2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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おっくん氏(以下、おっくん):つげさんと楳図かずおさん。
山田:この人ね、(作風に)ガロ入ってるんだよ。
おっくん:入ってる! だからゴヤなんですよ。
山田:(オックンを制しつつ)危ないから! 評論という闇に吸われていく! (何よりも)本人の話から。まずは『サワコの朝』みたいな感じでいかないといけないから。
おっくん:それで細々とひそかに描いてきて、ホームページ作って、持ち込みとかしたんですか?
ONE氏(以下、ONE):持ち込みは大学1年生の時に、やっぱりみんなの憧れの『週刊少年ジャンプ』に19ページのギャグマンガを描いて持ってったんですけど。
山田:持ち込みしたんだな!
ONE:でも、その1回だけですよ。
山田:それで、どうだった?
ONE:それが、(持ち込んだのは)ホントにつまんないマンガで。描いている時は「もう見せたら編集者の人笑っちゃうだろうな」と思いながら描いてたんですけど。
いざ見せるとものすごいスピードで(ページをめくる素振りをしつつ)こうやっていくし、しかも笑うべきページもとっくに通り過ぎていて。
山田:そこ、そこっ! 今んとこ、今んとこ!
ONE:(編集者が)5、6箇所(ネタを)仕込んでいるところを全部通り過ぎてるみたいなところがあって、それで一気に冷や汗が出て、「あっ、俺はとんでもないことをしてしまった。すぐ帰りたい」みたいな(気持ちになりましたね)。
その経験以降、ホームページを凝った作りにしたり、ブログを頻繁に更新したりすることが加速しました。
山田:あー。そうなんだ。
ONE:もう、そっちが(持ち込みよりも)安全なんで。
ONE:そうですね。持ち込みした時はすでに(ホームページを)始めてたんですけど、ホームページ上で知り合った他のマンガ家志望さんたちが、どんどんジャンプで(賞を)受賞していくんですよね。
山田:「アイツもか」と。
ONE:「彼もか」と思って。その時からペンネームは「ONE」でやってたんですけど、受賞した人が「次はONEさんですよね?」みたいなことを言ってくれるんですよね。つい、その気になっちゃって持ち込んだら。
山田:そんな目に。「なんてことをしてしまったのか」と。
おっくん:それで、そっからどうなるの?
ONE:持ち込む前から、当時の写メの機能付きたてくらいのガラケーでちっちゃい画のマンガを近くでカシャっと文字がブレないよう丁寧に撮って、それをホームページにアップしていた。携帯電話で誰でもホームページ作れるサービスがあったので。
山田:世代だねぇ。
ONE:それですごい見にくいマンガを(ホームページで)公開してて。(その当時は)携帯でいちいち読み込まないと1ページ目が読めなくって。しかも、開いたところで、(1回につき)2コマ、1セリフしかないみたいな。
山田:読みにくっ!
ONE:1シーン通り過ぎるために、15ページぐらい読み込まないといけないみたいなことをやってたんですけど、その時に知り合った方がパソコンでマンガを描き始めた。
山田:すごい名前! 新都社ってなんて素敵な名前!
ONE:ニートが集まっているふうの名前なんですけど、実際(の利用者)は社会人や学生がほとんどでしたね。そこを見た時に、もうすごくて。
みんな素人とかセミプロの人が新都社(のページ)に自分の作品を掲載してた。何年間かそこで連載している人もいて、(登録されたマンガも)5,000作品以上あって。
僕の友達もそこで連載始めたので見ていたところ、「感想を送る」とかそういう欄があるんです。そこをクリックしたら、新都社の住人たちが書いた感想がずらっと並んでた。今回の更新分への感想とかも送られてきてました。
素人のマンガに対して、見に来た人たちが感想を送り合っているというサイトが作られてて。「めちゃくちゃいいところを見つけてしまった」と思ったら、そこで「パソコンでマンガ描きたい!」って意欲が湧いて、ノートパソコンとペンタブレットを用意して、付属の「コミックスタジオミニ」というソフトを使って描き始めたんですけど、そのマンガが『ワンパンマン』で。
山田:うぇえ!? マジで!?
