2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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齋藤精一(以下、齋藤精):次に、コンテンツのお話をしたいと思います。さっきもお話が出たように、ナイトシーンがこれだけ自由になると、たぶん経済効果というのも大きくなると思うんですけど、法改正の原案だとか、そういうところにも触れたりしているんですか。
齋藤貴弘氏(以下、齋藤弁護士):そうですね。国会議員と一緒に法改正のビジョンみたいなものの文章を作成したんですけれども。というか、僕がもう文章を作成して、それを国会議員の人に提出をしたんです。
そこには、優良な資本を参入させて、そこで才能のある日本の将来のスーパースターの人たちがちゃんと活躍できるように。かつ、それはさっき言ったタコ壺の世界じゃなくて、多様性というのがちゃんと担保されたかたちで。
イベント、興行っぽいものだけじゃなくて、さっき言った新エコノミーですかね。いろんなもののハブになるような、多様性の担保された世界を作っていけるような法律にしてほしい、というような中間提言の答申を作ったりしていました。
それに沿っていちおう改正はされてるはずです。たぶん後で話すと思うんですけど、これから業界の人たちが動き出す感じですね。
坂口修一郎氏(以下、坂口):僕は最初に齋藤さんからこの「風営法改正」というお話を聞いた時に、たぶんクラブが増えるというよりも、さっき言ったホテルだとか公開空地だとか、そういったところでのエンターテインメントが増えるんだろうな、というふうに単純に思いました。
それで前に、お台場じゃなくてどこでしたっけ、湾岸のほうでナイトメイヤーの方が来て。
齋藤精:あ、天王洲……。
坂口:天王洲ですね。あの時ぼくも行ったんですけど、びっくりするほどクラブ業界の人いなかったんですね。少なかった。まあ、いるんですけど、もっとクラブ業界の人がどんどん来て、「新しいクラブを作ろう」みたいな話になるのかなって思ったら、意外とそうでもなくて。
齋藤精:あれ、寺田倉庫でやるという話でしたっけ?
齋藤弁護士:寺田倉庫の、あんまり言っちゃいけないんですけれども、運河の上にイベントスペースがあるんですね。そこのイベントスペースは……。パリの「コンクリート」っていうクラブ知らないですか? セーヌ川の上に浮いてるクラブがあるんですけれども。そんな感じで、運河の上にイベントスペースがあるんです。
そこで夜、ナイトメイヤーを招いてカンファレンスをやったりしてたんです。
クラブ業界の人はいなかったんですけれども、それはやや意識的にそういう方向に持っていって。クラブは拠点があるので、すでにあるところじゃなくて、新しく交わったらおもしろいだろうな、というところにお声がけをして集まっていただいたという感じですね。
デベロッパーの方もたくさんいらっしゃってましたし。飲食店とかホテルとか、そういう方もいらっしゃいましたし。ライブ・コンサートを主なマーケットにしているコンサートプロモーターの方もいらっしゃってましたし。要は新しい産業の新しいプレイヤーになってほしい人たちを、船のなかに入れてって、しばらく話をしたという。
齋藤精:我々ライゾマ(ライゾマティクス)という会社をやってるんですけど、ライゾマの作品集見ていただくとわかるとおり、ほぼ暗いんですよ。
なぜかというと、プロジェクター、映像的な演出とか光の演出とか、音と光と、最近だとレーザーみたいな演出になると、どうしても夜なんですね。夜やるか、もしくは閉じられた場所でやるか。真っ暗にして、暗転できるように。
やっぱりイベントって、お酒を飲みながら、半分寝転がりながら、いい音楽聞いて、少し話聞いて、いろいろ仲間ができたりもするじゃないですか。だから、そこを考えると夜にいろんなことをやるんですね。
日本発信のもので、世界で勝てるようなコンテンツ産業ってあんまりなくて。そこも活性化されると、もしかしたらいいのかなとは思います。
坂口:今まではアイデアがあってもできないことって、けっこういっぱいあったじゃないですか。
僕、UNITやってた頃に、ニューヨークで「Turntables on the Hudson」っていうのがあって。ハドソン川の上に船が走ってますよね。それを全部まるごとクラブにして、毎週定期便が出てるとか。「すごいおもしろいことやるな」と思ってたんですけど。
たぶんそれも当時はできなかったんですよね。今もまだ、6月23日までは夜中はできないかもしれない。
アイデアとコンテンツがあっても、グレーすぎてできなかったとか、そういうものはどんどん広がるんだろうなと。ビルのルーフトップで今使われていないところってかなりあると思うんですよ。
