「セックスとは孤独の克服である」偏差値78のAV男優が語る“性”の哲学

本を書き始めたきっかけ

森林原人氏（以下、森林）：ありがとうございます。高いところから失礼します。

（会場笑）

森林：今日は足元の悪いなか、はるばる来てくれてありがとうございます。緊張していますけれども、みなさんの顔ぶれを見ると和みます。初めて僕と会った方も少しはいると思うので、それを前提で話を始めたいと思います。今日は1時間くらいですけれども、よろしくお願いします。

（会場拍手）

森林：じゃあ、座らせてもらいますね。まず、この本を出すいきさつから話させていただきたいと思います。

偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論 (講談社文庫)

花房観音（はなぶさかんのん）さんという小説家の方がいらっしゃって、その方は元々、AVライターをやっていてたんです。AVを見て、どこのシーンがおもしろいとか批評を書いたりする仕事ですから、AV業界の方とわりと親しいんですね。

まず、市原さん（市原克也氏）。市原さんはアテナ映像の作品によく出ていて、隊長とか呼ばれている、スキンヘッドの方です。その市原さんと花房さんが仲良くなって、そこから銀次さん（佐川銀次氏）とつながって、代々木さんともつながり、僕も呼んでもらってるアテナの忘年会にいらっしゃるようになったと。

そこで初めて会ったんですね。花房さんは僕の映像をけっこう見ていたんで、はじめましてだけどはじめましてじゃないですみたいな、そういう感じで話をしていくなかで、僕がビデオ・ザ・ワールドという雑誌で、男優の黒田くん（黒田悠斗氏）と一緒に書いていたコラムというか男優日記を読んでいましたみたいなことを花房さんが言ってくれて。

花房さんが、「書く仕事とかは好んではしないんですか」と聞いてきて、僕は「書きたいんですけど、ビデオ・ザ・ワールドは廃刊になってしまいまして、今は書く場所がないんです」と言っていたら、『女子SPA！』という、SPA！の女子向け版のところに話を持っていってくれて、そして「性活相談」というコーナーを始めさせていただくことになりました。

そこでは真面目にいやらしい相談に答えているんですけど、週に1回くらい、もう60回くらいになって、1年続けさせていただいていて。そういうのを書かせていただいていくなかで、今度は講談社のほうで花房さんが『指人形』という小説を出すので、その解説を書いてほしいと頼まれました。

僕は今まで、現場であったこと、こんなおもしろい女優がいました、とか。しみけんがうんこ食いましたとか。そういう話は書いてきたんですけど、本を読んでそれについてを解説をする、というのはしたことがないから、自信がないです、という話をしました。すると、「感想文みたいな感じでもいいから」とハードルを下げてくれて、それで書いてみようということになりました。

書かせていただいたら、思いのほかよかったと言っていただき、担当の方から、「1人で1冊書いてみませんか」と声をかけてもらったので、「ぜひとも、書きます」と即答して書くことになったんです。

AV業界で一番いいセックスをする男優

どんな話を書こうかなと思ったとき、AV業界の方の出した本って、大抵女優さんなんですけど、自伝が多い。こういう幼少期を過ごして、こういう恋をして、こういうことがあってAV女優になったみたいな感じで、どっちかっていうとハードな人生を送ってきたみたいな。悲惨なほどおもしろいですよね。そして最後は「人生楽しんでます」とか。そんな感じの内容が王道なんです。

でも僕はそんなハードな経験がない。少年院に入ったこともないし、親が離婚して親戚をたらい回しにされたとか、そういうのもない。ごく平凡な人生なんです。普通のサラリーマンの家庭で、普通に育って、兄がいるんですけれども、普通に仲良くて。

そういう普通の生活をしている僕なものですから、あまりおもしろくないんじゃないかなと。実はそういう自伝っぽいやつもちょっと書いたりしたんですけど、なかなかまぁ、しっくりきてもらえなくて、苦肉の策で書いた佐川銀次さんの章が、「これですよ、これ」と言われまして。

これから読む人にはネタバレになっちゃうから、あまり詳しくは話さないんですけど、佐川銀次さんという男優さんがいて、僕はこの人が、いまのAV業界のなかで、一番いいセックスをする人だと思っているんです。

一番いいセックスというのはどういうことかというと、女の人をイカせるとか、女優のエロさを引き出すことがうまいとか、ショーみたいな、こんなに見せれますみたいなセックスとも違う。

