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米原康正×中川悠介 中国市場へ向けたマーケティングノウハウ(全4記事)

流通だけ考えていたら日本は負ける--今の“ものづくり”が抱える問題点

クリエイティブディレクター、フォトグラファーとして活躍する米原康正氏と、きゃりーぱみゅぱみゅなどが所属するアソビシステム代表の中川悠介氏。原宿を中心に、東京のカルチャーを牽引してきた2人が対談を行いました。盛り上がる中国市場で日本の企業が成功するためには、なにに気を付けるべきなのでしょうか? 

日本企業が中国市場で成功するために

中川悠介氏(以下、中川):ストリート、SNSから企業タイアップまで経験して、日本企業が中国で成功するには、どんなことが必要だと思いますか?

米原康正氏(以下、米原):さっき言ったみたいに、日本企業、日本人の特質として、日本でウケてるものは絶対ウケるはずという。日本人が外国のこと好きだから、外国のこといっぱい知ってるじゃない。

要するに、僕の知ってることは、世界中が知ってるんだくらいに思っていたら、それはすごい間違い。実は世界の人は、ほかの国のことになにも興味なかったりする。

こんな日本みたいに、海外のことしか知らない人たちはいなくて、やはり自分の周りのことに詳しい人がいっぱいいるときに、「これニューヨークで受けてるんですよ」と言われても、「いや、そんなのニューヨークで聞きますよ」となっちゃうじゃない。

そういう部分で、日本はすごく、自分たちの価値観のなかに外国人を合わせていこうという部分が強かったりする。別にその価値観は変えなくていいんだけど、見せ方や、趣味・趣向みたいな部分を、ねぇ。

むりやり緑の帽子を「これいいから買ってくれよ」と言ったって、「いや、男として恥ずかしいっすよ」という話になっちゃう。そういうことを日本の企業は無意識にすごくやってます。

要するに、会社組織としてやってるとすごく困る部分が、上(会社)の価値観で動くこと。現場の話をしているのに、その現場を知らない人の価値観がすごく強く出てくるじゃん。

その部分を、中国でイベントをやるときに、現場を任されてるのは20歳、21歳くらいの奴ら。2、3,000万のお金を26、7の奴らが仕切れるという状況で、すごく全部が若かったりする。やはりそこに合わせていく作業は必要だと思ってます。

中川:「海外インバウンド担当です」、「海外事業担当です」という企業の方とよくお話させていただくんですが、やはり教科書がないから稟議も通りづらいし、100パーセント上司の人のOKをもらえることじゃないと思っちゃう。

僕はある意味クリエイターでもあるし、自分のやりたいことを進めているタイプじゃないですか。そうなると、自分たちが思っていることを瞬時に進めることが一番大事だと思ってるんです。やはり企業のいろんなルールで、けっこうつまずくことが多い。

リアルな声を拾っていく企業が新しい産業を作る

yONEちゃんのように現地に入り込んだり、現地の言葉に翻訳する。でも「クールジャパン」という言葉がバブルになっている。言葉のバブルが一番怖いと思ってるんですが、その言葉自体が走ってるだけで実際は中身がなくて、言葉だけが膨らんじゃってる気がしている。

「爆買い」もそうだと思うんですよね。本当だったら言い方がいっぱいあるのに、そこを考えていくことが大事じゃないかなと思ってます。

中国は大きいマーケットじゃないですか。yONEちゃんがさっきから言ってるように、ちゃんと中国に入り込んで、そっちの色に染まってやっていくというのは、すごく重要なポイントだと改めて思います。

米原:俺、アソビのやり方とすごく同じことやってると思ってる。アソビがこれだけ大きくなったのは、10代、20代の女の子たちの意見をそのまま反映させていくという作業をしてきたわけじゃない。

ところが、周りを見ると、ギャル文化が衰退したのは、どんどん現場の意見よりも上から降りてくる「こんなんした方が売れるぞ」という大人たちの意見の方が、ギャル文化の後半の方になると大きくなったから。

そこが「いや、現場はこういうのが好きです」というのを拾ってあげる大人がいるという部分でいうと、中国に対してもそうで、「中国人はこういうものが好きなんですよ」と、ただ単に僕は「そういうのが好きだったらこういうのどう?」と伝えるだけ。今の日本は、ストレートに現場の意見が通らないシステムになってると思う。

中川:教科書というか表現のうまい人が話を通す時代から、リアルな時代に変わってきていると思っていて。

日本のマスメディアも、テレビや新聞という一番マスな部分の情報よりも、今はみんなSNSとかで発信される言葉を信じて動いているじゃないですか。それは、やはりSNSが活用されるようになってきた理由だと思っていて、それは中国も一緒だと思うんですよ。

