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『本を読む人だけが手にするもの』座談会(全1記事)

本を読んでいない人の言葉は印象に残りづらい? 読書好き3人が本読みの利点について語る

みなさんは最近、本を読みましたか? 「読書は大事」とよく言われますが、なぜ本を読まなければならないのか、はっきりと理解している人は少ないのではないでしょうか。日本実業出版社が刊行した『本を読む人だけが手にするもの』(藤原和博:著)では、教育の世界、ビジネスの世界の両面で活躍する著者が、様々な角度から「なぜ本を読むといいのか」ということを読者に問いかけています。今回は「読書」をキーワードに、様々な分野でご活躍中のビジネスパーソン、3名の方にお集まりいただき座談会を開きました。みなさんもご一緒に「読書」について考えてみませんか(この記事は日本実業出版社のサイトから転載しました)。

あなたは、本を月に何冊読んでいますか?

日本実業出版社(以下、日実):みなさんは休日も読書会を開かれるなど、読書好きとお聞きしたのですが、ひと月にどのくらい本を読まれるのですか?

鎌田氏(以下、鎌田):私はそんなに量は読んでいないのですが、月に5〜6冊ほどですね。読めるときは……ですが。大学院に通い始めたので、勉強のために読むことが増えました。今は専攻に関連したマーケティングの本を読むことが多いのですが、本当はその人の生き方を知ることができる、エッセイが好きです。

川西氏(以下、川西):僕は「読んでいる」かと言われると、それほどでもないです(汗)。1週間に1冊、読めばいい方かなって感じです。

日実:それは毎日、少しずつ読まれるのですか? それとも時間をつくって一気にですか?

川西:基本的に2冊を並行して、少しずつ読み進めます。通勤用の本と、家で読む用の本の2冊です。通勤中はビジネス書、家では小説と決めています。逆にしてしまうと、会社で小説の続きが気になってしかたがないとか、夜、寝る前に仕事をするモードになってしまうので(笑)。

菅原氏(以下、菅原):それはよくわかります(笑)。僕は前は電車通勤中に読書をしていたのですが、今は徒歩通勤に変わったので、定期的に読む時間がなくなり、休みの日にまとめて時間をとって、1日最低1冊は読むようにしています。だから月に4冊、5冊ぐらいですね。

月に5冊読んだとしたら、4冊はビジネス書や実用書で、1冊は小説です。けれども、ビジネス書をずっと読んでいると、小説が読みたくなるときがあるので、川西さんのように、常に両方とも鞄に入れているようにしています。

読書を習慣化するコツ

日実:お聞きしているとみなさんは、コンスタントに本を読まれているようですね。本を読むことが億劫になったり、気づいたら本から遠ざかっていた、っていうことはないですか? そんなときはどのようにして、読書欲を復活させますか?

川西:そうですね……、まず僕の場合は、もともと本を読んでいなかったので、このままではいけないなと思い、朝活で読書会を始めました。読書の習慣づけのために月に2回朝活をすれば、月に2冊は読むだろうと思って。今の読書量も、朝活のために新しい本を読まないと、他の参加者に怒られるからというのが本音です。「また、その本かよ!」と言われちゃうので(笑)。

日実:それなら、半強制的に習慣化はされますね。それでも、「もう本を読むのは嫌だ!」と、なる日はありませんか?

川西:それが、意外とないんですよね。

僕は自分のためだけではなく、人に紹介する前提で読むという本の読み方もしているからかもしれません。人に紹介するためのネタ的に面白い本と、自分のための知識の本として、分けて読むことでメリハリが生まれているのだと思います。

鎌田:私は本を読む際、記録として残すために、ブクログ(※新しい本に出会えるブックレビューサイト。他の読者の本の感想や評価をチェック、またWeb上に自分の本棚を作成することで、読んだ本の記録を残すができる)を使っています。

そこに、本の内容や自分の感想をアウトプットし、後日、見直す。また、他の本を読んでいる際に過去の情報や感想をリンクさせたりもします。

目に見える形で、読んだ本の記録を貯めていくことで、次の読書へとリンクしていきます。また単純に、読んだ本の冊数が貯まっていく達成感や、満足感が次の読書への活力となります。

