2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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高橋健太郎氏(以下、高橋):三野さんの『やらまいか魂 デジタル時代の著作権20年戦争』(※booklista特設サイト)ということで。明日、発売ですよね。
三野明洋氏(以下、三野):そうです。
高橋:この本がどういう本か、というのも後で話していただきたいと思うんですけれども。この2015年に、著作権ビジネスというものがどのくらい変わろうとしているのか、変わらざるをえなくなってしまったのか。去年の今頃と今と完全に状況が違いますよね。
ただ、そんなに世の中で肌身に感じられる出来事ではないので。普通の人、音楽ファンで、ただ音楽を聞いてるだけの人にとっては「何がそんなに変わるの」っていう、わかりにくいことだと思うんです。「今、どういうことが起こってるのか」ということをまず、僕の方から簡単に説明しようかと思います。
これ出ますかね? 最近10月ぐらいにかなり各新聞、各誌などで話題になったと思うんですけども。これは10月16日の朝日新聞ですけども、「avexがJASRAC一部離脱 10万曲移行へ」。この見出しだけで意味がわかる人も少ないと思うんですけれども。
世の中の、レコードになったり放送されたりしているほとんどの楽曲というのは、今のところJASRACが90何パーセント、シェアを持っています。ただこれは、JASRACで管理しなくてはいけないという決まりがあるわけではなくて、著作権管理事業者法というのが……改正何年ですか?
三野:2001年です。
高橋:2001年に改正されてから、民間の著作権管理会社が録音権、それから今は放送権も扱えますね。
三野:いや、もう全部です。
高橋:扱うこと自体がは全部できるようになっている。法令上は。が、扱えるようにはなったんですけれども、実質的には、JASRACが100パーセント近いものを持っていたものが民間に移っていくかというと、そうでもなかった。そういう現実が、この15年間でありました。
しかし、各新聞紙上で「avexがJASRAC一部離脱 10万曲移行へ」。JASRAC(が管理している曲)は今300万曲ぐらいですか?
三野:外国曲も含め、450万曲ぐらい。
高橋:450万曲ぐらい。だから、10万曲移行しても、一気に何10パーセントが変わるとかいう話ではないですけども。
ちなみにAMP(エイベックス・ミュージック・パブリッシング)という、avex系の音楽出版社がありますけども、僕も自分の書いてる曲預けてるんです。
この「10万曲移行へ」のプロセスで、各作詞作曲家に承諾を得る同意書っていうのが送られてるんです。僕のとこにも、ついこの間来ました。で、判子押して。「JASRACじゃなくお願いします」というのを返したところなんですけども(笑)。そういうかたちで今、10万曲の移行が進んでいるということですね。
それがようやく、2015年にこういうかたちで、avexを中心にして、avexといえば業界の最大手ですけれど、その最大手の楽曲、ほぼ大半がJASRACを離脱して、これからイーライセンスに移るんですね。
そこで、イーライセンスをみなさんに紹介しておかないといけないんですけど。三野さんは今はイーライセンスの会長、代表取締役会長ですね。イーライセンスを設立したのが。
三野:2000年です。
高橋:以来、ずっと代表取締役でしたよね。今回、avexがイーライセンスとJRCを傘下にしたと言っていいですか?
三野:正確に言うと、傘下にしたのはJRCで。イーライセンスはもともと、ある一定のパーセンテージ株を持っていたものですから。avexがイーライセンスの株を全部持ってるわけではない。
高橋:阿南(雅浩)さんがavexにいらして、イーライセンスの取締役社長になり。三野さんが社長から会長になったという状態ですね。
2015年にこのように動いたのは、やっぱり最高裁で勝訴したというのが大きいと思うんですけども。最高裁の新聞記事でますか? 「参入妨害、最高裁が認定。JASRAC使用料徴収」。これ4月でしたっけ?
三野:4月の28日です。
高橋:この裁判自体は、足掛け何年かかったんですか?
三野:そうですね。丸8年です。
高橋:8年目にして最高裁までいって、最高裁が差し戻した。棄却したっていうんですかね。
三野:取り消しといって、この裁判に関しては2009年に公正取引委員会が「包括契約の排除措置命令」っていうのを出したんですよ。これに対してJASRACが取消訴訟というのを出した。
三野:そこで審判が開かれ、取消審決が出た。この審決に対して、我々がもう一回取消訴訟を起こした。
高橋:「取消しを取り消せ」って。
三野:そうです。取消の取消訴訟を起こして、2013年の11月1日に東京高裁が判決を出したんです。その上告の最後の判決が最高裁判決で、東京高裁の「取消する」を認めて、そのまま最終的に判断を下したと。
高橋:東京高裁の判決が、そのまま最高裁の判断になったということですね。
三野:そうです。
高橋:それによって、JASRACの放送使用における使用料の徴収方法が独占禁止法違反に当たるという判断が得られた、と。
三野:正確に言うと、包括契約には2つあって包括許諾と、包括徴収。包括許諾っていうのは、当然のことながら全国の放送局が音楽を使うのにいちいち1曲づつ、「これ使っていいですか?」って著作権管理事業者にいうのはおかしいですよね。
なので、「どんな曲でも自由に使っていいですよ」っていうのが包括許諾なんです。ということは、使った、許諾した作品に対して、使用料徴収をしなきゃいけないですね。
これをまとめて100パーセントJASRACに払ってしまってることが包括徴収で、そこが我々みたいな新規参入事業者に対して競争阻害理由になっていたということです。
高橋:その新規参入に対する妨害、が事実として認められたと。
三野:そうです。
高橋:さっき丸8年って言いましたけども、ここに至るまでの経緯を僕も一応追いかけてはいたものの、あまりに長いんで。以前の出してもらっていいですか?
