2024.10.01
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4 Real Inventions Inspired by Science Fiction(全1記事)
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ハンク・グリーン氏:私には理解しかねることなのですが、サイエンス・フィクション(SF)は世間で不当な評価を得ているようです。本屋では大抵、後ろのほうの棚に追いやられています。吸血鬼や狼男もののロマンス小説の近くなんかに。です。
場合によっては……というより大概、SFコーナーにいる人たちにはオタク感が漂っています。なぜわかるかというと、私自身もその一人だからです。これをご覧になっているということは、あなた自身もその一人である可能性がありますね。
SFをカルトっぽいニッチ分野扱いしてしまうのは、SFのもつ影響力、革新力、現実の確固たる科学的事実に貢献し得る無限の可能性について、過小評価していることに他なりません! SF作家の多くは、科学的に裏付けのある小説を書くことで知られており、相当本格的に学問を修めた人たちもいます。
『2001年宇宙の旅』を執筆したアーサー・C・クラークは数学と物理学の学位を持っていましたし、『われはロボット』の著者アイザック・アシモフは生化学の博士号を取得していました。
こうした数多くのSF作家たちは、既存の理論や科学技術からインスピレーションを受けましたが、同時に、後に科学の道へと歩んだ多くの読者の想像力をかきたて、作家自らが科学界の新たなアイディアの着想の源となったのです。
そうです。実にたくさんの現代の発明が、元をたどればSF小説から着想を得たものであり、SFのおかげで実現可能となったのです。
例えば、皆さんのポケットに入っている携帯電話もそうですし、他にも今すぐ思いつくだけで……最低3つは思い浮かべることができます。
昨今、スターウォーズのライトセーバーを振りかざせば必ず携帯にぶち当たります。アメリカで携帯を所有していない人を探すことのほうが難しいくらいでしょう。しかし、ずっとこのような状況だったわけではありません。
最初の自動車電話の登場は1940年代の半ばのことでした。しかし20年経っても、稼働形態はまだ高価なラジオと大して変わらないような形でした。また一度の使用人数は数人と限られた送信網だったため、うまく機能していませんでした。基地、つまり車両に線でつながれた状態でしたしね。
AT&T社といった電話会社が技術改善に取り組んでいましたが、遥かに自由に動かすことのできる新たな通信方法を編み出したのはMotorola社の技術者であり役員だったマーティン・クーパーでした。
1970年代のある日、クーパーは考えてばかりで煮詰まっていたため、休憩を取ることにしました。ソファーでくつろいで、ジーン・ロッデンベリー作のテレビドラマ『スタートレック』を見ることにしたのです。
そのエピソードではカーク船長がもちろん窮地に立たされており、携帯型のポケット通信機を取り出し、ブリッジ(指令センター)に連絡していました。
クーパーの頭の中でアイディアがひらめきました。カーク船長は交換台に電話の取次ぎをしてもらう必要もなければ、小さく粋な通信機は輸送シャトルにつながれてもいない。ただ手中にすっぽりと収まって、機能しているのです!
未来の電話通信は、巨大な通信網に支えられた、1対1のやり取りができる小型携帯機器によって行なわれる必要があるとクーパーは確信していました。他の人にとってはスタートレックに登場する技術など夢物語に過ぎませんでしたが、移動通信技術界の第一線に立つクーパーにとっては具体的な目標でした。そして、彼はそれを実現させたのです。
初めての携帯電話からの通話は、1973年にクーパー自身によって行なわれました。ニューヨークの歩道で、「Dynatech(ダイナテック)」と名付けられた巨大な長方形の通信機から電話した先は、競合相手であるベル研究所でした。ライバルに勝ち誇るように。
1980年代半ば、ダイナテックは市場で売り出されました。通話可能時間はわずか30分。80年代の映画にしばしば登場した、ウォール街の重役やパステルカラーの服を身にまとった麻薬密売人が使っていた巨大なモノ、覚えていますか? あれからずいぶんと進歩しましたよね。私の携帯は今やプロンプター(原稿表示装置)のリモコンとして機能していますから。スタートレックに感謝です。