日実:蓄積が目に見えると嬉しいですよね。私が小学生のときに、図書館の取り組みとして、1年間の貸出リストをレシートのような形でもらえたのですが、その長さを伸ばしたくて、図書館に通ってたなんて思い出があります。

菅原:子どものやる気をうまくアップさせる、上手な仕組みですね(笑)。

僕も、川西さんのように読書会を主催しているので、新しい本を読まなくてはというのも、もちろんあります。また、本の数を目的として取り組んだこともあって、「年間150冊読むぞ!」みたいな目標を立てていたときもあります。……でも、どうにもこうにも読みたくない時期ってくるんですよ。それを「読書スランプ」って呼んでいるんですけど。

読書スランプが来たときの解決方法は、僕の中では2つあって、1つは本を持ち歩くことをやめて、飲み会やカラオケなど別のことをして、「読書をしたい!」という気持ちが、わいてくるのを待つようにすることです。そうして、読書に対する欲求がでてきてからの、本を読むときのドキドキや感動は、とても新鮮なんです。

ただ、それっていつになるかわからなくって……、そうも言っていられない時もあるんですよね。そのときは第2の手段で、本屋さんに行く。そして、自分が読みたいと思える本と出会う。それが一番、自分の本を読みたいと思うモチベーションを上げる方法かもしれませんね。

日実:スポーツの試合を見ると、そのスポーツをしたくなってしまうのと一緒ですね。

本は読まなければいけないもの?

本を読む人だけが手にするもの
日実:弊社から出ている『本を読む人だけが手にするもの(以下、『本を読む人』)』(藤原和博:著)を、みなさん読んでいただいているそうで、ありがとうございます! おかげさまで売れ行きも好調です。内容は「なぜ、本を読むと良いのか?」という疑問に対して、著者が様々な視点から、読書の効能・読書術について記しています。

ところで根本的な質問ですが、みなさんは、なぜ本を読んでいるのですか?

川西:うーん……、僕は単純に、知らないことを知ることが楽しいから。自分が簡単に経験できないことを、追体験するために本を読みます。

『本を読む人』に書いてあったことでいえば、僕が本を読む理由は、ロールプレイができるから。自分がもっていない視点から、自分が経験しないような体験をして、どう感じるのか。ビジネス書が好きな人は、小説って役にたたないじゃんと、言う人が多いのですが、そう言う人にこそ小説やノンフィクションを読んでもらって、その視点から何が見えるのかということを楽しんでもらいたいですね。

菅原:僕も同じです。後は、結局は、人とつながるためのツールなのかなと思ったりします。たとえば、今回『本を読む人』を読んで、みなさんも同じ本を読んでいたことで、この場で同じ共通の話題を話し合うことができました。

これは、1つのメリットだなと思います。今までそれぞれが生きてきた世界を飛び越えて、本によって人と人がつながれるのは本を読む意味の1つだなと僕は思っています。

鎌田:そうですよね、私も自分の見たことのない世界を見たいという、冒険心のようなものがあって、作者の脳の中を知るというか……。本を読むということは、新しい刺激を求めていてというのが、大きいですね。

本を読む時って、脳を使っている気がしませんか? 運動のような感覚です。本はちゃんと読んでいかないとストーリーがわからないので……、情報をキャッチするのと同時に、たえず脳の運動をしている気がします。

川西:そうですね。あと“役立つ”ということに完全にフォーカスしちゃうと、自分の意見に説得力を出すために読んでいることがあります。

僕はまだ20代前半なので、なんのバックグラウンドもなく意見を言うと「若造がなにをいってるんだ」と言われるちゃうことがあるんです。けれど、「この本ではこのように言っている」と伝えると「あ、そうなんだ」と納得してもらえることが多い。自分の意見に重みをだすことができるんです。

鎌田:わかります! クリスマスツリーにオーナメントを飾るように、本の中の知識で自分に付加価値をつけていっているというのが、私の中でのイメージです。

本に書いてあることを、疑うことが大事

日実:『本を読む人だけが手にするもの』を読んでの、率直な感想を教えてください。

菅原:そうですね……、そうだなと納得したのは、一定量(300冊)を読んでから、自分自身に変化がおきてくるという部分です。

僕が元々読み始めたのは、ビジネス書や実用書からなのですが、『人を動かす』という本を読んでも人を動かせないし、『心を読める』という本を読んでも読めないし、なんだよって思っていたんですけど(笑)。