かなりの高層ビルだと、騒音の問題がどこまで出るかわからないですけど、地上でやるよりは騒音の問題がたぶん少ないんだろうなと。横に家がないじゃないですか。
そうすると、東京都内にものすごく数が増えてる高層ビル、商業施設とかの屋上って、床面積がどれぐらい増えてるのかわからないですけど、広大なビルの屋上だけでフェスティバルができるような。そうすると、ちょっとワクワクする未来だなと思ったり。
齋藤精:そんなふうなことを考えたりしちゃいますよね。
さっき「どこのクラブ行ったらいいか?」って外人の話じゃないですけど、東京だからこそできる体験というのが……例えばパリのセーヌ川に浮かぶクラブがあるみたいなことは知らなかったんですけど、あそこはたぶん浮いてるレストランたくさんあると思うんです。
東京だからこそのものというのは、やっぱり高層ビルがたくさんあって、景観条例が日本ってすごい緩いじゃないですか。だから、古いものを壊して、また新しいものを。まあ地震がある文化だからって言い方はもちろんあると思う。
となると、外人の人たちに向けては、まず渋谷のスクランブル交差点とか、六本木の交差点とか、(坂口さんが)おっしゃったみたいに、ルーフトップフェスみたいのをやったらおもしろそうですよね。
坂口:そうですよね。見えるところで、ここの屋上と向こうでまためっちゃ盛り上がってるとか。レーザーでなにかやるみたいな。たぶん、空中になにかを、映像を投影したりとか、そういうものもおそらくできると思うんですよね。それをみんなで見ながらとか。
クラブシーンっていうと、本当に「クラブ」という言葉ができ上がり過ぎちゃっててあれですけど。もともとはニューヨークとかでも「ブロックパーティ」とかいって、その当時はまだ違法だったんでしょうけども、電源引っ張ってきて、公園で勝手に音楽かけながら飲んでたら、集まりだしたと。
そういったところにルーツがあったりするので。それをアップデートして元に戻すみたいな。
そこに対しても、単なる違法なグレーな領域でやってるんじゃなくて、ちゃんと文化としてこれだけの文化的蓄積があるわけですよね。それが今行き場がないというか、昼間のライブハウスのなかにしか行き場がない。イコール、フェスしかない。
そういう状態をもうちょっと開放すると、さっき言ったように、どんどんCDの売上げが落ちてますけど、エンターテインメント産業の売上げ高ってどんどん伸びているので。
今は夜の部分は蓋をされてる感じですよね。それが取れれば、もっともっと可能性広がるんだろうなと。
齋藤精:たしかに。それで、個人的にこれ聞いたことなかったなと思ったんですけど。なぜ風営法改正の弁護士として関わろうと思ったきっかけみたいなもの。もともと齋藤弁護士さんはがっつりクラブで遊んでたのか、そういうバックグラウンドなのか。
齋藤弁護士:いや、クラブはそんなに。実は個人的にはあんまり馴染みがなくて。本当に狭いクラブみたいなところは好きでよく行ってたんですけれども。
もともと弁護士になるまでは、バンドだったり、DJだったり、音楽をやってたんですよね。……なんかすごい個人的な話であれですけれども(笑)。
齋藤:いえいえ。たぶんみなさん興味が(ある)。僕はすごく興味がありますね。
齋藤弁護士:高校卒業したあとはいわゆるフリーターで、昼間レストランで働いて、夜スタジオに入る、みたいな貧乏バンドを2年ぐらいやってたんですよね。けっこうその当時やってた連中というのはちゃんとプロのミュージシャンだったり。けっこうしっかりしたバンドをやってたんですけれども。
で、なかなか才能的に厳しいなと思ったり、当時バンドやってた時から、もちろん演奏はしてたんですけど、スタジオの予約したりだとか、メンバー募集の張り紙したりとか、わりと裏方が多かったんですよね。なので、裏方がたぶん向いてるんだろうなと思って。
ちょっとまったく違うことをやりたいなと思ってバンドをやめて、司法試験受けようと思って。で、司法試験受けたという。高校卒業したあとの貧乏バンドが行き詰まったところから弁護士になって、というのがもともとのルーツです。
周りに仲間はたくさんいるんですよね。DJだったり音楽をやってる仲間とか。彼らから「大阪でのたいへんな警察の摘発を受けて、クラブが大変になってる」という話を聞いて、あるクラブ雑誌にちょっとインタビューをしてもらったんですね。「現状をちゃんと伝えないと」って。
本当に当時、今から考えると気が狂ってたとしか思えないくらい摘発をされていて。本当にありえない状況になっていたんです。
齋藤精:そうですね。それこそダンス、クラシックダンスみたいな、ダンススクールも。
