2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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荒川和久氏(以下、荒川):この『察しない男 説明しない女』という本を読ませていただきました。
あとがきにも五百田さんが書かれてるんですけど、男と女の違いというような話を書いているわけではなくて、「こういう考え方をしている人に対するコミュニケーションの仕方」みたいなことを書いているんですよね。
五百田達成氏(以下、五百田):そうなんです。「自分とは違う考え・価値観の人と、どうやってコミュニケーションを取るか」ということを本質的なテーマに据えています。
荒川:どちら側に読まれてます、男性と女性?
五百田:当初は、コミュニケーションをテーマにしているので、女性に支持されるかなと思ったんですが、結果的に男女半々で、年齢層もまんべんなく読んでもらえているようです。シリーズ30万部のヒットにつながった要因は、そのあたりかな、とも。
荒川:『話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く』って本もベストセラーになったじゃないですか。男軸女軸で二項対立論としてやると、けっこう読むほうはわかりやすいっていうか。世の中の人って二項対立論みたいなのが好きなんでしょうね。
『結婚しない男たち』も「結婚する人・結婚しない人」っていう、二項対立論でみんなに受け取られているんです。別に結婚する・しないの話をしてるわけじゃなくて、そもそもマーケティング本なんですけどね(笑)。
五百田:「結婚」って言葉は、強いんですよね。「うん、結婚しないっていう生き方もあるよね」とかっていう人はやっぱり少なくて、「ダメじゃないか、結婚しなくちゃ!」みたいに反発する人が多い。
荒川:確かにその通りで、自分たちの時代がほぼ100パーセント結婚する生き方をしてきた人たちからすると「結婚しないという生き方」が理解できない。
五百田:結婚というのはとても繊細なテーマです。
荒川:ある意味、結婚は宗教みたいなものだと思っていて、それを信じて生きてきた人たちが、信じ続けるのはいいんです。ですが、「結婚するのが当たり前」なんだから「結婚できないとダメだ」と変換されてしまうのは違うと思ってて。意外に20代の若い人にもそういう考えの人がけっこういっぱいいて。とくに女性は多いです。
五百田:昨今は、草食系男子だの「結婚はコスパが悪い」だの、恋愛や結婚といったものから、男性が一足先に降りちゃって、女性たちが慌ててる構図ですよね。
荒川:この間、「結婚は女性が唯一、自分の社会的立場を手に入れられる機会。だから譲れないんだ」っていう話を聞いて、「なるほどな」って思って。女性でも、仕事にやりがい見出している人は、仕事で社会的承認を満足させられるので結婚には固執しなくてもいいんですけど、そうでない人は“誰かの妻”っていう立場にならないと、社会的に自分が承認されないと。
そういう意識を女性は持ってるんだっていう話ってわかるし、でもそれってすごく日本の闇だなって思うんですね。
五百田:晩婚化や少子化は、「若いんだからもっと恋愛しなさい」だとか「えり好みしちゃダメ」とか、そういうレベルではなく、日本社会の変化と結びついた深いテーマだということは、僕も実感しています。
荒川:僕は思うんですけど、戦後、高度成長期で日本人は「専業主婦」っていう立場をある意味生み出した。発明したといってもいいわけじゃないですか。それはそれであの時代にはすごくマッチしたものだった思うんですよ。
昭和の典型的な父母像というか、「自分のお母さんもそうだし」みたいな価値観がやっぱりみんなの頭の中にある。
五百田:母の世代をマネしたり、あるいは、母の世代を反面教師にしたり、と、行ったり来たり。揺り戻しを繰り返しながらじょじょに進んで行っている印象はありますよね。
僕たちはリベラルに「いろいろな考え方があっていいし、幸せは人それぞれ」と思っているわけですよね。
いっぽうで、「そうやってみんなが好き勝手しているから、この国がダメになってしまうんだ」という意見もある。
もちろん、どちらがいい・悪いではないわけですが、これだけライフキャリアの選択肢がたくさんある以上、「よくわかんないけど、結婚ってのはするものだ」と疑わずに強く念じているぐらいの人でないと、結婚できないのかな、と思うことはありますね。
荒川:よくわかんないけど結婚はするもの?
五百田:「結婚するメリットってなんだろう」とか、頭で考え始めると、勢いが鈍る。「結婚? そりゃしますよ!!」ぐらいに思わないと、このご時世、結婚しにくいだろうな、と。
もちろん個人的には、きちんと考えたうえで、決断するほうがいいと思いますが、「とにかく結婚!」という人にとっては、あれこれ考えすぎると踏み出せないのも確かなので。
荒川:「相手いないけど結婚したい」っていう女性が多いんですけど、あの気持ちがよくわかんなくて。
「この人が好きで、この人の子供がほしいからこの人と一緒になりたい」というならわかるけど、相手がぜんぜんいないのに「結婚という立場、主婦っていう立場に自分がなりたいから、相手がいないけどしたいんだ」っていうのは、よくわかんないなぁと。
五百田:そうですか? 僕は「相手どうこう関係なく、私は結婚という立場を掴み取りたいんだ」という現実的な発想があってもぜんぜんいいと思いますね。その代わり、そういう人は四の五の言わずに結婚に向かって突き進むべき。
荒川:そういう人って結婚できるんですかね?
