2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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浦上満氏(以下、浦上):次にいって、これは女性同士。ちょっと年増の女性と若い女性ですね。「笑道具」と言うんですよ。当時のこういう道具をね。笑道具を使っていたしております。
島貫泰介氏(以下、島貫):これ、のちのち出てくると思いますけど、結合部で今で言うバイブのようなものが使われてますね。
浦上:お! 出ました! これが一番有名な春画ではないかと言われていますけども、大蛸と子蛸が美人を陵辱しているような悍ましい絵なんだけども。これもやっぱり19世紀のフランスに行っても、ゴングールとか大評判。すごい絵だと。
ただ、非常に妖気的な絵だと。だって、蛸自体が西洋人にとっては魔物でしょ。それを、この美人を陵辱しているから、なんともグロテスクだと思ったんです。でも、なんとも魅力的な絵だと。
ところが、後ろに詞書きとか、あるいは書き入れと言うんですけど、字が。これを読むと、ほとんど落語の世界。艶笑落語。蛸ちゃんがなにを言っているかというと、「俺はこの機会をずっと狙って待っていたんだよ、いい女だぜ、これは竜宮城連れて行かなくちゃ」って言っているわけですね。子蛸は子蛸で、大蛸に負けないように、「俺も頑張るぞ」ってなわけで。肝心の女性がえらいかわいそうだなって思ったら大間違い。すごく喜んでいます。
会場:(笑)。
島貫:まんざらでもない。
浦上:まんざらでもない。「私も蛸だ蛸だと言われてきた」と。蛸って名器のことなんです。「本物の蛸にはかなわない」って言ってるんですよ(笑)。「なんていいんでしょう」って言ってる。だから、後ろを読むと全然、初め画だけ見た印象と違うんですね。だから、さっきも言ったけど、春画って笑い絵なんです。これ見て目を三角にして、「ん?」なんて言うほうが野暮なんです。
これが大英博物館、2013年、ちょうど2年前ですね。その10月3日から3カ月、大英博物館で「Shunga: sex and pleasure in Japanese art」っていうのをやりましてね。
これが大英博物館の正面玄関。行かれた方は覚えていると思いますけど、ちょっと小さいけどここに春画の大きな絵がありまして。
(次のスライドで)これが内部です。ここにも春画の大きなのがありましてね。大人気だったんですよ。
これは、会場入口だけど、決してそんなに広くなかったんです。680平米くらいのところでやったんだけど、だいたい予想の倍の人が来て、約9万人が来たんですね。普通、大英博物館って、入場料タダでしょ。これが、特別展はお金を取ったけどそれだけ来て。僕らは、さっき言ったけど、スポンサーになったもんですから、いろんな報告が来るわけですよ。そしたら、入場者の55%は女性だったんです。
とっても人気があって。初めは向こうもびっくりしたらしい。特にマスコミはね。今日もマスコミの方がいらっしゃるけど。全部の絵図がいたしているわけですから。ところが、それをちゃんと見たら、「これはすごいや」と。人間の性、生きる喜びが描かれているって言って。
なんと、向こうのクオリティ紙であるいろんな新聞なんかが、こぞって四ツ星を付けたんですね、ランクを。すごい! でも、「残念ながら、五ツ星はなかったのね」っていう人がいる。五ツ星は、かつてないんです。だから、事実上の最高の展覧会としてランクされている。世の中で全部肯定的にまわって、「すごい展覧会だ」っていうんで大評判になったんです。
もう1個申し上げるのは、来た人にアンケートを取るんです。ペラ紙を配るんじゃなくて、大学院生がちゃんとインタビューするんです。そうすると、「日本人が性に対して、こんなにおおらかでユーモアやウィットを解する人たちだと思わなかった」と。もっとカチカチでコチコチな人たちだと思ったけど、すごいと。日本人観がすごい好転したんですよ。いろんなことがあったんですけどね。
もう1個おもしろいのは、大英博物館も16歳未満はダメ。これは、大英博物館始まって以来だったんですよ。それも、初めは結構ニュースになったんだけど、実際始まると、保護者同伴なら高校生の子でも見れた。なんの混乱もなかった。
今度、我々が永青文庫でやっていますが18歳未満はダメなんですね。一応、僕聞いたんですよ。「親と一緒だったら子供も入れますか?」……ダメ。絶対ダメって言っていた。「いくつまでならいいんですか?」「1歳」
会場:(笑)。
浦上:私も聞きましたよ。「2歳はダメなんでしょうか?」
会場:(笑)。
浦上:本当ですよ。日本はまだカチカチコチコチです。そういうところもね。青少年への悪い影響がないようにっていうことを警察からも重々言われました。
島貫:成功を受けて日本で。
