2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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岩上貴洋氏(以下、岩上):さっきブランドンさんが話してる中で(あったように)、LIGも3年目ぐらいの時にみんな辞めちゃったんですよ。みんな辞めちゃって、1人になって困ったなというところはすごくあって。
堺大輔氏(以下、堺):困りますよね。
岩上:すごい困って。自分なりに考えなきゃいけないこととか、考え方も改めて。「何をするために仲間を集めるのかというところまで考えないと、そもそも組織も作れないな」と思って考えたんですけど。
ブランドンさんも以前お話した時、同じようにメンバーが離れていった時期があったと聞いて、そもそもどういう理由で離れていって、何を改善したらまた組織ができてきたのか。日本とアメリカで環境が違うかもしれないですが、教えてください。
ブランドン・ヒル氏(以下、ブランドン):アメリカの会社の時の話ですけど。3年目、大きなプロジェクトが取れて、それが一段落したあとで。
軌道に乗った状態じゃないですか? 会社の規模に対して大きなお金が入ってきた状態ですね。そこで僕が何をするのかというのをスタッフが見て、それでがっかりして辞めたんですよね。
会社が成長期に入って、軌道に乗ってお金も入って、「さあ、ここからどうなるのかな?」ってみんな期待してる時に、経営者としての仕事がまったくできていなかった。
そのお金をどう使うか、どういうプランを立てるか、どう会社を成長させるかということがぜんぜんビジョンも語られないままに、意味のわからない評価軸で、昇進や昇給も適当に気分で決めてる感じだし、フェアじゃないような人事もやるし。
デザイナーから僕が抜け出せていない。それで、僕がかわいがっていて、一番優秀だったデザイナーが一番最初に辞めたんですよ。すごいショックだったんですよね。「こいつがいればうちの会社はすごくなるぞ」というやつが一番最初に辞めたので。すごいショックでした。
堺:そのあとは真逆に行ったということですか?
ヒル:まず決めたのは、僕は経営者として成長しなきゃいけないということ。それを決めたのと、あとはその時期までは僕がメインのデザイナーで、アシスタント的な人の配置をしてたんですよ。
僕がスタープレイヤーであって、周りがそれをサポートするようなことをやろうと思ってたんですよ。
なので、次に人を入れる時はそれをやめようと思って。それぞれのエキスパートになり得る人を入れて、ガンガン僕に文句を言うような人を採用したんですよ。
今でもそうなんですけど、うちの会社のスタッフって、アメリカ人もけっこういるし日本人もそうなんですけど、僕にすごい文句を言うんですね。毎日必ず。
(会場笑)
個人的なことじゃなくても、会社としての方向とか。そこの突き上げってすごいんですよ。それのおかげで僕は怠けられない状態になってるんですけど。
逆にそれがないと、気づかないうちにある時スパッて会社が死ぬので。それの予防になっているので、今でも誰でも僕に文句を言える状態をキープし続けています。
堺:なるほど。いい感じですね。オフィスは今何人ぐらいなんでしたっけ?
ヒル:サンフランシスコは15人くらいで、日本は7人かな。日本のオフィスが、南青山なんですけど、7人でサンフランシスコが15人でしょ。サンフランシスコのオフィスの大きさが日本のオフィスの10倍です。ガラガラ(笑)。
(会場笑)
だからコワーキングスペースを始めたんです。天井もここの(会場の)4倍くらい高いんですよ。ドローンとか飛ばせるんですよ。届かないんですよ、上の窓。長いハシゴでも届かないんですよ(笑)。
もともと倉庫だったんですね。レンガだし、かっこいいんですけど、ブラインドとか、上に窓がガーッとあるんですけどぜんぜん届かないんですよ。コントロールできないんですよ。IoTか何かで欲しいなと思って。
堺:そうですね(笑)。人数の規模というか、たぶんさっきのメンタリングの話もそうですけど、今は15人で見ているというところから、人数の規模はどうしていきたいというのはあるんですか?
