2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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矢田部:今度、チェコの映画祭(カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭)の審査員をやるんですよ。海外のそこら辺の大きな映画祭の審査員をやったことがなかったので、ちょっとその内部も見てきます。
中井:ぜひ教えてください。僕らまったくわからないので。今回のフランス映画祭。今年の団長は?
矢田部:今年の団長はイザベル・ユペール。これはホントにタイムリーだと思います。というのも彼女は、いま、第2なのか第3なのかわかりませんが、全盛期ですね。
松崎:ヴァーホーヴェン監督の作品で主演しましたね。カンヌに出てた。
矢田部:そうそう、ヴァーホーヴェン監督の『Elle』という作品なんですけれども、イザベル・ユペールが主演で、女優魂炸裂というか、いやあこんなすごいことをやっちゃうんだというくらい素晴らしかったんですよ。彼女に主演女優賞をあげたいと思ったんですけどこれまた逃した。それで、彼女いま、主演作品がめちゃくちゃ多くて。そのどれもが高い水準です。
今回春のベルリン映画祭に出た、監督名はいまちょっと出てこないんですが、女性の監督の作品に出たんですよ。(注:ミア・ハンセン=ラヴ監督『Things to Come』)どちらもすごく素晴らしい演技で、いずれもまさにいかにもイザベル・ユペールなんですけども、それぞれ違う味を出していて、まさに今、絶好調。
中井:なるほどねえ。
矢田部:まさにいま、旬の大女優ということでございます。
中井:毎回思うんですけど、フランス映画祭って毎回、団長に大物を連れて来ていますよね。毎回すごいんですよ。なんなんだっていう。普通、TIFFでもそうじゃないですか。審査員長って大物連れて来るのに苦労してるんじゃないですか。
矢田部:その通りです。
中井:でも、フランス映画祭って完全にブレないで大物がバンバン来ているので。
矢田部:これはですね。映画祭の審査員長って、東京なら、東京の私たちがいちいち顔を出して、来ていただけますか、いいよ、だめだ忙しいからという手順なんです。
だけど、フランス映画祭の場合は、フランス国が自国の映画文化の威信を掛けて実施しているイベントなんですよ。なのでフランス映画祭っていうのはフランス国の映画を日本をはじめ、アジアに根付かせようとするイベントだから、フランスの映画界の偉い人が「イザベルさん、フランスを代表とする団長として日本に行ってくれますか」と言うんですよ。そうなるとやっぱり大物が来ることになるんですよ。
中井:なるほど、フランスが前のめりになっているんですね。食い気味に来ているわけですね。
スタッフ:だからあれなんじゃない、圭ちゃんね。団長に選ばれるって名誉なことなんじゃない。国からお墨付きが付いたみたいな。
矢田部:もうホントに、あなたは映画業界を代表しています、みたいなお墨付きは付いていますね。
中井:なるほど。健夫さん、今の話を聞いていてどうですか。
松崎:フランス大使館の人たちも関わっているということなのでね。日本の場合も、映画とか先行してやる場合があるじゃないですか。そういう時も政府が声を掛けてやれば、ちょっとは違うのかなと思いますね。
矢田部:本当にフランスという国は自国の映画というものを自国の文化を海外にアピールするためのツールだとして、国策としてやっていますものね。そういうことができるのってフランスと、規模を少し小さくしたのが韓国とか。日本はなかなかそこまではできていませんね。
松崎:逆に、日本の映画がフランスの助成金を使って撮るくらいになっているので。日本はアニメがどうのこうのとかあるけれど、もうちょっとやり方があるんじゃないかなと思いますね。
スタッフ:圭ちゃん、圭ちゃん、シンクルさんのね、フランス映画好きすぎるの画面に、さっきの監督の名前はこの方じゃないでしょうかって入ってる。
矢田部:ミア・ハンセン=ラヴ、この監督だ、スッキリした。ありがとうございます。みなさん。
中井:我々中年なんで、こうして助けてもらえると助かる。それで、今回は、それぞれがフランス映画祭で上映されるなかから1本についてコメントするということで。事前にもうお願いしておりまして。さっそくね。行きたいなと思っているわけなんですけど。まずマリカちゃんから行きますか。
福永:私がおすすめするのは『ミモザの島に消えた母』です。
家族の話なんですけど、主人公に母親がいないんですよね。なんでいないのかということを調べていくと、周囲がシャットアウトしてくるぞ、みたいな。そこから始まる話ですよねってなんかうまく説明できない。
中井:いやいやいや、矢田部さん、補足をお願いします。
矢田部:成人になった男性がいて、小さいころに消えてしまった母親のことが気になっていて、存命のお父さんにその話をすると話をそらされたりとか、妹からもお兄さんいい加減にしなさいとか言われて。こだわって調べているうちに、やっぱりなにかあったんじゃないかなと。そういうことがだんだんわかってくる。
中井:これは原作者が『サラの鍵』と同じ。『サラの鍵』が好きな方はおススメです。
松崎:これはですね。内容的にはあまり言えないです。ストーリー的には、お母さんになにがあったのかを探る話なんですけど、重要なのは、今の時代であれば、お母さんがいなくなった理由をそこまで突き詰める必要があるのかなって。
この映画における“今”が現代だからいろんなことを考えられる作品です。例えばこの映画を“昔”の設定のままでも成立できたと思うんですよ。でも、30年前の話を30年前の話として描くのと、今を舞台にしてそれを振り返るのとはぜんぜん違うんです。その意味をみて考えると、この映画って時代が時代であればということも考えさせられるなと。ミステリーだけじゃなくて。
重要なのはなぜそうなったかということよりも、その時代がなぜそうだったのか、ということを考える映画になっている。
中井:マリカちゃん、なんでこの映画が好きなの?
