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風営法改正記念! 夜の市長と新しいナイトシーンのつくり方(全4記事)

新たな文化はクラブで生まれる--「夜の市長」が目指すナイトカルチャー

アークヒルズで開催されたイベント「SOUND & CITY」のなかで、風営法改正を記念したカンファレンスが行われました。風営法改正に深くかかわった齋藤貴弘弁護士、代官山UNITの創設に携わったミュージシャン・プロデューサーの坂口修一郎氏、ライゾマティクス代表の齋藤精一氏。さまざまなかたちでクラブシーンに携わる3人が、風営法改正の背景やそれによって変わるナイトカルチャーについて語りました。

夜の市長「ナイトメイヤー」とは?

齋藤精一氏(以下、齋藤精):もう1つ、風営法改正の次にある「夜の市長と新しいナイトシーンの作り方」というところに入っていきたいなと思います。

「夜の市長」という言葉、「ナイトメイヤー」って言うんですけど、実は僕も知ったのが1年半ぐらい前ですかね。

ちょうど(六本木)アートナイトでプログラムを作っている時に、去年もオランダの大使館さんからご協力をいただいて、オランダのアーティストのパーティということで、アートナイトに来ていただいたんです。その時に「ナイトメイヤー」って初めて聞いたんですね。

夜の市長って、なにかこう、いかがわしい、ピンクな感じがしたんですけど、聞いてみたら、本当に夜の市長なんですよ。いわば、夜にちゃんと市のことを考えてる市長で。

NPO団体さんとかが作ったのかなと思ってたんですけど、ちゃんと昼の市長とディスカッションしてるんです。要は、「夜に文化がたくさん生まれている」というような。たぶんどこの国でもそうで。

その人が「夜を楽しく」とか「アートイベントやろうぜ」ということだけではなくて、ちゃんと昼の市長にそれをフィードバックする。月1でそういうのやってるんですよね。

齋藤貴弘氏(以下、齋藤弁護士):やってるんですよ。夜の文化的な価値とか、いろんな人がもっと近いところでネットワーキングする社会的な価値とか、ビジネスにおける経済的な価値とか、またあとで詳しく説明したいんですけれども、そういういろんな価値があって。

とくに日本なんてそうですけど、「夜」と言った瞬間、なんか悪いことをしてるようなイメージがあるんですが、そういう価値をちゃんと昼間の市長に対してプレゼンテーションをしてますし。いろんな企業に対してもプレゼンテーションをして、夜の価値をちゃんと高めていく。

(ナイトメイヤーは)ちゃんと選挙で選ばれてる人なんですね。半行政機関みたいなところです。これがアムステルダムで一番最初に起こって、今ヨーロッパ全土の主要都市に広がっていってるという感じになりますね。

4月に「ナイトメイヤーサミット」が開催

齋藤精:なるほど。そのナイトメイヤーサミットという、夜の市長のサミットがアムステルダム、4月の22、23日でしたっけ、先週行われて。実は日本から齋藤弁護士が行かれたので、その時の様子をぜひプレゼンテーションでお見せしたいなと思います。

坂口修一郎氏(以下、坂口):ナイトメイヤーは選挙で選ばれるんですよね?

齋藤弁護士:そうですね。ただ、公務員ではないんですよね。半行政機関みたいですね。

この人はミリク・ミラン(Mirik Milan)といって、アムステルダムのナイトメイヤーですね。5人目かなんかのナイトメイヤーです。

写真流しながら説明しますけれども、これが4月22、23日、ついこのあいだですけれども、アムステルダムで2日間に行われたナイトメイヤーのサミットの模様です。

ヨーロッパから30都市弱のナイトシーンのいろんな業界の人たちが来て、夜の経済的な価値から、街づくりから、夜の交通インフラの話から、もっと安全面を守るためのドラッグの話だったりとか、いろんな角度から話をしてました。

こんな感じで、けっこうみんなすごい人たちばっかりで。アムステルダムの市長も普通に来てました。ニューヨークのすごい大きなデザイン事務所の人が来てたりだとか。すごく盛大に行われました。

どういうことが話し合われたのかというのを簡単にご説明できればなと思うんですけれども、夜の価値についてみんなで意見交換をして整理をして、その価値をどう街づくりに活かしていくのかというような話ですね。

