2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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山田玲司氏(以下、山田):一番笑えるのが、巨人のイメージ。あれね、スーパー銭湯でおっさんが入ってくる感じにすごい似てんの(笑)。
おっくん氏(以下、おっくん):巨人はね、そうなんですよ。だらしない身体なんですよ。
大野萌奈美氏(以下、大野):確かに、脚短かったりとか。
山田:スーパー銭湯のおっさん。
おっくん:男子風呂入ったらわかるもんね。って、(女子は)わかんないか。
大野:入ったことないです(笑)。
おっくん:男子風呂入るといますよね、おっさんがね。
山田:「気持ち悪ければ良いと思った」って作者は言ってんのね。ポイントは、自分(エレン)が巨人化するときにちょっと痩せマッチョになってるっていう。そこがね、若さって良いよなっていう感じがある。
それと裸むき出し、繁殖しないとか、家族持たない。そうすると家族を想像できない、子供はいないだろっていうふうにどんどん感情を外に追いやって、「こいつら殺してもいいんだ」っていうふうにできる。相手にも家族があってみたいな感じで、何だっけ。ランバ・ラルだっけ?
おっくん:ええ!? 急に!?(笑) 急にガンダム?
山田:ガンダムは家族いるんだよ、部下もいるんだよ。その中で人が死んでいくんだみたいな象徴がランバ・ラル。
おっくん:人の業みたいなのが描かれてないんですよ、これには。人の業っていうか、戦うっていう業が主人公側にしかなくて。向こう側にそれがないから、全然感情移入できないんですよね。何ていうのかな、モンハンみたいな。
山田:そうそう、モンスターに家族があったら殺せないってやつだよ。だけど、それくらいのメンタリティはあるわけ。だからそのための装置として、感情移入できないような設定にしてるんだよね。そうすると、あの物語が成立する。
そんな感じで距離を縮めていって、うんぬんかんぬんみたいな。よくできてるんじゃないかなと思うんだよな。あとは『漂流教室』の系譜も入ってるかなっていう感じ。繰り返される、リア充には勝てないっていう絶望(笑)。
大野:(笑)。
山田:これは大事なところなんだよね。彼(諫山創氏)は自分で言ってんだけど、「僕は運が9割で来てますから」って言ってんの。
彼は大分の出身で、家族は梅農家なんだよ。梅酒とか梅干しとか作ってんだよ。ほんで、九州の漫画専門学校出てて。これはね、結構ラッキー。俺は漫画家にとっての運って何かっていうと、大ヒットする人っていうのは、惑星直列が起こった状態。
それでさっき言った、時代の気分。何を時代は求めてるかっていうのと、自分が持ってる要素っていうものと、それからタイミングとか。いろんなものが一緒になる。彼がラッキーだなと思うのが、梅農家。
大野:え、梅農家ですか?
山田:暮らしがあるんだよね、ちゃんとね。だから、あのゲームのような世界観なんだけど、暮らしてる。それから感情移入できる。お母さんを知ってる。もっと都市化されると、あの殺されるお母さんっていうのももっと危ういものになってくるっていうか、そういう感じがして。意外と田舎にいたっていうことで、業界かぶれがあんまりなかったんじゃないかと思うんだよ。
大野:なるほど。
山田:だから、pixivに触れるのが遅かった気がする。
大野:pixiv(笑)。
山田:pixivっていうのは危険なんで、漫画家になろうとしてる人たちは極力触れないでほしいんだけど。「このレベルにないとプロになんかなっちゃだめだよ」っていうふうに言う人たちがいないうちに、衝動のまんま描き始めちゃてるっていうのが。これは結構ラッキーで。
実は漫画家っていうのは、絵の専門家ではなくって。魂を表現する、衝動を表現するっていう表現者なんだよね。それで、絵師とは違うんだよね。
大野:イラスト1枚だけではなく、物語を絵に乗せて。
山田:そう。それを象徴する漫画家って何人もいて。永井豪先生の漫画とか見るとよくわかるんだけど、衝動のほうがデッサンよりも前にいってる。ガーって!