ヒル:ビジネスと人数の規模はぜんぜんこだわってないですね。想像するに25人くらいがちょうどいいかなと思っています。一番避けたいのは、サバイブするために仕事をするようになるのは嫌なんですよ。
コストをまかなうために、受けたくない仕事を受けなきゃいけない状況に追い込まれるのはすごい嫌なんですよね。なので、そのくらいがいいんじゃないかなと思います。
堺:LIGさんはどうですか? どういうふうになりたいとか、どれくらいの規模なのか。
岩上:「Life Is Good」というコンセプトで、多事業、多拠点で展開していきたいと思っています。イケてるものをつくり、世界で通用する会社にしたいというのは創業時からずっと変わらず、表現方法を広げていっています。
Webから始めた会社なので、技術やクリエイティブは今よりさらに強くしつつ、シェアオフィスやゲストハウス事業など、Webだけにこだわらずに広げていくことにチャレンジしています。
堺:IMJさんは長期的に見た時に、「どこまで売上を」というのはやっぱりあるんですか?
高橋:まあ、ありますね。うちの会社の場合は、ここ何年かはどちらかと言えば、「売上を伸ばすよりもいい仕事をしていい利益を作ろう」みたいな考えでやってきたので、あまりトップラインを上げることを考えてなかったんですけど。
いったん筋肉質な体質がある程度できたので、次はやっぱり成長しないといけないので、今はトップラインを上げていくという計画に変えました。
岩上:海外展開も考えているのですが、IMJさんやチームラボさんは、海外拠点とのやりとりはどうしているんですか?。
堺:上海と、台湾にも一応あるんですけど。基本は上海にいます。
高橋:IMJも中国の、ちょっと田舎なんですけどアモイというところにオフィスがあります。あとは事務所が1つ上海にあります。
岩上:やりとりは頻繁にやられてるんですか?
堺:中国や台北の場合は時差も1時間とかしかないので、あまり変わらずやってます。中国もあるけど、基本的にはほとんどここ(東京)なんですよ。東京に全部まとまっていて、台北もウィンドウとしている感じなので。さっきブランドンさんもおっしゃってましたけど、生産は日本でやっているという感じ。
岩上:アメリカに進出している会社さんがいっぱいいらっしゃると思うんですけど、うまくいく会社さんとうまくいかない会社さんの明確な違いってありますか?
ヒル:ありますよ。プロダクトとビジネスのどこの切り口で見るかなんですけど。まずプロダクト的に一番……これ言っていいのかな(笑)。
「日本でだいぶ安定してきたから、今度はアメリカに出そう」というのはけっこう厳しいケースが多いですね。
うちの会社の露出とかも理由にあるんですけど、Web制作系の会社に「海外進出したいんですけど手伝ってください」と言われるケースが多いんです。さっき言った理由で、サービスプロダクトを変えないとダメなんですよ。まず、プロダクトマーケットマッチという、マーケットに対してどれがいいかという日本的良さをちゃんと出しながら、他でマネのできないものを出す。
日本の会社さんって、他の人がやっていないことをやるのがあまり得意じゃないので。今日の人たちとか、得意なところもあると思うんですけど。けっこう「改善版」が上手な人が多くて。
「日本でそれがけっこうウケてるから、アメリカで勝負したいんです」というお話をいただくんですけど、90パーセントくらいが「それ、アメリカバージョンあるの知ってます?」という。「マジっすか?」って言われるんですよ。
(会場笑)
だってIT系ってあっちが本場じゃないですか。イタリアで呉服屋をやってたイタリア人が、「調子いいので今度京都に出したい」と言った時に、「いや、京都は何かあるよ」って(笑)。どうしてもそんな感覚になっちゃうんですね。
なので、何がすでに存在していて、何がないから日本的良さを出しながら提供できるかというのは冷静に考えないと。
「日本でけっこうイケてるから、その延長線上で今度は世界だ」というのはなんかね。1回そこをリセットしなきゃダメ。完全に新しい視点から。
もう1つは、今度は人のことなんですけど。「アメリカに来て、どういうふうに展開してますか?」と言った時に、「まず語学なので、語学学校に行きます」とか言うんですけど。けっこう時間かかるなと思って(笑)。
(会場笑)
堺:いつやるんだと(笑)。
ヒル:(笑)。それは、語学学校に行くような英語力じゃダメって言ってるんじゃなくて、それでもビジネスをやりなよって思うんですよね。そこは関係ないから。
語学学校なんか行かなくていいから。身振り手振りでも何でもいいから、やってみたほうがいいよと。それで意外と大丈夫だよと。
岩上:その通りですね。動かないと始まらない。ちなみに、外からの視点で「日本的な良さ」ってどこらへんですか?
