2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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伊藤さとり氏(以下、伊藤):種田さんが本当に世界をまたにかけて活動されてるじゃないですか。日本でも本当名だたる監督とお仕事ご一緒して。
また、『キル・ビル』でタランティーノ監督に呼ばれるとすごいと思うんですけど、タランティーノの監督に2度目のオファーされた時って正直どういう気持ちなんですか?
種田陽平氏(以下、種田):嬉しいような、怖いような。そんな感じかな。え、どういう意味?(笑)
伊藤:やっぱりこだわる部分が相当なのかなと思って。
種田:いやいや、『ジャンゴ(繋がれざる者)』の時とかも「このセットやんないか」とかあったのね。なかなか実現しなかったのと。あと、役者さんじゃないんで、アジア人でも、とくに西部劇だったら、できるだろう、みたいなのもあったんで。そういう意味ではよかったですよね。
伊藤:とはいえ、ねえ、高橋さん、中で展開されるのは本当に種田さんの作り上げたセットの中でずっと展開されるじゃないですか。そのプレッシャーって相当なのかなと思うんですけど。
高橋ヨシキ氏(以下、高橋):そうですね。これは時代ものだし西部劇ということもあるんで、これは例えて言えば、アメリカ人のアートディレクターが時代劇のセット作る、みたいな状況だと思うんですよね。
それと、時代考証というのはもちろんされると思うんですけど、ただ、今回はセットで。これ種田さんにうかがいたかったんですけれども、山小屋の中で、当時ですから、窓は一応ありますけど、外は吹雪で、光源が限られてるじゃないですか。照明をどういうふうに置くかって、だいぶ苦労されたと思うんですけど、それちょっとうかがいたいなと思って。
種田:通(ツウ)な話(笑)。セットだったらどうにでもなるんですけど、「本当の雪山で息が白いのを撮りたい」つって。セットの前に、まず高度3000メートルの山小屋作ってそこで撮ってるから、ライトの隠し場所ってなかなか無いんで。
それでちょっと天井を工夫して。天井の上にライトがあって、その天井の隙間越しにライトが動いてる、みたいな。そういうのを提案して。クエンティンとボブ・リチャードソンはお喜びみたいな。
伊藤:本物の雪山ですよね。そこにセットですよ。いやー。
高橋:でも、室内のセットも、あれ、冷凍装置をつけて冷やしたんですよね? 息が白くみえるようにっていう。
種田:あのね、夜になってからの後半戦はロスのスタジオの中で。けっこう雪山の中でクレーン突っ込んで自由に飛ぶの大変なので、セットに同じものを作ったんですね。
ただ、ロスのセットなんで、外は30度ぐらいで暖かいじゃないですか。それを、スタジオの中を零下5度するって言って、同じ温度にしてちゃんと息が白く出るようにして。もう役者さんは凍えるような状況の中で全編撮ってるという。
伊藤:ありえない。役者だったら辛いですよね。
栗山:辛いですね~。正直、見た時にそういう状況で撮ってると思いませんでした。
種田:思わなかったでしょう?
栗山:あと、小屋の中入ったらずっと、もうセットかなって。皆さん見ると本当に寒そうなのでびっくりすると思いますけど。中でもすごい格好でいる方もいるじゃないですか。
種田:そうですね。息がCGじゃないので。息が本物なので。昔、『エクソシスト』で息が本物だというので話題になったけど、あれ1シーンじゃん。これ全編だから。役者さん本当大変だったと思います。
高橋:エクソシスト、しかも部屋が狭かったんで、あれは冷凍倉庫借りてその中でセットを作ったんですけれども。今回はセット作ってそれを冷却したっていうことなんですよね。
種田:大きなステージを冷蔵庫のように2ヶ月間冷やしっぱなしなんですよ。
伊藤:え~!
