2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐藤ビンゴ氏(以下、佐藤):なんで最近こんなにコカイン(の記事)を出したかというと、Netflixさんってあるじゃないですか。あれで「ナルコス」という麻薬の億万長者のドラマがあって。Netflixがナルコスのオリジナルドラマを作ってて、宣伝する場所がないということで「VICEだったら」と(笑)。
ヨッピー氏(以下、ヨッピー):え? これ、記事広告みたいなこと?
佐藤:いわゆる、エディトリアル的なタイアップみたいな。
ヨッピー:タイアップなんだ! タイアップでコカイン職人に聞いてくるって、すごくないですか?
佐藤:正直、何がタイアップかわかんなくなってくる。
徳谷柿次郎氏(以下、柿次郎):そうなんですか。
ヨッピー:確かに、バナーあった!
佐藤:ミステリアスですね。
柿次郎:それは、コカイン業者からの仕事じゃないですよね?
(会場笑)
柿次郎:Netflixからの?
佐藤:Netflixです(笑)。
柿次郎:よかった。コカインのPRタグとか入れてたら、めちゃくちゃ炎上しますよね。
ヨッピー:「動画:コカイン」って(笑)。
佐藤:どちらかというと真面目に生きてるつもりなんで、バイオレンスを伝えたいわけではなく、ヒストリーとかそういうところを混ぜ込んでいって、1つのコカインシリーズに。
柿次郎:コカインシリーズ(笑)。ヘロインとかいろいろあるのかもしれないですけどね。
ヨッピー:すごいですよ、本当に。おもしろいですよね。
柿次郎:報道的な側面で普通のメディアは行けないところに行くからこそVICEで、本国のメディアはディズニーが出資を決めたとか。すごいですよね。
佐藤:それはもう動いてて、2月からそのチャンネルがアメリカのテレビで放送されます。ディズニーが持ってるA&Eグループというネットワークがあって、その中のH2というチャンネルがあまりにも人気がなくて。
いわゆるヒストリーチャンネルで、非常にオールドスタイルで視聴率が本気で低くなってしまって、VICEにこのチャンネルを全部あげようとなって。ジョイントベンチャーを作って運営をしてます。
ヨッピー:そこでコカインシリーズをやるんですか?
佐藤:去年、エンセン井上さんとかを番組で取り上げて。日本でいくつか撮影したんですけど、エンセンさんとか北九州とか、アンダーグラウンドなやつをこのテレビチャンネルでも放送すると思います。
柿次郎:もうワードがヤバすぎますし(笑)。エンセン井上って、みなさんわかりますか? 格闘家でめちゃくちゃ恐い。
佐藤:もともとはフリーマガジンというか。
柿次郎:そうですよね。ZINE的なところから。
佐藤:最初はニュースペーパーみたいな形態で始まって。それが94年くらいかな。
柿次郎:あっ、もう10……20年。
佐藤:20周年が一昨年でしたかね。
柿次郎:すごい。VICE全体は十何ヶ国でありますよね。VICE Japanであるとか。
佐藤:36かな?
柿次郎:36ヵ国! 全体のPVとかってあるんですか?
佐藤:PVというかUV、UU的なので言うと、1億1千いくらか。
ヨッピー:月間ですか?
佐藤:月間。でも、日本とグローバルとでは開きがあるんですけど。グローバルとしてはそんな総計になります。
柿次郎:すごいなあ。
佐藤:最初の頃はニュースペーパー、いわゆるフリーマガジンでやってて、俺が初めて見たときは豚に人の入れ墨を彫って写真を撮ってたりしてて。
柿次郎:ええ~(笑)。
佐藤:写真自体はめっちゃこだわってたと思う。写真にもこだわりがあるし、突っ込んだトピックをピックアップするフリーペーパーだった。いろんな場所、例えばコロンビアに行ってそういうヤバい写真を撮ってきて記事を書いて。
とはいえ、そういうのをやってたらいくらなんでもお金も入らないというか。だいたいYouTubeが出てきたころに、そういうところに行くのを「映像とか入れたらいい」とスパイク・ジョーンズが言ったらしいんですよ。それで、「ああそうか」と。それがけっこう当たったというかウケたというか。
そういうのをやりながら、ファウンダーのシェーン(Shane Smith)が「子供生まれたし、世の中のためになることをやっていこう」ということで、ただのヤバいだけじゃなくて何かしら世の役に立つことをやんないとダメだとなった。
柿次郎:日本のヤンキーが、子供きっかけですごくいいパパになるみたいな。
ヨッピー:湘南乃風みたいな。
柿次郎:それはわかんないですけど(笑)。
佐藤:アメリカでは、代理店への説明会とかもファウンダーがやったりするんですけど、刺青が入った腕で「ファック! ファック!」って言ってて。よくやれてますよね。
柿次郎:(笑)。入れ墨むき出しでファックファック言ってるんですね。なるほど。
ヨッピー:何の参考にもならないですけど(笑)。
柿次郎:僕はそういうカルチャー大好きなんですけど、例えばさっきのBAD HOPという川崎のヒップホップの若手の人たちも、素人がいきなり行けないわけじゃないですか。現地の顔役みたいな人を立てないと危なかったりするんじゃないですか?