ヒル:ちょうど先週、仕事で福岡に行ってまして、こういうスタートアップのイベントに出させてもらったんですね。本当に素晴らしいなと思ったのは、ある方が、日本でやってもそんなにウケないけど、世界的にやるとスーパーウケるというのをやったんです。
それは何かというと、知ってる方もいらっしゃるかもしれないけど……プロダクト名忘れちゃった。
日本の伝統工芸の職人が木を薄くして曲げる技術を持っていて、それに陶器の器を合わせてマグカップみたいにして作った会社があるんですね。
それをKickstarterというクラウドファンディング、プリオーダーを受けるようなところに載せたんですよ。
それは日本国内だと相場4000円くらいらしいんですね。それを世界に出す時に、8000円で出してもガンガン売れたらしいんですよ。粗利がすごい高いって。
それはなぜかというと、そういうのを求める人って確かにメインストリームじゃなくてニッチなんですよ。パーセントとしてはそんなに多くない。ただ、世界に出したので世界中からそういうのが好きな人が集まって、結局大きな収益につながる。
それも、あまり他では見つからないから、日本の倍チャージしても問題ない状態まで持っていけたという。いわゆる勝負する土俵を変えた。それはすごく重要だと思います。
堺:土俵を変える、重要ですよね。同じ土俵で戦ってるとね……。
岩上:消耗戦になっちゃう。
堺:今新しくイノベーションプログラムでやってるサービスって、けっこう大企業の人たちがポンって来るわけですよね?
ヒル:そうです。
堺:どこがみんな引っかかるんですか? つまずくというか。
ヒル:チームごとにそれぞれ違うんですね。この前ベンチャー企業の社長さんをふくめた役員と3人で来たりしたんですけど、まずはアイデア出しをする時にアイデアが出てこない。あとは聞いたことあるアイデアしか出てこない。これは難しいことですけど、例えばアメリカのユーザーが何を求めているかは直感的にわからないので、どうしていいかわからない。
それはフィールドトリップというのに連れて行って、テスラに乗ってFacebookに遊びに行ったりとか。そういうのをやったりしてるんですよ。野球観に行ったりとか、クルーザー乗ったりとか、何でもいいんですよ。サンフランシスコの生活に慣れて。
「なるほど、アメリカ人こんな生活してるんだったら、こういうサービスは誰も使わねえよな」とか。逆に、「ここがすごい不便だから、これは絶対にニーズある」というのがスパっとわかるんですね。そこは重要ですね。
堺:サンフランシスコに行ってみたくなるね(笑)。アメリカの中のサンフランシスコってどういう位置付けで……アメリカってめちゃくちゃ広いじゃないですか。アラバマもあればテキサスもあればサンフランシスコもあってニューヨークもあるじゃないですか。
アメリカの中でサービスを考える時って、サンフランシスコで考えるその人たちとアメリカ全土の人たちってけっこう違うような気がするんですけど。さっきのマーケットを考える時に、それって見るのか。見なくてもいいのか。
ヒル:ギャップじゃないんですよ。タイムラインの違いなんですよね。サンフランシスコってアメリカの中で一番最初に試せる街なんですよ。いわゆるアーリーアダプターですね。それで、すごい指摘もふくめてポジティブなフィードバックがもらえるんですよ。
なので、ユーザーからのフィードバックを得るために、サンフランシスコ限定で実験的にリリースしているサービスって多いんですよ。街全体が実験室みたいな状態になっていて。
使うユーザーもそれに対してどんどん参加してくれて、スタートアップの人たちも多いからポジティブな「こうしたら?」「ああしたら?」「俺だったらこうするけど」みたいなのをどんどんくれる。
全米の正式リリースの前に1回そこで試しまくって、改善しまくれるという素晴らしい環境ではあるんですよね。
岩上:その分、コストがめちゃめちゃ高いんですよね。
ヒル:ただ、当たった時のアッパーもすごいから、それに見合っているんですよね。やっぱり世界レベルで戦っているので。サンフランシスコで、サンフランシスコでしか商売しないと思ってる会社はないですよ。最初から世界でやらないと生き残れない街なので、当たり前のことで。
堺:さっきインターンという話もありましたけど、今日本人の留学生が減っているという話をたまたま何かで聞いたんですが、どうなんですか? 海外からアメリカへ流入している人たちの変わりようとか、変わっていないのかとか。
ヒル:やっぱり日本人は少ないと思う。留学生は。中国とか韓国勢はすごい多いですね。特にサンフランシスコなんかはアジア系が多いから、中国、韓国の比率はすごく高い。
あとは不思議なもので、中国から来た人で、中国語・英語・日本語できますという人がけっこう多いんですよ。
堺:日本語!
