2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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おっくん氏(以下、おっくん):今日のゲストは東村アキコ先生です〜!
東村アキコ氏(以下、東村):今日は何の話なの?
山田玲司氏(以下、山田):今回は、漫画のことと女の沼の話をアッコに聞きたいなと。「良い漫画とは何か問題」をアッコが来たらやろうと思っていて。前回『ファイト・クラブ』の話をしたときに、「あれって覚醒コンテンツだよな。一発ガンと殴られる良い映画だったよな」と。ああいう映画を見たくて俺は映画を見ている。
だけど、「麻酔コンテンツ」。ご都合主義的な、癒されたい時に見たい映画もあるじゃない、漫画もあるじゃないっていう話で。一発目にね、俺は世代的に『マカロニほうれん荘』とか知ってるし、少年チャンピオン黄金時代もチラっと知ってるし、『ドカベン』『ブラック・ジャック』『マカロニほうれん荘』とか割と良識的な漫画を見て育ってきたの。だけど高校時代にね、こんな漫画( 『みゆき』)が登場するんすよ。
東村:あー。
山田:これご存知の。
東村:『アオイホノオ』でも言われてたよね。
山田:アッコは俺の一回り下だからあんまりご存知ないかもしれないけど。
東村:私、小学校低学年の頃に読んでましたよ。アニメ入りだけどね。でも原作も当時読みましたよ。イトコと。
山田:そっか。でもこれの背後にあった、文化的な何かしらの流れってわかんないじゃん。
東村:うん、全然わかんない。
山田:要するにこれ、「渚のハイカラ人魚」だったわけですよ。「ずっきん どっきん」だったんですよ。
東村:ロングヘアが黒ビキニで、ショートヘアがちょっとポップな(キャラ)みたいなのも。劇中でも黒ビキニだったよね。
おっくん:俺全然読んだことないんだけど、どっちが「みゆき」なの?
東村:え!? 読んだことないの!
山田:お前そっからか!
東村:わざとやろー! 流石に両方みゆきはわかってたんじゃないの?
おっくん:いやいや、本当に知らないんで。両方みゆきなの?
山田:2人のみゆきに囲まれるっていうパラダイス漫画なんだよ。
東村:この髪短い子か長い子かで揺れるっていう。
山田:これ(黒ビキニ)は彼女なの、主人公(若松真人)の。顔は想像してもらえばわかるんだけど(『タッチ』の)和也ね、そのまんま。達也ですよ、主人公はそんな感じですよ、いつものやつですよ。
義理の妹なの、この子(ポップな方)は。両親が亡くなって、一緒に住むことになるんだけど血が繋がってない、これは禁断の関係ですわ。当時、80年代に流行った。若松くんっていう2人の間に入っているなんの取り柄もない男の子が、なんか知らないけど良い思いばかりをしまくるっていう漫画が登場するんだよ。
おっくん:あー、はいはい。
東村:これがやっぱ初っていうか。先生はずーっと読んでるからこういういのが出たときって衝撃だったわけでしょ。私は漫画読み始めた頃からこういう時代だったっていうのもあるけど。
山田:俺の前の時代って、70年代熱血が本気で残ってる。
東村:うんうん。
山田:何ていうかさ、「勝ち取った愛」「努力の果てに」みたいなさ。
東村:受動的じゃないってことですね。
山田:これ、最初から何もないやつがモテているっていうのが現れちゃったのよ。
東村:なるほどねー。
山田:この同時期、ちょい前に柳沢(きみお)先生が『女だらけ』ってハーレムものをジャンプ連載してるんだけどさ。ボチボチそういうのも現れてたんだけど、実はこれが決定打ね。
この前に、あだち先生って『ナイン』とか『日当たり良好』とか描いてて。ここまで欲望剥き出しではなかったんだよね。で、「わー、すごい漫画が現れたぞ」ってみんな大騒ぎしてたんだけど、俺これ見る時だけ初めて「あれ、悪いお菓子を食べてる気がする」って感じて。
東村:あー。なるほどねー。
山田:「これだけ食べてたら、俺は何かしらダメになるんじゃないか」って。なんでかっていうと、「これ都合良すぎんじゃね?」って。同時代に、このちょい前なんだけど、『うる星やつら』が現れる。
東村:劇画を終わらせたという。
山田:そうそうそう。「ダーリン好きだっちゃ!」って、ダーリンの何が好きだっちゃ!? って。
おっくん:あー! 深い! ダーリンの何が好きだっちゃ。
山田:ダーリンの何が好きだっちゃ。
東村:だから私、社会学の本を漫画で読んだんですけど。カラスヤサトシさんが出した社会学のススメみたいな漫画のやつがあって、そこにすごいすっきりすることが書いてあって。
