2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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古賀学氏(以下、古賀):もう1個、女の子同士を撮りたい。百合を撮りたい。水中で百合を撮るのって難しいじゃないかと思ってまして。それこそ11年前、菊地さんのミュージックビデオのツーショットのシーンを撮るのが大変で。
当時はツーショットのシーン自体は少なくて、主観映像(女の子が見ているもう1人の女の子)がほとんどで、その途中にツーショットが混ざる撮り方をして。理由は2人とも良い表情をしている状態をなかなかつくれないんです。
それで、しまりすちゃんっていう水中で自由自在に動けるモデルに、カミテからシモテを見ている子と、シモテからカミテを見ている子の両方を演じてもらって、特撮合成で1つの絵をつくる「百合特撮」っていうものから始めたんです。
当然彼女は水中モデルとしての打率が高いので、撮れ高もすごく良くて。台湾、京都、浅草橋の展示作品のメインになってて。これ(百合特撮)について特に解説はしてないので、ほとんどの人が、体型の似た女の子が写ってると。
菊地成孔氏(以下、菊地):双子と思われるでしょうね。
古賀:特撮とはあまり思われてなかった。今回の月刊水中ニーソ シーズン2のフライヤーが、しまりすちゃんとしまりすちゃんなんですね。
菊地:なるほど。一応これもフェティッシュといえばフェティッシュですね。双子じゃないし。
古賀:文学的な意味で考えると、鏡だし。鏡だけど、そこにディレイというか、別の時間軸の2人がいて、絡みがあるという。これはこれで掘り下げればおもしろいですけど、さすがにこれで写真集1冊撮るのは、ちょっと無理じゃないですか。わかんないけど。できちゃうかもしれないけど。
菊地:そこだけ伸ばそうと思う人がいたら、伸びるかもしれない。
古賀:そうですね。自分と自分の絡み、みたいなものがおもしろいかもしれないですね。ただ、これを撮っている現場で、たまたま全天球の撮影をやって、1冊目の『水中ニーソ』に出ているひとみちゃんというモデルと、しまりすちゃんをツーショットで撮ったら、撮れちゃったんですよ。特撮しないでも。普通に撮れるんだったら、これから合成で頑張らなくてもいいやっていう。
菊地:なるほど。
古賀:だから、百合特撮は練習というか、脳内で「僕はこういうものを撮りたい」と考えていたものを万能なモデルで試せたので、今度はライブで実際の人間を使って当てはめていく、みたいな感じなんです。
ちなみにシーズン2の最初のゲストが『スクールガール・コンプレックス』の青山裕企さんでした。もともとコンプレックスって劣等感って意味ですけど、青山さんは最初の展覧会の時、自分の恥部を展示したように恥ずかしかったので、展示の間ずっと会場の隅で隠れていたそうです(笑)
それから「REALISE」というセクシーな水着を出しているメーカーなんですけど、作っているプロダクトがすごいクオリティなので。
菊地:話変えましたよね?(笑)。すごいクオリティですよね。
古賀:すごいクオリティです。実際のスポーツブランドのものとあまり変わらない。ものによっては超えてるっていう。
菊地:ものによっては超えてるから、枠によりますけど、うまく載せればすごい売れるんじゃないですか? 今、アメリカンアパレルもちょっとね、CEOがクビになったんですよ。
私、水中もそうですけど、水着フェチも被ってるんで、アメリカンアパレルの動向にすごい注目してるんですけど、アメリカンアパレルが今下がってるので、その隙にガンッていく可能性はありますね。日本からじゃなくても。
古賀:そうですね。外国でも売れてますもんね。
菊地:そうらしいね。
古賀:幕張で7月にやったワンフェスで展示をしたことで、結局3月から7月まで、ほぼ月刊で展示があって、8月に本丸の原宿で展示があるんで、全然展示が途切れていない状況が続いている。
本橋:展示をしつつ、次のコンテンツに反映されていくみたいな。撮影も当然それと平行してやっているので、ハヤカワ五味さんの水着を着せて水中で撮ってみたりとか。
古賀:身に付けるアーティストの作品を衣装提供してもらって、彼女たちが作った衣装と、REALISEを提供していただいて、というのが3作目です。
本橋:菊地さんが前回のトークイベントで言われてたんですけど、女の子のアーティストは勝手に連帯をしているようなところがあって、その面白さに触発されて、シーズン1の女性アーティストをラインナップしたんです。
彼女たちに実際に聞いてみると、それぞれがどこかしらでつながっていて、既にネットワークができていたのが面白かったんです。
古賀:旧来の(想像される水着のポートレート文脈の)読者はトークイベントに女の子アーティストを呼ぶって思ってなかった。いまだに水中ニーソのお客さんが誰なのか、僕もよく把握はしてないんですけど。
菊地:古賀さんのお仕事の特徴ですよね。ポップというか、要するに痛さがない。最近、痛掛け軸もできたらしくて。
古賀:痛掛け軸?
