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米原康正×中川悠介 中国市場へ向けたマーケティングノウハウ(全4記事)

“爆買い”の鍵を握るのは口コミ--インバウンド攻略のために知っておくべき考え方

クリエイティブディレクター、フォトグラファーとして活躍する米原康正氏と、きゃりーぱみゅぱみゅなどが所属するアソビシステム代表の中川悠介氏。原宿を中心に、東京のカルチャーを牽引してきた2人のトークセッションの質疑応答です。中国での事例を主としたインバウンド戦略について、米原氏が会場からの質問に答えました。

昔はエロ本にカルチャー色があった

中川悠介氏(以下、中川):せっかくなので、もし質問があったら、どうぞ。

質問者1:yONEさんがいろいろ写真をアップされると思うんですが、中国におけるお客さんの反応と日本における反応、感性の差異があったりするものなのか、中国と香港、台湾、日本、正直みんなけっこうバラバラだと思うんですが、それぞれに反応の個性はあったりしますか?

米原康正氏(以下、米原):中国に行った時のほうが、深い質問をされるというか、僕の写真に対してどんな意味があるのかとか。基本的に、日本はセクシーな写真を撮ったら、セクシーというだけで完結したりするので。

本当に文化がなくなってきたなと感じるのは、昔はエロ本が、すごくカルチャー色の強いものがいっぱいあったのに、今は本当に某大手のAVメーカーが写真を撮ってるエロ本しかなくて。

要するに、エロという部分で、日本では完璧に意味が剥がれて、商品としてしかないという状況なんですが、エロに関しては中国では初めての部分だったりするので、そこに対してすごくいろんな意見を述べています。

政治的なことに関しては、ちょっと語れない部分があったりするんですが、それ以外のところだったら、そこになにを入れるのかという意味をすごく聞いてくるところがあったりするので。

日本はすごく、さっきから言ってる通り、いろんなものに関してカルチャー、文化というものが剥がれている感じがします。全部が商品にされている感じ。中国よりもそう感じます。

質問者2:今、中国でどういう写真が人気というか、日本のカルチャーやファッション、建物など。今はなにが、どういうものが強いのか教えてください。

米原:チェン・マンという、中国の女性のファッションカメラマンがいるんですが、彼女に関してはすでにヨーロッパでも認められていて、日本人よりもかなり多くファッションの写真を撮ったりしています。

それで、日本のカメラマンというと、基本的に荒木(経惟)さんや森山大道、ドキュメント的なカメラマンはすごく人気があるんですが、ファッション撮ってる人たちは誰も知らない。

要するに、さっき言ってる通り、外人が外人を撮るなら意味があるんだけど、日本人がなんで外人を撮る意味があるんだという質問がすごいくるんです。

洋服にしても、なんで外人が着てるものを日本人が買うんだという、すごく当たり前な質問をされたり。要するに、日本でかっこいいと思っているものに対しては、ほとんどヨーロッパの写真見ていれば終わるので、あまりファッションカメラマンというところに関してはないですね。

でも、ドキュメントのカメラマン、そういう人に対してはすごく人気があります。

「爆買い」は口コミが強い

質問者3:いま日本で、爆買いと言われているような爆買い商品は、どのように作られたと思いますか?

米原:中国の人たちが抹茶味が大好きで抹茶のお菓子をいっぱい買うんですけど、なぜかポポロンとキットカットしか買わない。(秋葉原の免税店)ラオックスに行けばわかるけど、キットカットどーんみたいな。

あそこは、売れるモノしか置いてないのでキットカットしか置いてないんですが、そういう状況がなんでキットカットとポポロンしかないのかというところは、けっこう不明で。それは美白の化粧品にしても、資生堂のなんだっけ、名前忘れたけど、それしか買わないみたいな。

そこはある種、誰かがそこで、一度「いい」と言って、それがSNSを通して広がったりして。「なんでなの?」と言われるとわかんない。抹茶が好きなのはわかるんだけど、なんでそこにポポロンとキットカットしか入ってないのか。それ以外はみんな買わない。

「爆買い」が作られた部分は、あまり仕掛けというよりも、口コミの部分がすごく強くて。炊飯器に関して言うと、15万円の象印のが一番売れるんですよ。その下がパナソニックの13万8,000円のが売れる。

ラオックスに行けばわかるけど、その2つがメイン。ほかのも置いてあるんだけど、その2つがどんと置いてある。

でも、15万円でも象印がウケてるのはわかるんですが、パナソニックの13万8,000円が入ってきたのかは、ちょっと不明。なんというか、すごく口コミに大切な部分があると思うんです。

ステマみたいなものに対して、中国人の人たちはすごくうるさくて。ちゃんと本人が好きで書いてるのかどうかというとこに対して、すごく厳しくチェックがあります。多分、誰か好きな人が、好きと書いて、それがどんどん広がっていったんじゃないかと思っています。

海外から見ると日本人は変態?

