2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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島貫泰介氏(以下、島貫):最初は(こちらの画で)。
浦上満氏(以下、浦上):これは、錦絵を始めたと言われる鈴木春信なんですね。基本的には、あまり春画には、名前を落款って言うんですけど、入れないんです。これは、屏風のところに「春信画」ってあるでしょ。これ、「隠し落款」と言うんですね。いかにも屏風の作者のようなふりをして入れるんですね。
これも永青文庫(に展示しています)。実は、これは私のものなんですけども(笑)。まだ、いたしていません。こういうのを「あぶな絵」と言います。「危ない」からきている。これも、見たらおわかりですけど、男性なんかが焦ってますよね。女性が煙管の煙をふ〜っとかけて。「まぁ、そう焦りなさんな」みたいな感じで。あぶな絵と言います。
島貫:まだ行為に及んでいないのにあぶな絵って言うんですね。
浦上:だからまだ、あぶ「ない」んです。
会場:(笑)。
島貫:危ないの先があると。
浦上:あるんです。
島貫:なるほど。
浦上:春信が、当時の江戸を席巻しちゃうんですよ。みんなが春信の人気にあやかって、同じような絵を描く。春信、結構早く死んじゃうんですよ。だけど、ほかの人とか弟子とか書いて、みんな春信と信じて疑わない。
これ、今出た人は、春信の弟子で礒田湖竜斎というんですね。この人も春信そっくりに描いて、初めわからなかったけど、本人もそれじゃつまらないっていうんで、ちょっと春信から脱皮して、春信のいた明和の時代が安永という時代になって、安永風を描く。
それはいいんですけど、かなり春信はちょっとメルヘンチックなんです。顔だけ見てたら男か女かわからない。少年少女みたいな感じ。これもちょっとそういう余韻が残ってますけど、結構大胆になってきた。この場合は、「何これ、女性2人?」なんて思う人もいるかもしれませんけど、男性です。それは、ちゃんと下を見ていただくとわかります。
男性で前髪があるの人を「若衆」と言うんでけど、16歳までするんですね。森美術館で10周年の「LOVE展」見られた方いらっしゃる? あの時は、若衆ばっかりだったんです。おもしろかったのは、江戸時代って、本当に早熟って感じもするんですけど、若衆っていうのは当時のファッションリーダーでもあって。若い女の子がきゃーきゃー言ったんですよ。おばさんもきゃーきゃー言った。ついでにおじさんもきゃーきゃー言った。
会場:(笑)。
浦上:芸も売るし、色も売る。そういう人たちだったらしいですね。
これは男女でね、こたつの陰に猫ちゃんがいますよ(笑)。
島貫:なんか、「猫ちゃんが見た」みたいになってますね。
浦上:(次のスライドで)あ、ここにも猫がいる! なんか、怒っているのかな。
島貫:あちらこちらに猫が。
浦上:これは、勝川春章と言いましてね。有名な北斎のお師匠さんです。北斎は、19歳の時に、この人の門下に入って。その春章という人は、役者絵の第一人者だったんですね。元々、役者絵と美人画が出た。
なぜかと言うと、2大悪所。悪い場所。その一つが、吉原のような遊里ですね。そしてもう一つが、芝居小屋。歌舞伎を見に行く。女性はそっち。男性は遊郭。悪いところなんです。そこの女性を描いたり役者を描くのが、元々の浮世絵の発祥なんです。そのうちに、さっき言った北斎、広重が風景画なんかを描くんですけど、ずっとあとの話です。
この春章と言う人は、初め役者の似顔絵、似た顔に描いたというんで、大変な人気を博した。ところが、そのうちに美人画で大変に有名になるんですね。この人の晩年は、美人画は特に肉筆で描く。この人の絵は、みんな大名からでも競って欲しがったらしんですね。
でも、これを見てもおわかりの通り、おしゃれでしょ。おしゃれだし、春画というのは、意外とすっぽんぽんがないんです。こうやって着たり布団で隠したり。こうしてかえって隠してあるほうがそそるというか。そういうことなんです。
島貫:秘してこそ花というか。
浦上:秘すれば。
これは、(鳥居)清長です。歌麿のちょっと前。歳はあまり変わらないですけど。今日はだいたい、時代順にきてますからね。ちゃんとお勉強のほうも(笑)。