浦上:ところが、成功を受けてじゃない! 成功を受けて、普通は凱旋公演といって。世界の大博物館ですよ。「The Museum」と言われるのは1個しかない。上野の東京国立博物館ですらガクッと落ちるくらいの。
実は、上野でやるはずだった。あそこが腰を引いちゃったもんだから、全国の国公立の美術館みんなやめた。財団法人の、皆さんがよく行くいろんな森美術館だとか、サントリーだとか、いっぱいあるでしょ。みんな行きましたよ。20ぐらいやって、かなりいいところまでいったところもあるけれど、基本的にはみんなダメでした。
やっとやっと、元総理大臣の細川さんが。あの人はアーティストですから、「こんないいものがなぜ日本のものなのに展示できないのか、おかしい」と。「うちの美術館本当に小さくてあれだけど、うちでよかったらどうぞ」と言ってくださったんで実現したんです。これは、細川護熙さんが記者会見の時の。右のおじさんが小林忠先生(国際浮世絵学会会長)といって、日本の浮世絵の大家ですね。こういう学術的な人もみんな応援してくれました。
(次のスライドで)左は、僕と一緒に大英博物館のスポンサーになった淺木さんっていって。この人は画商です。右は私もおりますけど、早川聞多さんといって日文研(国際日本文化研究センター)の教授で、春画の大家です。隣の女性は、まだ35歳の石上(阿希)さんというんですけど。日本で初めて春画で学位、博士号を取った人で、今や大変引っ張りだこの人ですね。
(次のスライドで)これは、今日もお配りしているかな。ただね、このチラシが実は東京国立博物館、置いてもくれなかった。
会場:なんで、信じられない!
浦上:信じられないでしょ! 「なんで?」って言ったら、夏休みだったんですよ。「今、夏休みで子どもさんがいっぱい来るから、年齢制限のある展覧会は……」と言われたから、「あ、そうですか」と引き下がって。9月になって、「もう夏休み終わったし、どうです?」って、ちゃんと朝日新聞を通じて正式に申し入れたら、館長決済でダメだったんですね。元文部官僚です。
会場:(笑)。
浦上:チラシを置かさないんだよ! おかしいよね。逆に、フランスの前の文化大臣はジャック・ラング(Jack Mathieu Emile Lang)というのが来ましてね、僕が案内しましたけど、ものすごく喜んでくれましたよね。彼は大物ですよ。
ミッテラン(フランソワ・ミッテラン、François Maurice Adrien Marie Mitterrand、フランス第21代大統領)の時の文化大臣、教育大臣をずっとやってて、アンドレ・マルロー(André Malraux)という人がいたでしょ。その人は、ド・ゴール(シャルル・ド・ゴール、Charles André Joseph Pierre-Marie de Gaulle、フランス第18代大統領)の時の文化大臣で名を馳せた人。その次にくるくらいの人なんです。
みんなで見て。細川さんも知ってたんで、みんなで話をしたら、「ぜひ、この展覧会をパリでもやってください」と。えらい違いだね。まぁ、いいよ、次。
(次のスライドで)これは、永青文庫始まりました。これは、キャンベル先生(ロバート・キャンベル)ね。この前東大で一緒に講義しました。
これは、「乾杯!」って言っているのは、文化庁長官です。だけど、文化庁長官の名前は勘弁して、「東大名誉教授にしといて」って言うんだから、若干勇気が足りないね、この人は(笑)。
これは、アラーキー(荒木経惟)を初日に私が案内しまして。まぁ喜びましてね。さっきの蛸見たら、「蛸ちゃん! 蛸ちゃん〜!」ってね。「いや〜、元気もらった! すごいね蛸ちゃんは!」とか言っちゃってね、大変でしたよ。真ん中のおじさんが、辻惟雄さんといって、これも非常に有名な学者さんで。村上隆さんなんかとね、ずっと一緒にやったりしてますけど。
望月かおる氏:春画元年の。
浦上:ああ春画元年ね、そうですね!
そんなわけで、私の話はこれで終わりますから。最後に「春画展」9月16日に始まりまして、一応3カ月ですから、前期と後期で全取っ替えしました。それで、12月13日現在で18万人を突破と書いてますけども、本日19万人を突破いたしました。
(会場拍手)
浦上:これがうれしいんですよ。いろんなところでお話しして、これを言うと、誰もお願いをしていないのに拍手が出るんですよ。私、その途端に感極まるんですよ。いやぁ、うれしいですね。今日もうれしい、ありがとうございます!
この展覧会は、2月6日から京都の細見美術館に巡回することが決まりました。京都でも春画いいと思います。また、見てください。そんなことで。すみません、しゃべりすぎました。
島貫:ありがとうございました。
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