夜の街には3つの価値がある

大きく3つ、夜の価値について定義されていて。1つは「文化的な価値」。Night Cultureという言葉をすごくみんな頻繁に使っていました。夜、音楽もそうですし、アートもそうですし、いろんな文化的な価値が生まれる。

ここでみんなが強調してたのが、クラブというのは単体で存在してるわけではなくて、クラブがいろんなもののハブになってるんですよね。クラブのなかでいろいろ生まれるというよりも、クラブにいろんな人たちが集まって。

新エコノミーって言ってましたけれども、観光だったり、アートだったり、ファッションだったり、ITだったり、いろんな産業に対して影響力を与える、そこに勢いを与えていくという。そういうふうに新エコノミーのハブになるような、かつ、エッジの立った存在感を作っていくようなものなんだと。

それをいわゆるクラブミュージックに限定することはなくて、新エコノミーのハブなんだ、ということを非常に強調してましたね。

あと、「経済的な価値」。これはものすごく、とくにアムステルダムとかベルリンとか、本当に大きい取り組みをやっていて。アムステルダムは年間で大小合わせて300くらいのフェスがあるらしいんですよね。

フェスはクラブとは違いますけれども、ダンスミュージックというのは非常に大きな経済的な価値を担っている。かつ、新エコノミーといって、いろんな分野に関連する影響を与える。

ちなみにZeebraさん。渋谷区の観光局のナイトアンバサダーというかたちでZeebraさんと一緒に行ってきました。いろんな経済効果を生んでいるという話をしました。

あとは、今日のテーマは「デジタル」というところなので、またあとでデジタルの課題もいろいろ出てくると思うんですけれども。

デジタル化が進む反面、いろんなおもしろいコンテンツが出てきているんですけれども、もう少し人と人とのフィジカルなネットワークを生む場所というのが、逆に求められてきているというような話もありました。

そういう場所として、夜、みんながリラックスしていい音楽に身を委ねて普通に話をするような、クラブの場所というのが非常に重要なんだという話をしてましたね。

究極のフェス「バーニングマン」

「バーニングマン」って、あのアメリカの人たちが砂漠でやってる……。

齋藤精:ブラックロックシティ。

齋藤弁護士:あの創始者のおじさんが来てたんですけれども、仙人みたいなすごい人で。たぶんあと(のスライド)で出てくると思うんですが。

ちょっと話したんですけど。「フェスはこのあとどういう方向に向かうのか?」というところで、その人が「どんどんアナログになっていく。たぶん、エンターテイメントとしては、いろんなデジタル的なおもしろいものが出てくるんでしょうけれども。 ただ、フェスの本質としては、人とのふれあいというか、いったん都市の生活から抜け出て、原始的な体験をする、普通にシンプルに“踊る”というかたちで享受する。プリミティブなものとして求められているんじゃないの?」ということを言っていて。その究極を作りたいということがバーニングマンのなかにあったみたいです。

そんな価値があり。ヨーロッパの人ってけっこうそういうクラブカルチャーというものをちゃんとそれで定義していたりするんですよね。ざっとそんなところです。

齋藤精:僕、バーニングマン行ったことあるんです。

齋藤弁護士:本当ですか!?

齋藤精:ライゾマ(株式会社ライゾマティクス)設立する前ですから、2002年とかですね。たぶんあの時は2万人ぐらいですかね。

(会場に向かって)バーニングマンってご存知ですかね? どっちかというと、リベラルな、自治区みたいのを8月の後半から9月5日のLabor Dayまで1週間やるんです。

最後の前の日に「The Man」っていう、人が手を上げたようなもの、木組みのシンボルを燃やしてという。もう何年ですかね。20年ぐらいですかね、もうちょっとかな、やってるイベントがあるんです。

さっきおっしゃった、コミュニティとか人とのふれあいとか、そこから発生する仲間だとかマーケットだとかいうのは、たぶん、坂口さんのほうがご存知だと思うんですけど、あれはあれで僕はものすごく効果があるんだろうな、とは思っていて。ちょっとやったことがないのでわからないですけど。

そこから派生して、僕らなんかもよくUNITで、「じゃあ、今度一緒になんかやろうぜ」みたいなことが始まって、そこからなにか起こるパターンってやっぱり多いじゃないですか。

