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第2ラウンド「靴vs裸足」(全5記事)

早く走れるシューズは存在するのか? 裸足で最速記録したランナーの教え

2015年11月8日、ANNEX五反田で開催された討論会「どっちを選ぶ?」。靴陣営・裸足陣営それぞれのエキスパートが熱いトークバトルを繰り広げます。討論会の前日、裸足ランニングで驚異的なタイムを叩きだした、アマチュアランナーの石川智紀氏。7年間迷った末に裸足を選んだという石川氏、その決定打となったものは? 話題は、シューズメーカーとランナー、両者が冒しがちな勘違いについても。シューズ選びの際の、隠れた危険性に迫ります。

裸足ランニングで100キロ!

松島倫明氏(以下、松島):このままの話の続きでいいんですけれど、おそらく走られる方も多いと思うので。例えば、今のお話じゃないですけど、裸足であれば、シューズを履いたらより早く走れるようになるのか、より長く走れるようになるのか、そういった優位性についてはどうですか? ちょうど昨日……。

吉野剛氏(以下、吉野):「裸足の世界記録チャレンジで100キロ(注:裸足ランニングクラブ神奈川の運営で、11月7日に行われた大会)」というのを企画して……走った方がいましたよね?

松島:裸足100キロ、チャレンジされた方? 強者がいましたね?

吉野:このなかに実は、世界記録を上回るペースで、2位でゴールした石川(智紀)さん(がいらっしゃいます)。ちょっと立ってください。100キロを裸足で、8時間28分で!

(会場、石川氏、起立)

一同:すごーい!

吉野:(石川さんは)特に陸上経験もないです。ちなみに、シューズを履いたベストよりも早いという。ありがとうございます。

松島:ありがとうございます!

(会場拍手)

安藤正直氏(以下、安藤):さっきのネアンデルタール系とか、そういう感じじゃないですよね、まさか(笑)。

松島:肉食ですか?

石川智紀氏(以下、石川):肉食です。

安藤:どうぞ前へ。

(石川、壇上に招かれて裸足派の席へ)

藤原岳久氏(以下、藤原):こっち来てくださいよ~(笑)。

「ゼロか100か」で裸足へ

松島:走歴はどのくらいでいらっしゃるんですか?

石川:7年くらい。

松島:裸足で走り始めたのは?

石川:去年くらいからですね。

松島:何かきっかけがあったんですか?

石川:トライアスロンをやっているんですけど、シューズ選びにすごく悩んで。モノを売る方は売るのが目的で、あとのフォローとかがない。アドバイザーがいるところもありますけど、やっぱり説明書がないということで、自分で考えながら「これは合う、合わない」とか。

よくアスリートの仲間に聞くことがあるんですけど、「あれは合わなくてダメだった」とか、「これは合ったからこれでレースに行くよ」とか、すごくややこしいなと。それだけモノがあふれているから、処理するのがすごく大変だなと思って。自分は「ゼロか100か」のタイプなので。

松島:それがすごいですね(笑)。選ぶのを楽しまれるランナーの方もたくさんいらっしゃいますよね。

石川:そういう趣味の方もいると思いますけど(笑)、僕は、シューズメーカーの方にあまりにも寄付しすぎたので。

松島:7年間で。

石川:選ぶ時間も無駄だし。ならば、自分に一番合っているのは裸足なんじゃないかと。シューズも悪くはないと思いますよ。使い分けで。いろいろあると思いますけど、そのシューズに合わせた走り方ってあるじゃないですか。それが「合う、合わない」ですよね。とりあえず「原点に戻ろう」ということで、裸足で走ってみたら、気付くことが多くありましたね。

合う靴を探す手間よりは……

松島:「早く」あるいは「長く」という点では、変化はどのように感じましたか?

石川:やっぱり長く、早く走るために、考えました。シューズを買う方というのは、お金を払って買うわけじゃないですか。そうすると、「お金払ったんだから、早くしてくれるだろう」という気持ちを持つ方が、アスリートには多いんですね。

藤原:それはありますね。

松島:早くなるためのシューズを欲するわけですよね。

安藤:多いんですよ。「3時間で走るからこのシューズください」とか。メーカーでも最近多いんですよ。「4時間はこのシューズ」って。

石川:ショップでもそういうふうに、サブ3とかサブ5とか(カテゴリ分けして売っている)。

安藤:「できなかったんですけど」って言われたことある(笑)。

石川:周りの人からよく耳にしてて。僕もそうだったんですけど、「これで走ったら早く走れる」って、「書いてあるじゃん能書きが」って。「これってPL法使えますか? 返却したいんですけど」って。

一回買ったものは自分の責任ではあるんですけど、文句言うくらいだったら、合う靴を探す手間よりは裸足で走れるスキルを磨いたほうがいいのかなという。

藤原:もしよろしければ、一回僕が選びます(笑)。

石川:ありがとうございます。

松島:ありがとうございました。おめでとうございます。

(会場 拍手)

最少労力で走れるシューズ

吉野:今出たところの質問ですけど、「サブ3用モデル」「サブ4」「サブ5」って、あの売り方は今もしてるんですか?