終わったあとに、男優側も女優側も、気持ちよかったではなく、「幸せだった」みたいな。そういうセックスをする人なんですよ。で、どんな顔しているのかというと、検索してもらえればわかりますが、まあ男前じゃないんですよ。

（会場笑）

愛嬌ある笑顔するから慣れるといい顔に見えてくるんですが。銀次さんは器用な方なので、現場によっては、そういうパフォーマンスとか、潮吹きセックスとかそういうこともするんですけど。

僕が銀次さんとよく会う代々木さんの組では、本気で見つめ合っていて、2人の世界をしっかり作って、傍からしたら見ちゃいけないものを見せられてる感じなんですよ。

でも、銀次さんと女優さんは初対面なので、恋に落ちるわけないだろって思うわけですよ。あの男に。

（会場笑）

間違っても一目惚れするようなタイプじゃないですよ。

銀次さんは奥まで入れてグリグリする

昔、男優界一イケメンの一徹（鈴木一徹氏）と銀次さんとで女優を取り合うって内容の現場があったんですよ。どちらでも選んでいいよ、と言ったら100パーセント絶対に一徹にいくんですよ。

だけども、一徹が途中で、中折れしたりとかなにかちょっともたついた時に、銀次さんが現れて、でっかいそのモノを見せつけて、「ちょっと入れてみる？」みたいな。一徹がもたもたしているもんだから、奪われちゃって。

銀次さんがしようものなら、女優さんは、まず最初に銀次さんのモノの大きさに驚いて、悲鳴のような喘ぎ声を上げるんですけれども、そこから銀次さんが特殊な動きをするんですよ。

普通、セックスというのは出し入れをするんですけど、銀次さんは出し入れしないんですよ。奥まで入れて、グリグリするんですよ。

そういうことされたことあります？　たぶんないと思うんですよ。AV業界でも、そんな動きする人、銀次さんしかいないんですよ。

それで気持ちいいのかなあと思うんですけど、女の人はだんだんと盛り上がってくるんですね。それは激しくピストンして無理矢理快感を上げられていくのとは違って、入っているというだけで、女の人がだんだん勝手に高まってくるって感じなんですよ。それを銀次さんは、つぶらな瞳で眺めているんですよ。

あまりにも見つめられるから、女優さんがちょっと目をそらしてしまうと、銀次さん、「俺を見ろ」って。「見たくないからそらしたんだろ」みたいにと言われちゃうんですけど。

（会場笑）

でも、つながったまま、動かないで、見つめ合ってるだけで、女の人がイクッてなったり、涙を流したりするんですよね。それってすごいなと思って。もうその頃には一徹の出る幕なくなっているんですよ。そういったことを銀次さんの章で書いてあります。

僕らからすると、銀次さん、いつものようにやっているね、という感じなんですけど、あまりふだん、銀次さんのことを見ていない人からすると、変わったセックスをするねと。そういったところが読み物として受け入れてもらえたのかなと。そういうことを書けばいいのかと、きっかけを銀次さんで掴んで、そこからは比較的順調に書き進めていけました。

セックスとは孤独の克服である

全部で10章あるんですけど、それぞれで1人ずつぐらい取り上げてます。名前のある人、名前のない人、あと僕の元カノとか。

セックスというのは、それぞれの人にとって、それぞれの正解がある。僕は10章書いたんですけども、10人がそれぞれ、セックスはこういうのがいいんじゃないかとか、こうあるべきじゃないのかとか、これが正解でしょとか思ってます。

僕は8,000人とセックスをしていくなかで、どれもが正解になるし、誰もが傷つく可能性を持っていると思うんですね。セックスは1人でできないので、相手ありきってとこが難しいところなんです。

ここに来てくれている人は少なからず性というもの、セックスに興味を持ってくれている人と思うんですけれども、セックスはいいものでもあるし、難しいものでもある。怖いものでもあるし、楽しいものでもある。10人取り上げることでセックスの振り幅を掴んでもらいたいと。

それで、いろんなセックスがあるんですけれども、それじゃあセックスとはなんぞやって考えていった時に、「セックスはなんですか」と聞くと、いろんな人がいろんなことを言うんですよ。

「セックスとは最高のコミュニケーションである」とか、「セックスとは性処理である」とか。「セックスとは子づくりである」とか。「セックスとは愛の証である」とか。

それぞれの文化とか社会的な立場とか、それぞれ経験してきたことによってセックスの価値観とかセックスとはどういうものなのか決めちゃってるんですけども、僕はいろんな幅広いセックスをしてきた中で、セックスとはなんぞやの核の部分は掴めたんじゃないかなと思っているんです。それを10章通して描けていたらいいなと思っています。

