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本田圭佑氏トークセッション(全2記事)

「不安な時、自分に言い聞かせる言葉がある」本田圭佑流、プレッシャーの味わい方

世界を舞台に独創的な挑戦を続ける人をたたえ、今後の活動を支援する目的で創設された「デジタルガレージ ファーストペンギンアワード」。7月5日、第一回受賞式が行われ、栄えある初代受賞者となったACミラン所属・サッカー日本代表の本田圭佑選手が参加しました。授賞式のあと、デジタルガレージ代表の林氏、共同創業者の伊藤氏と共にトークセッションを行い、リスクを取ることを恐れない本田流の生き方について話しました。

人がまだ到達していないところに飛び込むのは楽しい

司会者:今回、本田圭佑選手が、第1回『デジタルガレージ ファーストペンギンアワード』受賞となりました。

先ほども説明がありましたけれど、この賞は海のなかにいる獲物を得るために、自らを危険にさらすことを覚悟して、氷床から真っ先に海に飛び込むペンギンになぞらえまして、科学技術・芸術・スポーツといった分野で、世界を舞台に独創的な挑戦を続ける方をたたえるものとなっているんですが、最初に受賞をお聞きになったとき、「すごくびっくりした」とおっしゃっていましたけれど。

本田圭佑氏(以下、本田):ええ。僕は、今もしょっちゅうJoiさん(伊藤氏)に話させていただいてるんですけれど、すごくアナログな人間なんですよ。それで、いわゆるデジタルガレージという会社に、こういうかたちで評価していただけるのは本当にうれしいことですし、もっと勉強しようと率直に思いますよね。

司会者:ペンギンになぞらえているんですけれど、1番最初に飛び込むというのは、リスクのあることですよね。本田選手の語録のなかにも、「リスクのない人生なんて……」(注:「リスクのない人生なんて、逆にリスクだ。僕の人生なんてリスクそのものなんで」)という言葉がありますけれども、まさにそれを体現してる方だなと、私は感じたんですが。

本田:楽しいですよね。人がやらない、まだ人が到達していないところに最初に、もちろんリスクはあるのかもしれないですけど、飛び込んでみるというのは。なんとか今も生きれてるので、それが大事なのかなと思います。

プレッシャーは「もっと味わってやろう」

司会者:では、選考していただいたお二人にうかがわせていただくんですが、まずは、林さん。本田選手を選ばれた理由をお聞きしたいです。

林郁氏(以下、林):伊藤と、さっき言ってましたけど、栄えある1回目ということで。多少我々としても接点があって、一般的に見ても「ああ、やっぱり彼だな」「彼女だな」という人がいいよねと、2人でブレストしたんですよね。そしたら、まず本田さんの名前が出て。それで満場一致というか、2人しかいないんだけども(笑)、そういう感じで。

本田:ありがとうございます。

:それで、先ほどリスクテイクの話が出たんですけど、リスクテイクとはただ危険を取りにいくんじゃなくて。ペンギンはやはり、エッジのところでタイミングを見てるんですよね。ですから、かなりちゃんと意思を持ってリスクテイクをして。それで、僕らもやってきたつもりなので。ただ単純に危険なところだけに行っていると、必ず地雷を踏んでしまう(笑)。

本田:うれしいです。

伊藤穰一氏(以下、伊藤):べつに、後ろから押されてるわけじゃない(笑)。

(会場笑)

伊藤:でも、本田さんほどプレッシャーに強い人を知らない。

本田:僕、同様のことをJoiさんに思ってますけどね(笑)。

プレッシャーだったり、いわゆる自分が不安になるときに言い聞かせてる言葉があって。「このプレッシャーは今、日本でおそらく自分だけが感じられてる」と、ポジティブに言い聞かせているだけなんですよね。でも、実際はもちろん強くなくて。ただ、「あ、すごい。僕、しっかりこのプレッシャーを感じられてない?」と思うと、前向きになってきたな、と。「もっと味わってやろう」と昇華してます。

人材育成でサッカーに恩返しを

司会者:メンタルの持っていき方という部分も、のちほどくわしく聞かせていただこうと思うんですが。では、本田選手、現役のプロサッカー選手として活躍をされていらっしゃる一方で、クラブ経営であったり、サッカーを通じた人材育成などにも積極的に携わっていらっしゃいますが、その理由・モチベーションはなんなんでしょうか?