五百田:強い意志があればできますよ(笑)。
荒川:(笑)。
五百田:結婚をゴールに定めている人は、とにかく強いです。「絶対に結婚するから」と。
荒川:婚活ですよね。
五百田:いわゆる婚活市場というのは、そういう本気の人が集う場なので、中途半端な気持ちで取り組むと、なかなか厳しいわけです。
荒川:でも、そういう人でも、年収とか条件にこだわるんじゃないんですか?
五百田:それはもちろん、生活がかかっているので(笑)。就活にたとえるなら、「自分がやりたいこと」とか「自己実現」とか、そこからスタートしていないということですよね。週休2日が確保されてるか、とか、ボーナスはどれぐらいか、とか。
頭でっかちにならず就職するという姿勢と、考えすぎずに結婚するという姿勢は近いものがあると思います。もちろん、それが絶対正しいわけではありませんが。
荒川:確かに、婚活と就活は似てますよね。就活の例え話に乗っかると、結婚しない人って、学生から起業しちゃう人なんですよ。
会社に入ってサラリーマンになることを何の疑問に思わない人がいる反面、それとは別に「俺は、会社になんか入らなくたって仕事はできるし、やりたいことあるし、だったら自分で会社作っちゃうし」みたいな人もいる。結婚しない人って、こういう人だったりもするから。
五百田:従来の社会制度に乗るか乗らないか、ですよね。
荒川:それはどちらが是でどちらが非っていう話ではないと思ってて。でも、さっきの就職の話でいうと、そういう考え方をしている学生とかを、教授とかは「お前それ甘いよ」とかっていうふうに言うわけじゃないですか?(笑)
五百田:「そんなもんじゃないよ」と。
荒川:「社会なんてね、1回も仕事したことないやつが成功できるほど甘くないんだ」と。結婚って、その例えとまったく一緒で。
五百田:「『天職』とか言ってないで、お前のことを必要としてくれる会社に入りなさい」というのと同じ話ですね。
荒川:1回してみろと。1回すればわかるからと。同じじゃないですか(笑)。
五百田:まさに同じですね(笑)。就職と結婚のなぞらえで言うと、こんなエピソードがあります。大きい出版社から早くに独立してフリーの編集をしている友人がいて、彼が30歳を過ぎたころ、周囲から「結婚しないの?」と聞かれたそうなんです。
ところが彼の言い分としては「結婚するぐらいなら、会社辞めないよ」と。「早くに会社辞めるような自分が、結婚という制度に向いてるわけないじゃないか」という言い方をしていて、言い得て妙だな、と思ったんです。
荒川:会社と結婚って関係深かったですからね。だって、ひと昔前は、会社も大卒の男と短大卒の女の子をいっぱい採用して。そもそも、女の子は腰掛けでいいんだと。うちの社員の誰かの嫁さんになって寿退社をしてほしいみたいな感じがありましたよね。
実際、本人たちは恋愛結婚してるつもりかもしれないけど、これって、会社仕切りのお見合いですよね。
五百田:そうです、そうです。
荒川:社会的なお見合いっていう仕組みが実は日本にはあって、見合い結婚より恋愛結婚が増えてきているっていうグラフがありましたけど、あれ以上に実は見合い結婚があることに本人たちも気づいてなかったりする。
五百田:古き良き会社組織は、イエであり、ムラですものね。
荒川:それは大きな意味でいうと、会社の人事と一緒ですよね。「結婚したら簡単には辞めないな」みたいな。
五百田:「家建てるなら、お金も貸すぞ」と。
荒川:「家なんか買った日には払い終わるまで頑張ってくれるぞ」みたいな。
五百田:日本は、国全体としてそのかたちでやってきたわけですよね。終身雇用と専業主婦とローンがセットになって。
荒川:でもそれ、偶然の一致かどうかわからないですけど、生涯未婚率が急上昇した(注:男女共同参画白書平成25年版「男女別生涯未婚率の推移」では、平成になってから男女とも未婚率が急増して現在に至っている)、この起点てなんだっていうと、あれは終身雇用制を見直して、成果主義になるって言いだしたこと。あと、男女雇用機会均等法が(1986年から)施行されたこと。
これがきっかけでグインとカーブが上昇したんですよ。従来の家制度のような会社組織っていうものが見直された瞬間に、結婚しない人がいきなり増えだしたっていうのは、偶然かもしれないけどおもしろいなぁって。
五百田:生き方の選択肢に幅が出ちゃったから、「え、そっちもありなの?」と。こういう議論が出るようになって、もう、何十年かたちましたけど、かといって、社会の現実や会社の現実は、そんなにドラスティックには変わらないから、まだまだ過渡期。
古き良き日本でもなければ、まったく新しく生まれ変わったシステムでもないから今の時代に、就職して、結婚して、子育てをして、というのは本当に大変ですよ。
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