では、セックスとはなんでしょうか、というと、「セックスとは孤独の克服である」と思っていて、孤独の克服とはどういうことなのかというと、人間は生まれた瞬間から、お母さんから離れて1人の人間になる。生まれてくるときも1人、死んでいくときも1人とよく言いますけど、生きている間中、人間は1人なんですよ。

いんちき占い師は誰に対しても、「あなた寂しがりやですね」とか言って、「私は寂しがりやなんだ」と誰でも思っちゃうのと一緒で、誰もが寂しいという感情を持っている。それは人間が根本的に孤独だからです。1人の人間だから、1人だとは孤独を感じる。

その孤独感を人間は生きていく過程で、そのときによって異なる方法で克服する。赤ちゃんだったら、抱きしめてもらおうとか、お母さんにおっぱいをもらうとか。なにか肌と肌を触れて安心感を得て泣きやむとか、ぐっすりと眠れるとか。

それでもうちょっと大きくなってくると、幼稚園とか小学校とかに行き出すと友達ができる。仲間がいるから、独りぼっちじゃないと。もう少し大きくなると恋人ができて孤独じゃなくなるとか。

そのベースにはお母さんとの関係、家族との関係とかがあるわけですけど、その時々によって、人間は寂しさ、孤独感を、どうやってか克服していこうという欲求を潜在的に持っているんじゃないかと思います。

相手を愛おしいと思うセックスを

実は昨日、二村ヒトシさんというAV監督と対談があって、二村さんがおっしゃっていたんですけど、「三大欲求と言われるものがある。食欲、睡眠欲、性欲。食欲と睡眠欲はそのまんまで、性欲というのは本当は違って、性欲という言い方になっちゃっているけど、本当は愛されたい欲なんじゃないか」って言うんですよ。

それは二村さんの言い方で、愛されたいという表現ですけれども、僕が言っている孤独を克服するというのも、潜在的に、根源的に人間がみんな持っているもので、それは本能なんだと思ってます。

それで、孤独を克服する方法が、愛される方法とか、自分が自分でよかったと思える方法がいくつかあるなかで、セックスが一番強く、1人じゃないという感覚を得られる行為なんじゃないのかなって思いました。その時に幸せというか、そういう気持ちになる。

それじゃ、セックスがなければ幸せになれないのかっていうとそれはまた違って、セックスがなくても、仲間に囲まれているとか、家族がいるとか、ペットがいるとか、仕事のやりがいがあるとか、なにかしらで誰かとつながっている感覚があると、人は幸せになる。セックスなんてなくていいよとなるんです。

だけど、僕はセックスのパワーが一番強いと思っているので、セックスとかしなくてもいいよとか、セックス面倒くさいからあたし好きじゃないとか、セックスから逃げたり、セックスをそっちのけにしちゃうんじゃなくて、セックスも人生のなかの1つの選択肢として持ってもらえると、生きやすくなるんじゃないかなと。幸せという感覚を掴みやすいんじゃないかなと思います。

セックスにもいろいろあって、性欲処理のためとか、ただ楽しむため、とか。そのなかでも全肯定感、生まれてきてよかったって感覚を得るためには、銀次さんのようなセックスのやり方がいい。

それは挿入したまま動かないという腰の振り方のことではなく、相手と深くつながろうとするセックス。気持ちよくしてやろうとか、気持ちよくなってほしいっていうのともまたちょっと違うんです。相手が乳首が感じるから乳首を触っていればいいとか。相手がちょっとSMチックなのが好きだから、それに応えるように体を差し出せばいい、というのとはまた違って。

もうちょっとシンプルに、相手とつながる。相手を愛おしいと思うところから始まるセックス。初めはSMでもいいんですけど、最終的には相手を愛おしいと思うセックスで終わると幸せになれるんですよ。

これが本を書いていくなかで、どう書いたらうまく伝わるかなと、けっこう悩んだところなんです。愛されているという感覚とは違うんですよ。愛おしいと、こっちから発信している気持ちがあることによって幸せになれるんですよ。

