2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
漫画家の続け方~編集さんからの精神的ダメージ対処法~(全1記事)
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山田玲司氏(以下、山田):僕昔、コミッカーズという雑誌で、人生相談やっていたんです。
大野萌菜美氏(以下、大野):人生相談ですか?
山田:漫画家になりたい人たちから相談受けては、売れてもないのに偉そうに、あーしたらいいんじゃないかとか、こーしたらいいんじゃないかと言って。でもこの間、『ヒーローバンク』って漫画描いている人が、「あれ読んでました」っていうふうに言ってくれて。
やってたらなんかあるんだなっていうこともあるよね。だから、今回もまたやろうかなって思って、やってみますね。
「漫画家の続け方 編集さんからの精神的ダメージ対処法」。漫画家が持ち込みをしたりとか、ネームの打ち合わせをして、「ダメだ」とかボロボロに言われてどうなるかっていうと、だいたい講談社の場合は、護国寺で途方に暮れる。
(一同笑)
山田:この護国寺で途方に暮れるってのは漫画道にも出てくるんだよね。僕がおすすめなのは、あそこには梶原一騎先生のお墓もあるんで、一騎先生の所に行って味方になってもらう。
(一同笑)
山田:あれはすごいのが、俺が梶原一騎先生の奥さんと一緒にお墓詣りしたときに、位置がすごい。護国寺の通りが見える。墓から。で、通りの先に講談社が見える。
大野:すごいですね(笑)
山田:すごいの。「見てっからな~俺は」っていう梶原先生が。そこにボロボロに言われて、「先生俺、やられちったよ」って慰めてもらったらいいんじゃないの。梶原先生に。講談社の場合は(笑)。
小学館、集英社の場合はだいたい本屋をうろつくパターンだよね。神保町の古本屋で。そんで「こんな下手くそなヤツらでも漫画家になれてるんだ」って思うパターンと、「こんなヤツでも売れてるのに俺なんて」ってヘコむパターンがあるので、これは気をつけたほうがいいと思いますけど。
おっくん氏(以下、おっくん):具体的にどういうこと言われるんですか? 持って行って、すいません、見てくださいって言って。
山田:一番ヤなヤツやりましょうか?
おっくん:一番ヤなヤツやってください(笑)。体験談ですよね?
山田:だいたい体験してる。
おっくん:お願いします。
山田:(タバコ吸いながら)……君、何? プロになりたいの? これ(笑)。
おっくん:なりたいっす!
山田:このとき「タバコ(の灰)落ちちゃうんじゃないか」って気になるわけ。
それで「あーもしもし?」みたいな。「あーごめんねー、ちょっと」みたいな。で、途中から(ページをめくるのが)早くなってくの。読んでないの。
おっくん:めくってるだけみたいな?
山田:みたいな感じとかは相当あるね。読み終わったあとに溜め息ふう~っみたいな。「で、田舎から出てくんの?」みたいな。そっから。大変だよ。
おっくん:だいぶ昭和のような気がする。
山田:昭和だったね。だから俺の頃はそういう人がいたんだよね。で、今はメンタル弱いから、みんな。だいぶ優しくなった。あんま超攻撃的な言い方とか。
だから、昔、チャンピオンの壁村(耐三)さんとか有名じゃん。手塚先生泣かせたとか、手塚先生に殴られたとか殴ったとか、いろいろあるじゃん。ああいうヤクザみたいな人はいっぱいいたらしいよね。でも最近は本当にもう、恐縮しながら、「あ~ごめんね。ちょっと、うーん……」っていうことが多いっていう。
おっくん:具体的なアドバイスはくれるんですか? 「ここをこうしたらもっといいから、もう1回持ってきてー」みたいな。そういう人もいますよね?
