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Sprites, Jets, and Glowing Balls: The Science of Lightning(全1記事)

雷は本当に“落ちて”いるのか? 稲妻が発生するメカニズム

電荷が蓄積して、そのエネルギーが眩しい閃光とともに一気に放出される現象が稲妻です。稲妻は実は雲の中にも、そして雲と雲の間にも存在するのです。それどころか、色を伴う稲妻もあれば、真っ赤に燃えるボールのような稲妻もあります。では、雷が落ちるプロセスはどのようなものなのでしょうか? 雲は、塵埃に包まれたごく小さな氷の結晶と水の分子が無数に集まったものです。嵐がおきて大気が動くと、これらの粒子は互いにぶつかり合います。そして、雲の中でプラスの電荷とマイナスの電荷が分離するところから始まります。

落雷のプロセス

マイケル・アランダ氏:嵐の日に空をかききる雷、時空を超えるデロリアン(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムマシン)を包む閃光……稲妻はなんと美しく、そして危険な現象でしょう。

多くの人は稲妻と聞くと、雲と地面の間をはしる白く眩しい光のことを思い浮かべると思います。

ところが稲妻は実は雲の中にも、そして雲と雲の間にも存在するのです。それどころか、色を伴う稲妻もあれば、真っ赤に燃えるボールのような稲妻もあります。いずれにせよ、電荷が蓄積して、そのエネルギーが眩しい閃光とともに一気に放出される現象が稲妻です。

雷がおちるプロセスは、雲の中でプラスの電荷とマイナスの電荷が分離するところから始まります。雲は、塵埃に包まれたごく小さな氷の結晶と水の分子が無数に集まったものです。嵐がおきて大気が動くと、これらの粒子は互いにぶつかり合います。

ある説によれば、落雷のプロセスはこうです。水の分子が上昇すると、その分子中のマイナス電子が下降してくる重い粒子に移行します。

その結果、雲の底のほうはマイナスの電荷を、雲の頂のほうはプラスの電荷を帯びるようになります。

みなさんもご存知のように、同じ電荷は互いに反発し合います。ですから地表のマイナス電荷は反発して退けられ、雲の真下の地面はプラスの電荷を帯びるようになります。

このようにプラスとマイナスの電荷が分離されることによって、(プラスの)地面と(マイナスの)雲の間には強い電場がつくりだされます。電場は、プラスの電荷がどれだけの力でどの方向に向かって働いているかによって示されますから、このケースでは、地上から雲に向かって上に働いていると説明できます。

このプラスとマイナスの電荷の差が十分な大きさになるまで蓄積されると、稲妻の最初の段階が引き起こされるのです。

稲妻にはプラスとマイナスがある

多くの場合私たちが目にしているのは“マイナスの稲妻”です。電場が十分な強さに成長すると、“ステップトリーダー(先駆放電)”と呼ばれる目に見えないマイナス電荷の道筋が、マイクロ秒速50メートル(100万分の1秒に50メートル進む速度)の速さで雲から地面に向かって伸びていきます。同時に地上からは、“ストリーマ(先行放電)”と呼ばれるプラスの電荷の道筋が上向きに伸びていきます。

この2つの道筋が出会う瞬間、上に向かう巨大な閃光が放たれるのです。

それに加えて摂氏25,000度を超える熱も発生します。これは太陽の表面温度の5倍の熱さです。

このように、マイナスの電子の道筋が空から地面へと伸びるので、この稲妻は“マイナスの稲妻”と呼ばれます。

ごくたまにではありますが、“プラスの稲妻”も発生します。空から地面へとプラスの電子が移動する現象です。この稲妻は、プラスの電子が蓄積している雲の頂上付近で起こるので、地面に到達するまで空気中を長距離移動しなくてはいけません。

ですからプラスの稲妻は、分離されたプラス電荷とマイナス電荷がより多く蓄積されなければ発生しません。結果的に、プラスの稲妻が落ちた時の衝撃は、マイナスの稲妻のそれと比較して、最大で10倍程度にもなります。これは大気中の分子が分解されてイオンになってしまうほどの威力です。

そしてこのイオンが水素や酸素などの他の分子と衝突すると、赤い光が発生します。これが“レッドスプライト”です。

この珍しい現象はわずか1,000分の1秒の間に起き、あたかも空に現れたくらげのような様相をしています。

ほかにもある、不思議な雷

なんてクールな現象なんだ! と思った方、他にもありますよ。”ブルージェット”はいかがでしょう?

この現象は、たくさんのプラスの電荷が上向きに流れ出し、雲の中の電荷が電気的に中性になった時に起こります。

ブルージェットは高いもので上空40キロメートルにまで及びますが、瞬く間に消えてしまいます。青い色の正体はイオン化された窒素である、というのが科学者たちの見解です。

もっと奇抜なものは“球電”です。グレープフルーツほどの大きさのガスの塊が20秒ほど輝く現象です。この成り立ちはまだ解明されていません。

ある説によれば、窓などのガラスの近くに雷が落ちることによって引き起こされると考えられています。ガラスの片面にイオンが蓄積されることによって電場がつくられ、これがもう片面の空気分子を刺激して光子が放出されるのではないかという仮説です。

土の成分がこの現象を引き起こすと主張する説もあります。

2012年、世界で初めて球電のビデオ撮影に成功した中国の科学者たちが、モニターを使って放出される光を精査したところ、それがケイ素、、鉄、カルシウムを含んでいることがわかったのです。

これらはすべて土の中に含まれる成分です。地上へ打ち付けられた稲妻が土のケイ酸化合物を蒸発させ、それが周辺の空気と反応して光の塊がつくりだされるのではないかという理論です。

次に雷を目撃した時には……念のために言っておきますが、くれぐれもそこが安全な場所かどうか確認してくださいね……。

その光の影に複雑な物理学がはたらいていることを思い出してください。美しくも危険な物理学です。

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