二村さんのおっしゃった「愛されたいという欲求」というのでは愛されたから幸せってことになるのですが、というよりは、愛おしく思えたから幸せ。愛おしいと思える相手に出会えたから。愛おしい相手とつながれたから幸せっていう。見返りを求めないっていうとなんかキザな言い方になっちゃうんですけど、こっちから差し出す気持ちによって相手とつながれるんですよ。

相手から愛してほしいとか気持ちよくしてほしいとか見返りを思ってセックスしてもべつにいいんですけども、それはそういったセックス。

全肯定感を得る、自分が自分でよかった、生まれてきてよかったっていうところまで感じるには、相手を愛おしいと思うセックスができるといい。

セックス中に名前を呼ぶ効果

それには、じゃあ、相手のことを愛おしいと思わなければ愛おしいと思えないのかというと、そこには一応テクニックがあって。それは銀次さんとかを見ているとわかってくるんですけども、自己催眠みたいなのをかけるんですよ。

そこら辺の話になるとはうさんくさくなるから本には書いてないんですけど、僕ですらホントかよと思っちゃう。セックスする機会があったら試してほしいんですけど、まず声に出すんですよ。声に出して相手の名前を呼ぶ。

銀次さんの相手をさせられている女優さんが言わされているのが、「銀ちゃんって呼んでごらん」なんですよ。

（会場笑）

初対面でね、あんなおっさんに対して「銀ちゃん」と呼ぶのもなんですけど、でも、声に出して「銀ちゃん」と呼ぶと銀次さんは相手を見るんですよ。それはお酒を飲んで意識を失ったとか、寝ぼけまなこの人とかに名前を呼んで起こしますよね。「なになにちゃん、なになにちゃん」とか。そうするとどこかに行っていた意識が体に降りてくるんですよ。

意識と体がまず一緒になるんです。名前を呼ぶことによって。

例えば僕がなにか妄想していたとしますよね。でもここで「森林さん」と言われたら、「あっハイ」となって意識がここにくる。

セックスのときも名前を呼ぶことによって、もしかしたら、絡みながら一徹のことを考えたり、韓流スターのことを考えたりしてるかもしれない女優さんが、名前を言う瞬間は銀次さんのことを考えざるを得なくなるんですよ。目の前にいる人を。

そこで、「俺の目を見ろ」「私の目を見て」と言うことで、目と目を見ることによって2人だけの空間ができるんですよ。

すると、いままで広くなってた世界がぎゅっと凝縮されるんですよ。これは本当にもう、テクニックです。相手の名前を呼ぶこと。そのうえで、「好きだよ」と言うんです。なかなかセックスの最中に好きだよと言ってくれる人はいないかもしれませんけども。

女の人にとっても恥ずかしかったり照れくさかったりするかもしれませんけど、「好きだよ」と言うことは。

「愛してる」だとちょっと重くなっちゃうかもしれないから、「好きだよ」と言うだけで。それは言霊で、言ったことが本当にそのままになっていくんですよ。それを銀次さんは知っているんですよ。

銀次さんばかり例をあげて申し訳ないですけども（笑）。女優さんが来て、銀次さんが「銀ちゃんと呼んでごらん」と言われて、「俺の目を見ろ」と言って2人の空間ができて、「好きだよ」と言われ、「好き」と言わされるわけですよ。

好きじゃないでしょ（笑）。嫌いじゃないでしょうけど、でも好きじゃないですよ。いわゆる一般的な「この人が好き」という感じじゃないでしょう。でもそこで「好き」と言うと銀次さんが喜ぶわけですよ。「俺も好きだよ」となる。そうするとかわいく見えてくるんですよね。50のおっさんでもかわいいと思えてくる。

言葉に出すことでそれが本当になっていく。これって自己催眠みたいなもんかなって思うんですけども。そうなっていくと、全肯定感というか、この人は私のすべてを受け入れてくれるんだとか。こんなに愛おしいという気持ちが起きるんだっていうのが加速的に起きていくんですよ。それがどんどん進んでいく中で、好きが愛おしいとなって、大切に思うとか、幸せだなみたいな感情に、高まっていく。

そういうセックスのやり方があるんですけども、それはテクニックなので、少なからずうさんくさいし、本には書いてないので、この会場に来た人だけにお話しするので、試してみてほしいと思います。

そういったセックスをいままでやってきて、楽しかったり、幸せだったりしたセックスの話を書かせてもらってます。

男優を始めて2年目で親にカミングアウト

銀次さん以外にも候補はいろいろとあったんですけども、名前を出していい人、よくない人といるので。銀次さんには書かせてくださいと言って許可を取ったんですけど、じった（花岡じった）さんには実は取ってなかったんですよ。

