2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
New Insights Into 'The Mind's Eye'(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:もしもなにも心に描くことができなかったとしたら、人生はどんな感じなのか思い描いてみてください。
誰かが目の前に粘土の塊を置いて、今ほしいものの彫刻をつくるように要求しても、みなさんはなにを作りたいのかというイメージを描くことができません。彫刻は作れないでしょう。
もしくは、『ハリー・ポッターと賢者の石』を初めて読んでみても、表現されているシーンのすべてを理解できないかもしれません。ホグワーツが初めて登場するシーンもトロールの肌も、クィディッチのピッチの描写も、なにを表現しているのか想像することができないのです。
もしくは、大切な知人に呼ばれたとき、彼らがどんな見た目なのかがわからないと気づくかもしれません。これらのことはすべて、最近になって初めて表現されるようになった神経学的状態の兆候です。きちんとした研究は今まさに行われているところです。
これは「アファンタジア」と呼ばれ、想像のなかで物事を思い描くことができないことを言います。
以前にお話しした、「パレイドリア」とは逆ですね。パレイドリアは、パンケーキのなかの顔や、火星にいる小さな女性などのように、そこにはないはずのものを見た時に、頭のなかで起きるトリックのようなものです。逆にアファンタジアはいわゆる心の目を持たないことを言います。
始まりは100年以上前にさかのぼりますが、この時は名付けられただけで、最近になってエクスター大学のアダム・ゼーマン博士によって確認されました。マスコミ報道の後、彼の研究によって、その現象は人々が思っていたよりもずっと身近なものだということを解明しました。
最近、ゼーマン博士は心臓手術から目覚めた患者についての研究を発表し、そのなかでその患者は頭のなかで想像することができなくなっていたことが発見されました。
ディスカバー誌はゼーマン博士の研究を精査し、心臓手術を受けて同じような症状を持つ24人近くもの患者から博士は連絡を受けました。しかし、博士の研究を読むまで、自分たちに変化があったことに気づかなかったのです。
オンタリオの25歳の男性のケースですと、頭のなかでなにかを思い描けないだけではなく、匂いや音、味、直接経験していない感覚も想像できなくなっていました。
ほかにもウェールズの医師のケースでは、視覚的な記憶がなくなり、もう一度見るまで物体も人もどんな形や見た目だったのかを思い出せなかったのです。
普通であればここでなにがアンファンタジアを引き起こすかについてお話しするところですが、まだ認識されたばかりですので、もちろんわかりません。脳のほとんどの部分に関わるので、視覚化のプロセスというのはとても複雑です。ですから、こういった症状がどこで始まるのかを特定するのは困難なのです。
見るという行動は脳の後方にある後頭葉によって進行されます。
例えばみなさんが実際に知覚しようが、認識しようが、見たものを覚えていようが、頭頂葉や側頭葉を含む脳のほかの部分でなにが起こっているのかに左右されるのです。
ゼーマン博士には研究するべき課題がたくさんあり、脳がどうやって想像する能力を持たずに人や場所について伝えることができるのかを調べるために、患者たちの感覚能力や今までの人生、夜にどんな夢を見ているのかさえも分析していくでしょう。
この研究はとくにタイムリーなものでした。なぜならば、私たちは神経学と認識についての研究においてもっとも有名な人物を失ったところだからです。
オリバー・サックス博士は2015年8月30日に癌で亡くなりました。
そして、心の科学について彼が教えてくれたことをお伝えせずにいることはできません。
40年に渡り、サックス博士はニューヨークにあるアルバート・アインシュタイン医科大学の神経学と精神医学の教授を務め、それ以降はコロンビア大学で教鞭をとっていました。しかし、ここでみなさんにお話ししたほかの多くの科学者たちとは違い、サックス博士は実験研究をあまり行いませんでした。
彼は1960年代に働いていた最初の研究所を追い出されました。サンプルをなくしたり、道具を壊したりすることが多かったからです。代わりに、彼は患者を探し始め、そこで彼のキャリアの方向性を決める研究タイプを見つけたのです。それがケーススタディでした。
彼は、帽子と自分の奥さんを間違えた男性のように、レアで奇妙な症状を持つ人々に関する本や、自分の奥さんを含む誰の顔も認識できないけれどすばらしいコンサートピアニストについての本などを書いたことで知られています。
しかし、それ以上に、彼は偏頭痛や色覚異常などよくある症状についてよく書いていました。彼は耳が聞こえない人々がどのように自分たちの方法で世界を体感するのか、そして盲目で生まれた人々が、突然見えるようになった時に人生はどんなふうなのかについて書き記しました。
当時書かれた時にはほとんど知られていなかった、トゥレット・シンドロームやアスペルガー・シンドロームのような状態に対するサックス博士の研究は、現在ではそのわかりやすく思いやりのある描写のおかげもあって、よく理解され、適切に診断され、好奇の目で見られることも減りました。
オリバー・サックス博士はカール・セーガンが宇宙にしたことを、人の脳にしたのです。サックス博士は勘違いを解明し、不安を一掃し、私たちの好奇心を刺激しました。彼を失ったことが残念でなりません。
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