ONE:そうですね。
おっくん:一番最初の作品が『ワンパンマン』。
山田:ジャパニーズ・ドリームじゃん! すげえ! この国にもまだ残ってたよ、ドリームが! だってそれが今(アニメで)放送中のご存じ『ワンパンマン』なわけだよ?
ONE:信じられないですよね。
山田:このマンガ、きっとマーヴェルで映画化だよ。『アントマン』の続きでいきますから! 『アイアンマン』、『アントマン』、何とかマン、何とかマン、『アンパンマン』ときて『ワンパンマン』でしょう!
おっくん:やなせさんも挟んでの(笑)。マーヴェルの絵柄で『ワンパンマン』でしょ?
山田:絶対向こうで(筋肉)むっきむきの『ワンパンマン』ウケるよ! (逆に)『アンパンマン』は気持ち悪くてダメみたい。向こうの人は「僕を食べろ」って(セリフに対して)「ダメだ!」って言うらしいよ。
アジアは自己犠牲的な精神があるし、アンパンって食べ物がポピュラーじゃん? (でも、アジアの外だと、『アンパンマン』は)「えっ、お前ら、自分を食わす?」みたいになるから、なかなか人気が出ないらしくって。
山田:信じよう! みんなを!
ONE:発売の週とか日によっては『ワンパンマン』がランキングの1位になったりしてたらしいですけど。詳しくは知りませんけどね。
山田:ほらほらほらほらぁ!
おっくん:えっ、俺の知らないところでもう何?
山田:だから、全米を制した男の隣で俺たちは喋ってんだよ! そんな時代が来てるんだ(笑)。
おっくん:(視聴者コメントを見て)聖書より売れてる!?
山田:おおおっ! ちょっと待って、ちょっと待って! ビートルズ的な感じ?
おっくん:ジーザスだよ!
山田:(ジョン・レノンの)「俺たちはジーザスより有名だ」発言?
おっくん:キリスト教の中のパウロですから!
山田:それはいいから! そっちいくと長いんで!
ONE:(『ワンパンマン』は作画の)村田先生の力がものすごく大きいんで。
山田:でも、やっぱりすごいよ。すげえ『キン肉マン』を思い出すんだけど、子供が落書きしているみたいな感じで、二人がきゃっきゃ言いながら作ってったキャラクターが一人歩きし始めて。
おっくん:ゆでたまご説っていうことですか?
山田:村田先生じゃなくって、ONE君の中にそういう遊びの延長線上にあるキャラクターがあるっていうことは、すごい『ワンパンマン』に感じるよ。
ONE氏:そうですね。
ONE:どうせならあんまり被っていないっていうか、普通の少年漫画もすごい好きで、沢山読んだんですけど。(それらとは違って)最初から最終回状態の強さの主人公で1話からスタートしたらおもしろいかなって、1話書き終わってから気付いて。
1話は、文字の『ワンパンマン』っていう、ワンパンで敵を倒して「またワンパンで終わってしまって」っていう、そこだけ浮かんで。
おっくん:つまらぬものを切ってしまったみたいな。
ONE:本当そうですね。そこから広げるならって考えた時に予想以上に広がりがあって……。
山田:苦しくなかったの?
ONE:全然。むしろやりやすいというか。
山田:だってこれで終わりみたいなところから始まっているわけだから、普通の人は考えられないところに行くわけじゃん。それがあんだけのキャラクターがワーッといっぱい出てきて、おいおいって感じで広がっていくわけじゃん。あれは自然と出てきた?
