2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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五百田達成氏(以下、五百田):ところで、そのあたり(就職・結婚・子育ての流れ)の難しさを「結婚しない男性」のほうは、どう思ってるんですかね?
荒川和久氏(以下、荒川):結婚しない男性側は……それ社会に対してってこと? 結婚しない男性は男性で、社会が認めてくれないストレスを感じていると思いますよ。
五百田:あ、やっぱりそうなんですか!?
荒川:例えば、仮に、30代、40代の未婚女性に対して男性既婚者が「結婚したほうがいい」という発言をしたとすると、それだけで大問題になるじゃないですか。「それってセクハラだ」という具合に。でもその反対に、40代未婚男性が同じように既婚者に言われたとしてもそれほど問題にはならないことが多い。これって不公平だなぁっていう。
そういう扱いは、独身とかソロ男の人間は日常的に体験していて、そうすると「世間は自分たちに関心ないんだな」と思い知らされる。「俺たちがどうなろうと、何をしようと、やっぱりどうでもいいことなんだな」って感じると思うんですよ。
「結婚しない女は負け犬」とかっていって、メディアに取り上げられたりとかっていうのは、まだ注目されているわけじゃないですか?でも独身男性たちって、こんなに数は増えてるのに誰も注目しない。社会的に透明人間扱いで。それこそ、いじめでいう無視と同じなんですよ。存在してないに等しいっていうのが一番堪えるわけですよ。
五百田:なるほど。それは新たな視点でした。
荒川:「おひとりさま」だってね、注目されるのは女子ばっかりじゃないですか。男だって「おひとりさま」活動やってたし、もっと言ったら、女子がやる前から男は普通にやってましたよ。
例えば、最近「カメラ女子」って多いじゃないですか。旅行行くと1人で旅行してカメラバシャバシャ撮ってる女子とか多いですけど……。あれだって、そんなおじさんたくさんいた。
五百田:確かに、そんなおじさん、昔からいましたよね(笑)。
荒川:こんな(撮影用の)プロが使うような三脚を持って(笑)。
五百田:釣りに行くようなベスト着て(笑)。
荒川:鉄道オタクにしろ、歴史オタクにしろ、昔から男がやってた時代は話題にならず、女子がやり始めると注目されるという現象があります。
まあ、そういう具合にいつも脚光を浴びないソロ男たちに着目したわけなんですけど、同じ独身男性でも「結婚しない男」と「結婚できない男」っていうのは、やっぱり考え方が明確に違ってて、「簡単に男をふたつに分けるな」とまたご指摘受けそうですけど、この『結婚しない男たち』という本出したじゃないですか? 出して一番先に叩いてきたのが「結婚できない男」たちなんですよ。
彼らはとにかく、「俺は結婚しないんじゃないんだ、できないんだ」「本当は結婚したいけどできないんだよ」っていう意識がものすごく強くて。そういう人たちが一番主張していたのは「結婚しないというふうに、俺たちをくくるんじゃねー」と。「俺は結婚したいんだ」と(笑)。
五百田:なるほどね。
荒川:結婚できない理由をさんざん自分で言うんですよ。年収も低いし、コミュ力もないし、と。すごく自己肯定感がない。「だからダメなんだ、どうせ俺なんか」っていう話をすごくネガティブに2ちゃんに書き込む。
それに対して既婚者が「ほら、結婚できないお前はダメだよ」とかってディスってくる。そう言われたら言われたで、今度は「何だと!」って、「そんなことない、俺はダメじゃない」って反論したりする。「どっちなんだよ」っていう(笑)。
自分で言うぶんにはいいんです。自分で自虐的に自分を追い込んで、逆にいうとそれで精神の安定を保ってるようなところもあって。でもそれを人から言われるのはすごく嫌で。
荒川:だから、広告会社が自分たちを規定することにものすごく反発する。「お前らに言われたくない」っていう話なんですね。五百田さんの本の中でもあったじゃないですか? 「男は分析されたくない」。まさにその通りで。
「いや、わかってるんだけど、あからさまに分析されて論理立てて説明されるとすっげー嫌だ」みたいなことがあって。