清長という人は、天明の時代、1780年くらいなんですけど。「天明のビーナス」という、八頭身の美女を描くんですよ。日本人は江戸時代、あんなスタイルいいと思わないんだけども、描くんですね。これは八頭身には見えないけど。この人がいたから、歌麿が生まれたという感じですね。
島貫:次にいきましょう。
浦上:これが同じ清長で。実は、これは3枚の絵なんですよ。これは、柱絵といって、柱に掛けるのを横に描いた。この不思議な空間に、男女を描いている。僕に言わせると、トリミングの極地です。
三大春画というのがあって、一つが歌麿の「歌枕」、あとで出ます。そしてこれが清長の「袖の巻」と言うんです。もう1個が北斎の「波千鳥」と言うんですけども。一応昔はそれが三大春画と言われたんですね。これは、そのうちの1つです。
「袖の巻」とは描いていないんですよ。「なんで言うのかな?」って言ったら、くるくるくると巻いて、袖に入れていて、それはお守りにもなったし、もちろん出して「俺はこんないいものを持っているんだぜ」と言って自慢したという説があります。
島貫:サイズ的には、結構小さい。
浦上:小さいです。そうですね。
さぁ、これが「歌枕」、きました! これがやっぱり、女性を描かせたら第一人者は喜多川歌麿でございます。これは、歌枕と言って、歌麿が35歳の時に蔦屋重三郎から出したデビュー作なんですね、春画の。だけど最高傑作と言われています。
まずこれ、一番最初なんだけど、河童が2匹で女性を犯しているんです。上で海女のお友だちなんかが呆然と見ているという。当然これはファンタジーなんです。河童はいないし、河童は悪さをするけど、こんなことをしないと思うけども。春画って、基本的にはファンタジーなんです。まさにこの絵を見るとそんな気がしますがね。
これも、歌枕。だいたい12図で1つなんです。12図で。今日は、あんまり長いといけないから、全部で4図かな。持ってきたのね。これみんな「お嫁さん?」って思うでしょ? 角隠しして。これは揚帽子といって、奥女中が外出する時に、髪の毛にほこりがついたりしないためにしたものなんです。ということは、宿下がりの女性と、その男性がお供の奴さんなのかな。かなり激しく描いてますね。
これはちょっと、無体を働いているおやじがいましてね。実は、春画にはレイプのシーンなんかがあるんですよ。だから、大英博物館でやった時は、2つできないものがあった。出さないもの。1つは、こういうレイプでした。暴力。もう1つは、子どもが出てくる春画。幼児ポルノに通じるのかな。この2つはタブーだった。ただ、例外的にこの作品だけは出したんですね。出したんだけど……ここがおもしろいんです!
そりゃ誰だって、レイプなんていいと思わない。だけど、僕はさっき「なんでもあり」って言ったでしょ。レイプも、何て言うのかな……、うまく言えないけど。要するに一言で言うと、レイプというか無体を働いている男というのは、全部醜男に描かれる。毛むくじゃらで。女性が手なんかかじっちゃって。一言で言うと、「このおっさんはうまくいかなかったね」って感じがする。成就しないな。
要するに、一言で無体を働くようなのは粋じゃない、無粋だ。江戸時代一番尊ばれたのが、粋なことなんですよ。無粋なことをやるやつはダメ。だから、強姦シーンを描いても、そういう教えがあるんです。
島貫:襲われている側、抵抗している女性も、眉毛がきりりと上がって勇ましいなと思うんですけども。
浦上:そう、強いですよ。
これが、また粋でしょう。屋外でございまして。桜の木の下で。なかなか遊び人風の人とね桜が結構出てくる春画って多いですね。
これこれ! これがね、実は12図のうちで一番ポピュラーな絵で。そんないやらしくないでしょ? なかなか品がある。よく見るとね、皆さん見えますか? 女性の髪の毛の耳の下から、男性の目がすっと見えてる。特に露骨じゃないでしょ? 永青文庫の時に、9月1日から1カ月間、山手線40駅で大きく広告を出したんです。大きなポスターで。1,500万くらいかかりましたけどね。
会場:わぁ……。
浦上:だけど、効果はありましたよ。その時に、JRが初めてなのね、18歳未満の禁止の展覧会って。初め、難色を示したんですよ。最後OKになったけど。「ちゃんと、図柄はチェックしますからね!」って言われて。
で、この絵がある。この絵は、大英博物館でやった時も人気で、トートバッグのデザインが飛ぶように売れたんです。「これならいいでしょう!」って言って出したら、ダメだった! 頭きたから、「どこが悪い!」って、デザイナーの人に聞いてもらった。そしたら、「男女の性を感じさせる」って。あほか!
