2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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山田玲司氏(以下、山田):みんな大好き、『おそ松さん』ですよ。
乙君:ついに終わりましたね。
山田:見てた? ずっと。
乙君:まあ、去年の初めて、『おそ松さん』がどうのって言いだしたときから、追いかけてましたね。
山田:あの岡田(斗司夫)さんのはしゃぎ方もすごいよ。最高なんだけど(笑)。57歳をあそこまでうかれさせるアニメっていうのは、なかなかすげーな、スーパーだなって思って。
赤塚不二夫生誕80周年作品っていうの。ただの祭りと思いきや、みたいなさ、同時にスタートした『ルパン』が悲しいよね、みたいな。なんか、いろんなことがありました。
しかも、おれ、アニメシリーズまともに見たのって、ほんとにひさしぶりだな、くらいの。視聴率すごかったね。
乙君:そうなんすか?
山田:視聴率表見てたんだけど。
乙君:視聴率表?
しみちゃん:(笑)。
山田:みたいなね、流れてきてて。テレ東が、深夜にいきなりガーンって(上がってて)。
乙君・しみちゃん:へぇ~!
山田:過去最高だったらしいよ。『おそ松さん』の視聴率で。だから、うまいこと積み上げてきたものっていうのが、最後に爆発したんだなって。
山田:ところでね、あなたどう思いました? 『おそ松さん』の最後。
乙君:いや、なんか、前の週の……。
山田:ニートが終わるという。
乙君:そう。みんなバラバラになっちゃって、「ああ、どうなるんだろう?」と1週間、やっぱこう、悶々と。「やっぱ、カラ松かっけーな!」と、結局。
そんなかんじで思いながら、どうなるんだろうな、どうせまた戻ってきてワイワイやるんだろうな、みたいなかんじでいくのかなと思ってたんで、まあ、まんまと騙されたというか。「お、おー?」みたいな、「なんじゃそりゃ!」みたいな。
単純にもう、「お粗末さん」だったな、って思って(笑)。お粗末な終わり方だな、というかんじで。とくに何も、言うことはないです。
みんなをバカにしたというか、そういうものだよっていう。まあ、アイロニカルじゃないけれども、シリアスに持っていって騙されやがって、みたいなものは、ちょっと感じましたね。
山田:なんかすげーなと思うのが、あのニートたちは社会に出たときに、すでに地獄しかないっていう描写。だって、一松に関してはホームレスだぜ、ほぼ。で、もう1人はブラック企業でしょ。で、チョロ松だけが親のコネで、辞められなさそうな会社に入るみたいなさ(笑)。
そういうさ、一人ひとりのさ、なんていうのかな、「ニートやめて独立するんだ!」って言った先に、なんの楽しみも希望もなさそうな描写っていうか。
乙君:うんうん。
山田:つまりさ、それまでが人生最高でっていう。これってさ、よく学生時代に歌ってた歌しか歌えない、カラオケに行くと歌えない人たちの現象みたいなのにかぶるわけよ。就職した時点で、何もかもが終わってしまって、そっからは灰色ですみたいな人生の。
だから結局、『おそ松さん』を続けようと思ったら、もう1回ニートに戻る以外ないよなっていう状況に追い込んで、終わってるっていう。前回の引きから。
乙君:あー、あれが就職しちゃうと本当に終わり。
山田:そう。それが何かの終わり。昭和的な何かの終わり。だから、おれが言ってた、タモリさんが『いいとも!』やめた瞬間に終わったって話してたじゃん。
日本の80年代の終わりっていうか、要するに戦後の終わりっていうか。ランドの終わりって言ってたじゃん。
「それの再現だな、これ」って思ったのよ、『おそ松さん』っていうのは。だから、もう1回、スペシャルで、あの時代っていうか。
日常の中で、ああでもねえ、こうでもねえって言いながら、楽しく生きていられた時代の話をやってたなっていう。しかも、庶民たちが、ロクでもない庶民たちが、楽しく生きてたっていう。しかも、フラットだし。
なのに、それが終わっちゃうよ。終わっちゃったら、なんにもねえよっていうときに、戦争法案施行っていうね。
乙君:はあはあ。
山田:だから、日本がこれから戦争に巻き込まれるっていう法律が施行されて、みんな「やめろー!」って言って帰ったら、あいつらみんな『おそ松さん』見てたんだよ。
乙君:はあ。
山田:これがすごく、歴史の転換点としてすごくおもしろくって。どういうことかっていうと、ニートの終わりっていうのは、イコール憲法9条に守られていた、ある種の日本の架空のファンタジー世界の、ランドの終わりでもあって。
それを死守してた夜、戦争法案が施行されてしまうっていうさ。だから、要するにテロの標的になるわけで、これってどういうことかっていうと、いわば「世界に就職しなさい」ってことだね。
乙君:ほお(笑)。……え?