でも、10冊、100冊、200冊と読書量を積んでいくと、量が質に転化して、少しずつこの本の内容のここは自分に合っていて、これは違うというのがわかるようになるんです。

そして実際に実務にも落とし込めるようになったという、自分の実体験を思い出しました。1冊目から、本を読むことによって自分が変わるわけではない、というところはとても共感できました。

あと、一流の人、成果を出している人は本を読んでいるということが書いてあって、それはほぼ間違いないなと思います。しかし、逆に「本を読んでいる人=仕事ができる人」とは成り立たなかったりしますよね。

川西:僕は『本を読む人』の本文に載っていた、クリティカル・シンキングを本を読む際に意識していて、本を読みながら内容について疑問をもって、ツッコミをいれる。頭からビジネス書や自己啓発書に頼るっていうのは、ある意味究極の受動だったりするんですよね。

ビジネス書に書いてあることを鵜呑みにせず、「こう書いてあるけど、本当に?」とツッコミをいれる。様々な情報を多面的に考える。そのことは常に忘れないようにしないといけないですよね。

菅原:「長生きのためには肉を食べなさい」と書いてある本と、「長生きのためには肉を食べちゃだめ」という本が、並んで置いてあったりしますからね(笑)。

鎌田:(笑)。私は大学院での勉強の関係もあって、マーケティング思考でみてしまうのですが、「21世紀は個の時代である」というフレーズが印象的でした。

実際、ノマドワーカーや会社から離れて働くスタイルが流行って、またLINEのように、コミュニケーションも個の時代にシフトしていると感じています。いかに、この世界の中で、個をデザインしていくのかと書かれていて、たしかに大切だなと感じました。

本の中に知識があって、自分の人生をデザインするためには、その知識を使って戦略を組む必要がある。私はそれを読んで、「読書=自己ブランディング」だなと定義づけました。本の中のあらゆる知識、カケラをもとに、自分の真っ白なキャンパスを、どのように彩らせるのか、この個の世界で自分を自分らしく生きていくためのマーケティング戦略と一緒だなと思いました。

日実:では、本を読む人・読まない人ではどういった違いが出てくると思いますか?

川西:ベタに言ったら、ボキャブラリーの違いですよね。

菅原:語彙や表現の繊細さは違いますよね。自然に浮かぶ言葉や出てくる表現は、意識しないままに自分の読んでいる本や著者の文体を取り入れているなと感じます。また、僕が今まで出会ってきた本をたくさん読んでいる人は、総じて知的な言い回しをされる人が多い気がします。

鎌田:私も表現力に違いが出てくると思います。心にすっと入ってくる表現というか。本を読んでいないと、ありきたりな言葉になって、印象に残りづらいです。

菅原:『本を読む人』にもあるように、本を読むことで、ちょっとずつちょっとずつ、著者の脳のカケラとくっついているんですよね。

次に読みたい本はこれ!

日実:次はどんな本を読もうと考えていますか?

川西:そうですね……、『本を読む人』を読んで、やっぱり「本は読んだ方が良い」ということを再認識しました。

そして、本文に出てきた『本は死なない』(ジェイソン・マーコスキー:著、講談社)という本が気になっています。電子書籍があろうとも、本はなくならない……という紹介があったのですが、実際は電子書籍の未来を語る本のようで、逆に気になっていますが(笑)。

本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」

菅原:僕は売れている本を読もうと思いました。元々、天邪鬼なところがあって、「何十万部売れました!」「2ヶ月連続1位です」という本は、ほとぼりが冷めてから読もうかなというタイプなんです。

でも、この本で「売れているからには、何かしら理由がある」という項目を読んで、著者の人脈、マーケティング戦略、テーマが今の時代にあっていたなど、様々な要因があるとは思いますが、売れているっていうのはそれだけの人に響いたという事実があるわけだから、避けるべきではなく、向き合うべき本なのだなと気づきました。

鎌田:私は基本的に興味のある本しか読んでいなかったのですが。それじゃ、駄目だなと思いました。生物とか違うジャンルも……『本を読む人』に、色々な本が出てくるので読書欲が刺激されました。

日実:まだまだ、お話は尽きそうにありませんが、この辺で。みなさんの、「読書とは?」をお聞かせいただきありがとうございました。

本を読む人だけが手にするもの

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