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結婚しない男たち・「ソロ男」を語る夜(全5記事)

結婚する気がないのに、女性にモテたがる ソロ男に典型的な「自己矛盾行動」

今まで当たり前のように「消費は女性が作る」と言われていました。それについて『結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』の著者・荒川和久氏は「女性の方が本当に消費力が高いと言えるんだろうか?」と疑問を呈します。実際に消費支出の統計を見ると、男性のほうがお金を使っているという結果が出ています。また、「ソロ男」と呼ばれる独身の社会人男性は毎日コンビニで弁当やお菓子を購入し、アイドルやソーシャルゲームなどにハマると湯水のごとくお金を使うといった消費行動をすることがわかっています。恋愛・結婚においてはパートナーよりも自分にお金を使いたいという考えのため、年収が高いソロ男ほど結婚しないという傾向に。今まで脚光を浴びることがなかった「ソロ男」マーケット。商品開発、マーケティングに関わる方必見の内容となっています。

「男性よりも女性の方が買い物をする」の嘘

荒川和久氏(以下、荒川):女子大生、OL、アラサー、アラフォー。だいたいどの世代でも、脚光を浴びるのは女性です。そして、いつの時代も相手にされない独身男性たちという構図があるわけです。

なぜかというと、消費は女性が作ると言われていて。我々は広告会社でマーケティングとかやってるんですけど、「今回の商品、男性向けにやるんだ」という話、あんまり聞かないですよね。

杉山豊氏(以下、杉山):聞かないです。売らないですね、ほとんど。

荒川:いつも女子、OL、主婦。

杉山:主婦、OLと言いますね。だいたい「ターゲットは主婦です」、「OLです」みたいなことを言いますよね。

荒川:それは間違いではないんですけどね。でも、こと独身に限って言うと、女性の方が本当に消費力が高いと言えるんだろうか?」ということなんです。

いわゆる消費性向というのがあるんですけど、可処分所得の中に占める消費支出の割合。これが高ければ高いほど、もらっている金額の中で消費する金額が多いってことなんですけど、これは女性が高いんです、明らかに。(男性)6割と(女性)7割で、明らかに違うんです。

ただ実額で見ると、男性のほうが高いんですよ。1カ月1人あたりの消費支出額ですけど、1万円くらい高い。たまたまこの年だけだったんじゃないのと思われるけど、そうじゃなくて。

ずっと7年くらい平均していっても、(男性が)4000円くらい高いんです。だから、消費性向だけで見ちゃうと誤っちゃうところもあるんです。使ってる実額は、男性のほうが高いんです。

各年代別に見ても、なぜか40代の独身女性は使ってるんですけど、それ以外は男のほうが上回ってます、消費支出実額。

杉山:それは、男が女性にプレゼントしてるからじゃないですか? プレゼントにブランド物買うのは男性だというね。ブランド物はもらうもんだと思ってる女性は多いですけれども。

荒川:それはすごいバブリーな価値観ですね。

杉山:失礼しました(笑)。とにかく男性のほうが多いのだ、と。実額は。

荒川:1人あたりの金額が多いじゃないですか。これを覚えておいていただいて。男性のほうが人口も多いわけですよ。単価×人口の市場規模で見れば、圧倒的に男性のほうが高い。というか、お金使ってるんです。独身男性が年間14兆円消費してるのに対して、女性は8兆円ですから。倍くらい違うんですよ。(注:2010国勢調査による単身世帯年齢別人口分布に、2009全国消費実態調査による年齢別消費支出額を掛け合わせて合算した推計値。男女とも20~50代の単身世帯のみを抽出 ※ソロ男プロジェクト試算)。

杉山:14兆円も使ってるんですか、男が?

荒川:だから、これを見ると「独身女性をターゲットに」という意味がわからない。男を狙ったほうがいい。「お金使ってるの、男じゃん」という話なんですよね。

コンビニのお菓子を支えてるのはソロ男

杉山:なるほど。でも、使ってるものも違うんじゃないですか? どうなんだろう、一般的なものに使ってるのかな?

荒川:そうなんですよ、「何に使ってるのか?」という話ですよね。(男性は)圧倒的に消費力高いんですけど、エンゲル係数が高いんです。(エンゲル係数は)単身男性27パーセント。ほぼ3割。2人以上の世帯で22パーセントで、単身女性が20パーセント。女性と比べると10パーセントも違うわけです。要は飯ばっかり食ってる。

杉山:外食費にお金をかけてる?