福永:物語が本当によくできていて。とても綺麗にできているんですけど、そのなかで人間の感情の機微がすごく繊細に描かれている。ソフトとハードが両方整えられている感じがしました。構成だけじゃない、両方からのパンチがすごくてですね。画も綺麗で。
松崎:島でなければいけない理由も、ねえ。
福永:うーん。
中井:もうやめろ健夫(笑)。
矢田部:お兄さん役の人が良かったですよね。
福永:妹さんの人もホントに綺麗で。
スタッフ:圭ちゃん、見ちゃう? それじゃあ見たあとにまた感想を言いましょう。
福永:それでは『ミモザの島に消えた母』の予告編です。
(予告編が流れる)
中井:フランス映画祭の6月24日、金曜日の21時から上映されます。日劇でやるんですね。
スタッフ:ニコ生でもフランス映画っぽいという声がある。メラニー・ロランが持つねえ(画が)。いやあ綺麗だね。
矢田部:ホントに美しいですね。
田中:メラニー・ロランが好きな人、この業界でも結構多いと思う。
福永:なんかさりげないですよね。綺麗さが。それがたまらなくいいですね。
松崎:メガネがいいですね。
福永:ホントにいい。
中井:3人の専門家が集まっていますけど、メガネがとか。それ以外なんも言ってないがな、みたいな。
松崎:内容が内容だけにあまり言えないんですけど、「サラの鍵」の場合は「鍵」ってなんだろうということがわかったときにゾッとするくらいの話だったんですけど、この映画もそういうところがあります。期待して見ていただきたい。
スタッフ:圭ちゃんね、シンクルさんからも意見が来ているので見てもらえる?
(シンクルの画面)「メラニーが綺麗すぎる」「メラニー・ロランといえばイングロリアス・バスターズ」「予告編みると切なすぎる&気になりすぎる。」
スタッフ:『イングロリアス・バスターズ』だよね一般的には。タランティーノが見つけ出したと言っても過言ではない。
中井:僕ね、シンクルを使って思ったんですけど、ニックネームを付けるんですけど、4文字という制限がすごくてですね。
福永:へえー。
中井:なんてつけようかと思ったんですけど、僕が付けたのは「ガンカタ」(注:『リベリオン』のアクションの愛称)になりました。
(一同笑)
中井:ガンカタしか浮かばなかったんですよ。はい、ということで6月24日、金曜日の21時から日劇で見られます。続きまして、我らが健夫氏。
スタッフ:予告編を見てからにしましょう。予告編を見てから、おすすめという。
松崎:僕がおすすめするのは『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』という映画です。それではどうぞ。
(予告編が流れる)
中井:これもいい映画でしたねえ。
松崎:これは主演のアンヌ・アスカリッドが出てるとはいえ、スターの映画というよりは、全員無名の役者さんたちがやってるっていうことなんですけど。
重要なのは予告編はご覧になってわかる通りストーリーなんです。どういうことかっていうと、今、フランスおよびヨーロッパで移民問題、亡命問題がありますよね。それで、この教室の子供たちも白人の金髪のフランス人じゃなくて、アジア系もいればアフリカ系もいたりとかいろんな人種がいるという環境のなか、その子供たちが問題児なんです。だけど、アウシュビッツの歴史に対して向かい合っているうちにだんだんと変わってくるんです。
かつての歴史を見てみると、ユダヤ人が迫害されていたっていうこと自体が、自分たちの置かれている状況と同じであることがだんだんとわかってきて、自分たちの実生活と比較することで彼らが変わっていくという点が重要なんです。去年が戦後70年ということもあってドイツでナチスの映画っていっぱい作られたんですね。今も公開されてるじゃないですか。
中井:そうですね、「帰ってきたヒトラー」とかですね。
松崎:そうですね、それに対して「最近、ドイツの映画ってナチスばっかりで食傷気味だよね」って話はよく聞くんですよ。確かにそうかもしれない。でも、誰かがそれを食傷気味だよねと言い出すと、食傷気味という言葉ばっかりが取り上げられるのが、僕はすごく気になるんですね。
そうすると悪い方にばかりいって、もう見なくてもいいんじゃないかなとなるんだけれども、これも含めてそれぞれの視点で描かれたナチスであったり、アウシュビッツであったり、それぞれ語り口が違うじゃないですか。
