして人気を呼びました。
1917年7月17日、1,600人もの人々が集まり、ホテルのロビーでは数百人の人々がダンスや会話を楽しんでいました。他の人々は、ホテルの周りをうろうろとしながら、有名なスカイウォークを見学していました。
そして、午後7時05分、一切の兆候なく、突然2つのスカイウォークが崩れ落ちました。114人が犠牲となり、200人以上が負傷。建築物の崩落による事故としては、20年後に911が発生するまで、アメリカ合衆国史上、最悪のものとなりました。
捜査官は、スカイウォークを吊り下げる金具に、直前に変更が加えられていたことに気が付きました。それぞれが自らの重みを支える設計でしたが、実際には相互に接続されるかたちで設置されていました。本来の設計では、吊り下げ金具は天井から4階スカイウォークを突き抜け、2階スカイウォークに接続する予定でした。
それぞれのスカイウォークの下の部品が、自身の重量を支える設計です。
しかし、計画変更後、2階スカイウォークは、4階から吊り下がるかたちになっていました。
つまり、4階を支える部品には、スカイウォークの129トンに及ぶ重量のみでなく、2つ分の重量がかかっていたということです。また、経費削減のために、建築材料も本来求められる十分な強度がなかったことも上げられます。そして、パーティの夜、数十人の見物客がスカイウォークに立ち、余分な重みが加わることで、重量超過であることが証明されてしまいました。ほんのわずかに見える変更であっても、悲惨な結果を招くことがあるのです。
ニューヨーク、マンハッタンにあるシティコープ・タワー、現在は601レキシントンアベニューと呼ばれています。これは、問題のあるプロジェクトがいつも悲劇で終わるわけでない、と証明しました。空にそびえる三角形の屋根は、はるか遠くからでも目立ちます。
しかし、ビルの近くを通りがかれば、あることに気が付きます。シティコープ・タワーは、支柱の上に建築されているのです。これが、後ほど問題となります。この支柱は隣接する教会を収容するために建てられました。
元々、この土地に超高層ビルを建築する条件として、教会を妨げないよう要望されていました。そのため、ビルの設計者たちはタワー全体を9階層持ち上げることに決めました。
彼らは、これ程の高層ビルで足元がわずかであれば、強風が吹けば上部の重みでぐらつき、傾いてしまうことを理解していました。そのため、どれほど強風が窓に吹き付けようとも、必ず耐えられるよう設計しなければ、と考えていました。
そこで、ビルの屋上におもりを追加し、ビルが風でどの方向に揺れても、反対方向に動くようにしました。斜め方向からの風は、通常ビルを通り過ぎるだけです。そのため、シティコープ・タワーの設計者たちは、わざわざ確認すらしませんでした。
もし、支柱がビルの隅にあったとしたら、恐らく問題は発生しなかったでしょう。しかし、教会があるという奇妙な状況のために、ビルの支柱は側面の中央に置かれました。
1978年、センターがオープンしてから約1年後、建築を学ぶ学生がビルが非常に不安定であることを発見しました。計算によると、16年に1度マンハッタンを襲うハリケーン程度でタワーが倒壊することがわかりました。大変危機的状況です。
ビルの設計チームは、ニューヨーク警察と赤十字以外には一切報告をせず、秘密裏に救済計画を遂行しました。毎晩、ビルを利用しているオフィスワーカーたちが帰宅した後、ビルの内部構造を静かに、しかし必死になって改修しました。ビルの建設中にボルト接合されたブレースに、鉄製の補強プレートを溶接することでブレースの接合部分を強化しました。
こうして、シティコープ・センターは、強風でも耐えうるビルとなりました。最終的には、すべて問題なく終わりを迎えました!
改修工事は3ヶ月後に終了し、唯一の大きなハリケーンは、ニューヨークからそれていきました。この一連の出来事は、1995年までほぼ誰にも知られることはありませんでした。1995年になって初めて、ニューヨークはハリケーンによって超高層ビルが倒壊する危険性に晒されていたことが暴露されました。
イギリス、ロンドンにあるミレニアム・ブリッジもまた、重要な設計ミスに直面しながら、悲劇を招く前に修正されたプロジェクトです。
ミレニアム・ブリッジは、2000年6月10日にテムズ川を渡る歩行者専用の橋として開通しました。当時の建築技術の粋を集めた、鳴り物入りの橋でした。ロンドンが21世紀を迎えるのにふさわしい、スマートで新しい橋です。そして、2000年6月12日、改修のためにすぐに閉鎖されました。
いいえ、わたしはこれが過ちだったとは言いません。オープンした3日間、大変盛況でした!
問題は、重量や風、波ではありませんでした。橋はこれらすべてに対して十分な強度を持っていました。そうではなく、人そのもの、つまり、人々が無意識に生み出す振り子のような横揺れが問題でした。
一定の人数が、たまたま、橋の同じ側を同時に踏むという、ある種の偶然が重なり、横揺れが始まりました。2,000人もの人々が同時に橋を渡れば、そのような偶然がしばし起こるのも不思議はありません。そして一度横揺れが始まれば、人々はその横揺れに逆らうのではなく、揺れに合わせて歩き出します。多くの人々が同調して歩いたことで、揺れが一層大きくなり、すぐに手すりにしがみつかないと橋を歩けないほど激しくなりました。
揺れがあまりに大きいと人々は歩くのを止め、収まるのを待ってから歩き出すので、おそらく橋が崩壊する危険性はなかったでしょう。しかし、揺れが続くと、時がたつにつれ、橋が弱体化する可能性があります。また、橋の技術者たちは、タコマナローズ橋で何が起きたのか知っていたため、危険を冒すつもりは全くありませんでした。
彼らは、迅速に橋の閉鎖を決定、揺れが他の問題を引き起こす前に行動に移しました。その後、2年間に渡り、橋全体にダンパーを追加する作業が行われました。歩行ステップから生じる力の大部分を吸収し、橋が揺れるのを防ぐためです。すべてのダンパーがしっかりと設置され、橋は2002年に再度開通しました。以来、有名な観光名所となっています。
設計者や技術者は人間です。時には、把握できない失敗をおかすことがあります。または誰もが予測できない要素が発生することもあります。シティコープ・タワーやミレニアム・ブリッジのように、問題の修正が間に合うこともあれば、時には、大惨事を引き起こすこともあります。
しかし、代々の技術者たちは、過去の失敗から学習し、研究をしています。このような教訓からどれほどの潜在的な危険が取り除かれてきたのか、語ることはできません。
関連タグ:
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.11
自分の「本質的な才能」が見つかる一番簡単な質問 他者から「すごい」と思われても意外と気づかないのが才能
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.12
自分の人生にプラスに働く「イライラ」は才能 自分の強みや才能につながる“良いイライラ”を見分けるポイント
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.11
気づいたら借金、倒産して身ぐるみを剥がされる経営者 起業に「立派な動機」を求められる恐ろしさ
2024.11.11
「退職代行」を使われた管理職の本音と葛藤 メディアで話題、利用者が右肩上がり…企業が置かれている現状とは
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.12
先週まで元気だったのに、突然辞める「びっくり退職」 退職代行サービスの影響も?上司と部下の“すれ違い”が起きる原因
2024.11.14
よってたかってハイリスクのビジネスモデルに仕立て上げるステークホルダー 「社会的理由」が求められる時代の起業戦略