大野:確かに(笑)。
山田:系譜で言ったらさっき『魔王ダンテ』とか言ったけど、エネルギーが先に行っちゃって技術が着いてこないっていう、素晴らしい状況にあると思う。
これがおもしろい。これがプロとして出ちゃったときに、彼の武器っていうのは、無謀さがわかってないのと、無防備だってことと、無知だってことだよね。この3つが揃うと、すんごい強いの。逆にものを知ってて、防御してて、挑戦できないとなると、もう絵が上手くてもだめ。
こういう人たちが、皆潰れていくんだよね。彼と同じ系譜だと、キャプテン翼でデビュー、それからキン肉マンでデビュー。スラムダンクはその前に1回あるけど、スラムダンクもわりとそういうノリ、ナルトも1回あると思うんだけど。
わりとジャンプ型に多い、よくわかんないうちにデビューしちゃって、皆に持ち上げられてるうちにどんどん上手くなっちゃって、気がついたら人気作家なんだけど。
「やべえ、俺もうちょっと絵が上手くなんないと」って気が付き出すっていうパターンで。これはね、俺好きなタイプ。実はかなり(笑)。
その証拠としてどういうことがあるかというとね、吹き出し理論なんだけど、序盤の彼の漫画のコマ割って、こうなってる。
それでね、ちゃんと断ち切りもしてない。中途半端なところに線が引いてあんの。それで、中盤くらいのところから断ち切りがあるんだよ。それでどうなるかっていうと、セリフね、ストーリーの流れのまんま書いてんの(笑)。
縦の吹き出しを入れるっていうのは、世界的に売れようと思ってない、最初から。日本語だけでOKっていう(笑)。逆に言うと、ネーム書いたまんま、その後に顔入れてんだよ。だから、すごい単調。
この描き方っていうのが、新人の漫画家が一番やるパターン。これを、皆にボコボコに言われる。だけど、これで描く系譜の人がいて。一番最初は柳沢きみお先生(『特命係長 只野仁』の作者)だと思うんだけど。
大野:はい(笑)。
山田:その後のカイジの福本(伸行)さんもそうだし、『ハチワンダイバー』がこれをやりだした。『ハチワンダイバー』は、こういってこうセリフ入れる。これで1ページっていうやり方。
これも、世界的に売れようと思ってないっていうやり方かな(笑)。「もちませーん!」って書くんだよね。これはこれで発明だと思って、素晴らしいんだけど。
だんだん諫山君がどうなっていくかっていうと、こういうコマ割りがあってこういうセリフがあって、こう中盤が入ってくる。こういう漫画の進歩をしていくっていうのは努力家だろうし、ちゃんとやってるっていうか。
僕はとても、頑張ってんなー諫山先生って感じ。彼はこれブログで書いてたらしいけど、「僕はたぶん、人生で一番良い時期なんだろうな」と。「そして、あとでそれを思い出すんだろうな」と。
「今この瞬間を忘れないようにしよう」とかブログに書いてて。「もう諫山、お前に着いてくよ! 何かあってもお前のこと守るよ!」っていう気分になるくらい頑張ってんなっていうのは、すごくそういう感じがするね。
あと擬音に関しても、こだわってないんだよね。暇なやつって擬音にこだわるの。だから、他にできることないかなって擬音に行くんだけど、擬音までいかないし。すごく簡単な1種類の擬音しかないんじゃないかな、ほとんど。あとは彼が影響を受けている、『ARMS』だっけ。皆川(亮二)さんとか好きなんでしょ?
おっくん:そういう感じはしますね。
山田:そういう感じなんだけど、出てんなって思うのはウルトラマンだよね。完全に。だから、ウルトラマンとゴジラがいた国に生まれた子供が、エヴァを見て育ったら、こうなるだろうなっていう。たぶんゼルダの伝説もやったよねっていう。
あと子供のときに格闘技世代だったんだろうな、格闘技流行ったんだろうなっていう感じ。あと先がないのがデフォルトの奴隷感覚世代みたいなのがあってっていう。それで、絶叫してんだよね。「こんなんじゃ嫌だふざけんな!」って言って、そういう感じじゃないかと思うね。
失望を味わい続けるけど、最後に言葉のわかる猿型の巨人というのが登場すると。これがちょっとおもしろいなと思うね。『猿の惑星』みたいに、人間より賢いみたいな。人間よりも動物のほうが賢いんじゃないかなみたいな感覚も、これは意識してるか無意識かわかんないけど、乗っかってるような感じもするなと。
おっくん:これ、最初からケツ決めて描いてると思います?
山田:いや、全然違う。イメージ1発だと思う。
おっくん:浦沢直樹スタイルじゃなくて、板垣恵介スタイル。
山田:板垣スタイルはよくわかんないけど。
おっくん:(笑)。何スタイルとかどうでも良いんですけど。
山田:キャラが引っ張る漫画と状況が引っ張る漫画とあって、浦沢先生は状況が引っ張っていく計算されたものなんだよ。系譜としてはどっちかと言えば浦沢系譜に近いんだけど、キャラで引っ張っていこうっていう感じはないような感じはするよね。
おっくん:むしろ、状況がキャラを運んでるような漫画ではありますよね。
山田:でもね、これすごく勉強しながら前に進んでて。映画でよく出てくる高度なテクニック、時間軸をずらして見せるとかいろんなやり方を、試行錯誤してすごい試すわけ。だから、巻数によってはものすごくもたったりとかわかりづらかったりするのも、たぶんこれ試行錯誤なんじゃないかなと思う。
おっくん:そうなんですよね。リズム感がどうもね、合わないんだよなあ。何だろうな。
山田:(笑)。
おっくん:あと単純に僕が思ったのが、技術の問題があって。上手い独特な絵って言ったらそれはそうなんだけど、上手いか下手かでぱっと見で言ったら下手な部類だと思うんですよ。申し訳ないんですけど。僕、漫画描かないんですけれども。
山田:ふざけんな! 描いてみろ!
