
2025.03.19
ドバイ不動産投資の最前線 専門家が語る、3つの投資モデルと市場の展望
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司会者:それでは野老朝雄さんと、事業構想大学院大学学長、田中里沙によるトークセッションを始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
田中里沙氏(以下、田中):よろしくお願いします。
(会場拍手)
今日は朝早くからみなさまありがとうございます。私は5年前に開学した事業構想大学院大学という、事業を構想するというテーマの大学院の学長を務めておりまして、兼任で宣伝会議の取締役をしております。
このフォーラムも開催が決まった時から企画をご一緒してきました。今日も、みなさんいろんな課題をお持ちだと思いますので、この限られた時間のなかでいろんなお話を進めていきたいと思っております。
そして、今日は特別ゲストで野老朝雄さんにいらしていただきました。野老さんには、この宣伝会議賞のマークを作っていただきまして。2020(東京オリンピック・パラリンピック)のエンブレム以降初作品ということですので、私どもとしてもたいへんうれしく思っております。
野老さんは、建築をベースに仕事をスタートされて、さまざまなデザインに関わってこられました。2020関連グッズについていえば、、Tシャツ、タオル、マグカップはじめ、数々のものが今発売され始めましたので、野老さんのデザインをみなさんが手元に持たれる機会がこれから増えてくるかと思います。
改めまして、今回、マークありがとうございます。
野老朝雄氏(以下、野老):ありがとうございます。
田中:私も委員をさせてもらってましたので、エンブレムが野老さん作ですと発表になった直後に、記者会見の際に初めてお会いして、「あの組市松門紋の作者はこの方だったんだ」ということで改めて知り、人柄や、その魅力にたいへん惹かれるところがありました。
今日は企業戦略とデザインの話を深めていきたいと思います。デザインの力は本当に大きいです。プロダクトデザインを見れば、デザインの差で商品の売れ行きが左右される、みたいなところがあります。
私どもの一番身近な広告の世界では、広告や販促のツールというのは、限られたメディアの場所のなかにデザインを施すことが中心だったと思うんですけれども、野老さんの仕事は、基本はどこでどう使われるかを想定、規定してデザインするところから入るかと思うんですね。
その視点から、このようなマーク、CIと言われる企業のロゴなどを制作するときのスタンスは、どのようなものですか?
野老:今回デザイナーという肩書で書いていただいたんですけれども、基本的に僕は作家というかアーティストとして描かせていただくことが多いんですけど。
建築の概念でのSite-Specificという、「ここでしか起こりえないこと」みたいな考えをずっと学んでいたんですね。その対局というのが、anywhereというか、「どこでも成立する」という意味で。
例えば、オリンピックの2020大会のものは、その文脈を抽出するんだけど、実際それがどういうふうに掲げられるのかというと、都市のいろんな部分になりますよね。例えば、建物のファサードというのは動かないものが多くて。
僕は、建築を学んでいたからかもしれないんですけれども、長く残るものへの憧れが非常に強いです。なので、この宣伝会議の賞も、かなりさかのぼっていろいろ勉強させていただいて、ここでしかできないということで。
単純に宣伝の「宣」という字ですけれども、ほかでは絶対使えないものという意味では、condition specificというか、そのコンディションでしか成立しないものを目指しています。
田中:「ほかにあるな」とか。「このA社で駄目だったら、B社で使えるな」みたいなものというのは、実際はちょっとありえないですものね。
野老:そうですね。とくに「宣伝会議」という非常に強力な名前が1つのアイデンティティで、存続し続けてきたわけですよね。だから、それはほかが絶対真似できないところだろうし、変えないですよね。
田中:はい。そうです。