山田:いろんな人がいるんだけど、困るのがね、自慢が始まっちゃう人とかね。途中から話がそれちゃって。ネームについて話してくんなくって。「俺の育てた作家に○○ってのがいるんだけどさ~」みたいな。
それは指導も入っているかもしれないけど、大半が自慢で、「すごいっすね」って言わなきゃいけないんだけど、こっちはネームもダメになっているから頭真っ白になっているみたいな感じ。
まぁ人格否定も入るんだけど、最近はそうではないかなっていうのと、あと、他の漫画家と比較されるって辛いね。「○○って漫画知ってる? 彼なんかさ~」って話で、その人をすごく持ち上げて、その結果自分を貶めるみたいな感じっていうのかな。
あとは、遠い目されたりとかね(笑)。あと、君がいかに売れないかを分析されるとかね。これも結構キツいなぁ。あとね、最も最悪なのがね、「何がダメなんだかわからないけど、ダメだね」って(笑)。それを聞きに来てんだよー! ってさ。
おっくん:それは女子の、「生理的に無理」みたいのと同じですね。
山田:「なんか無理」みたいな。
山田:漫画ってさ、俺自身なんだよ。作家にとって。俺よりも俺だったりするんだよ。なんでかって言うと、精神をそのまま形にしているものだから。
だから、俺の存在そのものを否定されている感じがするので、これはなかなかハードだよ。これは、漫画やって編集に打ちのめされる人はみんな思っていると思うんだけど、最も堪える感じだなぁと思うんだよな。
でね、ここで問題なんだけど、やっちゃいけないこと。そのときに。「編集に反撃してはいけない」っていう禁止事項があります。で、漫画家を長くやっていると、ほかの仕事でもそうだと思うんだけど、「仕事相手を敵にしてはいけない」っていうルールを守っていったほうが、絶対いいと思うね。
そのためには絶対に言っちゃいけないことがある。「このサラリーマンが!」って。このあたりに問題の本質があって、「てめーらサラリーマンだろ!」って言いたい気持ちと、いろいろな思いがあって、全然違うコースで来てて、出会ってる。
売れる漫画を作ろうと思って出会った2人なんだけど、ものすごく隔てられている。これはもう、惑星間ぐらいの距離がある。
おっくん:壁がね。
山田:壁がある。だから、これをどう考えたらいいかっていったら、「打ちのめされる=漫画家」だと思ったほうがいいっていうのと、編集星の編集星人、惑星編集星に住んでいる人たちだと思うぐらいに遠い存在だと思って、その裏側に読者様がいると。
よく言うのが、編集者ってのは最初の読者だから。その人が喜ばなかったら読者が喜ぶことなんてないんですよってことなんだよね。だから、いろんな思いがあるかもしれないけど、彼らは彼らで大変だと。
漫画家だったら、編集者側でどういうことが起こっているか想像するっていうことだよね。だから、例えば、俺たち漫画家は入社式とかしていない。先輩とかいない。残業とかない。朝晩、満員電車に乗っていない。
そして、結果が出なかったら罵倒されたりしない。そして、漫画の世界でやりたかったんだけど、結果が出なかったから営業に回されたとかそういうこともない。
だから、そういう彼らは彼らなりに追い詰められる状況が常にあって、クレーム処理みたいなこともあって。だから、そういうことを想像して、「俺たちも大変だけど、向こうも大変だよ」ってところからいかないと。
やたらとやみくもに対立して、「あそこの編集者最低だ」ってことを漫画家友達に言いまくる。アシスタントに言いまくる。これ、必ず伝わりますから。
恐ろしいのが、作家同士で話したら、作家はアシスタントに話すんで、アシスタントネットワークってのがあって、アシスタントは別のところにアシスタントに行って、そこでしゃべるから。
そうすると、必ず本人に伝わる。そうすると、「あの野郎~!」みたいな感じになってしまう。そうするともう、仕事しにくくなる。だけど、コツとして、小学館の担当とうまくいかなかったら、小学館全部がダメだよなってなったら、あと残り講談社と角川と……っていう感じになって、1個ずつ潰れていくわけだね。
だけど、小学館は3年経つともう入れ替わってるから。代謝がある。いなくなっているから、そういう人は。嫌な人ってやっぱり残んないんだよ。だから、偉くなっていく人って、やっぱり性格いい人が多いんだよ。
ちゃんとしている人が、意外と上に残っている。「このやろ~」って思っている人はいなくなっているね、ちゃんと。これがまたおもしろい。だから、あんまり焦んなくていいよってことなんだよね。
山田:あとは、立ち直り方なんだけど、まずね最初にね、ヘコんだらかえって、自分が指摘されたことをメモる。そして忘れる。で、心のなかではその編集者を皆殺しにしてもいいけど。皆殺しにして、一旦忘れる。
何を怒っているかと、怒りを書き出したりとかしてもいいよなって話。あとは、語れる相手を見つけたら、「最悪だよね~」って。これは漫画業界じゃないところの友達とか、俺だとタクシー運転手の友達とかいるじゃない?