荒川:(食品別購入金額の棒グラフが映る)主食的調理食品って、おにぎりとか弁当のことです。それとか、お茶類、コーヒー、ココア、酒類、外食、これ青いのが単身男性で、緑色は家族です、2人以上の世帯。すごいのは、ソロ男は1家族分と同じくらい、この5つの品目を消費しています。外食に至っては、1家族分以上使ってるということです。

ソロ男は、毎日買い物します。だって、買い物してくれる奥さんいないし。ソロ男だからこそ、毎日買い物をする。コンビニを週5日、スーパーを週2日使います。

杉山:毎日ですね。

荒川:毎日です。

杉山:毎日ですね。

荒川:コンビニでは、こんなもの買ってます。ざくっと言うと、コーヒー、お茶、スナック菓子、チョコ、アイス、カップ麺、タバコを買います。一方スーパーでは、牛乳、カップ麺、スナック菓子、冷凍食品、トイレットペーパーを買います。何気に、コンビニで買うものとスーパーで買うものを分けてたりします。お酒を買うのはスーパーです。

杉山:安いから。

荒川:目線が「主婦じゃん」という話ですね。スナック菓子、お茶、カップ麺、チョコ菓子は、どっちでも買います。どっち行っても買います。とにかく、菓子好きなんです。お菓子大好きなんです。

杉山:ソロ男は。

荒川:だから、コンビニのお菓子を支えてるのはソロ男と言ってもいいんじゃないかと。

杉山:そうですね、お菓子を買ってる人多いわ。言われてみりゃ。

荒川:女性の方だと、お菓子によって、ケーキとかね。「お菓子のとりすぎは、ダイエットによくないわ」なんて言って、セーブしようとするじゃないですか。女性だけじゃなくて、男性も食い過ぎはよくないですよ。

ポテチを止めるという選択肢はない

荒川:でも男性の場合は、プラスオン消費という独特の行動があるんです。

杉山:プラスオン消費?

荒川:毎日ポテチ食べるんで、中和させるためにトクホ茶飲みます。要は、ポテチを止めるという選択肢はない。ポテチを食う代わりに、トクホとか飲んどいて、身体にいいことした気分になろうかな、と。要するに、消費を止めるんじゃなく、上乗せて買うんですね。

杉山:タバコ吸ってる人ほど健康食品買う、みたいな。そういうことですね。

荒川:そういうこと。そういう人たち、例えばお茶とか、毎日同じ銘柄を買い続けるんです。ルーチンがすごいんです、五郎丸(歩)じゃないですけど。

観客:それわかる。

杉山:わかる(笑)。

荒川:毎日買うお茶は、必ず買うんです。その横に新商品が出たとか、あるじゃないですか。普通の感覚だったら、いつもの買うのやめて新商品買うんですけど、ソロ男は毎日買うお茶は買っておいて、新商品も買うんですよ。毎日買うものを止めるという選択肢がないんです。

杉山:ない、なるほど。

荒川:そういう特徴があります。

杉山:ブランドスイッチがないんです。買ってるものは、ずっと買う。

荒川:優良顧客なんですよ、実は。

杉山:それはなかなか、視点としてはおもしろいですね。

荒川:こんなに消費してるわけじゃないですか。今、優良顧客と言っちゃいましたけど。優良顧客なのに今までマーケティングのターゲットにならなかった。それには理由があるわけですよ。つまり、頑固で、あまのじゃくで、へそ曲がりで、面倒くさい性格というのが、それに影響してるわけです。

結婚する気がないと言いながら、女性にモテたがる

杉山:これわかる。オリエンきた時に「ターゲットはこうです」と言われたら、キャンペーンできないですからね。「あまのじゃくに売ってください」と言われても、何もできないですよね。

荒川:まさにこれです。「キャンペーンとか景品とかに影響されますか? されませんか?」という質問に対して、(ソロ男の)4割近くは「そんなものに影響されない」、「そんなものに影響されてたまるか」と答えています。

だったら、もう広告とか効かないじゃんみたいな。「なるほど、おっしゃる通りです」と一旦納得した上で「じゃあ、ソロ男さんは、こういうキャンペーンがあったら参加しますか?」という質問を別にしたわけです。

杉山:すると?