ヒル:けっこう日本語できるんですよ。「どこで(覚えたの)?」って言ったら、「漫画とかドラマとか」って。
日本から来た人って、基本バイリンガルでしょ? 中国って3ヵ国語普通に話すんですよ。勝てないでしょ(笑)。彼らはガッツと努力レベルがけっこうすごくて。あの……まずい。
堺:まずい(笑)。日本人、まずい。
ヒル:まずい(笑)。気づいてないと思いますけど。
堺:確かに外に行かないと気づかないかもしれないですよね。
ヒル:そういうすごいガッツのある人たちがガンガン来てますよね。日本人も留学じゃないかたちで来る方たちはけっこう多いですね。
最近始めた「トビタテ! 留学JAPAN」みたいなのもあって。国がサポートしてるんですよ。少しずつ海外に出やすい環境は整いつつあるとは思います。
岩上:クリエイターでも海外で働きたい、シリコンバレーとかサンフランシスコで働きたいという人たちがけっこう増えてると思うんですけど、どうすれば世界で活躍できるクリエイターになります?。
ヒル:そこがすごく難しいんですよ。デザイナー、クリエイターって、アメリカは特にコミュニケーション能力とプレゼン力がすごく問われるんですよ。
作ったものを説明するとか、相手に理解させる努力がすごく必要とされる。語学力+コミュニケーション能力がすごい重要なんですね。
日本って、プロデューサー、ディレクターとかあったりするじゃないですか。調整役とか、プレゼン役みたいな。でも、アメリカって作った人が直接説明する義務があるし、お客さんも直接デザイナーと話したいんですよ。
それができないと仕事にならないので、かっこいいものを作れるだけじゃダメです。壁が高い分、できるようになってほしいと思いますけどね。
高橋:ちょっといいですか? お客さんに説明するところのロジカルな話の仕方って、btraxさんではどういう訓練をされるんですか?
ヒル:訓練……そうだなあ。
高橋:例えば、プロジェクトの中でどんどんやらせて……。
ヒル:そうですそうです。デザイナーは社内で説明しなきゃいけないので。他のチームメンバーに対して。「なんでそうしたか?」というのを必ず説明させられますよね。
日本だとけっこう「わかるわかる」とか「なるほど」という感じで、説明しなくても「この感じだね」ってあるじゃないですか? それがまったくないので。「なんでそうしたか?」というのを、「なんでHelveticaにしたのか」をいちいち説明しなきゃいけないのか……とか。
(会場笑)
堺:なるほどね(笑)。リアルな話ですね。
高橋:その時に、例えば今、データドリブンみたいな話がある中で、データみたいなものってクリエイターの人はどれくらい読み込んだりするんですか?
ヒル:絶対利用はします。理由付けには。なので、アクセスログとかコンバージョンの数字とかはデザイナーは見てやります。
他のチームメンバーから提供されたものだったり、わかりやすく解説されたものだったりもしますけど。それがあると説明しやすいから。武器になりますからね。
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