ONE:そうですね。
おっくん:出たよ、ジーニアス。ジーニアス来ちゃったよ(笑)。
ONE:いろんな困難や窮地に立たされたり、ややこしい問題が降りかかって来たときに、知識とか経験とかそういうもので乗り切っていく主人公っていうのは……。
玲司先生とかはいろんな人に会って話聞いて、いろんなものを吸収して引き出しが沢山ある状態だから、いろんな物に対応できるそんな主人公を書けると思うんですけど、僕にはそれはできないと思っていたんです。(だから)殴れば解決するって(笑)。
殴って解決できない場合もたくさんあるんですけど。この『ワンパンマン』の世界においては、サイタマってキャラは強さだけで適応できる柔軟性を持っているっていうか。問題が降りかかるとしたらすごく庶民的なことで。金欠だとか。
おっくん:スーパーの特売日が(問題)とか。
山田:それ今週のやつだよね。
おっくん:そういう日常だよね。ただただ強すぎるっていうだけで。
ONE:そうですね。けっこう骨太の主人公っていうか、作者としてすごく頼りがいのあるキャラクターが1番最初に作れたんで、どんなややこしい他のキャラクターが出てきてもサイタマがいれば。
おっくん:そういうことか。だから気持ちいいんだよね、見てて。
山田:水戸黄門的なやつだよね。
おっくん:絶対正義が最後に出てくる。
おっくん:『モブサイコ』はもう1個向こう側を書いてるじゃないですか? スカッとしないよねっていう。
山田:『モブサイコ』は着地までやってる。
おっくん:『ワンパンマン』はこの番組でいう、ますいコンテンツ みたいな。
山田:『ワンパンマン』は実はそう見せつつ相当着地してるとは思う。真人間なんだよ、この人。珍しいよなって思って。
山田:ありがとうございます。そうですかね?
おっくん:話戻しますけど、新都(ニート)社に投稿して、そこから人気がボンといきなり出た?
ONE:わりと早かったですね。僕もびっくりしたんですけど。1話書いてアップした時に他の漫画みたいに感想が1個2個つけば嬉しいなと思って、コメント欄を見てたんですけど、更新する度に感想がどんどん増えてきて。
2話を待ってる人もいるし頑張って書こうと思って2話公開して、3話4話ってやっていく内に、どうやら新都社の住民もこの作者はわりとちゃんと続きを書く人かなって判断してくれたみたいで、そうするともっと見に来てくれるんで。
Web漫画って途中で止まっちゃう漫画がたくさんあるんで。1話だけ公開されたけど、次に公開されるのが3年後とかあるし。
山田:だから俺たちも毎週やってよかったんだよ。毎週水曜日、皆また来てよって感じだったから安心して。
おっくん:サイタマも趣味でヒーローやってるじゃないですか。それが協会みたいなの入って、だんだんランクアップしちゃってみたいな感じの流れに似てますね。
勝手に、待ってんだったらじゃあやるか、みたいなね。
弟子とかできちゃったりするんじゃないですか? サイボーグの。
山田:つっこみたいところとか満載なんで、好きな食べ物以降は後半で。
おっくん:マジで!?
山田:だってもう40分になっちゃった。
おっくん:本当だ。やばい。
山田:基本的にONEの抱えた3つのテーマは「能力って何ですか?」ってことと、「その力ってどうすんの?」ていう話と、その先にある「本当の力って何ですか?」っていう。実を言うと「本当の力って何だ?」っていうのが、人生って何だっていうことに繋がってて、この人の場合は。
だから最終的には人生論ていうか幸福論とか、実はそこに着地するメカニズムがしっかりとできてて、ここがすごいなと思うんだよね。
基本的に「力が欲しいぜ」っていうところは変わらない。だから中2問題のスタートは(他の作者の作品と)一緒なんだよな。この人の場合、デフォルトで圧倒的パワーを持っている主人公をドンと(置いた)。両作品そうなのね。
絶対的な勝者からスタートするので、客観的に見れるところにいる人が主人公になってるってところがあって。
これこれ、ぜひ見せたいと思うんだけどね。まず俺、君の何がいいってね、絵。君の絵が最高だと思って。これが2話目の主人公がバーンと出てくるシーンなんだけど。この絵柄なんだよね、最初っから。
山田:この絵柄でホームページ最初やってたんでしょ? どういう絵柄だったの?