本田:サッカービジネスに関しては、僕は恩返しだと思ってます。ただ一方で、毎年JoiさんのいるMITのラボにも顔出させていただいてるんですけど、それ以外のところにも本当に興味があります。サッカー選手という枠を超えてもどんどん活躍していきたいと、活動・行動してます。サッカーに関して言えば、自分がサッカーに育ててもらったので、しっかり継続して恩返ししていければなと思ってます。

司会者:サッカーに恩返しという言葉がありましたけれど、やはりご自身のサッカー選手としての経験が、ビジネスの部分においてもかなり、すべてにおいて役立っているということですよね。

本田:置き換えるようにしてます。それが活きているかどうかはわからないですけど、ポジティブに置き換えて、自信を持って、ビジネスの上でも突き進むようにはしてます。

「Shot on goal」

司会者:伊藤さんは、ふだん本田選手にいろんな相談を受けられているとうかがってるんですけれど。伊藤さんから見て、ビジネスパーソンとしての本田選手、どのようにご覧になっていますでしょうか?

伊藤:まず、すごい好奇心。メディアラボに来ると、もうとにかく全部見て。しかも、技術の細かいところまで入りたがって。世界で誰が1番だとか。とにかくそのへんはすごいのね。実はベンチャーとベンチャー投資やってる時に、サッカーの言葉でよく使うのが「Shot on goal」という、ゴールのショットをとる。ベンチャーはだいたい失敗するんです、確率論的に。ただ、ゴールに対してショットがあるかどうかが、1番大きなポイントで。

ゴールがここから……、絶対入らないところからはショットとらない。でも、ショットがあったら必ずとると。それを繰り返していくと、だんだん上手になっていくというのがあって。結局、そのショットをとらない人がほとんどなの。これがファーストペンギンにつながってくるんだけれど。そして、だんだんやってるうちに入る確率も上がっていく。

だから、よくベンチャーの経営者と話してる時に「とにかくショットとれ」と。「今、あなた、『shot on goal』があと1発しか打てないと思う。この時間だと、この残ったお金で」「One shot On goal.」と、よく言うの。その感覚が今、本田さんとビジネスの話してても、うまい具合にリスクを見て「今だ!」というタイミングでバンと手を打つ。これ、実はすごくベンチャーとサッカーが、重なるような感じがしてたんだけど、喋っていて。

本田:そう言っていただけるとアレなんですけど、そんな賢くなくて。とにかくショットなんですよね(笑)。林さんがおっしゃるようなペンギンみたいに、ヘッジかけれてるのかわからないんですけど。

僕の場合、まさしく人よりも自慢できることといえば、いわゆるミス。ミスの多さが、自分をここまで育ててくれたと思ってるので。おそらく今後も、何度も失敗するんですけど。でも、ショットしないことには、まさしくゴールできないというところだとは、僕も信じてるので。

とくに日本にいると、海外に出て、なぜみんな……「ショット」という言い方をしてますけど、僕は日本のサッカーの若者に「移籍しろ」と言ってるんですけど、移籍しないんですよね、いつまでも。日本のほうが居心地がいいので。これも1つ、ショットに置き換えられるんじゃないかなと。ショットしないんですよ。