要するに、価値観て時代時代でもんのすごい変わるから、変わっちゃったらしょうがないんだって。それは前にはもう戻せないっていうか。だからダーリンとか「みゆき」のこういう人(若松)がモテるのが、わりとアリな空気感になってた時代だったのかなって思ったんだけど。
アツいのが流行りすぎて、嫌になっちゃって。女の人たちも疲れちゃって、それに頑張ってるのにも。なんていうの、ニュートラルな男の子に惹かれる、みたいな時代が来たと思うんだけど、それが先生的には「お菓子ばっか食べてご飯入んない」みたいな感じだってことよね。
山田:そうそうそう。梶原(一騎)イズムの死がその前にあるわけ。70年代にそれがあって、そのあとに江口寿史ってのがそれをコテンパンに茶化すのよ。で、パロディの時代になって、島本(和彦)先生なんかはそれの洗礼を受けてるから「ヤりたい!」みたいな感じで、一気にチャラくなる。
なんでかっていうと、学生運動やったって世の中変わんなかったじゃん。「バカだよねー、あいつら、アツいこと言ってて。そういうのウザいよね」で好景気っていうんでこの(みゆきの)流れ。『うる星やつら』で『Dr.スランプ』。Dr.スランプは、無垢な少女が誰よりも強い、みたいな。特訓とか完全に無いわけよ。
山田:そんでね、80年代ってどんな時代だったかなーっていうと、俺にとっては「ランドの時代」だったなーと思って。
ランドとは何か問題なんだけど、いわゆるさ、憲法9条に守られたランド。日本があって、それちょっとまずいんじゃないのって。
東村:あの、よくユートピア漫画みたいなジャンルがあるじゃないですか。そいういう意味みたいな?
山田:それもある。日本全体がユートピア化してるのに、まだそういう学生運動とか熱いこととか左翼的なこと言うのダサいよね、みたいな。左翼も右翼もなくなって、「恋をしようよ」みたいな感じになるっていうね。
日本全体がディズニーランド化するんだけど。これ見てて「あ、良いな」って思っても現実は変わんないよっていう。これ見てもモテるようにはならないよって。
東村:そうですね。
山田:でも『ブラック・ジャック』を読むと、何かをもらったような感じがあったわけ。
東村:そうですね。
おっくん:はいはい。
山田:なんか「生きなきゃ」と思ったわけよ。
おっくん:突きつけられるジャンルが違いますもんね、これ。
山田:その前は『愛と誠』とかあったからね、「君のためなら死ねる!」みたいなやつやってたからね。だから、何コレ? みたいなわけだよ。でもこのぶり返しで『タッチ』書くんだけどね、この人。
それで俺はこの騒動で自分なりに考えて。若気の至り二元論っていうのがあって、「世の中には麻酔コンテンツと覚醒コンテンツの2種類あるんだぜ」みたいなことを言い出すわけだ俺は。若い時ってすぐ二元論に走るんで(笑)。
東村:あー、でも本当そうですわ、これは。いま、すごい納得いった。いまの流れで。
山田:麻酔つーのは癒し、逃避、現実の肯定、都合が良かったりみたいなで、ラノベだったりラブコメだったり、絶対負けないバトル漫画とかもそうだよね。で、俺はこれを否定しないのよ。これがあるから明日会社に行けんのよ、みたいな人もいるし。全否定はしない。
だけど、その一方で気づかせてくれる。挑発されたり、「お前このままで良いのか」って否定されたり。俺は『ゼブラーマン』でこれやってるんだけど。要するに、都合の悪いこと言ってる。で、これが現実の人生を変える要素を持ってるかもねーみたいな。要素が入ってますよーみたいなことが。
東村:ほんっと、日々これは考えてます。この言葉では思いつかなかったけども、要するにどっちをやるのかっていうのはすっごい考えている。全てにおいて。例えば音楽の人とか見てても、あ、こっちなんだ、こっちなんだとか。
『吼えよペン』とか読んでると、「こっちの覚醒コンテンツの人は、麻酔コンテンツは余裕でできるんだけど、あえてやんないの」みたいに言ってるシーンがあって。「こっち(麻酔コンテンツ)は簡単なのよ」みたいに言ってて。
でも麻酔コンテンツの人は覚醒コンテンツの方が簡単だと思っていると。でもそうじゃない、「こっちの方が上だ」って女の作家さんが言ってるシーンがあるんですよ。それ見た時に本当そうだな、と思ったんだけど。
山田:うんうん。あなたアレじゃない。『八甲田山』とか好きじゃない。
東村:うん。『八甲田山』と『楢山節考』が映画ベスト3。私の映画のベスト3聞きたい? 1位。
おっくん:1位から!?