おっくん:僕絵心ないんで(笑)。それで、このマンガに『GANTZ』くらいまでとは言わないまでも、もうちょとすっきり見せれる絵にしてたら、もっとおもしろかったんじゃないかなと思うんですね。それはつまり、技術がやりたいことの情熱に対して追いついてないことの弊害が特に初期には出てて。アニメだとちょっと見たんですけど、すごく見やすいんですよね。
山田:うん。
おっくん:あれね、『鋼の錬金術師』もそうだったし。ハガレンはちょっと違うんですけど、『ワンピース』もそうなんですけど、ごちゃごちゃした漫画ほど、アニメになったときにすごいわかりやすくて。
魔法とかワーって派手な所が、絵になって動くほうがすごく見やすかったりするんですよね。絶対そっち側タイプの漫画じゃないですか、進撃って。エヴァみたいに、初めにアニメから公開とかされてたら、もっとすごい現象になってたんじゃないかなとか思うんですけど。
山田:(笑)。でも頑張ってんじゃん、諫山君。
おっくん:でも漫画からいくと、そうなんですよね。
山田:だからその辺もすごい、俺好きで。危うい感じがとっても良くって。「もう恐いよ」「死にたくねえよ」とか言ってる顔が、もうギャグ寸前。これは『鈴木先生』に近いんだよ。鈴木先生のあの苦悩した顔って、本気で本人苦悩させてるつもりで描いているから。
何ていうのかな。ゆらいでんだよ、恐いんだよ、本当に。絵が上手くないからこそ、デッサン狂ってるからこそ、やばさみたいなのが。絵が正確でなくても伝わるやばさみたいな。
おっくん:ゴヤなんですよね。ゴヤ感はすごいありますよね。色使いとかも、もしかしたら。色使いっていうか、あの感じ。
山田:あいつ、前世がゴヤだったしな説(笑)。
おっくん:え?(笑)
山田:スペイン人だった説。諫山創、ゴヤ説。そんで、さっきの話になるんだよね。進撃の巨人はアナ雪に向かっていくっていうのは。アナリア充、エルサ引きこもり。
大野:ああー、はい。
山田:デスクトップの内側が氷の城っていう。それで、アナ雪はリア充と引きこもりの和解だったわけじゃない。だから今度もアナ雪に向かっていくっていうのは、進撃と、主人公たちと、巨人たちのある種の和解っていう方向に物語は進んでいかざるをえないよなっていう感じはあるよね。
だから、何らかのシンクロニシティでこういうことも起こってるかなっていう感じで。諫山先生が今後どうなったら良いかっていうと、元アイドルと結婚、炎上、離婚して大作家と。頑張れー! 諫山ー、ごめんねー!
大野:(笑)。
山田:すいません、本当に(笑)。謝るしかないな。これでだめ? おっくん。
おっくん:いや、良いか悪いかは視聴者の皆さんに委ねるっていう感じなんですけど(笑)。
山田:化学変化が、これから彼の中ですごく起こってくると思う。繊細だから。そして、閉ざしてた彼の心を溶かす女も現れるのではないだろうか。そして、新たなる絶望を彼に教えるのではないか。
そして、新たなるウォール何とかっていう壁が生まれて。だめだ、怒られる。そんな感じで、「もう終わりだ」っていうような感じになってくれたら。
それこそ『進撃の巨人』っていうのは、30代後半から40代くらいにおもしろくなっていったら良いなって思ってますね。彼、ジャンプに持って行って「だめだ」って言われた。
それでジャンプ型の漫画だとあれはだめだったけど、あれはマガジンに行ったら上手くいったって。これはおっくん、あんまり好きじゃないかもしんないけど。君はヤンジャン主義じゃん?
おっくん:いや、チャンピオン派です。
山田:そうだよな。だけど、そういったいびつなものを月刊マガジンというのが引き受ける土壌があったっていうのが、これまたラッキーで。そろってるっていうか。そして同時に、同じ雑誌で『惡の華』やってんだよね。だから、揺れている今の子供たちの気分みたいなのを掴んだ作家が、たまたまあそこで大暴れするに至ったっていう。角川だったら、もうちょっとオタ側に寄ったって感じはするんだよね。
大野:ああ、なるほど。
山田:だから、順番化的にも、そもそもアフタヌーンとかがやってた場所が、何でか知らないけどマガジンでやってんだなっていうのが、とてもおもしろいなっていう感じはしましたね。
以上、進撃の巨人。次回、何だっけ? 『黒子のバスケ』やるぞ! っていう話でした。ありがとうございました。
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