2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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野村達雄氏(以下、野村):Ingressはおかげさまで200以上の国と地域でやっていて、2,000万回以上のダウンロードをしてもらっています。ローンチから3年以上が経っています。
Ingressのもう1つの特徴として、ゲーム内に閉じずにイベント……アノマリーイベントと我々は呼んでいるんですけど、そういったものが各地で、ポータルを取り合うゲームをイベントとして開催されています。そこに人が集まる。直近では、先週土曜日に、韓国・ソウルでイベントが行われていました。
僕がポケモンチャレンジをやっているときから、NianticではIngressをやっていました。そこでジョン・ハンケはポケモンチャレンジを見たんです。そして「これはおもしろい」と。
ポケモンチャレンジはGoogle マップ上でやっていて、デバイスを操作するだけのものでした。それを見て「実際に人がそこへ行き、ゲームをするようになったらおもしろいだろう」と彼も考えたのです。
川島(優志)と僕はもともと知り合いだったんで、そこを通じて連絡を受けました。「ポケモンとIngress、この2つがコラボしたらおもしろいことができるんじゃないか」と、彼に言われました。もともと僕の世代、ちょうど30歳前後ですと、みんなポケモンをやって育っているんですね。僕の場合は赤・緑(ポケットモンスターの初代シリーズ)でした。そのときは、ポケモンはゲームだけでなく、アニメや映画もありました。
みんな、自分のなかでポケモンはただのゲームではありませんでした。妄想があったんです。夢みたいなものです。自分をサトシ(ポケットモンスターの主人公の名前)に投影して……。覚えがあるでしょ?(笑)
(会場笑)
ポケモンの世界にいて、カスミと一緒に冒険をして、ポケモンを捕まえたり、バトルをしたり。そういうことを僕の世代の人はみんな妄想していたんです。ジョンから言われて、それはもう当然、おもしろいことができると思ったんです。
そういうものを、子供のときの僕は欲しがっていた。そう思ったので、Nianticのこの話をポケモンカンパニー(株式会社ポケモン)に持っていきました。「Ingressというものがあります」「Nianticというものがあります」「こういうことをやっています」と説明をさせていただきました。
ポケモンさんの方でも「とりあえず、このIngressをやってみよう」と、社内でインストールしてもらいました。ポケモン社のCEO・石原(恒和)さんはあっという間に、当時一番高かったレベル8のエージェントになるほど、しっかりIngressにはまっていました。
「これとポケモンがコラボしたらすごいことになるだろうな」と、ポケモン社の方もNianticも、みんなが共通のビジョンを持ちまして。そして、ポケモンGOというプロジェクトをやることになりました。
先ほどの話にあったように、僕はもともとGoogle マップでエンジニアをやっていて、Nianticではなかったんですね。この話をしたときに「これはぜひやりたい」という思いがありました。
ジョンとポケモンさんからも「やってもらいたい」と話があったので、Nianticに移り、ゲームディレクター、プロダクトマネージャーという職種になり、ポケモンGOプロジェクトを始動しました。
ポケモンGOをやったことがない方はいらっしゃいますか? ならば、今すぐダウンロードしてください。
(会場笑)
ポケモンGOのゲーム内容については、今日は端折ります。そこは実際に遊んでいただいたり調べてもらったりすればいいのですが、おおまかにゲームの説明すると、ポケモンが現実世界にいて、実際にそこに行って捕まえる。非常にシンプルなゲームです。
ポケモンには水や火といった属性があり、水辺に行けばみずタイプのポケモンが見つかります。公園に行くと、今度はむしタイプのポケモンや鳥などのひこうタイプのポケモンなど。それらしいところに行って、ポケモンを捕まえるのです。
あるポケモンについて「どこにいるんだろう」という想像を働かせながら、「きっとあそこの公園には、こういうポケモンがいるんじゃないか」と考えて、みなさんが外に出て、いろんなところに行って遊ぶゲームです。
ここにいる方がダウンロードすれば、もうちょっと増えるのですが(笑)。おかげさまでポケモンGOは、100以上の国と地域でローンチされ、5億ダウンロードとなりました。
こういった数字は、ゲーム業界では大事です。もちろん、我々もそういう数字を大事にしているんですけど、それよりもNianticにとってユニークな数字があります。