米原:一緒一緒。だから本当に、さっきのWeiboという部分も、自分発信が初めてできる場所ができて。

今まで、中国でふつふつと「俺はこんなことが好きなのに全然誰も認めてくれてない」というのが、Weiboに動画を出して歌を歌ったり、写真を出すだけで有名になれる状況で、やはりそれを拾っていく企業は大きくなって、新しい産業になりました。

毎年Weiboで影響力があった人が表彰されるのね。それに僕は、去年選ばれて。日本人は1人なんですけど。やはりWeiboのなかで人気者になったということ自体は、別に僕が芸能人でもスポーツ選手でもなくて、ただWeiboのなかでコツコツと人数を増やしてきたのを中国人はちゃんとわかってて。

別にエロじじいだからウケただけではなく、ちゃんとそこに、なんでエロじじいになってったのかという戦略もあるわけで。そういう部分をちゃんと聞いてくれる日本企業があるといいなと最近すごく思います。

誰よりも自撮りが上手に撮れるカメラマン

だんだん、そういう部分できっちりしたものも出しているので、聞いてもらってはいるんですが、昔みたいにやはり「中国って数が多いんだね」というので一括される状況は、僕にとってというより、そう言った人たちの方が不幸なのかなと、ずっと思ってました。

そういう状況がちゃんとかたちに表れてきてるので、もう今日みたいに言いたいこと言っちゃいます。ちゃんと相手を知る、相手を理解してあげることがすごく大切だし、それは女の子もそうじゃない。女の子たちに、なにがウケているかということを理解してあげれば、そこになにを当てればいいのかは、おのずと見えてくるわけで。

中川:共通部分を言えば、「作り込む」のではなく、「作り出す」という表現が正しいと思う。yONEちゃんの写真も、無理矢理こういうポーズにしろじゃなくて、「あ、それいいじゃん、撮ろうよ」みたいな、押しつけじゃなくて、発生的に作り出すものがすごく重要なのかなと思っていて。

それがカルチャーであって、それを世界中に共通言語で発信する力があるのかなと、yONEちゃんの写真を見てて思うんです。いつも、撮影に立ち会うと、「じゃあCM撮影です」というカメラマンだったら、ガチガチじゃないですか。「あ、そのポーズはいちょっと待って止まって!」みたいな。

yONEちゃんは、「ハーイいーよーいーよー。こーしよー、あーしよー」と、自由に撮るじゃないですか。やはり、その自由に撮る写真の表情がすごく、自分発信している感じでいいなと見ててすごく思うんですね。

米原:写真でいうと、基本的には自撮りを、俺が撮るという話をしてて。「誰よりも自撮りが上手に撮れるカメラマン」という、そういう感じの、撮られている本人が一番気持ちがいいのが一番よかったりすると思って。

それを無理矢理ポーズに合わせたり、一時期流行った海外のポーズとかあるじゃない。そういうのは俺から見ると「なにやってんだこいつら」という感じになっちゃう。それは、やはり実際に海外からしたら笑っちゃう部分も出てくるし、それがまたおもしろかったりするんだけど。

中川:SNSに強いモデルや、SNSに強い子たちはメイクさんを嫌うんですよね。自分がやるメイクが一番かわいいと思ってて、自分が撮る写真が一番かわいいとおもってるんですよ。それがたぶん、一番の答えですよ。発信するパワーが、そこにあるのかなと、すごく思いますね。

米原:だから僕は、大人の役目として、今後こういうSNSの状況ができてきた場合に、大人たちはそういう子たちが集まる場を作ってあげるという、演出する場を作ってあげることが大切で、その子たちを演出することは不可能になってくると思うんだよ。

そういう部分で場所を探すという。僕は、運よくWeiboという場所を探せて、そこで俺がリツイートするとフォロワー数が多くなった人というのはすごく多い。だから、どんどん僕のところに写真が送られてきて、それをリツイートするだけで僕のWeiboが完成していくという状態になったりしたんですよ。

そういうことが、今の日本にすごく必要なのかなと思ったりするんだけどね。

日本は“ものづくりのすごさ”が原点

中川:中国に行ってる日本の企業で、「うまい戦略やってるな」と思う会社はあるんですか?