野老:なので、雑誌のほうで「墓石に掘れるか」みたいなところでは、本当に強度のある……強度のあるというのは、長く保つということをかなり目指しているし。
そこでなくては成立しない、ただし、いろいろな媒体で、例えば、授賞式のときなんかに、いろいろなところに貼られるとすると、やっぱり目指す若者が憧れる対象になってほしいですし。
あ、そうだ。トロフィーもこれから、本当に「これでなければ作れないもの」というのを目指そうと思っています。
田中:ありがとうございます。企業のCI、ロゴマークというのは、今ある現状と、トップの考えや哲学を、デザインにして表現することで成立しています。
かつて、1980年頃「CIブーム」というのがあって、徐々に変遷してきてると思うんですけれども、未来は予測できないところもありますし、会社の状況ってどんどん変わっていくし、社会も変わっていきます。
でも、いったんロゴやマークができると、それが長らく使われていくために、そのデザイン自体がどんなふうに変わっていけるのか・それとも変わらないのかということも考えなきゃいけないかなと想像しています。
例えばおなじみの「エンゼルマーク」や「仁丹マーク」は、実は時代のなかで少しずつ微修正されているというお話もあります。
野老さんの作られるマークは、もともと変幻自在な感じがしますが、マーク自体を制作後にいじることがないのか、マーク自体がどう成長していくのかという想定に、どんな思いを込めているのかをぜひ聞きたいと思っていました。
野老:自分の作品が幾何学によるものなので、修正しにくいところはあると思うんですね。
田中:法則があるのですね。
野老:そうですね。これ(宣伝会議賞のロゴ)は単純に本当に、網目のようなふつうの方眼紙みたいのを塗りつぶすというだけですし。極端に単純なところを目指したいというのがあるんですね。
例えば、(ロゴの)線の太さを変えることってあるかもしれないんですけれども、これ、いつもそうなんですけど、線で描かないんですよ。面で描いていて。概念的に、線というのは面積がなく、なにかとなにかをつなぐものだと思うんだけど、それは徹底して面で考えていますね。だから、なるべく変えたくないという思い。
あと、確かに80sの時に設定されたものって、やっぱり80sを負うと思うし、今、2010年代になにか変わるとすると、それも「2010年代ぽいね」ということは言われるんでしょうね。
ただ、やっぱり僕が「このロゴすごいな」と思うものって、もう変わり得ないと思ってたんですけど、やっぱり変わっちゃったりもするんですね。
1つは、今「National Rail」というのかな、ロンドンの国鉄BritRailが大幅に変わって。たぶん、またなにか変え直すんじゃないかなって気もするんですけれども。
やっぱり1つはころころ変わると信用がなくなるっていうのはあると思うんですね。ただ、一番信用を求められる、例えば銀行というのは、銀行そのものがどんどん名前が長くなっていったりとか。
田中:確かにそうですね。
野老:だから、僕まだ富士銀行とか覚えてて(笑)。ロゴすごいわかりやすかったですよね。
だから、どんどん編纂というのが続いていくと思いますし。例えば、政党ってもうわからなくなっちゃったりしますよね。だから、よりアイデンティティが一層求められてくるのかなと思うんですよ。自分はこういうポリシーで、この団体なり群れなりを規定していくんだ、ということですね。
あと、例えば地図上でも、そこに「なんとか銀行」と書いてあるよりも、アイコンとしてのロゴがあるほうが認知が早かったりするだろうし。より一層ほかの言語になってくると思うんですね。
やっぱり三菱のロゴとかすごい強力ですよね。すべてを言い表してますし、本当に少ない要素でできてますしね。変えようがないというか。1つの憧れですね。もちろん家紋とかからきてるんだと思うんですけれども。
田中:マークを企業から依頼されたときに、いろんなことを考え、リサーチもされると思うんですけど、先ほど、宣伝会議については62年の歴史を紐解いてくださったと聞きました。
クライアントの仕事をされるときに、歴史から未来に向けてのデザインを考えるときの「時間軸」というのはどんなふうに取られるのでしょう?
