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パネルディスカッション(全3記事)

「こんなクライアントの仕事は絶対受けない」btrax・ブランドン氏の3つの条件

クリエイターに「いいキッカケ」をというコンセプトのもと、チームラボ、LIG、IMJの3社で共同開催している、クリエイター向けイベントの第4弾。サンフランシスコのスタートアップ事情について講演を行ったBrandon氏を交えて、チームラボ・堺大輔氏、LIG・岩上貴洋氏、IMJ・高橋剛氏によるトークセッションが行われました。本パートでは、クライアントとの関係性について、それぞれの企業が仕事を引き受ける条件や、チームメンバーのアサイン方法などが語られました。

ビジネスの世界で必要なのはコミュニケーション

堺大輔氏(以下、堺):時間的にはぜんぜん大丈夫なんですけど、ブランドンさんが寂しそうだったので、僕らも一緒に入らせていただいて、トークセッションに移らせていただきたいと思います。

ブランドン・ヒル氏(以下、ブランドン):そうですね。そろそろ寂しい(笑)。

:今回、QREATOR'S KITCHENをIMJとLIGとチームラボ3社でやっています。各社から1人ずつ出て、ブランドンさんと一緒に話していければと思います。まず、IMJの高橋さんです。

高橋剛氏(以下、高橋):高橋です。よろしくお願いします。

:LIGの岩上さんです。

岩上貴洋氏(以下、岩上):よろしくお願いします。

:チームラボの堺です。よろしくお願いします。ゆるい感じで、質問もまだまだみなさん聞きたいことあると思うので。

ヒル:1つ言い忘れていたんですけど、僕まだ名刺ができていなくて。

:大丈夫ですよ。

ヒル:Facebookとかでつながったほうが。

:そうですね。そうしましょう。

ヒル:会社から支給されてないんです(笑)。

:どういうことなんですかそれ(笑)。

ヒル:いや、なくなったんです。ごめんなさい。アメリカでは名刺交換しないからあまり持ってないんですよ。あまり持ってこなかったら、やっぱりイベントとか出るとすごいなくなっちゃったんですよね。

:まだ質問があればどうぞ。

質問者1:ブランドンさんは日本にもアメリカにも拠点がある。デザイン関係の仕事はオフショアですので、どうやってうまくコミュニケーションしていますか?

ヒル:難しいですね。うちはサンドイッチ型をしていて、1つのプロジェクトにサンフランシスコのチームと日本のチームが両方入ってクライアントワークをやるので、リアルタイムでインパーソンでできるような形を必ず作る。あとはお互い行き来する。実際に来て、クライアントはサンフランシスコにもよく来ますし、僕なんかも最近毎月日本に来てるんですけど。そういうふうにやるので。なるべくコミュニケーションを。結局は人と人とのコミュニケーション。

:やっぱり直接会ってコミュニケーションするというのが重要ですよね。

ヒル:そうなんですよ。うちのとあるプロジェクトなんですけど、うちの担当の人間とクライアントの担当者がけっこうバチバチやってたんですよ。なんか、長いメールが来て。

(会場笑)

ヒル:あるあるじゃないですか。文字ベースの。「なんで直ってないんですか?」とか書いてる。それで、うちの担当の彼女を連れて今回出張に来たんですけど、飲みに行ったらしいんですね。そしたら、「ベストフレンドだ」とか言ってハグしてて(笑)。「なんだこれ?」と思って。

一瞬にして、今までの2ヵ月間のメールの地獄は何だったのかというくらい、すべて解決したという。実際に会うと、そういうパワーがあるんだなと思いました。

:ありますよね。

納品ベースの支払いは断る

:ちなみにチームは、サンフランシスコに1個、日本も1個のオフィス?

ヒル:そうです。

:その中でチームとかあるんですか?

ヒル:ない。

:完全に個人単位?

ヒル:プロジェクトごとにチームを編成してやっているので、部署じゃなくてこのプロジェクトのチーム。だいたい2〜3兼任していてクロスオーバーがあるので、ほとんどみんなと仕事している状態ですね。

:アサインはブランドンさんがしてるんですか?