それが、この一番下にある「4.5ビリオンキロメートル」の数字です。これはプレーヤーが歩いた距離をすべて足したものです。4.5ビリオン……と言われても、どれくらいか想像がつきにくと思います。だいたい地球から冥王星くらいの距離ですね。1人で歩こうとしたら、けっこう大変です。
(会場笑)
冥王星は楕円軌道なので、時期によって距離が変わるんですけど、だいたいこれくらいです。それだけの距離を、ポケモントレーナーが歩いています。
また、Microsoftとスタンフォードが共同で行った、ポケモンGOについてのリサーチがあります。ここでは、「トレーナーがポケモンGOを続けていると平均で41.4日、寿命が延びる」と出ています。
これは本当にNianticにとってユニークというか、ゲームの世界の閉じたものではなく、実際に人の生活や健康に影響を与えられることに対して、すごく期待できる数字だと思います。
先ほどから言っているように、ポケモンGOにしてもIngressにしても「人を外に連れ出す」を行っています。我々はこれを「リアル・ワールド・ゲーム」と呼んでいます。それについて、話したいと思います。
ポケモンGOが画面のなかだけじゃなく、外に出ていく例です。最初にオーストラリア、ニュージーランドでポケモンGOをローンチしたんですが、その5日後……週末だったと思います。ユーザーが自発的に人を集めて、イベントを行いました。
シドニーで3,000人か4,000人が集まって、みんなで歩きながらポケモンを捕まえるものでした。ポケモンGOが出る前だったら、そんな話をしても誰も信じられない現象が起きています。
ポケモンGOのゲームのなかは、もちろん我々も一生懸命おもしろいものを作ろうとしています。ゲームのなかだけの「楽しい」ではなく、「外に出てほかの人と一緒にやる」が楽しい。ゲームの世界に閉じず、外に出て、リアルワールドでやるのが楽しい。そういった側面があるため、これだけユーザーが自発的に集まることができたんだと思います。
サンフランシスコでも同様に、ユーザーがFacebookで「ポケモンGOで練り歩くよ」というイベントを作ったら、1万人くらいが「参加する」と表明をしていました。僕もこれに行ったんですけど、すごかったです。なにも知らずに見かけたら、デモかと勘違いしかねないような(笑)。
デモとの大きな違いは、みんなが笑顔で「なになにが出た!」「ここにズバットが出た!」と言っているところです。
(会場笑)
「イーブイだ!」とか、そういう声があっちこっちで上がっていて、みんなすごく楽しそうにしていました。
このときは数千人〜1万人は来たかどうかはわからないんですが、その数千人に混ざって、一緒に歩いてポケモンを捕まえました。その体験がすごく楽しかったんです。1人でやるのも楽しいんですけど、「多くの人に囲まれてやっている体験」がすごく特別なものだと思っています。
シカゴでもイベントが行われていました。ポケモンGOをローンチしたときから、こういうイベントが世界各地で行われています。これだけの人が集まってポケモンを捕まえています。
これは僕がシンガポールに行ったときに見かけた家族5人ですね。1家5人で、お父さんがこんなでっかいバッテリーを持っていて、そこにみんな繋がって歩き回っていました。
ちょっと声をかけて「なにがとれたの?」など、そういう会話を楽しみました。写真を撮らせてもらったんですけど、見ていただくとわかるように、みんな笑顔ですごく楽しそうにしていました。
これもまた別のグループが遊んでいる瞬間です。これはポケモンの力の1つだと思っているんですけれど、いろんな世代、年齢の人が楽しんでくれています。
ポケモンは今年20周年になりますが、その間、育ててきたファンベース、僕の世代から下もそうだし、もう少し上でしたら子供がやっているのをお父さんやお母さんが見ていました。そういった幅広いファンのベースを持っています。
ふだんなら、子供がすごく歳の離れている大人と一緒にゲームをすることもないですし、共通の話題もなかったりします。でも、ポケモンがあるおかげで、会話が生まれているんです。ゲーム内でなにが起こっているかを、ゲームの外でしゃべる。そこがすごく楽しいです。
これはもう1つ、別の例です。あるポケモンプレーヤーが、ローンチしてから数週間でポケモンGOをインストールして、歩き回って10ポンド……4キロくらい体重が減ったという話です。もともと歩くのが好きな方ではなかったし、「健康のために歩け」と言われても、やる気にはならなかった。そんななか、ポケモンGOをインストールしたわけです。
「歩こう」と思ったわけじゃなくて、「あそこにポケモンがいるだろうから捕まえにいこう」「あっちにもいるぞ」と歩き回っているうちに、数週間で体重が減っていきました。体重が減るだけじゃなくて、健康にもなった。こういう例がいっぱいあります。