菊地:美少女の絵が描いてある掛け軸。痛車に続く、痛掛け軸。よくできてるんですよ。掛けても全然痛くない。痛さが無いから、誰でも惹きつけてしまう可能性がありますよね。
さっきのフェットとかフェミでいうと、フェミの枠じゃないですか。自分でウェアリングしてコスプレする女性アーティスト。そうするといずれにせよ、考え方というか、コンセプトはフェミのほうへ向くわけ。
だけど当然フェミのほうが上位で、そこにフェットが便乗されるようなかたち。でもツールとして、フェットだけが目的の人もいっぱい集まってくるような、2段重ねになっているような気がする。
古賀:そのフェット村は、おじさんがたくさん住んでいるところなんですね。
菊地:フェット村のおじさん、ハハハ(笑)。フェット村のおじさんが、フェミまで理解するところに1個壁があるんですよ。この壁を乗り越えちゃうと、だいぶいろんな視点が広がっていて、楽しくなるんだけど、なかなかこれがそうはいかない壁ですから。
古賀:水中ニーソはフェット村から見ると、勝手にお山が動いてフェミ村っていうか、フェミの子が……。
菊地:水中ニーソは、さっき言った壁を撤廃する力があるんだ。ポップだから。
古賀:山に登らずに、壁ごと撤廃する。
菊地:そうですね。1年前も言いましたけれど、SMの要素が全くないので、水中フェティッシュっていうフォルダの中の窒息が好きな人、ブレスホールディング(呼吸制御)の人とか、あと単純に拷問系とか、あんまりよくないですよね。
要するにセックスに含まれる苦悶みたいなものが良い人の喜びが、古賀さんのお仕事には全くないので、水中ニーソには性的で堕落したフェティッシュみたいな人を排除する力がある。
それが今言ったフェットとフェミとの壁を撤廃する力でもあるってこと。そこに生々しい精液臭い、女の人を苦しめたいっていう欲望が入ってきちゃうと、なかなかフェミのほうに侵入できないっていうのがあると思います。
古賀:ポジティブに言っても浄化能力があるし、ネガティブに言っても民族浄化のみたいな意味で、たぶん浄化能力がある。
菊地:そうですね。
古賀:フェット村のおじさんたちを大量虐殺しているわけじゃないですか(笑)。
菊地:というか、選民していますよね。
古賀:選民とか、立ち退きですね。
菊地:そうそう、選別してる。でも、フェット村のおじさんはどんなものからでも栄養が採れるから。アザラシの生肉からでもビタミンが採れるわけですよね。
エスキモーの人がビタミンをどうやって採るのかっていうと、あっちのほうはレモンが全然採れないから、アザラシの生肉を5トンぐらい食べるとレモン1個分のビタミンが採れるようなやり方で、水中ニーソを見ながら、一生懸命「苦しいだろうな」と想像して足していくようなかたちで採るしかないですね。それは大変な苦労というか、努力ですけど。
古賀:オタクもそうなんですけど、フェティッシュって、真っ正面から楽しむものじゃないと思ってるんですよ。例えば女児向けに作られたちっちゃい女の子が見るアニメを見て、オタクのおじさんが喜んだりしている、みたいな風景はいくらでもありますよね。
それと同じで、水の中に潜っている女の子で、「お前たち、こういうのが好きなんだろう?」っていうフェチビデオみたいなものがあったとして。それってフェチにとって楽しいものかというと、ちょっとずれてて。
菊地:芯が食えてないってことですね。
古賀:「そういう楽しみ方がしたいわけじゃないんだけど」みたいな。それよりも、タレントが南の島に旅行に行って、プールでキャッキャッしているほうが全然良いっていう見方もあって。
