2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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松浦弥太郎氏(以下、松浦):では「灯台もと暮らし」。
佐野知美氏(以下、佐野):ちょっとスライド多いぞ「もとくら」って、裏で言われてたんですけど。
(スクリーンに「灯台もと暮らし」のパワポが映し出される)
佐野:もう何度もご説明したように、これからの暮らしを考えるっていうのが「灯台もと暮らし」のテーマなんですが。
目まぐるしく変化するように見える世の中を頑張って生きる人のためにもう一度暮らしを見つめ直すきっかけを与えたい、提供したいなっていう思いでやってます。20代5名で作っています。
カテゴリーは場所、コト、人、食、暮らし、営みっていうのは仕事のことを指しています。リアルと比べてWebメディアって温度がないというか、距離感を掴めないので、私たちはリアルなイメージでやりたい。密度濃く。メンバーが紙が好きなので、雑誌の特集の考え方をすごく取り入れています。
徳島県の神山町とか、島根県の海士町、で上野にオフィスがあるのでご近所の蔵前とか、西荻窪というエリアを特集というかたちでとらえて、多い時は50本くらいの記事で1エリアを紹介しています。
さっきも見ていただいたページなんですが、こういうかたちで。
Web・通信の世界ですごく流行っていたというか、ITの町として有名な神山にもちゃんと人が暮らしてるよっていうのを知りたくて行ったものとか。
「この島は未来の縮図たり得るか」というので、島根県の海士町にも。すっごい遠いんですよ、ここ。7時間くらいかかるんですよね。私、ベトナムの方が近いと思ったくらい。ここは2,400人くらいの人口なんですが、この10年で400人くらい移住者の方がいるというところで。
こういったことを、いろんな地域でこの1年やってきました。
今、これ自腹でやってます。というか、あえて広告を入れないメディアでありたいというのが運営方針だったんです。
が、それまでやってきたこと、特集というのにスポンサード、お金を出して一緒にやっていきましょう、というところが出てきて。はじめが宮崎県の小林市でした。最近、そのかたちを始めて、今、公開しているのでは高知県の土佐町もですね。ここもスポンサードで自治体の方だとか、移住促進のPRの方だとかと一緒に作り上げてます。
FAAVOっていうの、松浦さんご存知ですか?
地域×クラウドファンディングのサイト、地域色が強いところと一緒にやろうというところで。
普通はクラウドファンディングの提案者さんって自分でPRをしないといけないんですが、私たちが他己紹介というかたちで一緒に記事を作って、一緒に達成を目指そう、で、達成した場合のみ、PR費用みたいなものをいただこうみたいなかたちです。
これからの暮らしを考える、生き方を考える、というテーマもあるんですが、メディアの生き方も探ってみたいというのもあったので。
すごく新しいなにかをやりたいという思いで、1年目、2年目の今、がんばってるみたいな状態です。
松浦:これは新しいよね、ものすごく。
佐野:正直、すごくうれしかったです、これができたとき。
地域ばっかりやってるわけじゃないんで、訪日外国人の特集だとかも。
あと最近始めたのは、企業特集。地域に根差した企業っていうので、石見銀山の群言堂さんっていうところがあるんですが、2人で始めた会社が今は150人くらいに成長しているんです。
実は私、今日、なに着ていこうかと思ったんですけど、取材した人の服を着ようと思ってこれ、群言堂の服を今日着てみました。会った方とのご縁を大事にしたいので。
私、女性で既婚者なんですが、女性の生き方を考えるコンテンツとして「かぐや姫の胸の内」っていうスナック風連載だとかもやってます。
ほかにもお花の記事だとか、地域おこし協力隊っていう全国にいらっしゃる若者の方だとか、いろんなコンテンツに挑戦していって、その舞台裏をnoteという名前のある種のブログにも書いてます。これ有料と無料が選べるんですが、編集部の裏話だとか、そういった部分もここで紹介してます。
松浦:いいですね。
佐野:反応をまた編集に活かしたりとか。いろんな取り組みを、自分が講談社から来たのもあるんですが、ほんと、実験中ですね。
松浦:まあ実験ですよね、基本、モノづくりっていうのは。
佐野:という感じですね。
(モニターに「くらしのきほん」が映し出される)