だから、そういう人と話すみたいな感じ。それで「大変だよね」って感じ。で、メンタルの問題でいうと、好きなことだけすると。で、漫画関係でない人と出かけたりとか。
あとね、島本(和彦)先生とかたぶんこのタイプだと思うんだけど、主人公がボコボコにされたときに、「まだまだ終わったわけじゃないぜ」って立ち上がる、少年漫画の。
「それだけかい」みたいな。あれになる。あのモードで立ち上がる。そうすると、逆境、ピンチになったら盛り上がるっていう練習。で、そんときに大事なのは、自分に酔う。「そんな俺って素敵」って思って、酔っ払って。
俺、島本メソッドだと思うんだけど。それでやってこれたんじゃないかって気がするよね。さっきのアイデアを出すっていうのは。3つのBっていうので、Bus、 Bed、 Bathってのと。
あのね、あんまり辛いことがあったら、褒められたことだけ思い出す。あとは大好きだった漫画を読み返す。大好きだった映画を観る。それで一旦、「俺やるぞ」って思ったときのスイッチを変えるっていうのかな。これをすぐにやらなくていいから、ちょっとずつやっていったらいいんじゃないかなって思うんだよね。
おっくん:要するに、これは漫画家だけじゃないですよね。
山田:そうだね。共通するね。ヘコんだときの処方箋というか。
おっくん:普通のサラリーマンでもちょっとトラブったりだとか、いろんな上司の関係とか。大学生もそうだろうし。
山田:俺、『絶望に効く薬』の連載でずっといろんな人に「ヘコんだときどう立ち直りますか」って質問をずいぶんしてるんだよね。
一番多かったのが、やっぱ「寝る」ってので。これはやっぱり最強だなって。「飲んで寝る」っていう人が多いんだよね。やっぱ飲んで寝ちゃえばいいんじゃないのって思うよ、俺も。
生産性がないかなって思うけど、意外と一番生産性があるのが、飲んで寝て忘れて、感情面でクリアしてから、具体的にどうするか考えるっていうことなんだろうなと。
それで、アイデアが出やすいような状況を作るっていうことだなと思うんだよね。あとは、褒めてくれる人をどうやって作るかっていう話なんだけど。
それはさっき言った、自分が褒める星人になると、勝手に褒めてくれる人たちが増えるっていうことだよね。あと、ネームの作り方だけど、最高の一作を作ろうとしない。で、ふざけた3本を描くっていう。
ふざけた3本、真面目な1本くらいな感じで、とにかく量を描くっていう。1本に集中すると、そこに全神経を集中して動けなくなるんで、ふざけるっていうのが俺はけっこう大事なポイントだなと思うね。
おっくん:それはぜひ、諌山(創)さんに……。
山田:彼はどうなんだろうな。大変だと思う、だから。渾身の一作(進撃の巨人)で出ているから。
おっくん:もう止まりようがないですもんね。
山田:でもあれによって恩恵として、時間はあるわけじゃん。金銭的な余裕もあるから。あとは、彼が連載したいと言ったらやらせてくれるじゃん。だったら、彼の新しい挑戦っていうのが、何回かチャンスはあるよね。
そこでいろんなことをやったらいいんじゃないかな。何回もやっているうちに、10回に1回くらいかな。手塚先生のヒット作の割合みたいなのを計算すると、本当に低い。
2割くらいしかない。むしろもっと低いかもしれない。ほとんどが駄作。8割が駄作で、ヒットしていないんだよね。それは繰り返し挑戦したからだなって話だよね。
あと、初期作品の制作中だって思うのもある。その失敗作っていうのは。あとは、パクるってありだね。ミクスチャー精神で「好きな漫画みたいなものを描く」っていうのをオッケーにするっていうのと、そうすると動き出すっていうのはあるよね。
だから、パクリもオッケーだなって思ってるくらいがいいかなって気がする。あと、自分が編集者だったら、自分っていう漫画家に何を描かせるかって考えるっていうシミュレーションもけっこうおもしろい。
だから、自分がやってきた、こんな漫画を出された、「君、こういうの描いたらいいんじゃないの」っていうのを想像してみるのもアリかなって思う。
あと、最大にでかいのが、自分に質問するんだよね。「これが最後だとしたら何描きたい?」って。これがけっこう効く。これが最後だと思ったら、何が描きたいって言ったら、そこから見えてくるもの、ジャンル、テーマみたいなものが一番クリアになるんじゃないかなっていう気がしますね。
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