なにかそういうコミュニティみたいなもの、そういうベニューというか、場所をつくるということも、周りにできるんですかね、日本で。

「あの時一緒になにかした」がデジタルにない利点

例えばUNITやった時に、もしくは先ほどのGOOD NEIGHBORSの場合もたぶんそうだと思うんですけど。ちゃんと場所、もしくはイベントとコミュニティが一緒についてきて。

GOOD NEIGHBORSだったら、世界中からもいらしてたという。たぶんレギュラーで来てる方が多いと思うんですね。そういうコミュニティみたいなものはやっぱりできるんですか。

坂口:音楽って、こういうライブと一緒ですけれども、1つのソースをみんなで共有するじゃないですか。同じ釜の飯を食う的なことが起こるんですよね。

さっきのうどんの例もそうですけど、「あの時バカなことやったけど、うどん踏んだよね」とか。「その時のDJ最高だったよな」とかいうものの結びつきというのは、デジタルじゃないものだと思いますね。

デジタルでどんどん「今、なにしてる」というのは共有できるんですよ。離れてるところでも。だけど、「あの時一緒になにかをした」みたいなことというのは、音楽の現場とかベニューとかが持ちうる、デジタルにないアドバンテージなんじゃないかなとは思ってます。

齋藤精:ちょうど午前中に、G1ベンチャーサミットというところで、先ほどのような話をしたんです。

これ前から言ってるんですけれども、今の生活って、僕も含めて、例えば歩いてる時にスマートフォンを見ながら、LINE読んでるとか、メール読んでるとか、乗換案内調べてるとか、いろいろあると思うんですけど。

要は、ここ(スマートフォン)のほうがおもしろくて。こっち、3Dの本当の空間のほうが価値が下がってるのか、もしくは価値は変わんないけど、こっち(スマートフォン)の価値が上がっちゃったのかわからないですけど。なんか、それが人間的に、もしくはアフォーダンスとしてもちょっとおかしいんじゃないかとずっと思っていて。

僕なんかはどちらかというと、デジタルコンテンツとか、ライブとかまとめたり、イベントもみなさんとやらせていただいてますけど。こういう、どちらかというと、物理的なほうに楽しみを覚えてるんですね。

コミュニティをシャッフルする場所が重要

それからすると、やっぱりデジタルの使い方って、今ははっきり「デジタルはデジタル」。だからさっきちょうどフィルハーモニアの話をしてたんですけど、「じゃあ、テクノロジーを使って」みたいな話になると、「じゃあ、プロジェクションマッピング」とか「ドローン飛ばしてください」みたいになる。

だけど、本当はそれが物理的なものとちゃんと融合しなきゃいけない。融合した時に、例えばさっきおっしゃった、コミュニティ形成のツールになるとか。それが今までは文通だったものが電話になって、それがメールになって、LINEになって。

そういうツールの使い方自体も継承していくと、同じような興味・関心があって同じ場所に集まり、そこからコミュニティができて、そこに人が寄ってくる。それ自体がなにか次の新しいドライブになってくるということがあると思うんです。

ファシリテーターなのに、すごい自分の主張ばっかり言って、すみません。

齋藤弁護士:でも、「Sound & City」というタイトル聞いた時はまずそういうイメージを持ちました。街っていろんなコミュニティから成り立っていて、それがすべて今おっしゃられたことなんですけれども。

ただ、縦割りというかタコ壺化しやすいところがあるのかなと思っていて、それをシャッフルするような場所が、トラップじゃないですけど、意識的に街のなかにちょこちょこあるというのがけっこう重要だなと思っています。

いつも同じメンツでいるというよりも、クラブみたいに不特定多数の人がそれぞれの目的で来るわけです。そこにじっくりいい音楽があって。そこでいい感じに交われるというのがけっこう重要だなと思っています。

齋藤精:(スライド)これですよね。

齋藤弁護士:これがバーニングマンの人。

坂口:この人なんですね(笑)。

齋藤精:なんか、この人の人となりがすごいじゃないですか。それで、こういう人が出てくると拡散したくなるんですよね。

クラブのコンテンツをホテルに

ライブでこういう人がでてきて、Facebook上だけでの拡散というよりも、この人と本当に、「バーンニングマン始めた人と会ったよ」「リアルで見たよ」みたいなのが、集中と拡散というか、そういうのが今はどんどんしやすくなってるので。デジタルとリアルな部分と……。