ヒル:今の状態だとみんなで話し合って、最終的に僕が決断しますけど。こういう仕事ってリソースにどうしても限界がくるじゃないですか。

特に日本企業との仕事ってリソースがヘビーになりがちだから。正直うちの会社って契約内容と支払条件をすごく厳しくクライアントに突きつけるんですよ。

:なるほど。

ヒル:最近はすごい揉めて。「うちの会社はそんなことやったことありません」と(相手が)言うような条件を言って、「いや、アメリカだとこれなんで」という話をしていて。

「そんなこと言っても……」みたいに日本の会社は揉めるじゃん。最後の最後は「じゃあ、リソースに限りがあるので他のプロジェクトに回していいですか?」って言ったら、全部受け付けてくれた(笑)。

(会場笑)

「できるじゃん」と(笑)。「前例がないからできません」とか言ってたのに。「じゃあ、やれないですかね」って言ったら「ちょちょちょ」って言われて、大丈夫でした。

:日本企業はそういうところが若干弱いですよね。攻められるとね。

ヒル:あれがダメなんですよ。納品、検収、支払というのがアメリカ的に言うとリスクが高すぎて。だってそれ、支払えない可能性あるじゃないですか。

:「検収終わってない」って言い張られたり。

ヒル:そしたら、経営者としてキャッシュフロープロジェクション(収益測定)とかできないんですよ。それはクライアントに「できない」と。うちはまず「納品ベースが嫌だ」って言ってるんですよ。「納品なんか今の時代ない」って。継続的にやるサービスだから。プロダクトを納品するんじゃなくて、サービスなので。

常に提供し続けるものだから、納品することを目的に納品書とか議事録とかを作ること自体が、プロダクトを作るのとはまったく関係ない部分に労力が割かれていて。そっちが目的になりそうなんですよ。だって支払い受けるのにはそっちのほうが重要になってるんだもん。プロダクトを作るよりも。

そしたら自ずとエージェンシーはそっちにフォーカスがいっちゃうじゃないですか。プロダクトを作りたいんだけど、でもこれやらないとお金が支払われないのでこっちを優先しないとってなるじゃない。

:とりあえず納品ってやつですね。

ヒル:そしたらぜんぜんいい仕事ができないから、「それは嫌だ」って言って。メーカーさんとかはそういう納品にこだわるんですけど、ちょっとそれはワガママっていうのじゃなくて、「いい仕事ができないので困ります」っていうのは言ってます。

プロジェクトとメンバーアサインのルール

:おもしろい。すごいなぁ。やっぱりアサインは重要じゃないですか。LIGさんとかIMJさんはふだんどういうアサインをされてるんですか?

岩上:すごいみんな困ってますよね。

:困ってるんだ(笑)。

岩上:数ヵ月単位のプロジェクトが多くて、忙しい時期がプロジェクトや役割によって変動していくので、プロジェクトのアサインはみんな困ってます。

マネージャーやリーダー関係が話し合って「あいつはいける」「あいつははいけない」「やっぱりいけた!!」みたいにやりあって、みんな困ってます。

できる限りクリエイターとして成長できるプロジェクト、挑戦できるプロジェクトをクライアントの期待値を考えながらバランス取りつつ進めています。

:IMJさんのところはめちゃくちゃ人数多いじゃないですか。それって結構システマティックに決まっていくものなんですか?

高橋:そうですね。もうお金をいっぱいくれるクライアント優先で(笑)。

:最高ですね!(笑)

ヒル:ぶっちゃけトークに(笑)。

:今日はもう完全ぶっちゃけトークで(笑)。

高橋:最優先です。

:最優先。最高ですね。最高です。リスペクトです、もう。

ヒル:そんなもんですよね。

:そんなもんですよ。自由度高くて、いいプロジェクトやらせてもらって、それが次の自分たちのブランドにつながるか。それか、当然キャッシュがでかいか。

仕事を受ける3つの条件

ヒル:うちは「仕事を受ける3条件」というのがあって。

:いいですね。

ヒル:「これに引っかからない仕事は絶対受けないで」って言ってるんですよ。

:聞きたいですね。

ヒル:1つ目は、儲かる。2つ目は、お客さんの名前、ブランドネームがいい。Appleとかね。3つ目は、やっておもしろくて実績になる。これに引っかからないのはやらない。

:やらない。最高。

ヒル:地味な、金にならない、知らない会社の仕事はやらない(笑)。そういう仕事多いですよ。

(会場笑)

:まあ正直多いですよね?

岩上:多いですね(笑)。

:振ってみました(笑)。ね、高橋さん?

高橋:多いですね(笑)。

(会場笑)

“やりたいこと”とコストのバランス

:何かあるんですか? IMJルールとしてこれは取る・取らない、みたいな。

高橋:今ブランドンさんがおっしゃったのと、うちもけっこう似ていて。先ほど「お金をいただいているお客さんに」って話をしましたけども。とは言いつつ、クライアントが今後どういうことをしたくて、どういう世界を築きたいみたいなところに僕らが共感できるかどうかというのはすごく重要で。

それに、うちのメンバーの成長感が出るようなプロジェクトにはやっぱり人をつぎ込む。収支の関係を見ながら(笑)。

:それを高橋さんが後ろで操ってるんですね(笑)。LIGさんはどうですか?