それは自分が知らなかった側面をいろいろと知るようになるわけなので、ある種、1つの情報に関して多角的に考えることができるなと。なにも知らなかった生徒がいろんな情報、例えば予告編に出ていたアウシュビッツにいた人の証言を直に聞くことによって感じることで変わっていく。実際に調べることによって、いろんな知らなかったことを知るとか。写真1枚を見て想像してみるとか。そういうことによって変わっていくということなんです。
やっぱり知ることが重要で、無関心であることは非常に危ういなと、この映画はすごく考えさせられるなと思いました。日本人からみると、かけ離れた話と思われるかもしれないけども、自身の身近な問題に置き換えていただくと、この映画が描いていることはすごく重要だと思います。あと教育の問題は日本にもありますよね。
今回、フランス映画祭で『太陽のめざめ』という映画も上映されるのですが、両方観てみると、教育においてだめな人、出来の悪い人、素行が悪い人って必ずいると思うんですけど、そういう人に対してあきらめない。ちゃんと更生するまであきらめないという姿勢が出てるところがいいなって思いました。
それも、綺麗事では終わらせないですね。ちゃんと問題点も描いているし、わかったかなと思ったら子供だから違う方向に行ってしまったりもするんだけど、やっぱり大人が子供を引っ張って元に戻すっていうね。
そういう大人が子供に対してダメなことはきちんとダメだって言う社会じゃないといけないんじゃないかっていうことを『奇跡の教室』でも『太陽のめざめ』でも描いていると思います。だからとくにおすすめです。
中井:本当、今の日本って、けっこう同時多発的に、健夫さんがさっきおっしゃった通りで、ナチスに関する映画をやってるじゃないですか。例えば、『サウルの息子』とかもそうだし、『帰ってきたヒトラー』もそうだし、この作品もそうですけども。
健夫さん、さっき言ったことは本当にその通りで、ある物事に対して、いくつかの視点から見つめることによって初めてその外観が見えてくるというのがあると思うんですね。そういう意味で言うと、ちょうど今観ておくのが大事なことなんじゃないかなという。
松崎:知る機会をもらっていると思ったほうが建設的じゃないかなと思うんです。
中井:そうなんです。すごく思いましたね。マリカちゃんは?
福永:私、これまだ見れてないんですけど。あの、先日ぜんぜん違うんですけど、舞台でナチスのこととかを描いているものを観て。私も本当に知識ないんですけど、なんかそれがすごい、自分が抱いたことがある思考回路が見える舞台で。
その、なんて言うんですかね。この『奇跡の教室』ももしかしたらそうかもしれないんですけど。自分と重なると理解できたりとかするじゃないですか。だから、いろんな語り口のものがあって、その自分と重なるものが見つけられて、そこから入れていろいろ見ていけると、なにか広がるんだろうなと思って。見てみたいですね、すごい。
矢田部:生徒たちが勉強してわかっていく過程が完全に自分も同じように、「あ、これってこういうことなんだ」というふうに一緒に入っていく感じはあります。
あと、ちょっと僕もう一言付け加えたいんですけど。これはやっぱり、監督が注目でですね。マリー・カスティーユ・マンシオン・シャールさんという、ちょっと長い、覚えづらい名前なんですけども。
実は、次の新作がもうできていまして。先日観たんですけど、これまたすばらしいんですよ。これは、そういう生徒とナチスを勉強していくという、ある意味、健夫さんが解説されたようなアクチュアリティを持っているんですけど。
新作は更にアクチュアルで、IS、イスラム国に合流する子供たちがいかにして洗脳されてISにいくかというのを描いたドラマなんですよ。で、これもめちゃめちゃテーマも重要ですけど、映画としても上手い構成になっているという。
今こういったアクチュアルな問題をドラマとして描くのに、すごく上手い監督だということが1つと。教室の中にたくさん若い、女優、男優が出ているんですけど。彼らはたぶんこれから伸びていく人たちがたくさんいて。新作にこの教室の中から2人ピックアップして、主演級でまた使っているんです。というね、そういうステップも今後注目してもらえるといいかな。
中井:『バトル・ロワイアル』方式みたいな(笑)。
矢田部:そういうこと。
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