野老:まず、作家の自分を調べてくださった方とかだったら、もちろんやりやすいし。そのときにやっぱりコミュニケーションというか、楽しくできたときはやっぱりうまくいくし。そうじゃない場合は最後までいかない、頓挫することが多いんですけど。どういうビジョンを持っているかということもそうですね。
僕は、いわゆるクライアントの要望に簡単に応えることができないような図形を目指しているので、今回も「いや、もうちょとここ、こうしてください」という、ちょっとやりようがないやつをやろうと思ったんですけど(笑)。
田中:なるほど(笑)。
野老:それは要するに、お互いのプレゼンテーションと、あと愛情というか敬意の持ち方なのかなと思うんですけれども。
そのときに、例えば設計事務所だったら、「こういう作品群を作ってた」というのはすごくわかりやすかったりしますよね。「こういう方向を目指してる」というのがもう過去の作品に込められてると思うし。
でも、それを例えば抽出する場合もあるだろうし、自分の場合だったら名前だったりとかイニシャルだったりとか。これ(宣伝会議賞のロゴ)はイニシャルというか、漢字のイニシャル、一文字を抽出する手法だと思うんだけど。
あとエンブレムのような、いわゆる理念。僕は「つなげる」ってことに集中したわけなんですけれども。「あれもこれも」ってやっぱりできないんですね。
でも、読みようによってはこうも読める。例えば、幾何学というのも、見立てということでいろんな見方があると思います。非常にネガティブな意味に取ろうと思ったら取れるだろうし。これも、無理やりそういう考えでいくと、「出口のない迷路みたい」って言った人がいたとしたら、「その人は世界をそういう世界観で見てるんだな」って。
だから、僕もこれは、頂きというか頂上を1つ描きたかったというのがあるんですけれども、すごく長い中国の歴史がある漢字を我々が使えるというのは、宣伝の「宣」という字がたまたまこういう構造をしていて……。
でも、相当描きましたね。実は「宣伝会議賞」というのをわーって作ったんですよ。でも、ちょっとやっぱりあれこれ言い過ぎるなと思って、絞ったんです。
なにをCIで言えるかというのは、やっぱりコーポレートのアイデンティティですよね。アイデンティティって本当に難しい話だと思います。人間だったら「あなたは誰ですか?」みたいなところだと思うんですね。企業だったら「そこ、どんなところですか?」みたいなところで。
あれこれいろんな概念を入れるよりも……これは前もお話ししたかもしれないんですけど、なにかを見るってなにかを見ないことの決定だと思うんですね。
田中:なにかを見るのはなにかを見ないこと?
野老:なにかをやるというのは、ほかになにかをやり得たことをとりあえず捨てるというか。
だから、ありとあらゆることを詰め込むという、お子様ランチのようなものを作るってことも可能だと思うんだけど、だいぶ捨てますよね。僕はどういうふうにほかのことをシャットアウトして、1つのことを集中するかというのがすごく興味がありますし。
例えばCIの場合は、経営者の方だったり戦略の方とデザイナーとのなかで、「あ、そういうことがやりたいのか」というのが、形の製作をするプロセスですよね。再確認できる場合が多いと思うんですよね。
だから、どういう文脈を……例えば、僕が1つ目標にしてるのは、7ミリ角とか10ミリ角ぐらい、小さなピンバッチぐらいですね。そこに彫り込んでもできるような解像度を目指してるんですけれども。かなりどう捨てるかというのがすごく重要なんでしょうね。どの文脈を一番押したいかというときに。
田中:そうですね。なにを捨てるかって、企業の当事者だとやりづらいところがあります。「これもあれも盛り込んで」というのはいくらでも言えるんですけど、その結果ごちゃごちゃになってしまいます。
2020エンブレムの公募のときも「この条件を満たしてください」という規定が仕様書に多くありました。「全部満たせるようなマークって開発できるの?」と想像したりもしましたけれども、その条件のもとで野老さん流に解釈をされて、あのマークができあがったということですよね。
野老:あの場合は、ある意味直接クライアントというかエンブレム委員会の方と話せないということが、1つのコンディションだったと思います。ということは解釈は自由なはずで。
だけど、実際の企業の場合……どんどんコンペとかもできてくるとおもしろいと思うんですね。やっぱりすごく優秀な人がいっぱいいる世界ですし。
そこでアイデンティティを出すってことは、その会社にどのくらいオリジナリティがあるか、おもしろいことの期待値があるかというのが素直に出るとすると、作図する人間も、作らせる方々もお互い問われると思うんですよ。だから、1つはやっぱりお互いの敬意なのかなと思うんですよね。
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