約100年前に遡りましょう。発明家たちは水面下を移動する方法を考えていました。しかし潜水車両に関する構想はほぼ図面上のアイディアにとどまっており、中には実際に造られたものもありましたが、皮製や木製のもので、動くことも短時間の潜水もままなりませんでした。それではあんまり実用性がないですよね。
1864年、南部連合軍が手回し潜水艇「CSS Hunley(CSSハンリー)」」を進水させました。艦船USSフーサトニックを攻撃、沈めることに成功しましたが、その過程で潜水艇自体も沈没してしまいました。そんなわけで、本当に沈まない潜水艦の登場が待ち望まれていました。
1898年のこと、遂に「Argonaut(アルゴノート)」という初の潜水艦が外洋での潜航に成功。バージニア州のノーフォークからニュージャージー州のサンディフックまで、沈没や衝突も、おまけに(!)乗組員を犠牲にすることもなく、無事に就役を成し遂げました。こうして、「現代潜水艦の父」との異名をとるアメリカ人発明家サイモン・レイクは拍手喝采、多大な称賛を受けました。
しかし本当の偉業は、フランス人小説家ジュール・ヴェルヌの執筆にありました。ヴェルヌの名著『海底二万里』が潜航という概念についてレイクを虜にしたのです。
1870年に初版が刊行されたこの本に登場する、ネモ船長率いる潜水艦ノーチラス号のアイディアは初期の潜水艦から得られたものかもしれませんが、ヴェルヌの調査は綿密で非の打ちどころがなく、想像力は壮大なものでした。そして驚くべきことにその設計も実用性の高いものでした。
ヴェルヌはエンジニアではありませんでしたが、先端技術を発展させ小説に落とし込む並外れた才能の持ち主でした。そして時に、現実の世界で取り組まれている課題に解決策をもたらしました。
全幅11メートル、ガソリン機関であるレイクの潜水艦アルゴノートに関しても、ヴェルヌの小説に登場するノーチラス号に多くの類似点があります。両艦とも葉巻の形をしていますし、バラストタンクをあふれさせることによって潜水を可能にする点も同じです。
また潜水艦アルゴノートは、潜水服を着た乗組員が扉を通り抜けて潜水艦と海底の間を行き来し、海底沈殿物の回収を行なうことを可能にした初の乗り物でもありました。これはまさにネモ船長の乗組員が行なっていたことです。
確かに、ネモ船長の船内にはパイプオルガンや膨大な所蔵を持つ図書室、美術品などが取り揃えられ飾り立てられていましたが、専門家ではないヴェルヌの先見の明のある知識には目を見張るものがあります。レイクは自叙伝の中で、「ジュール・ヴェルヌはある意味、私の人生の総裁だった」と述べています。
もちろん、人気作家でとてつもなく影響力がありながら、物議を醸すことも多かったロバート・ハインラインを抜きにしてSFを語ることはできません。アイザック・アシモフやアーサー・C・クラークと並んで世界三大SF作家の一人として知られている作家です。
今日、特に原子力産業で使用されている遠隔マニピュレータ「ウォルドー」はハインラインの作品からその名を取り、着想を得て造られたものです。1942年に初版が刊行された短編小説『ウォルドー』は、手に筋肉の病気を持って生まれた機械いじりの天才ウォルドーの人生を丹念に描いたものです。彼は病気のため彼は自分の頭すら持ち上げられないくらいでした。
そこでウォルドーは、明晰な頭脳と家族の資産を使い、「偉人ウォルドー・F・ジョーンズの同期重複型集電器」を発明します。すなわち、自身の手で操作が可能な巨大ロボットアームです。ハインラインは、アームが人間の手の拡張ロボットのように機能する様を描き出しました。レバーやボタンで制御するのではなく、手袋のように手にはめるだけで、まるで自分自身の腕であるようにアームを操作することができるのです。
また、その大きさは様々で、微細操作に使用する小さなものから、建物の建設に使うような巨大なものまで登場します。この技術を使えば必然的に、人間にとって危険が生じるような環境においても遠隔操作による作業が可能になります。
それゆえ程なくして、その必要性がもっともであること、そして架空のロボットアームを造り出した技術が現実の世界でも通用することが証明されるのです。
1945年、中央研究所は、マンハッタン計画に基づき原子炉の研究を始めたばかりだったアルゴンヌ国立研究所のために遠隔マニピュレータを開発するよう依頼を受けます。ホットセルという密閉された場所の上部から放射性物質の取り扱いを行なっていた既存の機器に取って代わり、遠隔アームを使用して隣接する壁の外から操作できるようにすることが狙いでした。