齋藤弁護士:公民館で借りてやっている社交ダンス、あれもできなくなってたんですね。非常にいろんなものを発信してきた、EGO-WRAPPINが最初に結成されてライブをした、大阪の「NOON」というクラブも摘発をされたり。
非常にいいブッキングをたくさんしている「サウンドチャンネル」というクラブも摘発されて。サウンドチャンネルの人とアムステルダムで偶然会ったんですけど、今、アムステルダムでクラブをやってるんですよ。
そういう状況があって、「発信をしないと」と思って、インタビューをしてもらいました。そしたら、オンラインのインタビューだったんですけれども、それがありえないくらい拡散されて。常にタイムラインに出てるような感じでした。 よくも悪くもなんですけれども。
クラブ業界の人からしたら、「こんな記事なんで載せたんだ」って、クラブ雑誌に対して非常に強いクレームが入ったんですよね。「今まで風営法なんてみんな騙し騙しやっていて、光を当てないように、いかに目立たないでやるかという世界で隠してたのに、特集記事とか組んで、なにやってくれたんだ」と。
その責任を取って、その編集長辞めたりしてましたけど。そのくらいの大騒ぎになって。
他方で、既存のクラブユーザーとかDJの人たちというのは初めて風営法というのがどういう状況なのかというのを知ることになって。そこでやっぱり「おかしいじゃないか」という運動が起こって、署名運動なんかがすごい勢いで始まったりしたんですよね。
ただ1回のインタビューだけだったんですけれども。気がついたら本当に担ぎあげられていて、自然と濁流に飲み込まれていくように風営法改正に関わっていくようになったという、そういう経緯になります。気がついたらこんなところにいます(笑)。
齋藤精:おもしろいというか、そういう経緯なんですね。僕みたいな、どっちかというとアナログに攻めようと思う人間は、まさかそのチームのなかに弁護士を入れようなんて思わないじゃないですか。
で、さっき、ちょうどフィルハーモニアをやってたんですけど。オーケストラみたいなものだと敷居が高すぎて、そもそもドアを開けないというか。
だけど、たぶん風営法改正のほうもたぶん話は進むものの、わざわざ弁護士さんに(頼もうと思わない)。齋藤さんもそうですし、うちの弁護士やってもらってる水野(祐)君もそうですし、なんか「この人弁護士なんだ」という感じ。話しやすそうだしすごい自然というか。
それで、そういうプロジェクトに関わって、風営法に関わっているというのは、日本も変わったなって。
坂口:僕がクラブの運営に携わった時は、弁護士に相談していたことがあったんですけど、弁護士の人が理解できないんですよね。「なんでそんなに夜中遅くまでやらないといけないんですか?」とか言われたりするんですよ(笑)。
「そもそも……」みたいな話になってしまう人ばっかりだったので。「今の法律だとダメですね」とか「それは裸になる人いるんですか?」とか聞かれたりとかして、そんなレベルですよね。
だから、リアルな感じ……今日は齋藤さんすごく弁護士っぽくしてますけど、普段はもうちょっとこっち(自分たち)寄りですもんね。そういう弁護士の方が現れたんだなというのはすごく心強いことだったんです。
齋藤精:コンテンツを生産する人間としては。
齋藤弁護士:水野君の話をしてましたけど、水野君を筆頭に若い弁護士が、新しい弁護士の役割みたいなものを模索してる感じがしますよね。話がかなり逸れてあれなんですけど。
齋藤精:ぜんぜんいいですよ。
齋藤弁護士:弁護士ってすごく人数が増えて、若い子はとくに飯を食えないような状況になっていて。産業としてけっこう破綻しかかっているような状況です。弁護士10年やってますけれども、僕なんかよりもっとぜんぜん若い子たちが。
そこで、プラスの意味もあると思うんですけれども、法律家の役割というのをもう少し再定義して。今までロビーイングなんて日本の弁護士はほぼやってなかったですけれども。
現場のコンテンツの価値を高めるために制度を変えるだとか、法律を変えるだとか。一番最初におっしゃっていた、特区をどう使ってアートを広げるかとか。
そういう制度設計はもちろん法律の話なので、弁護士はもっとぜんぜん関わるべきだと思うんですけれども。1つのプロジェクトのメンバーのなかに弁護士が専門家として入っているようなイメージです。
齋藤精:僕が去年ちょうど4月29日かな、「六本木アートナイト」というのをやらせていただいて。その時にもやっぱり「道を止めてパレードをやりたい」とか。そうするとパレード申請みたいなのがあって。
そうすると、所轄は「こんなリードタイムがない申請は無理です」とか、「じゃあガードマンはどうするんだ」とか、「港区さんがOKなら」とか、そういうのがあるじゃないですか。