荒川:なんと思いっきり参加しちゃうわけですよ(笑)。とくにこの値引きとか、限定商品とか言われると、ガンガン買うわけです。

「企業の販促に反応しないよ」と口では言うわけですけど、実際の行動は思いっきり影響を受けてるんです。これを、ソロ男に典型的な「自己矛盾行動」と名付けました。要は、言ってることとやってることが違うんです、この人たち。たとえば、結婚する気がないと言いながら、女性にモテたがる。

杉山:これ、わかるわかる。

荒川:他人に縛られず自由に生きたいと言いながら、他人の評価をものすごい気にする。

杉山:すげえわかる。

荒川:ブランドスイッチなんかしないと言いながら、新商品が出るとまず買ってみる。長生きにはこだわらないと言いながら、健康食品が気になる。だから、言ってることはすごく面倒くさいんですけど、根は純粋で正直な人たちだと思っていただけると……。

観客:かわいい。

荒川:かわいいという意見が出ました。

杉山:なるほどね、こういう人たちだと。

荒川:だから、ソーシャルゲームとかにハマってゲーム課金しちゃう人、そのまんまなんですよ。月3万円かける人を重課金ユーザー、10万円かける人を廃課金ユーザーというんですけど。

杉山:廃課金(笑)。廃人になることね。重症よりも廃人ということね。

荒川:月10万円ですよ、ゲームに。

他にも、AKBにハマっちゃった人たち。投票のためにCDを何百枚も買っちゃった人たち。皆、もういい年ですよ、40ぐらいですよ。

杉山:いましたね。

荒川:あと、コンビニのアニメキャンペーンも流行ってたと思うんですけど、あれを支えてたのもこの人たち。この人たちがどういう買い方するかというと、箱買いなんです。1個ずつ買うんじゃないんです、箱買いです(笑)。

杉山:そもそも毎日コンビニ行ってるわけだから、さらにこれが加わったら最強でございますね。

荒川:そうです。だから、こういう人たちに消費は支えられてるんですよ、と。

杉山:日本は。

荒川:こういうソロ男の方が動くと、今までなかった新たな需要が創造される、とも言えます。さっきの、ゲームに課金をするなんて需要はそもそもなかったんですよ。CDを買わない人たちが、投票したいがためにCDを買うという、そんな需要もなかったですよね。

コンビニのアニメキャンペーンだとしても、ペットボトルの飲料を4箱も5箱も箱買いする行動、需要は生まれなかったですよね。だから、ソロ男が動くと、今までなかった需要が実は創造されてるんです。そういうことが見て取れるのかな、と。

杉山::なるほどね。

何かにハマったソロ男の財布はザル

荒川:森永卓郎さんていらっしゃるじゃないですか。あの方は結婚されてますけど、世界中の飲料の缶を集めてるんですよ。それを展示して、自分で展示館(注:埼玉県所沢市のB宝館)を運営してて、それがすごい赤字で奥さんに迷惑かけてる。この間、テレビ番組でしゃべってた。

杉山:あれ、すごいわ。

荒川:言っときますけど、彼(杉山氏)もかなりのコレクターなんです。

杉山:いや、でも、彼はすごいですね。普通、結婚すると抑えられるんですけどね、すごい。

荒川:これ「女性から見てどうですか?」という話ですよ。空き缶とか、「何の価値もないよね」という話になったりするわけですよね。

杉山:しますね。逆にこの人、これだけ飲料買ってるんだよね。

荒川:そうですね、買ってるんでしょうねえ。

杉山:すごい(笑)。

荒川:何かにハマったソロ男の財布はザル。とにかくこれに投資しようと決めたら、いくら使っていようと、「何でそんなに払うの?」と周りに言われようと、湯水の如く使う。惜しいと思わない。

杉山:逆に言うと、家庭に使わないもんね。子供とか、そういうこともあるでしょ?

荒川:そういうこともあるんですけど。逆にいうと、これ浪費家じゃないですか。

杉山:浪費家ですね。

荒川:浪費家なんですけど、スーパーに行って自分的にどうでもいいやつ、日用品とかはものすごいケチるんです。実は、浪費家でありながらドケチという両面を併せ持ってるのがソロ男なんです。

杉山:面倒くさいね、なるほどね。

荒川:自分が興味のないものは、1円でも惜しいんですね。片一方でゲームに10万円、ポンと払うのがこの人たち。

杉山:この人たちは、何を源流というか、モチベーションとしてやってるわけですか?

