2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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河本ここの氏(以下、ここの):当時、娘が中2とか中3とかぐらいだったんですね。子供が思春期の時に親が離婚するのが1番最悪なタイミングだと聞いたことがあったし、そうかもなと思ったので。
娘が大学に入るまではどうにかこうにかこの結婚生活は続けて、その間にいわば事実的に仕事を持ち、うまく生前贈与を勝手にやりーの、みたいな。自分のなかではじいて、計算したんですよ。
あんまりシャレにならないんですけど、エンディングノートを書いたんですね。エンディングノートにもいろいろあって、遺言目的の重いのから、自分が今どんな現状に置かれているかを把握しましょうねっていうライトなものまで。
そのライトなもので、『私のエンディングノート』っていうのが使いやすかったので、それでまとめ始めたんです。
生命保険はどうなってるとか、貯金はどうとか、自分が急に死んだ場合に臓器提供をどうするとか、子供に対してはどういうことを言いたいのかとか……。全部まとめ始めたら、やるべきことがすごく見えてくるので。
そうなると、この人(晃氏)は本当にお金だけを運んできてくれたらいい人になるわけですよ。離婚するまでに私はきっちり職を見つけるし、自由になっていけるものを身につけましょう、と。そこら辺が一番どん底というか、真っ暗で模索中って感じでしたね。
二村ヒトシ氏(以下、二村):それまで、晃さん空白じゃないですか。もちろんロボットだったわけではなくて、アメフトの場面や会社の場面ではいろんな感情があったと思うんですけど。家に帰ってきたら、ここのさんを見てなかったわけだから、感情の湧きようがない。
湧いたとしたら、俺をなんだと思ってるんだっていう逆ギレの感情しかなかったってことで。ここのさんが真っ暗な状態になったら、同じベッドに寝ていても心が50メートル離れてるっていう感情が思い出せた。そこに字が書ける感情を初めて持ったわけですけど。
河本晃氏(以下、晃):何となくヤバいと思っていたところが、本当にヤバいというふうに感じた……。その時の感情を思い出して言葉にしたんですけど。
二村:その時に「じゃあ離婚するよ」とは言っていないわけ?
ここの:この時の感情を言葉として言い出せるようになったのは、結構最近なんです。
二村:離婚するっていう可能性というか、ほぼ決意したっていう、その時の感情を今になって思い出したのであって。当時はエンディングノートはつけたけれども、具体的には動かなかったっていう。
ここの:そうですね。
二村:離婚したらこうなるっていうシュミレーションをしてた?
ここの:シュミレーションして、実際に離婚するまでの、娘が大学に入るまでの数年間に、私は何をしようかなっていう。今はこんな状態だけど、それまでにはなんとかしなきゃならないなって感じでしたね。
二村:そもそも、このイベントのタイトルが「私、あの時、考えていたの」だもんね。だから、その時は(離婚を考えていると)言わなかった。
ここの:言わないです。
二村:でも、突き付けられたわけではないのに、50メートル離れている気がしたの?
晃:さすがにそれまでは、ちょっとは(自分に)期待してくれたと思うんです。でも、本当の本当にもうダメだろうなって彼女が見切った辺りはものすごい寒気。ゾゾゾゾゾッていう、さぶいぼ(注:鳥肌)が出る感じ。
二村:人から憎まれてることがわかったり、憎まれるまでいかなくても、この人のことを切ろうって思われた時って、寒気がしますよね。
晃:本当に寒かったんですよね。そこで「ああ、ほんまにこのままやったらヤバい」と初めて思った。
ここの:本当に、どうでもよくなるんですよ。今まではちょっとうっとうしいなとか不愉快っていう感情があったのですが、(夫に対して)何かしようとしてました。彼、食事中もスマホ見てたりしてたんです、逆ギレ状態なので。それに対して、「それ、どうなの?」とか言ってたんですけど。もう、スマホ見てようがどうでもいい!
二村:関心がなくなったんだ。
二村:何が変わって、こうしようと思ったんでしょう? 普通だったらそのまま離婚するじゃないですか。何が起きたんですか?