岩上:どうしても作るのが好きな子が多いので、収支を度外視しちゃうんですね。

:よくわかります。

岩上:よくわかりますか(笑)。予算をちゃんと把握して、チーム全体とプロジェクトをちゃんと考えないと、あとあと大変なことになるので、そこはしっかり考えようということです。

あとは、一緒に働いてる仲間たちがやりたいかどうかというのはすごい大事にしてます。バランス感覚が必要になってきました。

:ブランドンさん、実際のプロジェクトの中でのコストマネジメントはどうですか? 誰がお金を見るみたいなのはあるんですか?

ヒル:僕とファイナンスの担当の人がいて、けっこうシビアに(見ています)。どこの会社もあると思うんですけど、必ずプロジェクトごとの収支表があって、随時ちゃんとそれに合ってるかどうかを。さっき言ったみたいに、やりすぎるのも良くないので、そこもちゃんとブレーキがかかるように常に見れるようにしてあって。

アメリカだと日本的な残業とか気合いでどうにかっていう世界がないんですよね。プロジェクトが終わってなくても6時になったら人が帰るので。「See you tomorrow.」なので。「Tomorrowないんだけど……」みたいな(笑)。

(会場笑)

有休取得は無制限という制度のメリット

:「もう契約切られてるかもしれない」みたいな(笑)。そういうことは、ぶっちゃけあったりしないんですか?「プロジェクト終わってないし、(終わらないと)契約切られるし、でもみんな帰っちゃったし、どうしよう」みたいな。

ヒル:事前に防ぐようにはしてますけど……。昔は僕がやってましたよ。夜中にメールとか書いて。

:ケツを持つ、みたいな。

ヒル:でも今はそういうことが起こらないように、最善の策を打つようにはしていて。会社のビジネスモデル的に、最悪そうしちゃう時もあるから、緊急事態の時にはやると。

ただ、うちの会社がもう1つ採用しているシステムは、無制限に有給取れるんですよ。年間何日でも。

:どういう意味ですか?

ヒル:アンリミテッドなんですよ。それはどういうことかというと、まあ実際に任せているんですけど、この時期にこれくらい取っても他の業務に影響ないと思ったら申請して2人以上のマネージャーにApproval(承認)もらえば取れる。だいたいApprovalはすぐ取れるんですけど。

これってすごく重要で。アンリミテッドって、「じゃあ取り放題だ」って、まあ取り放題なんですけど、逆に普通の有給ってあるじゃないですか。10日とか15日とか。

:日本だとね。

ヒル:そうすると、うちも昔やってたんですけど、問題があって。取らなきゃ損したって思うから無理やり取ったり。みんな急に年末とかに。

(会場笑)

誰もいなくなるから、プロジェクト動かないじゃないですか(笑)。

:消化することが目的になっちゃうんですよね。

ヒル:そう、目的になって。あとは、それの申請を出した時に、こっちが「その時期に休まれると困る」と言うと、「でも有休取る権利あるでしょ」って言って、揉めるんですよ。でもアンリミテッドだったら、最初から無制限なのでなくなることもないんですよ。

なので、いつでも取れるから「この時は取らないでほしい」というのがこっちも言えるじゃないですか。またいつでも取れるから。でも普通の有休制度だったら、「でもこれ取らないと来年なくなるから取らせてくださいよ」ってなったりするじゃないですか。

:その通りですよ。

ヒル:これもデザイン思考的な。手段は柔軟に考えるっていう。

:超いい。採用したい。

(会場笑)

質問者2:ちゃんと休ませてくれるんですか?

(会場笑)

:(質問者を紹介して)弊社のトップエンジニアです。

ヒル:システムがあって、申請を出して、Approval取らないといけないんですけど、何日までにApprovalが出なかったら自動的に取れるんです。

僕は面倒くさいから出さなかったりする。だいたいダメって言われたことない。1年ぐらいやってますけど、ダメって言われた人はいない。

質問者2:日本人だからなのかよくわからないですけど、うちのチームのメンバーの子たちも責任感強い子たちが多くて。「この仕事を早く終わらせたいから休むのやめよう」みたいな子とかが多くて。積極的に休めない子が多い。

ヒル:自分が休めるようにするのも責任なんですよ。周りもそうだけどね。うちの会社でも言ってるんですけど、デザイナーって24時間仕事をしているという考え方があって。仕事をしていない休暇を取る間も、インプットのインスピレーションを得る時間だったりするんですね。旅行行ったりとか。

なので、むしろそうしないとダメなんですよね。同じことをずっとやってるとクリエイティブな発想がなくなっちゃうので。周りも巻き込みながら、そういうスケジューリングをする。

休みは取ろうと思えば取れる。時間って作り出せるはずなんですよね。それを頭の片隅で「いざとなったら有休取り消せばいいや」と思っちゃうから、そっちに流れちゃうのであって。頑なに、「絶対有休は死守するぞ」と思えば方法はあるはずですよ。

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