やっぱりリアルの情報のほうがみんな「うわっ」と思いますよね。「今、クラブで誰がなにやってる」という情報が、昔はクラブのなかだけ、さっきいったタコ壺状態だったのが、今は隣のクラブで「あっちはこんなに盛り上がってる」とか、そういうのを知れる状況になってきているので、おもしろい状況にはなってきているんだろうなと。

齋藤弁護士:さっき「ON THE MARKS」っていう川崎のホテルが出てましたけれども、「クラブとか行くのはちょっときつい」という人たちってけっこういると思うんですね。僕も最近きついんですけど。

そういう人たちが、ホテルのロビーでオシャレな感じだったら、たぶん「仕事帰りにちょっと一杯飲みに」とか。宿泊施設なので、泊りに来てる人が少し下に降りて行って、いい音楽を聞くだとか。クラブのクラスタとそうじゃない人たち、というところがけっこうあるのかなと思っていて。

クラブのコンテンツをホテルにうまくアレンジして、インストールすることによって、またそこでたぶん違う人たちが集まれる場所、タコ壺が1つつながるということですね。「ON THE MARKS」ってすごいいいところなので、みなさん1回行ってみるといいと思います。

齋藤精:ぜひ。僕も行きます。

坂口:しかも、安いんですよね。ホステルが半分ぐらいついてるので、若い人にも使いやすいということで。ホテルのフロアとホステルのフロアがあって、ベッド数でいうと140ぐらいなので、ホステルというよりはもうちょっと大きいですよね。

海外に行った時、あるいは海外のゲストを日本でアテンドすることけっこうあるんですけど、ディナーに行ったあとに、必ず「バーに行こう」ってなるじゃないですか。絶対言いますよね。

齋藤精:ほぼ。

坂口:まあ、よっぽど疲れてるとか、時差ボケひどいとか……。時差ボケひどくても1軒は行きますよね(笑)。

バーに行くというのが、ただ単に静かに飲むだけじゃなくて、やっぱり音楽のあるところで。ディナーだとどうしても座って喋ってたりするので、たぶん彼らはそれをシャッフルするみたいな意味合いもあると思うんですよね。

外国人には笑笑がウケる?

せっかく来たんだから、こうやって並んでるとすれば、隣同士の人とは喋るかもしれないですけど、なかなか広がっていかないところを、「じゃあ、バーに行って、ちょっとみんなシャッフルして、それから次行こうよ」とか。そういうのがすごくあると思います。

ただ、日本だと、本当連れて行くところに困っちゃう。

齋藤精:そうなんですよね。「クラブに行きたい」と言っても、今日なにやってるかを調べないと、レコメンドがなかなかできないという。

あとはロンドンとかみたいにパブがいたるところにあって、「そこにいって1杯やろう」みたいなのも、日本だとなかなか。なにもないから、僕も新橋で雨のなか路頭に迷って、最終的には笑笑だったんですね(笑)。

笑笑も、それはそれで日本のいい体験だったんですけど。全部iPadで頼めるから。

齋藤弁護士:あれ、すごいいけますよね。

齋藤精:いけますよね。「ああ、そういう感じなんだ」とは思ったんですけど。

だけど、日本の文化を感じるとか、もしくはそれに親しい人たちがいるみたいな場所というのが、例えば風営法改正に伴ってできてきたり、もしくはそこが再構成だとか、再構築だとか、再認識されるということができてくると、風営法改正というのが1つ効果を発揮する。

クラブとかミュージックシーンだけではなくて、文化というところに貢献があるところだなとすごく思います。

とくに、さっきちょっと話しましたけど、2020年に向けていろんなことが変わりつつあって。

アークヒルズも今年で30周年なんですけど。それこそ、先々週でしたっけ、虎ノ門の発表? 例えば森ビルさんが「こんなに建ちます」って発表されたり。 国道は環状2号のほうで新しくできたり。それこそ渋谷駅も変わったり。いろんなところが変わってきてる。

その新しくできるところが、インバウンドの方々。たぶんインバウンドだけではなくて、それをやることで地方から日本の方も来る。あとは都市だけではなくて、地方のほうでも、もしかしたら小さい小箱みたいなクラブができてくるかもしれないし。

僕ばっかり喋って、すいません(笑)。

坂口:いえいえ(笑)。

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