質問者4:日本のアイドルは今、低年齢化しているというか、中学生くらいが多いじゃないですか。中国でアイドルの市場はどうなっているのか、見る女の子の世代はどのくらいなのか……。

米原:基本的に、中国のアイドル市場は今までぜんぜんなかった。というのも、中国では褒め言葉が「セクシー」と「きれい」しかなかったんです。「かわいい」という、すごく日本的な部分が入ってきて、それで「かわいい」という言葉が出てきました。

(それまでは)そのアイドルのかわいいみたいな部分がぜんぜんなかったんですが、TFBOYSという、今14歳くらいの男の子たちで、6年前に8歳の時にデビューして、その子たちが初めて。低年齢のアイドルを好きになるというのも、中国人にはそれまでなかった話でした。

TFBOYSが出て、その反対にSNH(上海)48、僕も写真集作らせてもらったりしてるんですが、SNH48も、上海のなかと香港のこっちサイド(華中以南の沿岸部)だけだったりするんですが、人気が出てきて。

今はかわいいアイドル市場というのは出てきてはいて、僕もそのなかにある「童顔巨乳」という彼らのコンセプトを利用させてもらってる。中国人たちのコンセプトとして、顔がかわいくておっぱいが大きいという要素があるんです。

でも、それは童顔というか子どもが好きというわけではなく、年をとってる人が童顔であるという部分がすごく必要で。

日本みたいに13歳、14歳の子たちが水着でという部分は変態だと思われていて、そういうのを全面的に押し出してOKになるのは日本だけ。中国やアメリカでもそうですが、未成年のセクシーに関しては、実は厳しい。ローティーンの日本人アイドルが水着になる状況というのは、すごく変態だと思われています。

中川:はい、ほかいかがですか。どうぞ。

中国のニセモノ市場について

質問者5:日本のメディアで中国の市場というのは、パクリやコピーだったり、著作権侵害が多いと言われてますが、ニセモノ市場というのはどうなんでしょうか?

米原:パクリは、死ぬほどあります。基本的に、売れてるものはパクられると思ったほうがいいんですが、ここで気にしなきゃいけないのは、本物を買える人は絶対に本物しか買わないという状況。パクリを買ってる人たちは、10パーセントの富裕層ではなく、90パーセントの貧乏な人たち。その10パーセントの人たちは、本物を求めて日本に来てます。

日本人は、やはりお金を持っているのに平気でニセモノ買ったりするじゃないですか。そこで考えてるからおかしくなるわけで、中国の人たちでいうと、お金を持っている人たちは、いかに本物なのかを自慢するというのが中国のあり方だったりするんです。

そこを、ニセモノを取り締まるお金を使うんだったら、僕は本物を買う人たちにPRしたほうがいい。

中川:そうですね。そのほうが早いですもんね。

米原:今、かなり著作権に関しても法律がいろいろと出てきてて、音楽に関しても今までなかったじゃないですか。それでアリババが動き出して、著作権をまとめるということをしてます。「著作権がカネになる」と思い始めてきているので、かなり状況もいろいろ変わってくると思います。

中川:アリババが向こうで上場したのも、そういう意味もありますもんね。権利をちゃんと守っていくという。

米原:権利がお金になると気づきだしてきている。そこは中国はすごく早いので、そうなると急激に変わってくると思います。だから、ニセモノが流行ってるというものがバロメーターになっているので、中国人の本物を買う人からすると、ニセモノが多く出回っているというのは「あ、これウケてるんだな」という評価の仕方。

僕も中国に行ったら、僕のニセモノがいっぱいあるというのは褒め言葉だと思っている。最初の頃はすごく怒ってたの、いちいち「コラ」って(笑)。カメラマン希望の人が僕と同じものをやっていた。