佐藤:あれはどうだったっけな? ウチの映像プロデューサーの1人がアメリカで育ったハードなやつなんですけど、もともとヒップホップをやったりしてて。そこの仲間みたいなところだった気がします。
柿次郎:確かに見てたらそんな感じでしたね。なるほど。一般的な話に無理やり置き換えますけど、一次情報をつかむとか深い取材って、ある程度の能力とか人の繋がりはめちゃくちゃ大事だったりしますよね。
ヨッピー:確かにそうですね。
佐藤:そうですね。そういうので言うと、グローバルのやつは、いわゆるニュースメディアがちょろっと書いたようなやつじゃなくて、「俺らはウクライナとかでずっと取材するんだ。だから人より(すごい現場が)見られる」とか、そういうことは言ってましたね。ともかく、ヘッドラインだけでは終わらないようにしていると。
柿次郎:なるほど。これはヒントになるかもしれないですね。僕らも早くコカインの記事広告を取れるようにね。
ヨッピー:(笑)。
佐藤:1つだけ言うと、コカインとかアングラヒップホップとか、やっぱりダークでバイオレンスで。でもそれだけじゃなくて、音楽もあって食べ物もあってアートもコンテンポラリーもあったり。VICEはけっこう幅広いんですよ。
さっきの(コカインの)ページをパッと開くと「ちょっと恐いな」となると思うんですけど、幅の広さが今のVICEみたいなところはある。ただ、もともとは本当にヤバいところがスタートで、そこから変形バージョンみたいなのをやっていって。そんな感じですね。
柿次郎:なるほど。なかなか聞けない話ですね、これは。
ヨッピー:本当に参考にならない……(笑)。
柿次郎:じゃあ、参考になるようなテーマにいきましょうか。「ウケるコンテンツとは」。
ヨッピー:これなんですよ。
柿次郎:ヨッピーさん、言いたいことがあるんですね?
ヨッピー:僕はあるんですけど……(佐藤氏に)狙って作るんですよね? 「これは数字取れるぞ」みたいなのとか。
佐藤:狙いたい気持ちもあるんですけど、個人的にそういうのが好きじゃないという性格もあるので、「そういうことでもないよな」って。
ヨッピー:あんまり意識しないんですか?
佐藤:堅い言い方すると……さっきの「人の役に立つ」とか、そういう気持ちのほうがちょっと先行してる気がします。
公益性みたいなところを大事にしたいなという。そうなってくると「ウケるウケないってどうなんだろう」みたいな。
そう思ったときに、一瞬でドーンっていく(バズる)のが、一般的には「ウケる」ということの1つだと思われてるところがあるけど、いつ見ても「おっ、なるほどね」みたいな、より尾をひくようなコンテンツですね。こういうほうが良いのではと。去年やったのだと、オレオレ詐欺を追っかけているライターがいて……。
柿次郎:追っかけているライターがいるんですね(笑)。世の中には。
佐藤:ライターというか作家さんがいて。その方のインタビュー記事はたぶんいつ見ても「おお!」と。オレオレ詐欺やってるのって、超頭のいいやつだそうです。自分よりぜんぜんイケてるみたいな。もしかしたらそいつが経営したらVICE Japanがもっと発展してたりして(笑)。
とはいえ良くないことなので、40いくつの世代がちゃんと何かを伝えてあげなくちゃいけないなと。そんな記事は、いつ読んでもいろいろ解釈できる。そういうものが、僕的にはウケるコンテンツかなと思うんですよね。
柿次郎:いつ見てもクオリティが高いものが上がってるって、長期的にはブランドとしてすごく強いですしね。それがVICE全体が20年続いてる秘訣なのかもしれないですね。
佐藤:でも、世界のVICEを見渡すとゴミみたいなのもありますよ。
(会場笑)
柿次郎:ゴミみたいな(笑)。
佐藤:間違ってるとか調べないとか(笑)。英語の記事ではいっぱいあります。
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