（会場笑）

じったさんには本が出来上がってから、書きましたって言いました。すごいムッとして、「俺はそういう人の前に出ることはイヤなんだよ」と言われたんですけど、「すごくよく書きましたから。あれを読んだ世の女性は、じったさんとやりたくなると思いますよ」と言ったら、「じゃあ仕方ないな」と言ってくれてことなきを得たんですけど。

（会場笑）

AV業界にはほかにも、しみけんとか、黒田くんとか仲のいい同期から、先輩の片山さん、田淵さんとかいろんな人がいて、後輩でもこいつすごいよなと思える人がいっぱいいて、それぞれがセックス哲学というか、こういうふうにしたらいいんじゃないかなと思っていて。そういう話を書いていけばネタが尽きないんですけども、なかなか文字にして書くのって大変なんですよ。

だいたい、1章につき1万字ちょっとぐらい。性活相談で、毎週書いているのが、1,000文字か1,500文字くらいなんですよ。1万字書いて、それが1章としてまとまっているというのはすごく難しくて、パソコンで打っていて途中で嫌になってきて携帯のSiriでやったりもしたんですよ。Siriに向かって喋って書いたりしたんですけど。どうにかこうにか1年掛けて出来上がって、それで発売日に親にも送りました。

（会場拍手）

恥ずかしいところだったりもするんですけど。

僕と親の関係を話すと、男優を始めて2年目に僕からAV男優やってるとカミングアウトしました。父親も母親もあんまりセックスの話をするタイプの人じゃなく、僕の家庭は性の話がいっぱい飛び交うような環境ではなかったから、驚かれて、もちろん辞めなさいって言われて大反対されて。

でも自分で決めて、やるっていうことで続けさせてもらったんですけど、10年ぐらい経ったときぐらいから、なんとなくですけど、認めてくれるようになったんです。

30歳くらいのときに結婚したいと思う女性がいて、その女性は僕の仕事も知っていた上で結婚しようという話になって。

それで結婚していこうという話になったときに、向こうのご両親に挨拶に行こうという話にまでなったときに、相手のご両親から「なにをしている人なの？」と聞かれて、彼女は30前くらいに専門学校に行っていたときに知り合った子で、正直に話してもらったほうがいいと僕が言ったんですね。

「AV男優やってる人」と言ったら、「AV男優？」となるわけですよ。「あんたどこで知り合ったの？」となって、「専門学校で」と答えたらしいんですけど、「AV男優と結婚はさせられない」となったわけですよ。

でも、自分の娘が選んだ人なんだから、「人としてはきっといい人なんでしょう。でも仕事がAV男優じゃだめだ」と。「AV男優を辞めなければだめだ」、と言われて。そういうことを親に言われたと僕に伝えてきて。それで悩んだんですけど、「やっぱり辞められない」と言って。

それで今度は僕が親に相談したんですよ。実はこうこうこうで「辞めたら結婚させてあげる」と言われてるんだけどって言ったら、うちの親はお見合い結婚なんですけど、「結婚に必要なのは恋愛感情とか気持ちの盛り上がりじゃない。一緒に生活していけるかどうか。まず、そこがあるのかどうか。恋愛感情が落ち着いたとしても、この人と生活していけるのかどうか」っていうところ。まあ人間関係としての信頼があるのかどうか。

それと、「あんたが10年間やってきた仕事なんだから、誇りを持てないのか。相手の親に言われたくらいで辞めるんだったら、私たちが言ったときに辞めてよ」と。

（会場笑）

うん、もっともだなと思うんですけれども、そんなことを言われて、結局、結婚しなかったんです。破談になってしまったんですけれども、そういう話を聞いたときに、ちょっとは認めてくれてるのかなと。　親とはそういった関係で、時々家に帰って一緒に食事したりとかしてます。

「まずはおめでとう」というのがお父さんで、お母さんからの感想は「どきどきしながら読み始め、時々クスっと笑ったり、泣いちゃったりしながら、そして読み終わったら、ちょっと疲れたかな」でした。

両親にもぼちぼち褒めてもらって、なんとか無事に出版でき、しかも今日、こんなにも多くの人に駆けつけてもらい、こういう幸せもあるんだなと感激しています。それで、詳しい内容は本当に本を読んでもらって感想などをアマゾンとかに書いてもらえるとうれしいなあと思うんですけど。

（会場笑）