松浦:暮らしってどこからどこまでが暮らしってないんだけど、1人になる、一番心が落ち着いたり安らいだり、自分が巣作りしている瞬間に、なんとなく見るものってあるじゃないですか。 そこに僕は自分のメディアを届けたいな、というのがあるんです。
それで1日に3回、「おはよう」「こんにちは」「おやすみなさい」のメッセージを書いてます。1日3回書いてるんです、ほんとに。ちゃんと書いてますよ。機械が勝手にやってるんじゃないんです。生身の人間が書いてるんです。
しかもスピーカーマークを押すと声がでます。ということは僕は毎日書いてるときに、スマホのマイクに向かって喋っているわけです。そんなメディアないじゃないですか。
東出桂奈氏(以下、東出):ないですねぇ。
松浦:さっき言ったみんなと違うメディアにするには、もう少し、リアルにというか、もう少し人の気配を確かめられるものにしたかった。で、1日3回。
それから「おはようさん」という朝限定、朝5時から10時まで限定のコンテンツ。これは朝見たい気分のときの朝の言葉。「泣きたくなったあなたへ」が夜8時から朝5時まで、真夜中のみんなが寝てる時間にしか読めない。
時間限定っていうのは、僕のいろんな思いがあって、Webメディアって24時間いつでも同じじゃないですか。なんかね、僕はすごく違和感があって。
メディアって、たとえばテレビとかラジオにしても、テレビは朝の番組があって夜の番組があって深夜番組があって、ラジオも。だから非常に近いんです、メディアとしては。
だけどWebはそれがないから近いようで遠い。人の気配がしないんです。
だから時計替わりにはならないけど、朝・昼・晩くらいはたとえば、さっきの「おはよう」「こんにちは」「おやすみなさい」くらいは書いて、「あ、夜だ」って確かめてもらえる。もう寝なきゃ、だって「おやすみなさい」って言ってるんだもん、って(笑)。
「おはよう」って言われたら起きなきゃって思うじゃないですか。そこでちっちゃな、かすかなコミュニケーションが生まれてくる。
「おはようさん」と「泣きたくなったあなたへ」は早朝と真夜中にしか読めない。僕はすごく楽しいなと思ってやってます。
それから新しく作ったサービスが「わたしのきほん」。
僕は毎日朝・昼・晩、みんなにメッセージを残す。これって1つの言葉だったり知恵だったりとかするわけです。僕は特別な人間じゃなくて、みんなあるはずなんです。例えば、笑顔であいさつをしようとか、毎日歯を磨こうとか、なんでもいいんです。
そういうことをみんなで持ち寄って、それをみんなで分かち合えればすごい素敵なことじゃないですか。世界中の人が大切にしている自分の知恵とかポリシーとか信じていることとかが、ここに集まってるとうれしいなということで、「わたしのきほん」を作ったんです。
100個しか書けないんです。でも100個書くってなかなか大変なんですよ。でも無限に書けると多すぎちゃって。だからひとり100個、100個書いたら、何回でも書き直して、より「わたしのきほん」を作っていく。一生かけて作っていく。
そういうサービスを作りたいなと思って、今自分でも大変わくわくしてるサービスですね。
それから、コンテンツは料理であったりとか、まあちょっとしたお花の話とか、植物を育てることとかをやってます。で、ここでも僕はスマホ対応をしてますんで、読みやすい文章の量とか、見やすい写真、何回でも使えるような普遍的なテーマっていうのを心がけてます。
僕らがもうひとつやりたいなと思ってるのは、動画。
動画もやっぱりWebならではのものです。しかも何かを、たとえば料理を作るプロセスをわかりやすく解説するのではなくて。自分が毎日料理をしてると、なんかこの瞬間がいいな、ここなんだよ、みたいなのがあるんです。
水が流れる音とか、最後にちょっとものを置くとか。
同時に音も流れていて、要するに環境音です。水の音とか、食器があたる音とか、茹でてる音とか、湯気の感じとか。自分たちのメディアで誰も表現していないものを使いたい。けっしてかっこいいものではないんだけど、でも、なんか素敵っていう。なんか記憶しておきたい瞬間っていうのがあるんです、料理をしていると。で、僕らはそれをアーカイブとして残しておく。
動画も別にプロが撮ってるわけじゃなくて、僕が撮ってる。一部、お願いして撮ってもらってるのもありますけど、90パーセントくらい僕が撮っている。料理をしながら。
さっき桂奈さんも言ってましたけど、僕も料理を自分で作り、テキストも自分で書き、写真も自分で撮る。全部自分でやる。それが自分たちのセオリー。だいたい自分でやる。
それ以外のコンテンツは、さっきも全部並べましたけど、自分たちが使いたいものを作るとか。「たのしいそうじ」とか「洗い方」とか。