高橋:温度下げるために? 大変ですね。
種田:役者さんが「さすがにきつい」って言ってましたよ。外に出ると30度でしょう。中に入るとマイナス5度とかなんで。きついって言ってました。
高橋:体調変わりそうですね。
種田:「カット!」っていうと、みんな役者さん外に温まりに行くんですよ。外でバッて脱いでTシャツになって。「本番!」ていうと、一生懸命着て、入るっていう。
伊藤:過酷ですね。
種田:過酷ですよ。
伊藤:そんな過酷なのに、やっぱり仕事したいっていう、種田さんだったり役者の人たちがみんな毎回来るわけじゃないですか。栗山さんは、でも、タランティーノの魅力というのは、ご一緒してて?
栗山千明氏(以下、栗山):楽しいです。何よりも。もちろん、そういう過酷なこともあるとは思うんですけど、私の経験だけで言わせてもらえば、本当に「撮影楽しい!」って実感できる現場だから乗り越えられるところがあると思いますね。
本当にチームワークというものも感じますし、何よりもクェンティン自身がすごい気配りもされるし、空気も読もうとするし、みんなのテンション上げたりとかされるので、そういうのが大きいのかな、と思いますが。
種田:役者さんのこと大好きなのよ。役者さんを演出してるのが大好きなので、GOGO(夕張)だったらGOGO演出してるのも大好きなのね。そうすると、イヤと言えないというか。「もう1回やろう、もう1回。今のすごい良かったから、もう1回!」。
栗山:そう! そういう言い方するんですよ。「う~ん、もう1回」みたいなことではなく、「いいんだけど、もっといいかもしれないから、もう1回やろう!」みたいな。って言われると、「そうかもしれない、やろうかな!」って気持ちに。
種田:それが、最近はスタイルが定着してやり方がちょっと変わったのね。「もう1回!」っていうでしょ、「今のOK、OK! OKだけど、もう1回!」というのよ、最近はね(笑)。「OKだけど、もう1回」って言うと、そこにいるスタッフ全員で「Because we love making film!」って言うんだよ。
高橋:「映画作り好きだから」。
種だ:そう。言わなきゃいけないのね。
栗山:もう合図のように? なるほど。
種田:もうそれが定着してて。だから、「OK」なんだけどまだやんなきゃいけないのよ、役者さんは。でも、そう言われるといやな気持ちがしないというか。映画作り好きだから、もう1回撮ってみよう、もしかしたら、いいかもしれないから、というやり方なので。だから役者さんは気持ちいいと思いますよ。嫌とは言えないし。
伊藤:種田さんはどうなんですか? 現場で「もう1回!」とか「ここ、もうちょっと」とか言われたりやっぱりするんですか?
種田:俺は言われないですよ、撮影じゃないから(笑)。
栗山:でも、私のシーンでいうと『キル・ビル』の時に青葉屋っていうセットがありまして。私がアクションで破壊してゆくんですね。でも、「もう1回」なんて言われた時に、そういう時にちょっと直したりとか、わからないですけれど、そのたびに困ることとかないんですか?
種田:う~ん、それはあんまりないけど。壊す場所が増える、それは困る。
伊藤:相当壊されてますよね?
種田:いやいや、『キル・ビル』に比べたら全然。『キル・ビル』のGOGOの壊し方とか半端じゃないから。予定じゃなかったところがどんどん壊されていく。だから、「もう1回」はたぶん予測してみんないくつも用意してるんだけど。全然初めてのところ、「ここを壊したい」とか、それはけっこう困ると思いますよ、たぶんね。
伊藤:高橋さん、何か聞きしたいことありますか?