五百田:なるほど。ちなみに「俺たちは結婚したいけどできないんだ」っていう気持ち、どれぐらい切実なんでしょう。女性たちは、生活かかってるし、周りからの目もあるし、どれだけ仕事で頑張っても「女の幸せを得てない」って言われてしまうし、大変です。それに比べて、男性たちは、ほんとうのほんとうに、結婚したいのかな?と。
荒川:どうなんでしょう(笑)。結婚の意志の強さは、さっき言ったようにさすがに女の人が自分の社会的承認なわけだから、ぜんぜん違うと思う。男はどっちかっていうとしなくて済むんだったらしないでしょ。
五百田:もちろん、心の底から、あるいは、家庭の事情で、本気で結婚を願っている男性がいることは、わかってはいるんですが。
荒川:セックスをしたいとか、かわいい女の子とイチャつきたいとかという気持ちはあっても、男って結婚をするっていうことに直接つながんないですよね。そのセックスしたいという気持ちだって、「遺伝子を残したい」っていう本能がさせてるだけだから。
五百田:たまにその本能を振りかざして、不倫や浮気を正当化する人、いますよね(笑)。原始時代ならともかく、現代に生きてるんだから、ちゃんと社会的な行動を取りなさい、と。
でも確かに、男性よりも女性のほうが、本能的に結婚に向いているとは思いますね。それは「社会的承認」とかもさることながら、人と一緒になにかするっていう意識が女性のほうが強いからです。
育てたい、守りたい、一緒にあたたかい時間を過したいという欲求。デートにしろ、結婚にしろ、なんなら仕事にしたって、女性に特徴的で、男性に刺さらないキーワードは「一緒(together)」です。
荒川:それこないだ、中野信子さん(脳科学者・作家)と話したときに、「男は孤独を求めて女は共感を求める」というのが、脳の違いで出てくるっていう、まさにそれですね。
五百田:リチャード・リンクレイター監督の2013年の作品で、『ビフォア・ミッドナイト』というのがあります。パーティのシーンで、ちょっとしたジョークが披露されるんですが、これがおもしろいんです。
大変な事故に見舞われて昏睡状態になって、数日後に意識を取り戻したとします。そのとき。男と女では、リアクションが違ってくる、と。女は、ベッドで目を覚ますと、「あの子はだいじょうぶなの?」「夫は無事?」「一緒に乗っていた人は?」と、ひとしきり周囲の人の安否を気遣い、その後ようやく安堵のため息をつく。
いっぽう男は、ベッドで目を覚ますと、すかさず自分の下半身に目をやり、「(男性器は)だいじょうぶなのか?」と、不安そうに医者に尋ねる……。
男はなによりもまず自分のことを考え、女はまず家族や周りのことを考えるという違いが、よく表れているジョークですよね。
荒川:突き詰めて考えるとですよ、社会生活を送るのは女性だけでいいんじゃないかっていう気がするんですよね。
五百田:少なくとも家庭という組織は女の人が主導である方がいいですね。男が組織を作ると、すぐに昇進したいとか、部下を束ねて派閥を作りたいとか、そういう方向に走りがち。あるいは、よその組織に勝ちたい、とか。
だから共同作業とか、丁寧に育てる、とか、そういうための組織は女性のほうが向いていそうです。
荒川:一番最初の話に戻りますけど、女性が「結婚をするんだ」という強い意志で結婚したとして、そうやって手に入れた結婚生活は継続させたいと強く思うもんなんですか?離婚率の上昇も傾向としてありますけど。
五百田:結婚状態を保つことが目的になりそうですね。
荒川:そうですよね。社会的立場とか承認を得るために妻っていう立場をとって、子供を産んで「誰々ちゃんのママ」という立場を手に入れたわけですから。
結婚すると女性は、「誰々ちゃんのママ」っていう言い方をされたり、自分自身でも「私は何々の母でございます」とか言いますよね。
五百田:私は私だったのに、○○さんの奥さんとか、●●ちゃんのママとか言われて、自分がなくなったように感じる。それでも、家庭を保っていくためには、そんなことは言ってられない…と悩むことになります。
サラリーマンでも、仕事そのものよりも、大きくて有名な会社に勤めていることが目的になっている人は、自己紹介でも「○○社の田中です」と自己紹介するし、絶対に辞めないですよね。