三野:概要を説明しましょうか。
高橋:これ(『やらまいか魂』)を読んでいただければ、すべて書いてあるので。あまり説明してしまうと、この本の醍醐味がなくなるんで。概要をパッと、時系列で古いものから出してみようかなと。これがいつですかね? 「JASRACが参入妨害」(画面、新聞見出し)。
三野:これは東京高裁の判決が出たときの記事です。
高橋:これは1個手前ですよね。
三野:2013年の11月です。
高橋:「独占JASRACで60年目の初挑戦」。これが、10年ぐらい前ですよね?
三野:そうですね。
高橋:「民間会社が初参入」これが2001年ですよね。だから、これが一番古いですね。2001年に民間会社が初参入して。包括参入の一つの条件として、「録音権だけではなく放送権を扱う」というのが一つ大きなステップだったと思うんですけれども。放送権を扱うところで、ひとつ、つまづきがあって。
三野:正確に言うと、2002年の4月1日から「複数管理事業」っていうのが始まって。そのときに新規参入事業者は「録音権」と「インタラクティブ配信権」っていう、いわゆる通信における使用に関し、管理業務を行っていました。
高橋:最初はその2つだけでね。
三野:最初は「録音権」と「インタラクティブ配信権」だけ管理してたんですよ。我々の会社っていうのは文化庁の管理下にあるんです。3年ごとに立入検査があるんです。最初の立入検査は2005年に行われて、そのときに「よくできましたマーク」貰ったんです。
「全然問題ない、よくやってますよ」っていう監査結果を貰ったんですよ。それを受けて、「じゃあ、録音権とインタラクティブ配信権だけじゃなくて、そのほかの支分権、利用形態っていうのも管理していいですよね」って、文化庁に相談したわけです。
で、貸与権とか、それから放送権とか、その他の権利、支分権と……これはみなさんどこまでおわかりかわからないけど、音楽著作権には、四つの支分権と七つの利用形態ってのがあるんすね。これらを全部管理するために「どうしたらいいか」っていう作戦を練って、文化庁と話したのが2005年です。
高橋:これは法律でやっていいことになってても、一応文化庁にお断りしないとできない。
三野:約款や使用料規程の届出が必要なんですよ。それを届けて文化庁に受理していただけると、そっからスタートができるんですよ。
高橋:やっぱり、受理されないとできない。
三野:もちろん、そうです。それの条件は、利用者団体ときちんと協議をして、その使用料規程が「利用者にとっても不利ではない」ということが確認できないといけないです。そういう意味の作業をやってたのが2005年、ということですね。
高橋:2005年から放送権を扱うように。
三野:それから1年経って、2006年の10月からです。
高橋:秋でしたよね。大塚愛さんのシングルの放送権を扱ったんだけれども、これがなかなかオンエアにつながらない。
三野:最初はavexの皆さんにご協力頂いて「なんかやろう!」っていうんで、結構曲数を管理させていただくことになったんですが。この時に我が儘を言わせていただき、「新人の作品だけでは……」と、「やっぱり有名な曲も管理させてください」と言ったわけですよ。
そしたら、avexの人たちも理解してくれて、「じゃあ、大塚愛さんの『恋愛写真』なんて、これ今タイアップもばっちりついてるし、これだったら放送局に間違いなくかかるだろう」ということで。実は約100曲弱、60数曲の曲を一気に預けてもらったんです。
高橋:あのときは僕も結構、実態を見ていたし、実際、僕はFMの放送局で仕事していたこともあり、たくさん現場のディレクターを知っていて、今はあんまりFM局行くことはないんだけど、その頃、僕はインディーズレーベルやってたんで、プロモーションとかでしょっちゅうFM局に行ってたんです。
すると紙が回ってるのを目撃してしまいました。「イーライセンス楽曲はかけないように」っていうお達しが、ディレクターにも回ってるんですね。ディレクターっていうのは、本当は自由な選曲権が欲しいわけです。
だから、上からこういうお達しがきて選曲が制限されるっていうこと自体、基本的には嫌う人たちなんだけども。「でもね」みたいなところは、僕も目撃しました。それが2006年で、そこから裁判が始まるわけですね。
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