高橋:そうですね、何でも聞きたいですけどね(笑)。
種田:ちゃんとした、あれを話してないんじゃないですか。70ミリの話。ちょっとだけしたいの。
高橋:そうそう。70ミリ映画ということで。タランティーノも満を持してというか。その辺についてちょっと。撮影のほうは70ミリだとカメラ大きいから大変ですよね。
種田:70ミリ映画って知らない人もいるんだけども。栗山さんなんかももう記憶にないかもしれないけれども、昔、お正月映画見に行くっていうと70ミリだったのよ。それをね、よくタランティーノ覚えてたわけ。ロードショーで70ミリ見たっていうの。
それをやりたくって、全編70ミリで撮るって。20年とかもっとかな、撮られてない、部分的にしか撮られてないんだけど、全編70ミリで撮るのをやりたいって言って。で、やったのね。
カメラもでかいし、フィルムもこんな厚いし。一番違うのは、今日見て、70ミリの映画は横に長いんですよ。昔は70ミリの映画が始まる時は枠がさらに開いてぐわっと囲むような。1:2.75なんですよ。
今のシネスコは1:2.35ぐらいで。パノラマピクスサイズなんだけど、それよりさらに長いんだよね。それが一応、この映画の監督の一番のこだわりのところなんで、やけに縦に狭いと思わないでください。
高橋:横に広いんですね。
種田:横に広いんです。で、粒子が普通の35ミリ映画の何倍も高いわけよ。だから、でっかいののでもう1回見なおしてもらえるといいなって思ってて。例えば、「丸の内ピカデリー」とかでやるんで、もう1回、今日ので気に入ったら、大きい映画館で70ミリを見てもらうといいなと思います。
伊藤:それによって、だからこそ全体の人物像だったり、どこで誰が動いてるかも、なんとなくフィーチャーされながらわかってくるっていう効果があるんですね。
種田:だから人物配置が、こう、左に誰かいるでしょ、右のほうに1人怪しいやつがいて、遠くのほうに1人いるとしたら、それが1つの横長の画面に入ってるわけ、ちゃんと。それはね、見どころなんだよ。
伊藤:そっか、だから、事件がわかったあとにもう1回見ると、また楽しめるってことですよね。
種田:そうそう。
栗山:そういう見方ができるんだ。
高橋:昔だったら70ミリの映画とかっていうのは、テレビでやる時というのは、昔のテレビは幅狭いですから。しょうがないから、あとから動かして無理に移すようにしたりしてて。そうじゃないと壁しか写ってないみたいなことになっちゃう。それぐらい広いってことですよね。
種田:そうそうそう。
高橋:昔だったら、この辺に「テアトル東京」という劇場がありまして。70ミリ、シネラマも写せる場所があったんですよ。なくなってしまったのでしょうがない。
伊藤:あと、音楽の話もね。モリコーネ……。
高橋:そうですね。タランティーノ、前からモリコーネ(Ennio Morricone)好きはずっと言ってて、いろいろ使ったりもしてたんですけど。今回はなんと、あの御大に書き下ろしていただいたというね。
種田:今まではやっぱりモリコーネの曲を使わせてもらってたっていう感じだけど、今回87歳だからね、87歳のモリコーネに、ずっと憧れのね、音楽家に作ってもらって。その「Music : Morricone」って出るわけだから頭に。もう監督にとってはグッときてると思いますよ。
伊藤:タランティーノとモリコーネがコラボったというので、さっき皆さん入場の時ずっと「ジャン、ジャジャーン」って流れてたのが、あれが曲だったりするんですけどね。
高橋:タランティーノ本人は「10本映画撮ったらやめる」ってよく言ってるんで、今回8本目なんですけれども、そこにきて、モリコーネさんがご高齢で、実現したというのはちょっと奇跡的なことだと思ってるんで。よかったと思ってます。
種田:『キル・ビル3』もまだ生きてるからね。
栗山:生きてるんですか?
高橋:やりたいって話、言ってましたね。
種田:やりたいっていうのは生きてるからね。
栗山:まあでも、私、死んじゃったからなあ……。
伊藤:違うバージョンですかね。
種田:昔の話かもしれない。
伊藤:なるほどね!
種田:回想シーンで出てくるからね。
伊藤:あとエピソード0的な感じで。
栗山:でも、ちょっと待って下さい。だいぶ歳がちょっと……。
高橋:GOGOのお姉さんっていう役があるかもしれないです(笑)。
伊藤:実のお母さんとかね(笑)。
栗山:お母さん!?
