2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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伊藤さとり氏(以下、伊藤):皆さん、お待たせしました。本日はちょっと雨が降ってたりもしてたんですけれども。タランティーノの最新作です。アカデミー賞でもね、皆さんは興味が随分とあると思います。『ヘイトフルエイト』公開直前トークショーにご来場いただきましてありがとうございます。司会をします、映画パーソナリティの伊藤さとりです。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
伊藤:そして、今日はもう一方、司会をしていただくことになったんですけれども。映画技法のアートディレクターであり、そして映画ライターの、クエンティン・タランティーノを崇拝してらっしゃる、高橋ヨシキさんです。
高橋ヨシキ氏(以下、高橋):よろしくお願いします。
伊藤:よろしくお願いします。
(会場拍手)
伊藤:高橋ヨシキさんのタランティーノ愛をちょっとここで、ご挨拶と共にやっていただければ思います。
高橋:タランティーノ愛か。え、そんな話は聞いてなかったんですけどね(笑)。まあ、大好きですね。本当によく血がワインで流れてるという人がいましたが、タランティーノはビールが流れてるんじゃないかってぐらい映画づくしの人なので、本当に好きですね。
伊藤:そんな高橋ヨシキさんがご覧になった、この『ヘイトフルエイト』はどうでしたか?
高橋:もう素晴らしかったですよ。ただ、僕が見たのは、日本で見られるバージョンですので、ノーカット版は見てなかったんですけれども。でも、本当に濃厚な映画で。そのへんの話からできたらなと思ってます。
伊藤:そうですよね。種田陽平さん、そこらへんもね、語ってらっしゃいましたので。
今日はそんなタランティーノ監督と密接な関係のある素晴らしいお二人をお招きしております。それでは、盛大な拍手で皆様お招きください。本作『ヘイトフルエイト』の美術をご担当されました、種田陽平さん、よろしくお願いします。
(会場拍手)
伊藤:そして、タランティーノの現場をがっつりと経験されている女優の栗山千明さんです。
(会場拍手)
タランティーノ監督の最新作になります『ヘイトフルエイト』。公開直前トークイベントを行なってまいりますので、よろしくお願いします。
いやもう、お客様たちもすごい嬉しいんじゃないでしょうか。こんな素晴らしいゲストの方々をお招きすることになりましたので。まずは美術監督でいらっしゃいます種田陽平さんから、皆様に一言ご挨拶いただけますか。
種田陽平氏(以下、種田):種田です、どうも。今日は小雨の中、ありがとうございます。『ヘイトフルエイト』、一般の試写が今日初めてで。傑作なのでぜひ楽しんで下さい。あっという間の3時間だと思います。よろしくお願いします。
伊藤:ありがとうございました。
(会場拍手)
伊藤:そして、女優の栗山千明さんです。
栗山千明氏(以下、栗山):こんにちは。栗山千明です。本日は皆さんお越しいただきまして、ありがとうございます。私は『キル・ビル』という作品でクェンティン・タランティーノとお仕事させていただいたんですが、それから本当にいちファンになりまして。
今回もちょっと先取りして見させていただきました。とてもおもしろくて、そのおもしろさを今日は皆さんに少しでも伝わればなと思っております。よろしくお願いします。
伊藤:ありがとうございます。
(会場拍手)
伊藤:では、皆様お座り下さい。高橋ヨシキさんもお会いするの初めてになるんですよね。
高橋:そうなんですよ。もう緊張しちゃいます。
伊藤:私も種田陽平さんお会いするの初めてです。一方的にトークショーとか見てたんですけども。早速まずお二人から、具体的にヘイトフルエイトのどんなところに魅了されたかを伺いたいんですが。種田さんからお願いいたします。
種田:僕、魅了されたっていうかね、これも現場被ってたやつなんで。そうなんですよ。けっこうみんなやっぱり被ってて。僕も、ほら、アジア人はいなかったのでこれ被って。監督に「これでお前もカウボーイの仲間入りだな」って言われて。それで今日持ってきました。
伊藤:素敵ですよね。
種田:大変でした。
伊藤:現場、一緒に作っているのでなかなか客観的に見るのは難しいと思うんですけど、ご覧になってみてどんなところとくに注目されましたか?
種田:う~ん。『キル・ビル』みたいな派手なアクションの映画じゃないんですよね。だから、クェンティンの中では一番精度が高いというか。なんて言うんでしょうね、「傑作」という人は多いですけど。アメリカに行った時も「マスター・ピースだ」と言われましたよ、この映画。ただね、「血だらけ」なのは変わらないので。
栗山:きっと、喜んでるんだろうな、と思いました。
種田:まあ、喜んでましたね。
伊藤:え、血が増えれば増えるほど喜ぶんですか?
種田:『キル・ビル』の時なんかは、もう本人も血だらけなんだよね。モニターのところにいないから。役者さんのそばでやってて。返り血で、血だらけで大笑いみたいな。そういう演出方法だよね。
栗山:そうですね。
伊藤:そこはもう、高橋ヨシキさんにしたら、本当に美味しいところじゃないですか?
高橋:いやもう、毎回それは楽しみにしてますよ。今回も予想を上回る血の量で、大変満足してます(笑)。いや、別にそれだけの映画じゃないですよ、もちろん。そこも楽しめたと。
伊藤:栗山千明さんいかがでしたか?