向こうは先生文化なので、習字にしても水墨画にしても、先生のモノを真似するという文化だったりするので、向こうがコピーしているものは嫌いではなくて好きでやってる。

中川:好きだからそうなってるんですよね。

米原:同じ写真を、本当に同じモデルが同じポーズで、同じ六切とかをしてる。それで、「米原さん!」と見せられて、「僕の夢は、米原さんと一緒に展覧会開くことです」と言って、キラキラした目で見られてた。

最初は怒ってたんだけど、今は習字みたいに赤丸つけてる(笑)。「僕だったら、ここは赤にしちゃうかな~」みたいな。それくらいの余裕でやったほうが、たぶん円滑に進むと思います。

インバウンドに必要な考え方

中川:ほかはどうですか。

質問者6:ネットの話で、抹茶にしても炊飯器にしても、向こうの口コミで作られている感じなんですか? 逆に、その口コミを作るためには、例えば「この人に来てもらいたい」というインバウンドの流れで作ったり、バズマーケティングをしたり、フックになるような仕掛けは、どういうふうにしたらいいですか?

米原:そこはやはり、さっき言ったみたいに中国の人たちが好きなモノというところを探した上で、そこをやっていく作業をしていかないといけないです。今、沖縄県と組んでインバウンドの話を進めているんですが、中国人は、沖縄が大好きなんですよ。

あと北海道も大好きで、北海道と中国でなにかやりましょうとなったら、すごく乗りやすいんですが、じゃあ鳥取県とか、あの辺をインバウンドでちょっとやってくださいと言われると、かなり時間とお金がかかる。

鳥取県が悪いわけじゃなくて、鳥取県のなかの中国人が好きな場所やモノをこちらサイドで探し出して、それで中国の人たちのことを理解した上で、「じゃあこれだったらウケるだろう」という部分をやらないとダメ。

「鳥取県全体を」と言われると、いや、全体はなかなか難しいですよとなりかねないので、まず、自分たちのいる場所や売りたいモノの、どこが中国人の人たちが好きなのかを理解するのがすごく必要な気がします。

質問者6:それを見つけた後は、どういうアプローチをすればいいですか?

米原:それは、好きな人たちに好きと言わせるのが一番いいんですよ。だから、SNSなどで好きな人たちを探し出す作業です。中国はSNS文化で、日本よりもWiFiがどこの店でも通るし、基本的にはWiFiがないと生活できない状況。

日本人が通ってない場所に、いかに直接伝えられるかというところが大切だと思います。真ん中に日本人が入ってくると、日本人の優しい感じで物事を伝えたり、日本のなかで仕事をしていると「その通りでございます」と言われるじゃないですか。だから、そこは中国に対して、ちゃんと中国人に聞かないとわからない。

日本の企業は、本社からいかにお金を持ってくるか、日本の企業からいかにお金を取るかという日本の方しか見てなかったりするので、なるべくそっちを見ないで、中国の人たちに直接話を聞く作業をすれば、もっと早くそういう話はうまくいくと思います。

質問者7:ぜいたく禁止令など、習さんがやられているような政策は、日本のコンテンツが好きな人たちの消費行動に影響を与えているんですか?

米原:かなり、与えてますね。3月10日から、日本のアプリと海外のアプリが直接中国のなかで見れなくなっていて、やるには中国の会社に権利を譲るしかない。iTunes潰しだと言われてます。だから、iTunesでアプリを買ってもそれを開くことはできないと言われているけど、あんまり困ったという話を聞かない。

けっこう多いらしいんですよ。規制すると言って、法律だけできる。もともとある法律でいっぱい規制できるはずなんですけどね。

ですが、習さんのぜいたく禁止令とか、いま「海外で買わないで、国内で買いましょうキャンペーン」みたいなのがあるらしく、中国のどーんと来ている観光客が、徐々に減りだしてるという状況だと聞いています。

そこはちょっと調べていないんですが、基本的に人が減ってる状況だと聞いていて、そういう影響は多分に今後出てくる気もします。習さん自体も、かなり国内でお金を使わせるという部分で一生懸命やってるみたいなので。

中川:はい、ほかはいかがでしょうか。そろそろ時間です。今後、この「MOSHI MOSHI BOX」で、こういう講演会をたくさんしていきたいと思います。ありがとうございました。

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