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ニコ生岡田斗司夫ゼミ2月7日号「オタキング新事務所発!テレビ離れしていくお笑い業界と復活のコーヒータイム!!」(全3記事)

子供向けと侮るなかれ 映像センス溢れる、映画『パディントン』の魅力

オタキング・岡田斗司夫氏が「(2016年)2月に見るべき映画・見てはイケナイ映画」について解説を行いました。今回はイギリスの児童文学作品『くまのパディントン』を実写化した『パディントン』、リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演によるSF超大作『オデッセイ』、小野不由美原作のホラー作品『残穢 -住んではいけない部屋-』、アクションムービー『エージェントウルトラ』、 ワールド・トレード・センターでの綱渡りを描いた3D作品『ザ・ウォーク』の5作品を紹介。この中で岡田氏が「見るべき」とプッシュした作品は『パディントン』。映画レビューサイトでは高評価となっており、とくに見所はかわいらしい世界観とセンスのあふれる映像美だと語ります。

見るべき映画は『パディントン』

岡田斗司夫氏:では、今日のお題ですね。2月に「見るべき映画・見てはいけない映画」ということで。映画の話を少ししましょうね。

一応、今公開中で映画の話に出るのが『オデッセイ』ですね。あと、『残穢(ざんえ)-住んではいけない部屋-』『エージェントウルトラ』『パディントン』『ザ・ウォーク』ですね。こんだけ観てきました。

それで、見るべき映画というのでいうと、実はこれ好みはあると思うんですけど、『パディントン』ですね。すごいです。基本的には子供向けの映画なんです。

パディントンという熊がロンドンにやってきて、住む家を探して、イギリスのおうちに行くコメディなんですけども。

予告編とかでは全然わかんないですね。とにかく全編の上品さとかわいさがすごく好きなんで。変な言い方ですけど、『アメリ』好きな人だったら見れるはずだと思うんですけど。

ところが、家族映画として紹介するしかないし。あとは、Yahoo!とかああいうところの映画のレビューとか見ても、とにかく「感動しました」とか、家族向けの映画です」とか、「誰でも見れます」って書いてるから、ぬるい映画に見えちゃうんです。

ぬるいはぬるいんですよ。お話自体は本当にドベでもあるんですけれども、画面センスの良さとかがものすごくて。映像を志す人は見たほうがいいし。

あと、CGの熊とわりとセンスの良いロンドンの部屋との合成のつなぎ目が全然わかんないって、上手さがあるんですね。まあ、困ってるんだったら、パディントン見とけです。

それ以外は全部、基本マニアックな映画になってきます。マニアックな映画を1本1本やってきます。

見なくてもいい映画はどれかな……。『エージェント・ウルトラ』はわりと見なくてもいいですよ。この中で一番印象が薄いんですけども。そうですね。見なくてもいい映画いうよりも先に見るべき映画を言ったほうがいいですね。とりあえず、迷ったら『パディントン』ね。

3D映画の新たな挑戦『ザ・ウォーク』

高所恐怖症でない人は『ザ・ウォーク』。『ザ・ウォーク』は3D映画の新しい見せ方というか、真剣に怖い。本当にただ単に。だって、映画として持つわけないじゃん。綱渡りするだけだからね。それも、ワールドトレードセンターの上に綱張って渡るだけで。

考えてみたら、めちゃくちゃ迷惑なやつなんだよ。本当に法律違反だし、自己満足のためにやってるし、何にもいいことないし。途中まで手伝ってくれた彼女も「あなたの自己満足にはついていけないわ」って最後別れてしまうぐらい、本当に人間的には嫌なやつ。

だって、綱渡りをさ、アメリカでワールドトレードセンターの上で1回成功しただけで、それっきりニューヨークにずっと住んで、次のチャレンジやってないというような。一発当ててそれで食っていこうという奴の自伝を元にした映画だから、本当に自己賞賛が激しいんだけど。

ただ、映画としての3Dの見せ方がもう本当に怖いから、手に汗握って、けっこうよかったです。

ミステリーとしての作り方がうまい『残穢 -住んではいけない部屋-』

次に『残穢 -住んではいけない部屋-』ですね。小野不由美原作の映画なんですけども、ホラーというよりはミステリーですね。なので、普通のホラー好きの人は、見てもあまり怖くないのでびっくりするじゃないかなと思います。

それよりは、ミステリーとして作り方がすごくうまいので、キャーキャー怖がるために見に行くというよりは、「えー、これ、どうなるの、どうなるの? おもしれー、おもしれー」っていう興味のほうで見ていって。

最後のほうに一応ホラーがあるので、まあ、よかったね、というですね。わりと僕が、ちょっと系列違うんだけども、似てるなと思ったのが『異人たちとの夏』という大林さんの映画があって。これ、1980年代だったと思うんですけども。

主人公の風間杜夫がもう中年男になってるんだけども、仕事がうまくいかなくて「ああ」と思っていて。そして、曲がり角を曲がったら昔の自分の父親と母親に会うと。

それも本当に何十年も前に死んだ自分の父親と母親がまだどっかに住んでると。昭和丸出しのアパートに住んでるっていうやつなんですね。

出会って、そこで話して、だんだんお父さんとお母さんに昔言えなかったことを一生懸命言おうとしたりするっていう人情モノなんだ。「人情モノなのかあ。新しいな」と思ったら、最後のほうで大ホラーになるんだけども。印象としてはこれに似てると。