種田:あとね、子供時代のGOGOとか、出てますから。まあ、演じることはできないですけれども(笑)。
高橋:実現してほしいですね。
伊藤:栗山千明さんはタランティーノ監督とやっぱりまた一緒にやりたいですよね?
栗山:やりたいです。やりたいですけど、会うたびに「千明、英語の練習してる?」「千明が英語の勉強する代わりに、僕も日本語を勉強するから」って、会う度に言うんですけど。お互いに上達してません(笑)。
種田:監督が今でもよく言うのは「あ、そう」。「あ、そう」は今でもよく言いますよ。僕じゃなくて、アメリカ人同士にも「あ、そう!」って言ってるもんね(笑)。言う必要ないのに(笑)。
伊藤:どこで、誰の喋りがおもしろかったんですかね、「あ、そう」は。種田さんじゃないですよね。
種田:僕じゃないですよ。あとね、千葉(真一)の真似して「ベリグー」って言うんだけど、それも日本語だと思って話してると思います(笑)。英語だと思ってないみたい。よくね、「ベリグー、ベリグー」って。
高橋:日本語だと思って言ってる(笑)。
種田:日本語だと思ってる。
栗山:嬉しいですね。そういうちょっと、日本人、わたしなんかもそうですけど、と関わったことによって影響されて、それが未だになんかクェンティンの中に生きてるって思うと、私は嬉しいです。
種田:日本映画好きでしょうね。
伊藤:種田さんはまだこの先もタランティーノ監督と何かやるっていう予定とか?
種田:わからないですけど、僕ね、4本目が『キル・ビル』で、8本目がこれなんですよ。だから、また12本目くらいに。
伊藤:いやでも、間でも、もっと小刻みに見たいですよね、みなさんね?
栗山:見たい。
種田:いやいや。難しいですから、そんな毎回は。でも、今回の作品はやってよかったなと思ってます。ていうのはね、なぜならば「マスターピースだから」と皆さんに宣伝してほしいなと思ってます。
伊藤:種田さん的に、ぜひここをチェックしてほしいという部分があると思いますけど、とくにこだわったところってございますか、お客さんに? もし、2度目観るならとか。
種田:ここを見てくれっていう見せ場ですね? キリストの顔をよくやって、というのと。あとはセットがね、ワンルームなんだけどワンルームに見えないんですよ。
それがやっぱり70ミリの成せる技なんで。それは見てほしいなと思います。普通のただのワンルームに見えないんですよ。後から後からいろんなものが見えてくるっていうふうになってるんで。
あと、駅馬車に名前がついてる。
高橋:女の人の名前がついてる。
種田:名前が見つかったら、ラッキー。
栗山:あれ、気付かなかった!
種田:気づかなかったでしょう(笑)。最初つけてなかったんだけど、クェンティンが駅馬車を女の名前で呼びたいんだって。「赤い駅馬車」とか「黒い駅馬車」とかで呼ぶのやだっていったから、急遽現場で「書いて」って言われたらしく、現場のやつが。
下手な字で「Tammy」って書いて。後で見て「えー、こんな下手な字で書いたの?」っていう。名前がこう「Tammy」って書いてあるんですよ。あと「Miss Malta」っていうと。名前が付いてるんですよ。
栗山:おもしろい。
種田:というのはね、キャラクターで呼ぶといいんだって。要は、役者のこともGOGOとかキャラクターで呼ぶように、使ってる小道具もキャラクターで呼ぶと演技をし始めるって言うんです。生き生きとしてくるから「名前で呼ばなきゃ駄目だ、みんな!」とか言って。
伊藤:おもしろい。ありがとうございます。高橋ヨシキさんはこの映画どんなところにとくに注目すると?
高橋:注目するところいっぱいあるんですけれども。後半のことはあんまり言えないんですけど、前半はじっくり後半に向けてセットアップをしてて、今回は非常にそこを丁寧に丁寧にやってる映画なんですけれども。
それから、そこにギャグも入りながらですけども。その前半をよく見とけば見とくほど、後半が楽しいっていう映画になってますので、しっかりと見ていただきたいと思います。
伊藤:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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