山田:大人になれよって話。
乙君:ああ、日本がって話か。
山田:だから、日本のそもそもの憲法っていうか、この国自体の成り立ちがあまりの地獄を見ちゃったんで、現実を見て世界と対峙しなきゃいけないっていったら、殺戮の嵐だと。子供も女も関係なくぶっ殺されるんだと。殺しに行かなきゃいけないんだとか。
っていうのを知ったから、理想だってわかってるけど、「戦争はしません」って宣言したんだよ。地獄を見た世代が。203高地から下りてきた世代がさ。そっからさ、ずっときてる流れなの。だから、わかってるんだよ。それがファンタジーであるっていうのを。
『おそ松さん』は、まさにそうなんだよ。これがファンタジーだ、ってことがわかってるみたいな。それが受け入れざるをえなくなったっていって抵抗している夜に、『おそ松さん』のラストの回っていう。
「これ、すげーな!」って思うよね。
乙君:うーん、なるほどね。そんなふうに見てたんだ
山田:そうそうそう。だからね、これを逆に言うとね、就職イコール地獄っていうのも、昔、80年代だと、『ツルモク独身寮』っていう漫画あったの知ってる? 『スピリッツ』で。
乙君:ああ、名前は知ってます。
山田:あれは家具屋さんの工場の独身寮に入る男の子の話なんだけど、スーパー楽しいんだよ、その独身寮が。
乙君・しみちゃん:へぇ~。
山田:かわいい女の子いるし(笑)。変な先輩いるし、ウェーイってやる奴。おれと同じ世代なんで、窪之内(英策)くん(注:『ツルモク独身寮』の作者)って。
だから、ノリがやっぱりバブルだったし。当時はバブルなんだよ。バブルの頃ってすごくって、誰も知らないような家具屋さんで家具作る、そして、独身寮に戻る、っていう暮らしがパラダイスっていう。
乙君:へぇー!
山田:そういう時代だったし、それでおれたちは良かった。それと比べてね、就職したおそ松さんたち兄弟の、なんというか、あの暗さ。
もうなんかさ、トド松だよね。1人ぼっちの部屋で月だけ映ってて、窓の外に。それで、真っ暗な部屋でスマホいじってるじゃん。で、スマホの明かりだけなんだよ。涙ぐみながら。
乙君:そうだっけ、あれ、トッティだっけ。
山田:あれ、トッティ。なんていうの、クソリアルじゃない?
乙君:あー。
山田:だから、社会につながってる窓がここだけになってて、家族もなくっていうさ。なんか、就職したくないっていうのとか、働いたら負けっていう背後には、ああいう恐怖感があるっていうのを、見事に描いてたなあっていうのがあってさ。
乙君・しみちゃん:へぇ~!
乙君:おれが衝撃だったのは、十四松の腕がなくなってたことですね。
山田:そうなんだ(笑)。そこかい!
乙君:やっぱ十四松がね、ウェッてこう、たぶん工場で指を落としちゃったんだと。そんで、こうハタ坊がいて、ハタ坊がいるからようやく笑ってられるけどみたいな、悲惨な状況だったんで。
山田:そこでだよ、笑えるのが、「おれたち選抜されたから、戻って来い」って話になるじゃん。
乙君:うんうん。
山田:選抜大会出れるっていうさ(笑)。これっていわゆるさ、みんな1回ニートに戻る。で、何をするかっていったら選抜大会に出る、選ばれたから。これ、天下一武闘会ですね。
乙君:うん。
山田:つまり、『ドラゴンボール』の前半が終わって、もうネタがなくなったら、次は天下一武闘会ですっていうやつのパロディを最後に入れてくるわけだよね。
乙君:あ、そういうことなんだ。
山田:だから、おれたち、なんのために戦ってるのかわからないわけよ、あれ。
乙君:そうですね。
山田:ただ、そのトーナメントの最後に、「優勝したらどうする?」って言って、みんなそれぞれがわけのわからない夢を語るでしょ。
乙君:そうね。
山田:猫に改造してもらうとか。みたいな(笑)。一見、言ってて、あれ1つずつ、1人ずつのギャグで落としてるけど、あれって、優勝さえすれば、途方もない夢がかなうんだ。その選抜っていうのに出て、優勝すればっていう。
トーナメントで優勝すれば、わけのわからない夢がかなって、すべてオッケーになるっていう。これ、まさにおれたちが抱えている幻想であり、夢なんだよ。
乙君・しみちゃん:あ~。
山田:これ、やばいやつなんだよ。歌手でデビューして、一発ブレイクすればとか。
乙君・しみちゃん:あ~!
山田:漫画で一発当ててとか、いろんな。だから、就職して有名企業に入ってどうこうとか。とにかく、トーナメントで優勝さえすればオッケーっていうのが、あそこの一瞬で全部表現されてる、茶化されてる。
乙君:ほーー。
山田:そこにすがるんだよ。そこで、お父さんだけがつっこんでんの、「え、なんなの? なんなの?」。で、お母さんは「いいのよ! それどころじゃない!」。で、「がんばってるから、いいか」って言って、乗っかっていく。
これ、まさに受験とかそうなんだよね。
乙君:あー、なるほどね。
山田:これはね、だからね、「漫画イコール風刺」だっていうののね、最後にものすごく優等生な解答をぶち込んでたっていうのがすげーなっていう。
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