本来の楽しみ方からズレた楽しみ方をする傾向に、オタクとかフェチってあると思うんですよ。さっきの100年史もそうなんですけど、100年史に出てくるのは、別に女性がもがき苦しむのを見せるための映画じゃないです。
菊地:そうですね。中にはそういうものもあるけれども。そこの推移が100年で見れたこと。
古賀:水中ニーソも、別に水中フェチのための作品ってわけでなくて。ただエスキモーと同じで、水中フェチの人はここから養分を得ようと思ったら。
菊地:100回見たら1回分の養分が摂れるかもしれない。あとただ単に競泳水着が。
古賀:菊地さんは、その成分もね。
菊地:そこができる人は100回も見る必要はないですね。5、6回で。ただ、「水の中だ」と思うだけで、5、6回で摂れる人もいると思うし。フェティッシュっていうのは、こんな言い方は古いですけど、リゾームというか、地下茎化していて、全部絡み合ってるわけで、どっかに中心があるわけじゃないんですよね。
必ず地下茎化していて、全部がコンプレックス、つまり複合体になっているわけで。その複合体の中でどういう配合になっているのかを、すごい速さで一瞬で演算しているわけですね。「食える」「食えない」の判断をして、自分でパースペクティブを決めてる。
古賀:ちょっとまとめてきましたよ。ユングとフロイトとアドラーの。
菊地:俺がメールで書いたやつかな?
古賀:それぞれコンプレックスの解釈の違いです。さっき言った複合体、心的複合体っていうのが。
菊地:マザコン的な回答。コンがユングのコンに近いですね。まぁエディコン(エディプス・コンプレックス。子どもが同性の親へ嫉妬すること)も近いですけど。コンプレックス自体が複合体という意味ですから。
古賀:そうですね。単に複合体っていう意味しかないんですよね。
菊地:そうですよ。だからコンプレックスが劣等感になっちゃったのは、劣等感は英語だとインフェリオリティー・コンプレックスですけど、インフェリオリティーはめんどくさいから取れちゃって、ただコンプレックスが劣等感だと定着しちゃった。本当はインフェリオリティー・コンプレックス。
古賀:日本以外では、「コンプレックス」が劣等コンプレックスだって通じにくいみたいですね。
菊地:通じにくいですね。ウディ・アレンの映画を見れば普通にインフェリオリティー・コンプレックスがやたら出てきますから。字幕には「劣等感」と出てるんですけども。いろんなコンプレックスがあって、マザー・コンプレックスはただ単にお母さんが好きとかそういうことじゃなくて、母親との関係で起こるいろんな複合的なことの集合体のことをマザコンという。
それがお兄さんだったら、ブラコンとかいうような形で、こんなに長く使われているのに、コンプレックスは複合体だという定着が日本ではあんまりされてない。
古賀:青山さんの『スクールガール・コンプレックス』のコンプレックスも、アドラーのコンプレックスの意味ですもんね。
菊地:アドラーはインフェリオリティー・コンプレックスにすごく集中した学派ですからね。スライドに書いてありますけどね。
古賀:アドラーのは、それを克服して人間になりますという話なんですね。
菊地:ここでそんな精神分析の話をいっぱいしてもしょうがないんだけど、アドラーの理論はインフェリオリティー・コンプレックス、劣等コンプレックスの中に性的な多形倒錯が入ってるんですよ。
性的な多形倒錯が何であるかというと、劣等コンプレックスはもちろん生きるための杖なんですね。だからアドラーの発達の発想ではインフェリオリティー・コンプレックスを克服するわけだから、フェティシストじゃなくなるの。
古賀:克服した結果?