ミステリーで「これどうなってるの?」というふうにどんどん謎を追求していくと、最後、大ホラーになるというのでやってるんですけど。すごい似てるんですけども。

おもしろさでいうと、ミステリー部分もおもしろいんだけど、最後のホラーはいつものように、黒いの出てきて襲ってきて「きゃー」「世の中、怖いねー」というやつでですね。

僕の嫌いな、逆さまになった白塗りの男の子が降りてくる映画なんでしたっけ。『呪怨』だ。呪怨系列の意味のわからぬ、論理的でない怖さなので、僕は怖くなかったです。

映画館で見てる人はそこそこ楽しんでて。新宿TOHOの映画館のトイレではものすごい盛り上がっていて。とくに女子トイレではすごい話が聞こえてきたから、デート映画としてはいいんじゃないですか。女子トイレからあんだけ声聞こえてくるんだから。

SF超大作『オデッセイ』のおもしろさ

肝心の『オデッセイ』ですね。SF超大作の『オデッセイ』。一昨日から公開されたやつ。これは普通におもしろいです。ただしっていうのもなんなんだけども。最近そういう映画が増えてきたんだけれども、『ブリッジ・オブ・スパイ』も『オデッセイ』もそうなんだけど、基本的な知識があったらものすごくおもしろい。

例えば、『オデッセイ』では「アリス3」というミッションで火星に降りると。「アリス3」というミッションってことは、NASAの宇宙開発のやり方を知ってたら、「アリス3」というのは人類で3番目の火星着陸なんだってわかるようになってる。

それで、「アリス4」のミッションの資材がどこそこにあるからって言われたら、次の4年後か5年後の火星有人飛行用の資材だけが火星の離れた場所にあらかじめ置いてるんだな、と。

まあ、アポロ計画の月着陸までは違ったんだけども。最近の宇宙開発のやり方というのは、あらかじめ要るものを……。例えば月とか火星にどんどん缶詰みたいな感じで置いておいて。人間はできるだけ手ぶらで行って、現地でそれを開封してやるという。

旅行するときにクロネコヤマトでスーツケースを先に送るみたいな。そういうやり方がNASAがやろうとしてるやり方なんですけど。それを当たり前のようにやってるんで、見てる人はマット・デイモンが、なんでそんなに火星の離れた所に行くのか、ちょっとピンと来ないところがあるんだけど。

でも、手に汗握るいい感じのSFミステリーですね。リドリー・スコット、久しぶりにお話が通じるというか、見てる人間が共感できる映画を作ってくれたということで、映画業界でも評判がいいようです。

僕的には、初めてマット・デーモンが頭が良い映画を見たということです。マット・デーモンというと「馬鹿だろう」と思ってたのが、「今回、マット・デーモン、頭良いじゃんか」というのがすごい意外でした。

なので、個人的なオススメでいうと、本当に迷ってるんだったら『パディントン』行けばガラガラだしいいよと。普通のおもしろい映画が見たいんだったら『ザ・ウォーク』だし。

SFアクションとか好きなんだったら『オデッセイ』見たらいいですよと。ホラーはたぶん『残穢』はたぶん思ってたのと違うけど、ミステリー的なおもしろさがありますよと。

映画.comの点数はわりとあてになる

『エージェント・ウルトラ』は主人公が過去の記憶がないスーパーのバイトなんですよ。過去の記憶がないスーパーのバイトなんだけども、CIAの秘密捜査員みたいのに襲われると。

それは何かというと、過去の「ウルトラ計画」というのがあったんです。それはすごいスパイを育成する計画だったらしいんだよね。それはもう失敗だというのがわかったから、昔の実験体のあいつを殺そうということになって、殺しにいくんだけど。

そしたら、目の瞳孔がパッと開いて、昔スーパー訓練を受けたCIAの工作員だったという思い出がハッと蘇ってガーって暴れて、「俺はいったい何なんだ。なんでこんなことができるんだ?」っていうやつなんだけども。

こういう映画はいわゆる「マトリックス型」というやつだよね。マトリックス型って30分目くらいでだいたいわかってきて、1時間目くらいで倒すべき敵がわかってきて、というような「構成」みたいのがあってしかるべきなんだよ。エンターテイメント作品だから。

ところが、その構成みたいのがだだ遅れで。最後の最後まで「これ何なの?」というのが、スッキリしないまま(笑)。まあ、お話としてはちゃんとハッピーエンドで終わるんだけども。

「結局、ウルトラ計画って何だったの?」結局、途中に出てくる、みんな目が死んだみたいな主人公を殺そうとする、CIAが作ったサイボーグじゃないんだけども。「人間兵器みたいなやつだって、何だったの?」というか。その「何だったの?」がほとんど解決されないんです。

そこら辺がちょっとがっかりが強かったですので、見てはいけない映画は『エージェント・ウルトラ』じゃねえかと思って、後で映画.comを見たら、3.1になってたんです。やっぱ、3.1の映画なんか見ちゃいけねえなと思いました。

映画.comの点数わりと役に立つよ。本当に3.4以上の映画は見たほうがいいし。3.2とか3.1は「おもしろくないかもわかんないけど、好きだなと思った時に行く」ぐらいにしたほうがいい。

で、『パディントン』、4.0だから(笑)。滅多に見ないよ! 『スターウォーズ フォースの覚醒』と同じぐらいなんじゃないのかな。

なので、暇な人、何見ればいいかわからない人は一応僕はオススメは『パディントン』ですね。センスがいいです。

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