それこそ国家戦略特区のところも、ものを作ってる人間からしても「どういう意味で特区なのかようわからん」という感じなんですよね。
例えば、全部道路をせき止めて、そこでイベントやっていいのかとか。もしくは、じゃあ夜中あそこで反対側の歩道からプロジェクションして、そこで映画を観てもいいのかとか。そういうのがよくわかってない。
アイデアはあるんですが、今までどっちかというと「たぶんこれ無理だな」という肌感で全部引き下げてきたものを、そういう意味で、若い弁護士とかが入ってくれると、なんかおもしろい夜のシーンになりそうな気がしますよね。
坂口:そうですね。それで、クラブを運営してた時にそういう発想がなかったって言いましたけど、齋藤さんと話していて、一番僕がびっくりしたのは「業界団体がないんですよね」ってパッと言ったんですよ。「今までグレーだったがゆえに、圧力をかけるための業界団体がない」と。「それはそうだよな」と思ったんですよね。
たしかに僕らは500ぐらいのキャパのクラブ、けっこう大きいクラブだったと思うんですけど。UNIT。まあ、今もありますけど、UNIT、LIQUIDROOM、ageHaとか、いくつか東京にも大きいクラブがあって。
小さいところにもいっぱいあるけど。それらの人たちがまとまってなにか運動をするということは皆無なんですよ。まったくない。ライブエンターテインメントのほうはありますよね。
齋藤弁護士:ライブハウスじゃなくて、プロモーターならありますね。
坂口:だけど、クラブシーンというのはもうまったくないんですよね。言われてみて初めて「そうですよね」って。「それはなぜかというと……」という話になったんですよ。
齋藤精:なぜなんですか?
齋藤弁護士:それは違法だから。
坂口:違法だから。違法な団体になってしまうから、もう本当に、ヘタすると反社会勢力と言われかねない。だけど、そんなことはないんですよ、ぜんぜん。イメージだけで。「そんなことはないにも関わらず、そういう状態になってるというのを改善する」と言われたので、「なるほどな」と思いました。
齋藤精:ということは6月23日以降は、もちろんそういう業界団体も作ってもいいし。
齋藤弁護士:もう法人化はしたんですよね。法律が変わって、もうバラ色のナイトシーンが自動的にできますという世界ではぜんぜんない。それは1ピースですね。
小さな1ピースなので、もう少しナイトシーンがおもしろくなるためには、いろんなプレイヤーが、さっき言ったような、新規のプレイヤーの人がどんどん入ってくるというのが1つありますし。
あと、業界を取りまとめるような業界団体ですね。それを作らないといけないというところで、2つ業界団体を作ったんです。
1つは、もともとある「(日本)ナイトクラブ協会」というのがあるんですけど。これは法律改正の機運が高まった時にできた団体です。
ナイトクラブの業界以外に新規で参入するところとして、さっきから話題にでているホテルとかレストランとかカフェとかバーとか、飲食店ですね。飲食店とエンターテインメントの掛けあわせというところは非常に大きなマーケットだなと思っていて。
そこをCAFE COMPANYの楠本(修二郎)さんと、『ホテルレストラン』という、ホテルとレストラン・飲食店の業界誌があるんですけれども、その代表の人と、あとはフェイス。フェイスってコロムビアレコードの親会社なんですけれども。そこの代表の方が設立理事になって団体を今作ってます。たぶんプレイヤーとしては大きなところを考えてますね。
あともう1つは、もう少し音楽にこだわったところで、ライブエンターテインメントの団体ですね。ライブエンターテインメントの世界、CDの売上げを去年抜いたって言ってました。成長産業なんですが、箱が足りないという状況になって。
そこで夜間市場をもう少し使っていこうというところで、ライブエンターテインメントの団体をもう1つ作りました。そこはスペースシャワーTVが幹事会社ですね。代表理事になって。WWWというライブハウスをやってますけれども。
あとは、ずっとこのライブシーンをリードしてきたLIQUIDROOMですね。O-Group、LOFTとか、SHELTERとか、ああいうところですね。そこで夜間市場を作っていこうということで。
それが業界団体なんですけれども。さっき言った新エコノミーという、ほかの業界との関わりをちゃんとネットワーキングするというのが重要で。アドバイザリーボードですかね。それをちゃんと作りたいなと思っていて。今、そんなことをいろいろやっている感じですね。
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