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How to Get Drunk on Bread(全1記事)

パンを食べただけで酔っぱらう? 人体の不思議を解説

ある61歳の男性がテキサス州の救急救命室におぼつかない足取りでやってきました。彼はふらつき、吐き気、めまいを訴えます。 泥酔していると考えた看護師が彼の呼気にアルコールが含まれているか検査してみると、案の定血中アルコール濃度は泥酔レベルの0.37パーセントでした。ところがおかしなことに、彼はその日1杯もお酒は飲んでいないと言うのです。彼が言うところによれば、いきなりわけもなく酔っ払ったような状態に過去数年にわたって悩まされているそうです。 一体なにが起こっているのでしょうか?

酒を飲んでいないのに酔っ払う?

マイケル・アランダ氏:今日はシャーロック・ホームズに出てきそうなミステリーをご紹介しましょう。

ある61歳の男性がテキサス州の救急救命室におぼつかない足取りでやってきました。彼はふらつき、吐き気、めまいを訴えます。

泥酔していると考えた看護師が彼の呼気にアルコールが含まれているか検査してみると、案の定血中アルコール濃度は泥酔レベルの0.37パーセントでした。ところがおかしなことに、彼はその日1杯もお酒は飲んでいないと言うのです。

彼が言うところによれば、いきなりわけもなく酔っ払ったような状態に過去数年にわたって悩まされているそうです。

一体なにが起こっているのでしょうか。

酒飲みであることを隠し通そうとしているのでしょうか。それとも記憶喪失か、飲みすぎてそのことすら忘れているのでしょうか。

医師は彼がお酒を隠し持っていないことを確認した上で、24時間病室に隔離して様子を見ました。病院では炭水化物の多い食事が与えられ、彼の血中アルコールにどんな変化が起こるのかつぶさに観察されました。

その結果、彼の消化器系には出芽酵母、つまりイーストがとてつもなく存在していることが分かりました。そのため消化管が、ある種の発酵装置の役目を果たして炭水化物や砂糖をエタノールに変化させてしまい、彼を泥酔させてしまうわけです。

もうおわかりだとは思いますが、これは2010年に本当に起きたミステリーです。最終的に、医師は彼が自動的にお酒を醸造できる、「腸発酵症候群」と診断しました。

ビール腹にちなんだジョークになりそうですね。

パンで酔う謎を解説

医師が突きとめた結果、次のことがわかりました。ほとんどの人は、イーストが含まれている食品を食べてもイーストは体を通過していきます。ところがなかには体内に蓄積されていく人もいるのです。

テキサス州のこの男性の場合、蓄積されたイーストが善玉菌を一掃するほどになってしまい、ついには消化管内にいる多種多様な菌に取って代わるほどになったのです。

そのため炭水化物を取り入れると、消化器系に存在する増えすぎたイーストが発酵を始め、次々にアルコールへ変えていき、ついには血流に乗ってしまうのです。

彼は文字通り、パンに酔う男なのです。

医師は抗真菌薬やプロバイオティクスを処方することで、彼の体内の善玉菌を増やして元通りにしようとしました。さらに炭水化物の少ない食品を摂るようにすることで、イーストを食い止めることもしました。

この「自動醸造症候群」になっている人は彼だけではありませんでした。短腸症候群を患っていて、栄養素の吸収がしづらい腸内環境になっている子供たちにも同じイースト中毒の症状が見られたのです。

さらには1970年に日本では、消化器系のイーストによる深刻な感染や、それに伴う酩酊に関する論文が発表されています。

いずれにせよ、依然として数えるほどしか症例がない、珍しく不思議な症状なので物議をかもしています。具体的になにが起きているのかを解明するためには、さらなる研究と治験が必要です。

さらに言えば、お酒を飲んでいないのに酔っ払ってしまう原因は、イーストが多すぎるだけではないかもしれません。ある酵素が関係しているかもしれないのです。

通常アルコールは肝臓の酵素によって分解されます。しかしなかには遺伝的変異によってこの種の酵素を十分に持っていない人もいます。そうした人は、普通の人に比べて少ない量のアルコールでも酔っ払ってしまいます。

アジア人の3人に1人は酵素が少なく、この遺伝的変異は地理的に偏っているようです。腸発酵症候群の報告が日本でもっとも多いのも頷けます。

酵素が少ない人がイーストの多い食品を食べ過ぎれば、炭水化物がエタノールに変化してしまい、さらにそれを分解するにも時間がかかるのです。

酵素が少ないかどうかのテストは簡単に行えるのですが、今のところ腸発酵症候群になる人の酵素があるかをテストする確かな方法はありません。

正確な診断がそもそも難しいため、症例や治験を行うのはさらに難しくなっています。新たな診断方法が見つかるまでは、腸発酵症候群は珍しく、不思議な症例であり続けるでしょう。

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