(表の5を見て)普通に事象があったとかではなくて、ここで何かが変わった。
晃:多分、それぞれに何かあったと思うんですけど。私は「このままじゃヤバい」と思ったものの、どうしたらいいかわからなかった。
で、何を思ったのか、北京マラソンに出ると。しかも、市民ランナーの目標であるサブ4っていう4時間切りを目標にって。体育会系、脳みそ筋肉系なので、そっちにいっちゃんたんですね。
当日、途中からものすごい雨が降ってきてすごく寒いなかで、でもこだわって走ってて。最後の35キロから40キロくらいが一番しんどいんですけど。そこで、ほんまに苦しい、苦しみ満タンになった時に、急に走りながら、ここのの気持ちが自分のなかに降りてきたみたいな感じになって。ここのがものすごい悲しい思いをしている感情に包まれたんですよ。自分がめちゃくちゃしんどい時に。
で、涙ブワーッと泣きながら、鼻水だらーっと流しながら走っててですね。それでも、まだ4時間切りに向かってやってるんですけど(笑)。泣きながら走って、なんとか達成したんですが、その時に初めて、ここのがどんな思いをしてやってきたのかっていうのが腹に落ちたっていうか。実感できたというのが私のなかの転機でした。
晃:ただ、だからといって人間コロッとは変わらなくてですね。変わってないのに口だけで「今までごめんやった。これからこうするわ」っていう話も、できなかったです。
だけど初めて、「家族っていうのはなんなんやろうな?」と。仕事もスポーツも目標に向かって頑張りますと、ある意味わかりやすくて。でも「家族って、何に向かってどうするものなの?」ということを、考えるようになりました。
少なくとも、家族を構成しているんだから、自分の役割は何かあるはずや、と。何かはわからなかったんですけど、何かあるはずやから、まずはやれることからやろうというふうに思って。
洗濯物たたむだとか、掃除とか……。小っちゃいことなんですけど。それまでもちょいちょいやってたんですが、その時までは間違いなくやってあげてる感でした。彼女の量をたまに手伝ってあげてるっていう思いでやってたんです。
二村:仕事も外でして金も稼いできているのに、家事もちょっとは俺やっていると。
晃:俺まあまあやってる的に、思ってたんですけど。家内がさっき、まったく何もやってないって言ってましたけど、そこそこやってるつもりがあった。
でも、その北京マラソンの後は、やってあげてるというよりもやりたいからやってる。だから、感謝してくれようがしてくれまいが、そんなことは全然関係ない。ただ、やりたくてやってるからといって、別に何もかわらない。
ここの:その時は、やるようになってよかったなって思ったんですよ。それはなんでかっていうと、この人、数年後1人になるわけですよね……、みたいな。子供の父親でもあるし、一度は情が湧いた相手が1人身になってウジが湧く生活をしてほしくないなって。
子供に対して行動は制限しないから、子供が父親に会いに行った時に、お父さんがすごい汚れたお家で、ゴチャゴチャしたなかで暮らしているのは見せたくないなって思っていたから。食器洗いとか、トイレ掃除とかしていた時に、「よしよし」と思ったんですよ。
これでちょっとは人並みらしい生活を、1人になったとしてもするんじゃないかなって。この人にとってよかったなって感じたのを、すごくよく覚えています。前よりもやってるんだけども、それは私たちのためっていうよりは、「本当におめでとう」みたいな。
二村:他人としてね。
ここの:そうそう。「おめでとう、そんな人になれてよかったね(笑)」みたいな感じで。
二村:ご自身の暗黒の状態は、もう脱していたの、その時? 離婚を決めた時に「私がそこまで離婚しないで我慢したのは何だったんだ」っていう。
ここの:どうだろうな。ちょっとよく覚えてないですけど。暗黒は脱してたんでしょうね。脱して、次のステップに。何かまだ具体的にどうとか、仕事がどうとかは動いてないけど、こっちに向かって舵を切ったわけですから。こっちに向かってこう進んでいこうっていう感じ。
二村:つまり、マラソンで泣いたからといって、そしてさらに気持ちが変わって自分でやるようになったからといって、許したわけではない。
ここの:全然。
二村:まったくなく、バラバラの個人として、まあよかったねと。着々と、ここのさんのなかで離婚の準備が進んでいった。
だけど晃さんのほうでは、そこまで進んでいるとは夢にも思わず。その時点で、まだ離婚っていう話は。
晃:そこはもう、完全に離れていると。
二村:意識としては、そのうち俺は捨てられるなと思ってました?