会場:(笑)。
浦上:本当ですよ!結局、違う図柄にしたんですけどね。ただ、皆さん。日本人って、頭カチカチの人がまだすごく多いんですよ。
浦上:実は、この2人の状況が、この扇子に狂歌が描いてあるんですよ。この狂歌、詩ですね。その中ですべて2人の状況が書かれてました。
これを読むと、「蛤に嘴(はし)をしつかとはさまれて 鴫(しぎ)立ちかぬる秋の夕暮れ」と書いてある。書いたのは、宿屋の飯盛という人なんですけどね。飯盛。これは、もちろんペンネームで、武士なんですけどね。
蛤とは女性器のこと。「蛤に嘴をしつかとはさまれて」嘴というのは男性器。「鴫立ちかぬる秋の夕暮れ」って言うんで、「もう動きとれませんよ......」って感じで(笑)。
この詩には本歌があって。西行が書いている。西行はなにを書いているかというと、「心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ」これもきれいなんですよね。それを知っていて、パロディーでやっているんですよ。非常に教養がいるんです。というか、教養があったほうが、よりわかりやすい。それをパロディーで。
鴫は、鳥の鴫なんだけども。だから、嘴とかも出るんだけど。この場合の「鴫立ちかぬる」というのは、「なかなかうまいシーンにいきませんなぁ」っていうんですけどね。なかなか意味深なんですよ。ただいたしている図を描いたわけではない。
これは、勝川春潮と言いまして。さっきの春章さんのお弟子さん。ということは、北斎さんの兄弟子でもあるんだけども。これもさっき言ったように前髪だから16歳までの男の人ですね。これは、僕がすごく好きな絵なんですけど。
島貫:シックですよね。
浦上:シックですよね。
島貫:モダンというか。
浦上:そうですね。全体的に地味目の色目を使っていてね。紅嫌いとも言うんですけど。
これもう1個同じシリーズで。意外と男の顔って、見えないんだだよね(笑)。これもチョンマゲだけ見えているんだけど。布団があって、ちょうどこれからの季節でしょうけど。
いよいよ出ました! 北斎さんであります! これはさっき言った三大春画の北斎の「波千鳥」っていうのは。これは「富久寿楚宇(ふくじゅそう)」というのですけども、これの後バージョンなんです。この版木を使って手彩色をしたのが「波千鳥」。実は、最近学術的にはそんな高い評価はなくて、こっちのほうが高いんですね。そんなことはどうでもよくて。すごい大胆でしょ? 北斎ってね、富士山も大胆だけど、春画を描かせても素晴らしい人なんですね。
これは、皆さん、蛸の絵。これも北斎なんですね。『喜能会之故真通(きのえのこまつ)』あれは上中下で三冊の本になっています。必ず上中下どれも一番初めは女性の大首絵、ポートレートが出てくる。春画も初めは大首絵と言ってね。顔だけで。なんともきれいでしょ?
次どうぞ。これが、その本の最後がこうなっちゃうんです(笑)。初めは大首絵で、最後は大つび絵。つびとは女性器のことなんですね。皆さん、オルセー美術館へ行って、クールベが描いた「世界の起源」って見られたことないかな? 女性の股がばーんと。あれは、日本の大つび絵からヒント、発想をもらって描いたんですよね。
それをフランスの新聞、ルモンド。僕のところに取材が来たから、それを言ったら、「おうっ!」って言ってましたよ。
島貫:最初にあった大首絵の女性の……。
浦上:だと思いますね。
島貫:性器がこれだってことなんですね。グラビアというか、なんというか。
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