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MATH | 5 Artists in 5 Minutes | LittleArtTalks w/ ARTiculations(全1記事)

数式で音楽を創る--数学的な美しさを追い求めた5人の芸術家

今回の「Little Art Talks」は、数学を用いて芸術を描いた5人の芸術家を取り上げます。数学と芸術は一見相反する要素に感じますが、芸術家たちは古くから理想的な美を追い求めるために数学を用いてきました。黄金比や遠近法だけでなく、数学を用いて音楽を作るなどさまざまな表現が模索されています。意外に奥深い数学とアートの世界をご堪能ください。

5人の芸術家による数学とアートの世界

カリン・ユエン氏(以下、カリン):しばしばアートは、科学や数学とは対極にある題材を扱うものだと思いがちですが、これはまったく正しくありません。今回は、ARTiculationから友人のベティが来て説明を手助けしてくれます。

ベティ・チェン氏(以下、ベティ):芸術家たちは、長いあいだ数を使って理想的な美を追い求めてきました。例を挙げるなら、理想的な人体比例や黄金分割などです。また、物事の見え方を現実的に即した確実なものにするため、幾何学や遠近法なども用いられてきました。

カリン:だまし絵のように見える作品は、数学の知識を活用しているからこそ、本物らしく見えるのです。

例えば、反復や論理的なパラドックス、相似、フラクタル理論などを、美術作品にも見い出すことができます。今日は、ベティと一緒に5つの例をシェアしたいと思います。

有名な作品としては、レオナルド・ダ・ヴィンチの『ウィトルウィウスの人体図』がすぐに思い出されますが、スイス出身のフランスの建築家、ル・コルビュジェも黄金比に取りつかれていたことをご存知でしょうか。

ル・コルビュジェは、「インターナショナル・スタイル」と呼ばれる近代的な建築様式の先駆者として知られています。

彼は「世界の数学的な秩序は、黄金比とフィボナッチ数列と密接に関わっている」と信じていました。彼は、「モデュロール」と呼ばれるシステムと数を通じて、作品の比例と調和を追求したのです。

彼は以下のように述べています。

「目前に現れるリズムは、それぞれの関係の中でお互いに明晰なものである。このリズムは人間の活動の根源的なところにあり、人間の中で、有機的な必然性で反響するのだ。同様にこの明らかな必然性は、老人であれ、子供であれ、知識人であれ、野性の人びとであれ、黄金分割を描くことからもたらされる」

美しい調和に潜む、数学の力

ベティ:ドナルド・ジャッド(1928〜1994年)は、アメリカのミニマリズムの画家であり、彫刻家でした。彼は、プラスティックや金属の工業製品のように見える、高度な仕上げを施した幾何学形の立体を制作しました。立体の形をポジとして用いることで、なにもない空間をネガとして強調したのです。

彼の立体はシンプルで単直ですが、実際には、非常に高い水準の正確さと丹念な数学的計算から成り立っています。1960‐70年代の「プログレッション(数列)」シリーズとして、アルマイトの線状の彫刻を制作しました。

配置されたカラーブロックの寸法と、その間にある空間の長さは、フィボナッチ数列を基にしています。フィボナッチ数列は、数学的な序列の一種で、それぞれの数はその前の二つの合計になっています。

この作品を見てみると、ブロックの大きさは1、1、2、3、5、13、そして21と並んでいることがわかります。そしてまた、同じ配列が、それぞれのブロックの間の空間にも現れます。

とりわけ、「プログレッション(数列)」シリーズでは、ジャッドは観る人に能動的に働きかけています。他人は自分とは違うものであるがゆえに、まだ見たことのない発見をジャッドの作品の中に、発見することができるのです。というのは、見ること、関与すること、用いられた数学的な序列の反復を理解することは、観る人にとってそれぞれ別の時系列の体験なのです。

カリン:ソル・ルウィット(1928〜2007年)は、彼はアメリカの芸術家であり、様々な芸術運動を主導しましたが、とりわけコンセプチュアル・アート、ミニマル・アートのウォール・ドローイング(壁画)と構成物で知られています。ウォール・ドローイングは、ガイドラインを組み合わせ、簡単な図表のように壁面に直接制作されます。

そうした作品は、アーティスト自身だけでなく他の人たちによっても描かれています。2007年の彼の死後も作品はその場で制作され続けているのです。一般的に、ひとつの展覧会の期限の間のみでその後は破棄されますが、彼が生み出した図表とシステムはその継承に大きな役割を果たし、絵を描く個々人の解釈に委ねる結果になりました。

『ウォール・ドローイング#122(2011年)』は、最初にMITに設営されたものですが、その作品は、片側が円弧の線、真っ直ぐな線、あるいは真っ直ぐではない線、そして点線、というように、ランダムに始まる2つの交わる線の、あらゆる組み合わせを引用したものです。その結果150のそれぞれ独自の組み合わせがギャラリーの壁面に流れます。

同様に『ウォール・ドローイング#260』(2008年)は、円弧と線を、あらゆる可能なパターンで規則的に組み合わせています。

ベティ:アレックス・コルヴィル(1920〜2013年)はカナダの画家であり、日常生活の人びとや日用品の情景を描写する作品で知られています。故郷のヴァスコーシャの街の家族や人びと、彼の絵画の多くは物語的な要素が見受けられますが、画面構成は、数学的な比例関係から導かれ、幾何学的な形態が強調されています。

ホテルの一室や、除雪風景、走っている人物像など、多くのスケッチを描いた後、その寸法や配分を吟味し、正確な遠近法でこれらの物体を絵画空間に配置するのです。この構成は有機的な形態と幾何学的な形態を完全に融合させていてます。

コルヴィルの作品は、本来的には官能的で叙情的なのですが、同時に非常に論理的で系統だったものです。

カリン:ハンナ・ダボーヴェン(1941〜2009年)は、ドイツのコンセプチュアルアーティストであり、彼女の作品は様々な形状の数値の比率を含み、殆ど普遍的で抽象化された領域にあります。

ダボーヴェンはこのように述べています。

「私が数を用いるのは、描写せずに記述する方法であるから。私が数を選ぶのは、絶え間なく続き、限定されていて、そして芸術的であるから。」

ダボーヴェンは1970年代に、一定化された抽象の数式の記述を制作していました。1973年、原本の中にテキストを転写して、文章と付随した視覚記録を取り入れはじめます。1990年には、日付を統計的に数えることによる、音楽の記譜法のシステムを生み出しました。

『数学的な音楽(Mathematical Music)』では、数を音符に対応させ転換することで、作曲を行いました。彼女の用いた抽象的な語彙は、完全に自己言及的であり、その結果、楽曲は、記述されたものから音楽へとつながってゆくのです。

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