荒川:これです。2つのスイッチということで、承認欲求と達成欲求。承認欲求と達成欲求は人間が根源的に持ってるものなんですけど、この人たちはそれが強い。承認欲求は褒められたいという。誰も褒めてくれない時は、自分で自分を褒めてあげたいという。こういう承認欲求が……。

杉山:ありますね。

荒川:もう1つ、達成欲求。成し遂げたい、負けたくない。何に負けたくないのか、わかんないんですけど。

杉山:負けたくない、と。

荒川:とにかく負けたくない。その2つがあって。これ、言葉を言い換えると、セロトニン消費とドーパミン消費という。

杉山:アカデミック(笑)。

荒川:セロトニンは、幸せ物質と呼ばれているやつです。この物質が分泌されると、幸せな気分になる。ドーパミンというのは興奮物質で、これがあると意欲が湧くとか、モチベーションが高まるとかいうようなことですよね。

さっきので言うと、承認欲求のための消費でセロトニンが出て、達成欲求のための消費でドーパミンが出る。

荒川:だから、彼らの消費というのは、彼らの快楽と幸せに直結してる行動なので、消費から幸せを得ているんです。消費で快楽を得ているんです。これを買うことが、幸せなんです。

杉山:いいお客ですね。消費にそれを見出すなんて、すごいなあ。

荒川:さっきの、アイドルにお金を投資する人がいるじゃないですか。「どういう気持でやってるの?」という話なんですよ。

アイドルを応援したって、そのアイドルが自分と付き合ってくれるなんて、これっぽっちも思ってないですよ。これっぽっちも思ってないけど、アイドルのCDを買ったり、ライブに行ったり、チェキを買ったりということは、「彼女が喜んでくれれば、自分も幸せなんじゃん」ということをわかりながら、消費してるんですね。

杉山:AKBのCDを1人で何千枚買ってるけど、AKBと結婚したいなんて夢々思ってないの? あの人たちは。

荒川:思ってないんじゃないですか。

杉山:はー! 変わってるというか、すごいね。その人たちは、そういう生き物なんですね。

年収の高いソロ男ほど結婚しなくなる

荒川:こんな人たちが、何で結婚しないのかという話です。(男女別の結婚しない理由をまとめたグラフが映る)これ、厚労省のデータです。

杉山:厚労省ね、いきなり(笑)。

荒川:もう一目瞭然ですよね。右側が「男性が独身生活の利点と考えている項目」とあり、どの年代も「金銭的に裕福」と書いてますね。女性が(グラフの)一番上で「行動や生き方が自由」とか、「広い人間関係が保てる」とか、社会との繋がり保持のために結婚はしないと言っているのに対して、(男性は)お金的に裕福だから結婚しないと言ってるわけですよ。

要は、自分のためにお金使いたいんです。逆の言い方すると、結婚すると自分のためにお金使えなくなるからということですよね。そういうのが結婚しない最大の理由なんです。

だから、ソロ男はプレゼント代をケチるんです。人にあげるプレゼント代の平均をとったら、ソロ男じゃない人は8万円払うけど、ソロ男は5万円。3万円安いという。しかも、「何が一番よかったか?」という話を聞くと、「プライスレスなプレゼントが一番よかったです」と自慢するわけです(笑)。

杉山:プライスレスなプレゼントが一番よかった?

荒川:真心ゼロ円とか、愛情ゼロ円とか、自作の歌ゼロ円とか。いらねー(笑)。

(会場笑)

杉山:いらねー。本当に愛してんのか、みたいな(笑)。

荒川:これ、どういう質問したかというと、「今までの人生の中であなた自身が一番よいと思うプレゼントは何で、いくらですか?」と質問したんですよ。それに「愛情ゼロ円」とか書いちゃう人たちです。本当、面倒くさいです。

(会場笑)

荒川:皆さんに知っておいてほしいんですけど、結婚できないのは「お金がないから結婚できない」と、いろんなメディアに書かれてる。それはあるし、正しいんですけども、ソロ男に関して言うと、年収の高いソロ男ほど結婚しなくなるんです。

(年収別の結婚願望をまとめた棒グラフが映る)これ、年収で400万、400万から600万、600万以上としてますけど、青いのがソロ男です。400万の人は4割くらいが「まあ、結婚してもいいかな」と思ってるんですけど。600万以上になると、ドドンと下がる。この赤いのは、ソロ男じゃない人。この人たちは逆に年収が上がると結婚したーい、となります。

杉山:これ、結婚したい人。

荒川:結婚したいという願望。こういうこともあるので、本当にお金と結婚は密接に結びついてるということです。

杉山:それは何? ソロ男でも400万未満の時はまだ結婚したいと思ってるのに、収入が600万になったとたん、結婚したいと思わなくなっちゃうんだ。

荒川:なっちゃうんです。

杉山:普通は逆ですよね? 本当だ。

結婚しない男たち 増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル (ディスカヴァー携書)

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