2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Why this Black Square is Art! Kazimir Malevich's Suprematism(全1記事)
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カリン・ユエン氏:美術館でこんな声を耳にしたことはありませんか? 「なんだこれ?」「これのどこが芸術なの!」「うちの子でもつくれるわ!」。
とくにそのような批評の対象となりやすいのが抽象芸術です。人物も物体も景色もとらえていない作品を目の前にして、「これは一体なんなの?」と。
そこで今日は、このようなジョークの最たるものともいえるカジミール・マレーヴィチの『黒の正方形』という作品についてお話ししたいと思います。
この作品は、マレーヴィチが『太陽の征服』という立体未来主義のオペラ作品のための衣装とセットのデザインを友人から委託されたことに端を発します。
立体未来主義のオペラとは、反体制的な前衛芸術作品で、簡単にいえば観客が理解できないような内容です。作品は無意味な言葉や脈絡のない筋書き、耳障りな合奏で成り立っています。
1920年代後半、旧ソ連の構成国の1つロシアにいたマレーヴィチは、芸術の未来は非対象芸術(注:表現する対象のない芸術のこと)にあると信じていました。しかし従来の描写的芸術へ回帰するように無理強いされたため、芸術仲間たちとともに、対象そのものを完全になくしてしまおうと考えたのです。
結果的にこの劇は観客の反感を買っただけでした。しかし劇中に登場した色使いの派手な未来主義的なセットのうち、最後に登場した背景幕が後に重要な意味をもつようになります。それこそが、白い背景にたったひとつの黒い正方形が描かれた作品だったのです。
それがいまだかつてない芸術的表現であることにマレーヴィチが気付いたのは、2度目の舞台公演が行われていた2年後のことでした。彼はこれを「絶対主義」と呼びました。
それはありとあらゆる視覚的刺激を徹底的に排除した完全なる抽象画です。鑑賞する人は、このような対象のない世界と向き合うことで、絶対的に純粋な感覚を経験することができるとマレーヴィチは考えたのです。
絶対主義の絵画は、対象から完全に解放されています。実際にはそこに存在しない対象を描写によって表現しようとするのではなく、絶対主義の絵画はそこに表現されているものがすべてです。キャンバスの上に黒い正方形がある……それ以上でもそれ以下でもないのです。
多くの人々にとって彼の作品は理解しがたいものでしょう。ほかの多くの芸術にもいえることですが、「芸術とはなにか」という私たちの既成概念がそうも難しくさせているのです。芸術作品を鑑賞する側にたつ私たちは、自然科学や記号を理解できるように訓練されてしまっています。例えば、ここに見えるのは家。
こちらに見えるのは人。
といった具合に。
描かれたものが実際の家や人ではないにもかかわらず、私たちはそれらを「家を意味するもの」「人を意味するもの」として認識します。マレーヴィチは、『黒の正方形』を描いたとき、こういった「意味をなすもの」を一切とり除きました。
それでも人間であれば、この絵を見た瞬間に、それが意味するものを理解しようと努めてしまいます。多くの人がこの絵を見てイライラする原因はここにあるのです。
「この絵は一体なに?」「絵です」「そりゃそうだけど、でもなんの絵?」……そこに存在しない対象物を見つけ出そうとするから、この問いから離れられないのです。
抽象画によっては認識可能なものもあります。心地よくバランスのとれた美しい形や色が存在するもの。
ポロックの作品のように、ドリッピングから動きやエネルギーを感じ取ることができるもの。
しかしマレーヴィチの作品にはこういったものは見られません。それは私たち人間の注意をひくような色も形も存在しない無地の世界です。しかし厳密にいえば、ここにこそ彼の真意があるのです。壁にかけられた美しい絵画だけが芸術ではないのだ、と。
マレーヴィチは1915年12月、ペトログラード、現在のサンクトペテルブルグで行われた「最後の未来派絵画展0.10」において、絶対主義を立ち上げました。この「0.10」という絵画展のタイトルは、この展覧会への出展を予定していた10名-実際には14名が出展しましたが-がゼロ地点を探求していたことに由来します。
絵画や彫刻は、なにをもって絵画、彫刻としてみなされるのか、その必要条件を極限まで削ぎ落してゼロに近づこうと試みたのです。この絵画展のスタートを飾った『黒の正方形』は、特別な場所に展示されました。天井と壁の境目に接するほど高く掲げられたのです。
ロシア正教を信奉する家庭において、この場所は宗教的なイコンをまつるための神聖な場所です。
通常イエス・キリストのイコンが来るべき場所に、大胆にもこの絵を展示したということは、西欧の伝統からの独立を促すものとして捉えることもできます。このように、彼の作品はただの黒い正方形ではないのです。当時の文化的、社会的、歴史的状況に呼応するものであり、その価値はキャンバスに描かれた絵そのものにとどまらず、歴史的な重要性も秘めています。
というわけで、残念ですがあなたのお子さんにこの絵を描くことは不可能です。お子さんにこの絵を真似して描かせたとしても、同等の価値がつけられることもないでしょう。そんな意地悪なことをお子さんにさせないでくださいね(笑)。
この『黒の正方形』という作品について、あなたの感想をお寄せください。このビデオを作成したのは、なにもこの作品がもっとも優れた芸術作品だとか、完璧だ、などと主張するためではありません。
批評家や他の芸術家、それどころかマレーヴィチ本人さえもこの作品に多くの問題点があることを指摘しています。ですから、あなた自身がこの作品についてどう思うのか、ぜひそれを聞かせてください。
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