菊地:フェチっていうこじれた状態から、フェチがない状態になると、発達して自立したっていう発想なんですね。
古賀:克服を通じて人格の発達が成立すること?
菊地:そうそう。
古賀:ノンケになっちゃう。
菊地:そう。だからノンケじゃないまま、フェティッシュとうまく付き合ながら大人になることを日本人は模索しているわけだから、アドラーはダメですね。その一点においては。
だけどアドラーの本は売れてますけどね。全然違う文脈で。アドラーの愛に関する金言の本とか、TSUTAYAに積んであったりして(笑)。「なんで今更アドラー?」って思ったりするんですけど。この人は「世界の中心で愛を叫ぶ」って言った人ですから。それが「世界の中心で愛を叫ぶケダモノ」だかなんとかになりましたけど。
本橋:最近の新しいアドラーの本を見てても、性的なものは除外されている感じがします。
菊地:そうなんです。今、アドラーは愛の達人みたいな扱い方ですね。ハハハ(笑)。混迷する現代人の人生指南書みたいに使われちゃってますけど。まぁしょうがないな、それは。フロイトがそんなになるわけにはいかないし。
古賀:性の要素がバッサリ切られて、恋愛だけになっちゃってるんですね。
菊地:全部つながってるんです。ユングが一番性的倒錯と向き合わないというか、性的倒錯を設定しなかった。
古賀:単にさっきの芋づる的な世界観がある?
菊地:そう。ユングは集合無意識を設定したので、要するにでっかいお風呂みたいなところに、みんなで浸かってるような感じで(笑)、全員がなんとなくあったまって、いい気持ちになっているような状態を設定したんですね。誰かがおしっこすると、全員と関係あるっていう発想(笑)。ユンギストの人に怒られちゃいますけど。
だからそこに入ってきちゃうんで、誰かがおしっこするかもしれない、誰かが持ち込んだコーヒーをこぼすかもしれない。それがここに書いてある、「ある事柄と本来無関係な感情が結合」されちゃう可能性があるわけ。ユングの集合体は。
菊地:フロイトはユングと言うことが真逆ですから。グッとフォーカスが絞られて、父親を殺して母親とセックスしようとする、これがいわゆるエディプス・コンプレックスですよね。これも単にお父さんを殺したいことをコンプレックスと言っているわけじゃなくて、そこから生じる複合的な問題を指してエディプス・コンプレックスと呼んでるわけですよね。
これだけ読むと、「じゃあ女の子は?」っていうことにすぐなるんですよね。フロイト初歩の「あるある」で、「これ男の子の話だけじゃないか?」っていうことになるんですけど、女子にもエディプス・コンプレックスはあるんです。
いずれにせよ、フェティシズムが生まれる、フェットが生じるのは、幼児的な多形倒錯っていって、子供の頃は倫理がないし、排他律もないし、自立律もないし、要するにあらゆる律がないのが、幼児の状態。
だから性別もないし。そのかわり性欲でいっぱいなんです。パンパンなんです、子供は。「子供に性欲がなくはない」と最初に言ったのがフロイトなんで。子供は性欲でパンパンなんですけど、その性欲をどういう回路で、どういうスタイルにして発散すればいいか、肉体的にも精神的にも知識的にも何にも方法がないので、ただ単にパンパンになったリビドーを持ったまま、多形的倒錯の状態で生きてるわけですよね。
なにせフロイトは子供にとって最初に与えるお母さんの貨幣はウンコだとした人ですから。排泄したりしなかったりということで、お母さんに対するSM行為を働かせている設定ですよね。
100年前の考え方として、すごいと思うんです。そこからあらゆる変態性欲が生まれて、有名な局所理論といって、性感帯はなぜ存在するのかっていう。性感帯は局所のことですね。
「なんで乳首ばっかり舐めんのか?」「なんでキスばっかりするのか?」そのことも、多形倒錯が少し整ってくるから局所が設定されるわけで、もう1回多形倒錯の状態になって、もっと退行が深くなると、局所がなくなっちゃうから、性感帯が消えるわけですよね。どこを舐めたって、どこを触ったって気持ちが良いし、逆にどこを触ったって気持ちよくない状態になる。