失敗しながら進む、本田スタイル

司会者:環境を変えることを求められるわけですね。

本田:新しいことに挑戦するということに対しての抵抗感が、ものすごくやはり日本人は強いので。とにかくやってみようと、僕は賢くないので、そういうふうにとにかくやって失敗しちゃうんですけど、案の定。でも、それで、どうやったら失敗するかというのを次、学ぶので。それでちょっとずつですけど、前進してやっていくということが1つ、僕のスタイルですね。

司会者:失敗がさらなる成功を生むプロセスになっているんだなというのを感じます。このお話に出ております、この「DG Lab」なんですが、2020年に向けて設立されました。ということで、サッカー選手として2020年にはどのようなビジネスを、もしくは今のビジネスをどのように成長させていきたいと、本田選手はお考えになっているんでしょうか?

本田:たぶん、本当はこの質問は僕が答えるよりお二方に答えてもらったほうが、ものすごいおもしろい話になると思うんですけど。ただ、今自分がここまでつちかってきたサッカーで、今、教育というところ、とくに今後は発展途上国などを中心にやっていくんですけれど。いわゆる教育というところに問題意識を持って。そこでいわゆるマネタイズができるようなビジネススキームが作れればなというのが、まず1つですね。

ただ、デジタルガレージさんがやられているような、いわゆるスタートアップ支援というようなところは、僕はまだまだ無知なゾーンですから。すごく勉強を今後していって、Joiさん、林さんとともにいわゆる、なにか僕もスタートアップ支援に関われるような関係を長期的に築いていけたらなというのが、僕の考える4年後のビジョンではあります。

アメリカの自立精神から日本人が学ぶべきこと

司会者:なんだか4年後というのはすごく先だと思っていたけれど、もうすぐそこにある4年後かと思うんですが。今のお話をお二人は聞かれて、どのようにお感じになられましたか?

:ついこの間、痛ましいテロがあったので(注:2016年7月1日にバングラデシュで起きたレストラン襲撃テロ。日本人7名が亡くなった)、さっきの話じゃないですけど、日本の人たちが、やはり小さく固まって海外に出にくくなっちゃうところがある。心がすぐ折れちゃうというのが心配なので、本田さんのような先輩がどんどん引っ張ってあげて、ミスショットをいっぱいして、教えてあげてください(笑)。

司会者:伊藤さんもどうですか?

伊藤:今、学校とかやっていて、どうしても本田さんとか、僕もそうなんだけど、「あいつは宇宙人だ」とか「あれは変わってるからできるんだ」とか。それから、「才能があるから」とか(言われる)。でも、違うんだよね。結局、やって失敗して練習して。それで、みんなをどうやって引っ張っていくのかというのが、けっこう大きな課題で。

今、本田さんがやっている学校は、やはりたくさんの人をそうやって連れていくというのもそうだし。僕も今、大学なので、ちょうど4年でいうと今の1年生が卒業するという。今年、今1年生といろいろ会って話してるんだけれど。やっぱり彼らがどうやって……。たぶん、このファーストペンギン賞みたいなものもすごく重要だし、メディアも重要なんだけれども。

また、一人ひとりの若い人たちと……。アントレプレナー、起業家でもそうだし、スポーツもそうだし、学生もそうなんだけど。彼らをやっぱり引っ張っていかないといけないので。そういう活動をこれから4年間なにをしていくか。

本田:とくに日本はそうなんですよね。必要ですよね。そういういわゆる……、アメリカに僕が行って、毎回すごく驚かされるのが、とにかく自分のやろうと思ったことをやってる人間の多さ。そして、それをやる時の周りを気にしなささ。もちろん、全部を肯定するわけではないんですけど。でも、そのチャレンジャー精神、いわゆる自立精神というんですかね。

昨日かな? インデペンデンス・デイがちょうど先日ありましたけど、それを本当にアメリカは大事にしてるという。自立精神は、やはり日本人は僕含めてですけど、学ばないといけないな、と。Joiさんは半分アメリカ人みたいなところあるので(笑)。僕はいろいろ学ばさせてもらってます。

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