2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
What If We Killed All the Mosquitoes?(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:蚊はただ単に血を吸うだけの生き物ではありません。その一吸いは、かゆみのほか、イライラするというおまけがつきます。
そればかりか、毎年何百、何千人もの人々の命を奪う病気であるマラリアや黄熱病、ジカ熱を引き起こす寄生虫やウイルスを媒介する種類のものだって存在するのです。
2週間前にジカウイルスについて話をしたとき、蚊を全滅させればいいんじゃないという意見をくれた方がたくさんいましたよね。確かに、歴史的に見ても、なにかを絶滅させるのは人類の得意とするところです。憎き吸血生物を地球上から消し去ることなんて、そう考えると朝飯前でしょうか?
まあ、そうとも言えないのです。世界中に存在する蚊は実に3,000種類にもなるのですから。人の血を吸うのはその中でたったの数百種類ですけどね。
蚊たちは人類よりも遥か昔から存在し、何百万年も生き延びてきた生物です。多くの捕食者たちや自然環境の変化にも打ち勝ってきました。簡単に殺してしまうことなんてできはしないでしょうし、虫をたくさん殺すことが人類にいい影響を及ぼすとは考えられません。
なにしろ、かつて私たちには蚊を根絶やしにしようとした歴史があるのですから。地球と、それに私たち自身にも悪影響を及ぼすDDTのような化学薬品を用いた方法で。もし地球の終末環境に影響を及ぼさずに蚊を根絶やしにできるとしたら、どうでしょうか。星に願いをかけると、突然パッと蚊という蚊が消え失せてしまう、なんて、ね。
はたして、蚊という蚊が突然消え失せてしまったとしたら、地球に何か悪影響があるのでしょうか?
科学者たちのなかには、食物連鎖から蚊が消えてしまったとしてもとくに影響はないと考える人たちがいます。もしそうなったとしても、生態系は素早く整備され、ほかの生物が蚊に成り代わるので大丈夫じゃないか、と。
しかし一方で、蚊だって生態の決まりには不可欠な存在なのだからと、そこに意を唱える科学者たちも存在します。
カナダとロシアの北極地域に住む蚊について考えてみましょう。そこに住む、わらわらと群を成して飛びまわる蚊は、巨大なバイオマスの一端を担っています。
寒冷植物に授粉するというはたらきを持ち、渡り鳥の貴重な食料源となる蚊なのですから。
蚊たち、魚たちや鳥たち、そしてほかの昆虫たちの食料である、何千もの種類を持つ生き物である蚊をすべてこの世からなくすことは、生態系を狂わせ、たくさんの生き物たちや植物たちの存在を脅かすことに繋がるのです。
そう考えると、蚊を絶滅させるのは懸命ではないのでしょうね。
もうひとつ言えば、私たちはどの種類の蚊がウイルスや寄生虫を持った有害な蚊であるかを把握しているのですから、それ以外の蚊、すべての蚊を絶滅させる必要なんてないのです。
研究者たちはひどい病気を運ぶ代表格であるヤブ蚊類など、特定の種の蚊に着目して有害な物質を取り除く研究や撲滅する研究を重ねています。
なかでも、黄熱病やデング熱、チクングニア熱、ジカ熱を引き起こす元凶である、ネッタイシマ蚊は1日でも早くやっつけてしまいたい種です。
ネッタイシマ蚊は単なる害虫ではありません。医学的に最も注目されている害虫、最近の蚊の撲滅研究上において、最も注目を集めている害虫なのです。
とはいえ、この先役立つことを有望視されている研究において、ネッタイシマ蚊を徹底的に撲滅させようという動きはさほどさかんではありません。むしろ、ネッタイシマ蚊の遺伝子を組み換える研究のほうがさかんだと言えるでしょう。
2015年に、英国企業のオキシテックはAと呼ばれる自身の細胞の正常なはたらきを抑制する遺伝子を持つオスの蚊を造り出しました。
遺伝子を組み換えられた蚊たちが世に放たれ、自然界でメスの蚊とつがうと、その抑制遺伝子が子孫に受け継がれます。抑制遺伝子を持った蚊の子孫たちは従来通りには成長しません。成虫になる前に死んでしまうのです。
成虫になる蚊がいなくなるということは、病気を媒介するものがいなくなるということにほかなりません。
同様に、カリフォルニアの科学者チームは組み換えた遺伝子を用いて、マラリアを引き起こす寄生虫を媒介するハマダラ蚊に遺伝子操作を行いました。組み換えられた遺伝子は、ハマダラ蚊の体内にいるマラリアを引き起こす寄生虫を、人に媒介できるようになる前に殺すはたらきをもっているのです。
しかも、その寄生虫撲滅遺伝子は99.5パーセントの確率で子孫へと受け継がれるのです!
ハマダラ蚊がマラリアを媒介することがなくなる日もそう遠くないのかもしれませんね。科学者たちはこの科学技術をほかの種類の蚊や寄生虫や、ジカのようなウイルスにも応用できないかと日々考えています。
これまで、科学者たちは意図的にネッタイシマ蚊をボルバキアと呼ばれる、蚊の持つほとんどのウイルスの増殖を防ぐと言われている細菌に感染させることで、目には目を、の戦いを繰り広げてきました。ウイルスに細菌で対抗しているとでも言えばよいのでしょうか。
細菌感染させられたネッタイシマ蚊がデング熱ウイルスを持つ人の血を吸ったとします。そのウイルスは蚊の体内で、次に誰かの血を吸うまでの間に死滅してしまうので、次に血を吸われた人が新たにデング熱ウイルスを媒介されることはないのです。
ウイルスは急速に変化するものなので、科学者たちはボルバキアに耐性を持つ命取りとなるウイルスが突然変異で生まれないかと気が気でないでしょう。
しかし、そんな心配も過去のものとなりそうです。なんと、最近発表された研究結果で推奨された、蚊に一度に1株以上の細菌感染をさせるという方法を用いると、ウイルスは細菌に対する抵抗力を容易にもつことができなくなることがわかったのです。
私たちには蚊が感染している細菌への感染の心配はないので、蚊を殺さずに、細菌感染した蚊と共存すればよいのです。共に生きるというのは、公平な方法ではないでしょうか?
すべての蚊を根絶やしにすることはとても大変です。それに、環境にとってもいいものではありません。
私たちに感染症をもたらす種の蚊、すべての感染能力を取り除く方法が確立され、世界がより安全な場所になる日もそう遠くはないのかもしれませんね。
だからって、蚊に刺されるかゆみは取り除けないでしょうけどね。
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