だから「ここを舐めとけば気持ちが良い」っていうのは、だいぶ発達してからのことで、それはフェティッシュも一緒で、水着さえ着てれば興奮するという状態は、結構大人の状態なんです。
でも、何に興奮しているのか、だんだんわからなくなってきちゃう。いろんな要素が入ってきちゃうから。特に今はミクスチャーが簡単にできるんで。昔は日活映画の女優さんがおっぱい出すだけで、それで局所がドーンと出てエロいって言ってたのに。当時はどんなに薄汚くてもみんなウハウハ言ってたんですけど、もうそんな時代じゃないんで。
古賀:そんな時代じゃない(笑)。
菊地:そこにさっき言ってたフェムの問題が出てきて、女性はそのことの埒外にいたんですけど、埒内に入ってきちゃったから、今は混沌状態ですよね。もっと退行するのか、整えていくのか。要するに「進軍するのか、後退するのか」という問題で、オタクの方々は大忙しだと思う。
古賀:大忙し(笑)。
菊地:心的に大忙しだと思うんですよね。だからそういう心的な大忙しを感じさせない、強度を持った1つの複合体みたいなものでできている作品は強い。それが水中ニーソだと思うんですけどね。それはさっき言ったように、バッサリ切っているものもあったりするから。SMも切れてますよね。
古賀:SMの要素は外してますよね。
菊地:そうですね。要するに苦悶が切れてるということですね。楽々と、すごいスキルで泳いでいる人がいるわけだから、その人は言ってみれば陸上で楽しくスキップしているのと同じ。しまりすさんとかは、もう陸上と同じように動いているわけで。
そうすると、「いや、それじゃさ」っていう人も出てくるわけ。「泳げない人が苦しむのがいいんだよ」っていう人は、全部落とさないといけないから。いっぱいいると思いますよね。今そこはちょっとダーティーというか。すごい清潔なフェティッシュですよね。それこそポップだから、壁を越えられるんだと思いますよ。
古賀:浄化?
菊地:うん。
本橋:シーズン1で出てきたサエボーグさんとかもそうですけど、女の子のアーティストさんで、フェティッシュに近い表現をしている人が古賀さんの作品と触れると、むしろ彼女たちが浄化していることってないですか?
古賀:うーん。でも僕に触れなくても、アウトプットする段階で、ある程度浄化しないと可視化されないというか。混沌としたものってポップじゃないから、世間にキャッチされづらいじゃないですか。
わからないですけどね。逆に水面下で混沌としているほうがキャッチしていくというゾーンも絶対あるから。水中ニーソがたまたまそっちのポップカルチャーのサイドにいると、一緒に話して盛り上がるところが、みんな整理されている。お話を聞くと整理じゃなくて、単なる呪いだったりとかはありますけど(笑)。
本橋:すごいダークなところがあったりするじゃないですか。
古賀:まぁ、男もダークな人はいますけどね。
本橋:彼女たちは、「実は私は腐ってます」とか、トークをしているとおもしろいですよね。
菊地:まぁ、そうですよね。はたからは全く区別ができない表現者が2人いて、片方は少なくとも自覚されている傷が少ない陽気な人で、片方は自覚している傷がすごく多くて毒々しい人だけど、作品は似たようなもんだというのは、よくあることですよね。
古賀:確かに。
菊地:絵とかでも、「ウィーン分離派」といって、ものすごくやばい絵を描く人たちだけど、この人はめちゃ明るくて、この人はめちゃ暗いとかね。
音楽の話になっちゃいますけど、ドビュッシーのほうが正義の味方で、善玉菌で、明るい人かと思ったら、ドビュッシーは気違いで、一般に怖いと思われてるシェーンベルクのほうがずっと真面目でいい人だったというようなこともありますから。心の傷の問題はわからないですよね。なかなか作品からは読み取れないですね。
本橋:人柄みたいなものと作品は、別にくっついているわけじゃない?
菊地:そうですね。難しいですよね。病理を読むことが、昔より難しくなりましたよ。特に女子の表現は。
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