全体のデザインにしても写真にしても動画にしてもアニメーションにしても、すべてに1週間に1本の更新でもみんながちょうどいいと思ってもらえるクオリティを担保するっていうのが自分たちの課題でもある。
そして、さっき言った上のほうにあるWebメディアじゃない、近いところにあるWebメディアでありたい。
「くらしのきほん」ってWebメディアって言ってますけど、本当は「『くらしのきほん』ってホニャララだよね」っていうホニャララの部分の言葉がまだ見つからないんです。
WebメディアでもWebサイトでも、インターネットサイトでもWebマガジンでもなくって、なんか誰かが言ってくれるとうれしいんですけどね。なんか自分で言うと恥ずかしいから。
そしてそこにみんなと並びたいなと。
佐野:そうですね。最初松浦さんがおっしゃったプラットフォームみたいなところに似てるかもしれない。
松浦:プラットフォーム、でもプラットフォームじゃないなんか違う新しい言葉でいいと思うんですよ。
そこに、僕らはとにかくみんなで集まるし、みんなで教え合ったりとか、みんなで学び合う。それを、まず3人から始める。だからもし、そこに入りたい人がいたらぜんぜん入っていただいて。
佐野:どうぞ。今でも。
松浦:今入ってもらってもいいし、そういうふうにして、たとえば3人で始まったものが1年ぐらいで300人になって、300のWebメディアが1つの場所にいて、1商店街としてみんなで共有する。グループというか、競争するのじゃなくて、暮らしとか生活とかを楽しもうって思ってるわけだから、みんな。
だからひとつの花壇、景色を作ることができるだろうなあって思ってるんだけど。
プラットフォームなのか、それをこれから作っていく。正しい答えを作るというのじゃなくて。わかんないですけどね。それぞれが更新しているなかでこれだけは宝物のように持っておきたいというコンテンツを持ち寄ってひとつの画面のなかに置いておくだけかもしれないし、3人で取材したなにかでもいいわけだし。
佐野:いいですね。
松浦:とにかく今は3人だから、みんなにも集まってもらいたいなと(笑)。正直、心の支えだから。この3人が言いだしっぺってだけで、別に偉そうにするつもりもないし。
どんどん入ってもらったら、日本にはなんか暮らしとか生活とかもの作りとかをたくさん楽しんでる人たちが、こんなに大勢集まってるWebサイトがあるんだっていうのを世界に発信したいじゃないですか。
佐野:桂奈さんもそれ言ってましたよね。
東出:(うなずく)。
松浦:すごいね、みたいな。キュレーションサイトとかじゃなくてっさ。それぞれがいろんなカラーで、いろんなクオリティで、いろんな言葉のコンテンツが集まってるっていう。それが1つの景色になってたら。1つの方向をぼんやり見ている感じでいいと思うんだよね。たまによそ見しててもいいじゃないですか。なんかそういうことを言ってるの。
雑誌のことを言ってもしょうがないんだけど、どこそこがあれやったとか、どこそこは売れてるとか売れてないとかさ、そういうことを言ってもしょうがないんだよね。もうそういう話やめたいんだよね。
佐野:あははははは(笑)。
松浦:だから、ぜんぜん教えたりするよね、みんなで教え合うし学び合うし、一緒に楽しみたいし。そういうところで基本、インディペンデントでちゃんと自立しているところは同じだと思うし。それと自分たちのちょうどいいはしっかりと持ち続ける。そんな感じなんですよ、ほんとに。
佐野:そうですね。もう少し具体的な話として思うのは、たとえば「スチーブ」っていう名前のサイトを作って、最初はそれぞれの更新記事が1ヵ所で見られるようになったりとか。 暮らしの商店街みたいな、そこに行けばいろんなものが見られるみたいな。
松浦:そうそうそう。 みんなバラバラにいて、たとえば「箱庭」を見てその後に「もとくら」を見て「くらしのきほん」を見てって時間が大変じゃないですか。1ヵ所で見られたりするとお得ですよ。
佐野:やりましょう。
松浦:なんかそういうことですよ。
東出:そうですね。
佐野:さっき桂奈さんと松浦さんがいらっしゃらないときに思ってたのは、日本の人たちが見たときにここに暮らしのコンテンツが集まってる、なにかおもしろい、なにかが見つかる雑誌のようになっていて。海外の人が「スチーブ」を見たときに、日本の今、興味、関心みたいなものが集まってるね、ってそういう場になってたら良いのかなって思ってたりしました。
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