結果としてできあがったロボットアームには、「マスター・スレーブマニピュレータMK.8」という怪しげな名前が付けられましたが、便利なこのアームはハインラインの小説にちなんで「ウォルドー」の愛称でも親しまれました。
SFが私たちの生活を……この場合は「多少」ですが……いかに素晴らしいものにしたかという最後の例、それはテーザー銃(スタンガン)にまつわる話です。
できれば皆さんにはテーザー銃で撃たれた時の鋭く激しい不快感を経験してほしくないので、興味がある場合には「テーザー銃」とYouTubeで検索して、数え切れないほど多くの体験者による動画を通して体感してください。電流が身体を流れる衝撃を直接感じなくても、テーザー銃がどんなものなのかをうすうす感じ取ることができるでしょう。
航空宇宙科学者であり、物理学者でもあるジャック・コーバーによって1970年代に発明されたテーザー銃は、警察官や捜査官が電気ショック銃のように使用することのできる、殺傷力のない武器として設計されました。
コーバーの着想の源は2つあったようです。1つ目は、ある男性が電気柵にぶつかって一時的に動けなくなったという内容の新聞記事。2つ目は、子供の頃に読んだ古き良きSF小説「トム・スイフトの冒険」シリーズでした。
1911年に出版された『トム・スイフトと電気ライフル銃』は、100冊ものシリーズ本のうち10冊目として、ストラッテメイヤー・シンジケートというゴーストライター集団によって執筆された作品でした。この作家集団は「ビクター・アップルトン」というペンネームを用いて執筆し、他にも『少年探偵ハーディ・ボーイズ』『少女探偵ナンシー・ドルー』といったシリーズ本を出版しています。
スイフト・シリーズでは、勇敢な発明を生み出した栄光や10代の若者の冒険魂を通じて、慈悲深い科学技術が描かれました。前述の本では、主人公トム・スイフトがゾウなどの巨大動物を狩猟するアフリカでの冒険旅行に繰り出します。1900年代特有の主題ですね……その頃は皆こういったことをしていたわけです。
ところが、友人たちが赤い小人たちに捕らえられてしまうという、とんでもない事態が起きます。何ということでしょう!(笑) そこですぐさまスイフトは、最新発明機器の電気ライフル銃を取り出します。見た目はそこらへんにある古いライフル銃のようですが、銃弾の代わりに電流を発射し、強度も幅広く設定することができるのです。くすぐりレベルから殺傷レベルまで幅広く……です。
60年後、コーバーはこの電気ショック銃を現実のものにします。そしてトム・スイフトに敬意を表して原作名「Tom A. Swift's Electric Rifle」の頭文字を取り、「テーザー(TASER)」と名付けました。スイフトの魔法の銃のように、頑強な壁を爆破したり怒り狂ったクジラを仕留めたりする代わりに、現実のテーザー銃は、本体に絶縁線で繋がれた帯電矢弾を放つことで、標的の体内に電流を流して筋肉のけいれんを引き起こし、制御不可能な状態にします。
1990年代の半ばまで、テーザー銃は、矢弾を放つために少量の火薬を必要としたため火器に分類されていました。現在は、火薬に代わって圧縮窒素が使われており、アメリカのほとんどの州で自由に売買され使われています。いいですね!? 少量の電流は必ずしも危険ではないですし、テーザー銃は火器の代替としては役に立つものです。
しかし同時に、テーザー銃は非常に危険なものにもなり得ますので、遊び半分で友人相手に使用するのは絶対に止めてください。それから、何はともあれゾウのことは放っておいてあげてくださいね。
それにしても、実物が芸術を模倣し、芸術が実物を模倣するのは、とても粋なことですよね。非常に道理にかなっています。どのくらい理にかなっているかというと、2000年に欧州宇宙機関が、アメリカに対抗し続けるため、新技術の出現に近づく保証があると考えられる新旧のSF小説から得た有望なアイディアを公募したほどです。
ですから、科学とSFは、うまくすれば強力な協力関係を築けるわけです。聖書に倣い、「オタクなる者は地を継がん」です。ジュール・ヴェルヌもかつて「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」と言っています。さあ皆さん、ホバーボードに取りかかろうじゃありませんか! 私は1989年から実現を待ち望んでいるんです。
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