荒川:そういう意味では、男性にとっての会社と女性にとっての結婚は似ているのかもしれないですね。
五百田:ところで、お見合いの復権もひとつのテーマですよね。内田樹(哲学者・研究者)さんが「おせっかいおじさんとおせっかいおばさんが減ったから、結婚する人が減ったんだ」というようなことを言っていて。「いいからお前らくっつけ」というおせっかいな人が増えたらいいんじゃないか、と。
荒川:おせっかいな人たちいなくなりましたよ。それとそういう人たちって、いい意味で空気を読まないじゃないですか。「私がいいと思ったんだから、大丈夫だから。くっつきな」とかって。
五百田:でも、内心「誰かにそう言われたいな」と思ってる人はいると思うんですよ。
荒川:逆に男のほうがそうまでされないと、結婚しないかもしれない。
五百田:白馬の王子様を待つ女性と、純真無垢なお姫様を待つ男性。この膠着状態を解決するためにどちらかが一歩を踏み出すとしたら、それは女性のほうであるべき、というのが、僕の持論です。
荒川:女性からアプローチをするっていうこと? 女性がリードするっていうことですか。
五百田:より前向きで、より必要としているほうが、がんばらないといけない、ということですね。
荒川:結局それってずっと婚活女子の課題で、私がリードしてもいいんだけど男はそもそもリードするような女が嫌いとかっていう、すごいジレンマがある訳じゃないですか? 見かけ上ね。自分がたいしてリードしないくせに、3歩(下がって)ついてきてくれる女が好きだとかっていうわけですよ、男って。
だから、女たちは一生懸命頑張って愛され女子とかになろうとしてる。自分がアプローチしてるんだけど、相手からさせるように仕向けるっていう、すごい高度なテクニックを使うわけじゃないですか。
五百田:理想論かも知れませんがもっとシンプルに、積極的に自分から誘って、ダメだったら仕方ないので次をあたる、という、これまで男がやってきたことをそのままなぞればいいと思うんですけどね。
いまどきの男たちが繊細なんだとしたら、それに応じた口説き方をするしかない。押したり引いたり、なだめすかしたり。受け身の発想から抜け出るだけで、うまくいく例は多いですよ。
それでもやっぱりそれはイヤで、強い男の人に引っ張って欲しい、熱烈に口説かれたいということであれば、いわゆる普通の恋愛・結婚じゃないほうへ進むしかない。
荒川:結婚と経済力は切っても切れない問題で、結婚できない男もずーっとそれを理由のトップにあげているんですよ。「俺にずっと一生お前を養っていけるだけの甲斐性があるのか」みたいなことを自問自答して。けっこう、あれ本心だと思ってて。「いや俺、そんなに稼げるかな」ってね。
五百田:「養う自信がない」とか「仕事が軌道に乗ったら」とかって、言い訳じゃなく、本当なんですかね。
荒川:けっこう本当だと思うんですよね。経済的理由ってけっこう大きくて、男は年収600万以上じゃないと結婚対象外っていうニセ情報も蔓延しているし、「お金を持ってないと……相手にすらされないんだ」みたいなのがあるんだと思うんですよ。
五百田:なるほど。「結婚ってのは選ばれたお金持ちたちのサロンであって、俺たちはそこには入れないんじゃないか」と、思ってるわけですか。
荒川:そんなことを微塵も考えない人は、金があろうがなかろうがガンガン結婚するわけですよ。それは二極化されてるような気がして、あまり考えすぎる男は結婚できないし、結局考えるから言い訳も出てくるんですよね。
五百田:結婚しない理由なんて作ろうと思ったらいくらでもできますからね。ググればいくらでも転がってる(笑)
荒川:余計な情報を入れすぎなんですよね。
五百田:情報を遮断することは大事ですよね。世の中やメディアには、やれ「負け犬」だの「孤独死」だのと、あおるような言葉が溢れていますから。それとどうやって距離を取るかは、とても大事な課題です。
荒川:さらっと結婚してしまう女の子なんて、婚活本なんか読まないですよね。そもそも。
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