栗山:私は、もともとクェンティンのブラックユーモアがすごい大好きで。今回ももちろん、ふんだんに入ってるんですけど。それプラス、ミステリー要素があって。
もう「どの人が犯人じゃないか」とか、「この人は嘘付いてるんじゃないか」とか。そういうふうに自分でも推理しながら観れる要素が増えたので、あっという間の時間でしたね。
けっこう映画自体ちょっと長いとは思うんですけど。ワンシチュエーションにほぼ近い状態で、ずっと見ていられるのが、私は「やっぱすごいな」と。脚本だったり、役者さんの力をすごく感じましたね。
伊藤:すごいですよね、そこ。
高橋:ブラックユーモアというところで言えば、本当に、ブラックユーモアって一口に言っても、映画とかで実現するの実は難しくてですね。
例えば、これぐらい言っても大丈夫だっと思うんですけど、『ヘイトフルエイト』では、女の人が思いっきり殴られるのギャグになってるんですけれども。世界中の人が絶対笑うと思います。
女の人が嫌な気分にならないっていうふうに、それをやれるというのはけっこうすごい。ものすごく難しいことやってるなと思いますけどね。すごく笑えるシーンも多いです。
伊藤:それこそ、タランティーノ監督だからこそかもしれないですよね。今、ふっと振り返ってみると。
高橋:そうですよね。そういうのよくわかってない人がやると、単に陰惨なことになっちゃったりして、あんまりよくないってことはあると思います。カラッとしてますね、これは。
種田:あと、クェンティンは人種偏見がないんだよね。だから、黒人でも女性でもアジア人でも、そういう差別意識がないから、逆に女の人が血だらけになっても、黒人の人が血まみれになっても、清々しい感じさえするという、そういう人ですからね。
高橋:みんな等しくひどい目にあうっていう(笑)。
種田:だからね、栗山さんも血だらけでしたもんね。
栗山:そうですね。
高橋:目から血を流して。
栗山:でも、私もその場にいてトレーニングからみなさんと、他のキャストだったり監督含めスタッフの方々と一緒の空間にいると、どんどんそういうことが楽しくなってきて。伝染するといいますか。
なので、私自身もちょっとアイディアを出して、「こういうのもおもしろいんじゃないかな」って監督に提案とかできるような雰囲気。その、クェンティン組みたいなものの「アットホームさ」というのはすごく感じました。
種田:やめようとしないんだよ、撮影を。例えば、栗山さんを撮ってるでしょ。普通もうそろそろ終わりかなと思うでしょ。やめないんですよ、撮影を。
伊藤:延々と?
種田:もう次の日もやってるし。もちろん、その次の日もやってるし。ずっとやってるわけ。それでついにGOGO(夕張)が死んだの。ようやく死んだと思ったら、栗山さんいないのに、控えでまた栗山さん撮ってるわけ。またGOGO撮ってたわけ。
いつまで経っても、その「撮ってる」ことが好きなんだって。だから、「なんでやめないの?」って言ったら「映画作りが好きだからやめられない」っていうわけよ。
伊藤:今回もそういう感じだったんですか?
種田:もちろん。
種田:例えば、足好きなんだよね。あの『キル・ビル』の時だったら、栗山さんとかみんな登場する時に足撮ってんですよね。それもね、「カット」つって「もう1回」って言って撮ってるわけよ。何度も撮るんだよね。
栗山:何日撮ったかっていうレベルですね。
種田:アングル変えてずっと撮ってるの。今回は、今日見るとわかりますけど、駅馬車から次々と客が降りるっていうシーンがあるのね。その時に一番こだわってたのは駅馬車の「踏み台」。こう、1ステップぽんっと乗っけて、ぽんっと落ちるのね。そこを撮るので、その「踏み台」のデザインをすんごいこだわって、何日も。あときしみ具合。
伊藤:こっちからすると、たかが踏み台になっちゃいますよね?
種田:それを「本人たち」でやるわけよ。足元なんだけど、役者さん本人たちでやるわけよ。朝から撮ってて「いいね、いいね!」つって「もう1回」って。
伊藤:顔じゃなくて、足だけ?
種田:足撮ってるのね。それ、『キル・ビル』の時と同じで。昼ぐらいかな、行ったら「もう1回」ってまだ撮ってたの、その出る足。たぶん、あとで見ると、このカットだってわかるんですけどね。覚えがあるでしょう?
栗山:私、足フェチでいいますと、『キル・ビル』の時に制服だったんですが。制服は比較的早くデザインも上がって。なんですけど、最後まで悩んでたのは、靴をどういうものにして、靴下を「紺」だか「白」だかどうしよう。
試作品のような形でローファーの靴を作ったりもしたんですよ。でも結局「血がにじむのがわかる白にしましょう」って言って、靴下と靴も白のものになったんですけど。やっぱりそういうところにこだわるんだなっていうのは思いましたね。
伊藤:そういうところが、高橋ヨシキさんはファンとしてたまらないわけですよね。
高橋:まあ、どうかな(笑)。足に関してはタランティーノの映画見ててもわかるし。それはご本人出てる『From Dusk Till Dawn』とかでも、サルマ・ハエック(Salma Hayek)の足つたいにお酒飲んだりして、死ぬほど嬉しそうだったんで。まあ、それはそれで。
『キル・ビル』なんかでいうとね、ユマ・サーマン(Uma Thurman)が走ってる時にガラスの下から撮ってると、靴の裏の凹みが「Fuck U」って書いてあるのね。字になってたりしてすごくおもしろいのね、そういう足にこだわるっていうのは。
まあ、それはでも『デス・プルーフ (in グラインドハウス)』とかのほうがすごくて。今回は男ばっかしから、基本的に。あんまり足フェチの映画では、珍しく、ない、といえると思います(笑)。
種田:そうですね。女性の足はそういう意味では出てこないですね。たしかにね。
高橋:さっきの駅馬車の「きしみ」のところは、今知って言ってるんじゃなくて、本当に見てた時にちょうどいい感じにきしむなと思ってたの。いい映画撮れてるって。
伊藤:やっぱ、そこはファンならではの気づきポイントなんですよね。
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