藤原:しています。でも僕も反対です。

吉野:ありがとうございます。了解です。

松島:反対というのは、どういう?

藤原:今おっしゃられたように、いろいろ苦労されている方、いっぱいいると思うんですよ。他社のものなので安藤さんの前ではあんまり言わないですけど(笑)、私はレーシングシューズは、サブ4用のシューズで走っています。メーカーがいう「サブ4用のシューズ」で走っています。

今日は、(裸足派とは)対極の立場にいるので。僕はフルマラソン、長い距離に関しては、サポート中心に考えています。あと、体が常にいい状態、僕のフォームの重心が常に真下にあっていい状態になるようにしたいので、薄いシューズはまったく履いていないです。フルマラソンに関しては。

サブ4、サブ3.5というのは、まさに売るための(笑)。

安藤:勘弁してくださいよ(笑)。

(安藤、逃げようとする)

藤原:行かないでくださいよ(笑)。何が言いたいかというと、さっき安藤さんがおっしゃった「サイズが合っている」ということと「自分に合っている」ということは違うと思うんですよ。

僕はフィッティングを中心に考えていますので、サイズが合っていること。やっぱり裸足になることが目標なので、シューズは。あ、失礼しました。「(裸足に)近くなる」ことね(笑)。そう考えた時に、「フィッティングが非常に重要だ」と思って、専門でやっているんですけど。

皆さんの足に合っている、走り方に合っているモノというのは、僕は、最少労力というか最少の筋力、あまりエネルギーを使わないで走れるモノだと思っているんですね。ですから、シューズに合わせなきゃいけないシューズは、合っていないんです。

自分で走っていて、エネルギーが最小限。高岡さんがおっしゃったように、動きがいい状態で使いやすい状態になっていれば、力を使わなくてすむと思っているので。僕はシューズに頼っているんですね。僕にとって合っているシューズは、非常にストレスがない状態のシューズです。要するに、いろんな筋肉を動員しなくても、体の連動がよくなるシューズ。

だからベアフットも、地面から情報をもらえるものなので。さっきも言ったんですけど、上達しないと使えないということじゃなくて、むしろわからない人が使った方がいいと思うんですよね。どんどん情報をもらっていかないと、シューズ自体のよさもわかってもらえない。どっちがいい、悪いじゃなくてね。どっちも使ったほうがいいと思うんですよね。

「軽い」イコール「早い」という勘違い

高岡尚司氏(以下、高岡):シューズのソールが厚いと、逆に難しいですよね?

安藤:あぁ、難しいです。

高岡:オリンピックに出る、ケニアとかエチオピアの選手、マラソンを走る選手で、けっこう厚めのシューズを履いている方とかいるんですよね。そもそも走り方が上手だから、アレが使えるんだなと思うわけです。

今の話にもありましたけど、フルマラソンのタイムで4時間、5時間の方が、厚いソールを勧められるというのは、逆に考えると非常に危険で、すごく危ないことだと思うんですよね。

安藤:あと、「軽い」イコール「早い」という間違った(思い込み)がすごくあるんですよね。「シューズが軽ければ早く走れるんじゃないか」というのも、先ほど見た「シューズだと故障を招く」というものの1つだと思って。おそらく基本的な平均値をみると、(差が)20グラム。

20グラムしか違わないと、なかなか体感出来る人って少ないんですよ、実は。極端な人だと、はかりに乗っけて5グラム軽いから「こっちのほうだ」という人もいるんですよね(笑)。

シューズって、ひとくくりにしちゃうんですけど。ブルックスの最新のテクノロジーじゃないんですけど。今までのランニングシューズというのは、例えば、ブルックスのライバルA社。名前は言いませんけど(笑)。

「ガイダンスライン」というのがあって、「これガイダンスラインが入ってるんですよ」っていうのをずっと続けてきているんですけど。1つの定義に「かかとから着いて、こういう走りが正しい走り方で、一番効率がよくて、故障しませんよ」というのがあって。それが最近の研究では「間違いではないか」ということで。さっき言ったように、いろんな着地があるんですよね。

まだ詳しくは言えないんですけど、ブルックスのシューズの診断方法というのも、動作軌道。人それぞれの動作軌道というものがあるんですよ、関節の。それを崩さないシューズ。「正しいフォームあってのシューズ」じゃなくて、「人それぞれの動作軌道があって、走ってもそこから大きく外れないシューズ」、というような方向に向かっています。

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