これはまた別の、ポケモンGOをプレイしているグループです。よくご覧いただくと、いろんな人種、性別、年齢層がいるんですね。黒人の方、白人の方、アジア系の方。これだけのダイバーシティーがあるグループが、ポケモンで1つになって一緒に遊んでいる。これは「ポケモンの力だな」と思っています。
最後に、ワシントン州にある小さいアイスクリーム屋さんの例です。一時期、商売がうまくいかないときがあったようですが、そこでポケモンGOが登場しました。このアイスクリーム屋さんがたまたまポケストップになっていたんですね。
店主やほかのポケモンプレーヤーが、アイスクリームショップのポケストップにルアーを刺すようになり、ポケモンが寄ってくるだけじゃなくて、人がいっぱい寄ってくるようになったんです。
(会場笑)
これも、ポケモンGOがいかにゲーム内に閉じずに、外で影響を与えている例です。
文章は読まなくていいんですけど、ポケモンGOが自閉症で苦しんでいるお子さんに、少しいいインパクトを与えた例です。自閉症のお子さんには自分のスペースがあり、そこから普段あまり離れたがらない。家でも決まった場所にいて、決まったことをする。そんなお子さんがポケモンGOをインストールした。
ポケモンGOは、1カ所に留まっていては、なにも捕まえられません。そこで、お子さんもポケモンを捕まえるために、自分からお母さんに「外に出かけたい」と話をするようになった。お母さんも聞いたことない言葉だったので、ものすごくうれしかったという例です。
実際に外へ出かけたら、ほかにもポケモンをやっているトレーナーがいっぱいいて、その人たちに、なんと自分から話しかけていきました。「このポケモンはどこにいるの?」など、そういう会話が生まれた例です。
「ゲームが楽しい」「インストールがいっぱいされている」など、そういうこともすごく大事なんですが、これは「ポケモンGOをやって本当によかった」と思う事例です。
もう1つは、ポケモンGOが病院で使われている例です。僕はこの例を見たとき、感動しました。こうしてポケモンGOを使って人が健康になっていく事例は。いくつ見ても毎回感動させられます。
これは最後の例なんですけど、最近、東北地方で、地域活性化や被災地の……これは石巻かな、そういうところに人に来てもらい、その場所を見てもらうために行われたものです。
石巻は、人口が10〜20万くらいの小さなところなんですけど、そこに1万人くらいが集まって、みんなでポケモンを探して遊ぶという事例です。
最後に、ARについて少しだけ触れたいと思っています。カメラがあって、その前に3Dオブジェクトがおいてある。それがARだと考えられている方が多いんです。
しかしこれは、ARの一部なんですね。
ポケモンが出て、カメラの前に映っているのはほんの一部です。しかし、先ほどの例にもあるように、人が外に出て、実際のなんでもない、それまで気が付かなかった場所に新しい情報を付加したり、意味を付加したり、もともとあった気づかなかったものに気づかせてくれたりする。そういうところが、広い意味での「AR」だと思っています。
みなさんのなかで起業される方、新しいプロダクトを作り上げる方がいらっしゃると思うんですが。ARという分野をもう一度、ただのテクノロジーのカメラ、3Dというところから少し離れて、「どうやって実世界に1つのオーバーレイの情報を置いたり、そういうことができるのか」を、ぜひ一度考えてみるといいと思っています。
デバイスという意味では、ポケモンGOをしているこれも、ただの電話です。でも、電話でもARはできます。一番簡単なもので言えば、ナビゲーションも1つのARなんですね。GPSで自分の場所が表示されると、その周辺の情報、住所や順路などが、自分の電話に表示される。1つのARの例ですね。
今、GoogleのTangoやマジックリンク、MicrosoftHoloLens、Metaなど、いろんな新しいテクノロジーがどんどん生まれています。電話から進化し、こういったようにゴーグル……じゃなくてグラスみたいなものをつけて、世界の情報があちこちに表示される。車のナビゲーションが、ナビを見なくても目の前に表示されてたり。もう少し技術が進んだら、車は自動で運転してほしいんですけどね。
デバイスのテクノロジーも進化している。いずれは本当に「ここにモンスターボールがあって、そこにピカチュウがいたら捕まえる」なんてことができるようになる日が、もうそこまできているんじゃないかと思います。
ARの未来はすごく明るいと思っています。みなさんもぜひそういったところで、なにができるのか、ARの分野でポケモンGOのようなものが作れないかを、考えていただけたらと思います。
以上ありがとうございました。
(会場拍手)
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