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Weird Places: Mexico's Giant Crystal Cave(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:15年ほど前、メキシコの都市ナイカで、ある鉱山会社が鉛や亜鉛、銀を求めて、地下300メートルの洞窟に溜まっていた水を汲み上げはじめました。
しかし水を汲み上げ終わると、その洞窟からはなにも掘り出せないとわかります。12メートルもの長さの杭で埋め尽くされていたからです。
その杭の正体は、これまで誰も見たことないほど巨大なクリスタルでした。
この洞窟のヤバさは、3階建てのビルほどの高さがあるこの鉱物の柱だけではありません。鉱夫たちと同じように洞窟へ降り立っても、クリスタルを眺めていられるのは、ものの10分ほどでしょう。生身の姿ではそれで限界を迎えるほど厳しい環境なのです。
「巨大クリスタルの洞窟」というそのままの名前が付けられたこの洞窟は、2000年に鉱夫たちが鉱山のトンネルを拡張する際に発見されました。
すでに一帯の水は汲み上げ終わっていたので岩を爆破させたところ、そこには300平方メートルもの広さの洞窟が広がっており、ミネラルの石膏であるセレナイトという石でできた巨大なクリスタルで埋め尽くされていたのです。
洞窟の環境は酷いものでした。温度計はマシな時でも58度を指し、湿度はほぼ100パーセントです。あたり一面のクリスタルには、長さ12メートル、重さ50トンのものすらあるのです。
巨大クリスタルの洞窟内はあまりに蒸し暑いため、肺の温度は周りの環境よりも冷たくなります。そのため呼吸をすると空気中の水蒸気が肺の中で凝結するという、普通はありえない現象が生じてしまいます。洞窟に長くいると、自分の肺だけで溺れてしまうのです。
当然のことながら、こうした環境は格好の研究対象になります。研究者たちは特注の冷蔵スーツを着用して洞窟へ入りますが、それでも30分しか滞在できません。
クリスタルの洞窟では、私たちがまだ知らない生態系など、調べるべきことがたくさんあります。世界一巨大なクリスタルがあるのに、人が踏み込めない厳しい環境なのは残念にも思えますが、そうした環境こそが鉱物が形成されていくためには最適な環境だったのです。
ナイカの山の地中深くにあるクリスタルの洞窟は、火山が活発に活動していた時より2,600万年前にできました。そして流れてきた溶岩は硬石膏を洞窟にもたらしたのです。
硬石膏とは、ミネラルの石膏が乾燥したものです。どちらも化学成分は同じですが、硬石膏には水分がありません。
しかし条件が整えば、硬石膏は水分を吸収して石膏に変わります。さらに高石膏が十分に時間をかけて石膏に変わると、結晶化して石膏の種類の1つであるセレナイトという状態になります。
この過程で鍵となる要素は温度です。硬石膏は58度以上で安定して定着します。しかし58度を下回ると、空気中の水分を吸収して石膏へと変わるのです。そしてこの過程こそが、巨大クリスタルの洞窟で起こったことです。
山の地下でマグマが冷やされて58度以下になると、硬石膏はゆっくりゆっくり時間をかけて変わっていきます。水を含んだ石膏のセレナイトへ変わった部分が、クリスタルを形成していくのです。
「剣の洞窟」と名づけられた同じ山にあるほかの洞窟でも、同じようなセレナイトのクリスタルがたくさん見られます。しかしそこでは1メートル程度の長さのクリスタルしかありません。
おそらく、洞窟が急速に冷やされたため、水分を含んだ石膏が大きなクリスタルを形成するまでには至らなかったのでしょう。
しかし巨大クリスタルの洞窟は、そのために十分な時間があるほどの深さに位置していました。50万年ものあいだ58度に保たれ、しかも硬石膏をたくさん含んだ水で満たされていたため、水を組み上げた2000年までセレナイトのクリスタルは成長し続けられたのです。
理論的には、こうした理想的な環境下ではどこまでもクリスタルは大きくなります。いつか鉱山が閉鎖され、水の汲み上げをやめてしまえば、クリスタルは再び成長を始めるに違いありません。
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