ONE:あんまり変わらないです。でも大分上手くなってここに。ホームページをやってた大学生のときはもっと下手でしたね。
山田:携帯で撮っていたときも?
ONE:そうですね。ちっちゃい絵ばかり書いてたんですよね。カメラに収まりきれるくらいの。ちっちゃい絵って書き込めないじゃないですか? だからこの絵の縮小版みたいなの書いていましたね。
おっくん:皆、(コメントで)「めちゃくちゃ上手くなってるよ」って。
山田:そう。これでスタートしてどんどん上手くなっていくんだけど、すごいおもしろくて。これ最初の頃の絵なんだよね。霊幻がバッて出てくる、この第1話の絵とかって。
すごいなって思うのがこれ。
これさ、蛭子能収(えびすよしかず)だよね。
(会場笑)
ONE:いや、読んでなかったですね。
山田:なんでこういう絵になったの? やってたらこうなったの?
ONE:原画模写とかしてなかったっていうのが多分あって。
山田:誰の模写もしてない感じがするよね。
おっくん:アシスタント経験はあるの?
ONE:ないですね。
おっくん:あー、それだ!
山田:アシスタント経験があったらいろいろ直されちゃうよ。
おっくん:アシスタント経験もないし、編集者にあーだこーだ言われてもいない。
山田:例えばこの集中の書き方なんかも、ここに点を打って、ただバーッて入れてる。
山田:もうちょっとこなれるんだよ、普通。ここ白抜きもしてないし。
ONE:これツールですからね。
山田:じゃあもう重ねただけ(笑)。
ONE:そうですね。コミックスタジオ(漫画制作ソフト)の。
山田:コミスタのままのっけてるからこういうことになるのね。これがすごいんだよね。
絵が下手っておもしろいとか、絵がもう一つなのに表現力がすごいっていうのに尊敬しているところがあって。その一派っていうか。(東村)アキコもそうなんだけど。
表現主義っていうか。伝えんが為にはデッサンなんかどうでもいい主義。「俺伝えたいからそういうことじゃないっすから」っていうのが好きなの。だから、パンクとかそうだし。前衛もそうなんだけど。
特にそれが出るところが、おもしろいのが電話をしゃべっているときの手ね。もう最高。
山田:電話を持つ手は確かに描くの大変なの。
(会場笑)
山田:描くの大変なんだよ。でもさ、これさちゃんとしようと思ってないんだよ、最初から。全部見るとどうでもいいことになってるんだよ。これがパンクなの。これが初期ヒップホップだし。
衝動でやっちゃってて、これ見たやつは「こいつ超下手だけど超おもしろい俺もやれっかも」って思うから。ブルーハーツのマーシーのギターみたいな。シド・ヴィシャスだ、この人。破壊と同時にエネルギーで創造しちゃうっていう。
おっくん:クラスに1人はいましたもん。こういう1人で描いてる人。
山田:しかも、内容が中2っぽくて個人の妄想みたいなものを描いてるもんだから、「これみんな描いてましたよ」って言うんだよ。だけど君の場合は皆書いてたものとは全く違う着地点にちゃんと辿り着いてるんですよ、真人間だから。
だから、フワフワーとドーンみたいなやつ(ドラゴンボールのカメハメ波のようなポーズ)は皆描ける。だけどドーンについて、「ドーンって一体何?」みたいな。「ドーンってやったけどそれでどうするの?」について皆考えてないわけなのよ。「力を得た! 世界は俺のものに!」バーンってやって。
この人は真人間だから、「いやそれはそうなんだけどさ」「それはわかるんだけどさ、とりあえず人に向けるのはやめようよ」と。
そういう真っ当な人間の視点を力のある者は持っているっていう、この安心感。政治とか不安定なときに、権力を持っているやつがサイコだと本当困るわけだよ。力を持っている人間は、まともであってほしいっていうのがこれに乗っかってるの、実は。っていうところがおもしろいなって。これが第一、絵の部分は。
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