晃:捨てられるなっていうよりは、離婚も当然あるんだろうなっていうところまでいって、でも、自分の考えを変え出して。そのことによって、この家族関係がどう変わるかってわからなかったんですけど。
少なくともその時点では、この家族の一員として自分がなにをできるかを本気で考えたいと思った。家族としてちゃんと機能するようになりたいと、心から初めて思った。家族はそこにあるものだというふうに思ってきたのですが、どうもそれが違うぞと。
二村:ここのさんは、今ご自分がどんな家庭で育ったかということを話してくれたんですけど、晃さんは家族のビジョンてありました? どんなご家庭で育ったとか。
晃:後から振り返る機会があって、気付いたんですけど。私の両親はそこまで仲悪いってわけではないですが、私は母親のことがものすごく嫌いだったんです。
私の母親は関西のおばちゃんなんで、自分が小さい時に「あんた何してんの? ちゃんとしい」とか「勉強しい」とか、やいやい言われて。私は自由に放っておかれたいタイプなんで、言われるのがすごい嫌だった。それこそ思春期の時に、ちゃぶ台ほんまにひっくり返した。で、おかん泣くみたいな(笑)。
おかんから、やいやい言われるのが生理的に嫌だった。思い返すと、ここのが子供のことで「こうしてほしい」となんやかんや言っていることが、多分かぶってたんですね。おかんがやいやい言ってくるのに似てて、生理的に見たくない。
何か失敗した時には謝ればいいんですけど、謝っったらまたなんかやいやい言われる。だから、飲みに行くとか、徹マンして朝帰るとか。接触を避けるみたいになったんだろうなと、改めて思うと。
彼女も親の影響を受けてるんですけど、私は私で親の影響を受けて、そこに縛られて、動いちゃってたところがある。当時はわからなかったですけど、今はわかるようになりました。
二村:今の話って、ご夫婦でなさったこと、ありました? 晃さんがご自分のお母さんをあんまり好きじゃないっていう。
ここの:そうですね。感じてたし、それは。
二村:それって、ここのさんを傷つけた?
ここの:傷つくかっていうか……。なんか馬鹿にされてたんだろうなっていう記憶と、自分を蔑ろにされてた感じが混ざって。
二村:幼い晃少年が、自分を生んだ母親を馬鹿にしてたっていうか、なめてたっていう。
ここの:プラス、私もそういうふうにされてたよねっていう感じですね。
二村:ここのさん、ここで何かが変わってないですか? 晃さんは、何かが変わった。ここのさんは何か起きた晃さんを見ながら、着々と離婚の準備をしていた?
ここの:私、その頃すごい自分探しをしていたんですね。一生懸命、心を整えるためにヨガに行くとか、ホロスコープで自分と家族とかを見てもらうとか、ありとあらゆることをしてたんですね。
セルフコーチング、カウンセリングを受けるとか、自分も学ぶとか、そういう本を読むとか。そこはものすごくずっと継続的にやっていました。ここでは詳しく書いてないんですけど、当時、私は転職、離職を繰り返していて、そこのボスが皆似たようなタイプだったりするわけですよ。
二村:よくいる「インチキ自己肯定した経営者」ね。
ここの:そんな感じなんです(笑)。俺のやり方が正しいよねっていうような。その時の働き場っていうのはベンチャーなので、超ワンマンだったりするわけですよ。繰り返し同じような上司というかトップに当たって、それも(晃氏が)上海にいた頃にきつかった理由だったりするんですけど。
さすがに、これやっぱり何かおかしいんじゃないかなって思ったのもあるんですよね。同じような上司を選ぶのには何かあるのかな? って、実際そこは自分の気付きとしてもありました。
二村:女性向けに書いた僕の『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』って本の中で、メンヘラ系の女の子が自分から悪い男を選んで……。
ここの:典型的なそれだったんじゃないかなっていう感じですね。
二村:同じことが……。
ここの:自分で仕事を立ち上げてとか、この人(晃氏)もそうなんですけど、強い人に憧れるというか、そういう感じがあったので。
二村:非常に悪い言い方なんだけど、恋愛も仕事も、無意識にわざわざ殴られにいってる、傷つけられるために関係しにいってる、みたいな。
ここの:完全に、殴られにいってましたね。さすがに「私、ここまで殴られる必要ないよね。あっちもこっちも殴られなくてもいいんじゃないか、自分」っていうのが、ここら辺だったと思いますね。
なんの、どの台詞をきっかけに自分がこう変わったってわけではなくて、漠然とあの時期に自分にベクトルを向け始めたような気がします。被害者意識から脱し始めたんじゃないですかね。
脱したかどうかは、全然……。脱し始めたのは、去年の3月です。本当に劇的なできごとがあって。それまでは(脱し)つつ、みたいな。
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