米原:MUJIは完璧にどんなモールにも入ってるし、あとユニクロも完璧。上海にアジア一大きいユニクロと、世界一大きいユニクロがある。

でも、世界一大きいユニクロがあるんだったら、アジア一もそっちじゃないかと思うんだけどね(笑)。クルマで行くと10分くらいで行っちゃう。あと、味千ラーメンもすごい。でも、味千ラーメンは香港の人が買ったのよ。

香港の人が、熊本に行ったときに「これは売れる」と権利を買った部分で、実際はもう日本の企業ではなかったりする。まあ、「味千」と書いてあるだけ。だから、ユニクロとMUJIは完璧に大成功してるし、最近、「MOUSSY」もすごく調子が良くて、今65店舗ある。

中川:へえー。

米原:もう、バロックジャパン(MOUSSYを展開するアパレル企業)自体は株の50パーセント以上が中国の人たちや会社だったりするので、もう日本の会社とは言えなくて。MARK STYLERも50パーセント以上がそうなんだよね。

そういう部分でいうと、どんどん日本の企業が買われていって、日本人自体が最終的になにを売りに出すのかといったときに、これだけ流通だけが命みたいな世の中になってること自体が、日本はもっと対処法を考えないといけないところ。

やはり僕らはモノを作ってこれだけの日本にしたわけで、それを流通の世界にした人たちは、楽して稼ぐというのを考えすぎ(笑)。

中川:クリエイティビティーのすごさで言えば、「クールジャパン」で日本のすごさはなんだといえば、やはりものづくりのすごさというのは原点にあると思っていて。

日本車やテレビが世界で売れたときは、日本の技術力が高かったじゃないですか。でも、それがどんどん真似されてきて、韓国製品が売れる国もあるじゃないですか。日本に足りないのは、個々の企業で持ちすぎていることと、業種間に接点を持つこと、クリエイティビティーのすごさに自信を持っていいんじゃないかとすごく思っています。

日本のテレビだから、日本の車を宣伝する。そんな当たり前のことをもっともっとやっていかないとダメ。どんどん弱まっていっちゃうと思った。いいものを作ったあと、その次を話し合ってなくちゃダメじゃないですか。そこはすごく思いますね。

なぜみんな当たり前のことを考えないのか?

米原:日本人は、海外に行くと足を引っ張るというか、「あいつが本物の日本だ」「日本じゃない」「あいつは違うんだよね」「俺が本物なんだよ」みたいなことを外人に言いたがる。 要するに、韓国のすごさは、どんなになかで(国内で)仲悪くても、中国に入った瞬間に一致団結して、韓国というものを盛り上げる姿勢をとる。そんな状況が、日本にはまったくない。企業同士が手を取り合って、日本を盛り上げていきましょうという状況を、もうちょっとみんなが考えて……。

中川:連携していくべきですね。

米原:日本をどうするのかという。ちょっと堅い話題になりそうですけど(笑)。

中川:(笑)。

米原:でも、本当に日本をどうするのか考えていかないと。このまま流通だけの状況になったら、大きいところが勝つに決まってるので、このままTPPが決まって、アメリカの流通が入ってきたりしたら、もう一発じゃん。当たり前に考えたらわかるのに、なぜみんな当たり前のことを考えないのかと不思議なんだよね。

中川:珍しくyONEちゃんとまじめな話をしている(笑)。

米原:初めてかもしれない(笑)。

中川:今回、米原さんがやっているプロジェクトと違ったプロジェクトを合体して、お土産を、モノを作っていこうというのがずっとテーマだったんですが、今回完成した商品を、最後に紹介してもらえればと思います。

米原:Moshi Moshiで飾れるお土産物という部分で、基本的には(中国人は)原色が好きだったり、アニメもかなり好きな人たちが多かったりするので。

お土産屋さんに行っても、自分自身が買いたくなるようなお土産屋さんが、あまりなかったりして。なので、ちゃんと自分も使えるようなモノ、お土産で人に渡せるようなモノを、中国の人たちの視線になって作ってみました。

(スライドにTシャツ映る)

これは「CAMPAIGN FOR MOSHIMOSHI」。

中川:「CAMPAIGN FOR MOSHIMOSHI」の説明を、ちょっと。 

米原:「CAMPAIGN FOR EVERYONE」、「EVER YONE」と書いて「EVERYONE」と言うんですが、それは、中国で展開しているものを日本でも売っていこうというECのサイトです。

そこで中国の商品で僕、「童顔巨乳」という帽子を作って、それが評判よく、わりと日本でも売れたりするので、ちょっといい気になって、日本でも売ってみようかという話で、こういう状況になったりしてます。

ちゃんと自分も買いたくなるようなお土産屋さん、お土産物というのがテーマで作ってみました。

中川:今日から阪急梅田のインバウンドキャンペーン、3階で販売しています。あと、MOSHI MOSHI BOXでも販売を始めてます。なので、こういうかたちのモノを作っていければいいなと思ったりもしています。

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