東村:『ショーシャンクの空に』。
おっくん:おー。
山田:掘って掘って掘りまくる!
東村:2位『八甲田山』、3位『楢山節考』。2ね、今村昌平のほう。
山田:なんかこう埋もれそうな感じ、息が苦しくなりそうなやつばっかりだよね。でそれってアッコの中にある「現実ってそんなに甘 かねーよ」って感覚があるんだよね。
東村:そうですね、本当の感動はそうじゃないと得られないっていうか。なんかねー、私、フランスの映画とか好きじゃないんですけど、単館系の映画とか。
山田:アート系の映画嫌いなんだ。
東村:アート系嫌いなんですよ。
おっくん:わかるぅ~(笑)。
東村:一番良いのが、本当にあった話が良いんですよ。ノンフィクションていうのか。本当にあった話を元にした映画が好きっていうか、それしか見たくない。だから山岳映画の遭難ものとかは好きだったりするんだけど。
山田:遭難もの(笑)。
東村:『アイガー北壁』4位。
おっくん:遭難もの好きっすね(笑)。
山田:『東京タラレバ娘』も遭難もの!?
東村:そうですね。
山田:アッコの漫画ちょっと遭難もの入ってるよね。
東村:遭難もの。遭難。そうなんですよ。私、山岳遭難大好きっ子なんですよ。絶対山登りしないし、誘われても絶対行かないんだけど、山の恐さ誰よりも知ってるから。
山田:(笑)。
東村:まじまじ。女で一番わかってるかもしれない。1回も登ったことないけどね。もうね、私は山登りで遭難しちゃう人の全てを、全ての要素を持ってる。
山田:何それ(笑)。遭難しがちな人なの。
東村:遭難しちゃう人の全ての要素を持ったスーパーウーマンなんですよ。スーパー遭難ウーマン。
山田:おいおい、誰か止めろー(笑)。
東村:すぐ、なんていうの、リーダーシップをとりたがるくせに、準備をして来なかったりとか、道具の準備しないとか、すぐ、「え、あっちじゃない!?」とか(言ったり)、地図とかも、「え、やっぱこっちなの!?」とか全部兼ね備えてる。遭難を。
おっくん:遭難を兼ね備えてる。
山田:兼ね備えてるねー。
東村:いつでも死ねる自信がある。山に入ったら。自然を恐れてないし、山への畏怖もないから。
山田:遭難しがちなんだ。「遭難しがち女子」。
東村:そうそう。
山田:ざっくり言いますとね、遭難は良いんですけど、とりあえず、わかりやすく言うとね、麻酔コンテンツとは“だよね”コンテンツだなと思って。要するに知ってること。「だよねー」って言って見てられるっていう。最後はくっつくんでしょ。「だよねー」みたいな。「悪は滅びるよねー」みたいな。
おっくん:予定調和ってこと?
山田:「敵を倒したら仲間になるよねー」みたいな。“だよね”で見てられるっていう気持ちいいエンタ。もう1個、覚醒ものになると全部知らんやつだから、「何なの?」みたいなやつになっちゃう。
おっくん:あー。
山田:「何なの?」って思って、自分で「何なんだろう?」って考えられる人にとってはおもしろいと思うんだよね。(その人にとって)いいコンテンツだと思うんだよね。でも、「だよねー」だけを求めている人にとっては、「何なのこの映画、ワケわかんないだけど? ちょ、難しくない?」みたいな。これにわかれてて、これがぐっちゃぐちゃになってるのが、お客さん。みたいな感じなんだよ。
おっくん:はいはい。
山田:しかも気分によってどっちかに寄ってたりもするんだよねー。
東村:うんうん。
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