2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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ジェーン・スー氏(以下、スー):自分の話をしないって言いますからね、男性は。自分が最近見た映画とか、野球がどうのとか、今何を感じているんだいうこと、こういうことを悩んでるんだという話は、ほとんどしないという。
情報の交換と、その情報に対してどう思うのかという、何か1つ媒介を介さないと話はできないということなんだなって思って。そこに個体差はあれど、「性差の傾向がある」という。最近これが一番誤解を生まない言い方だなと思っています。
田中俊之氏(以下、田中):そうだと思います。傾向性っていうものがあるので、この本もそうなんですけど、「男はこうだ!」って言っている訳じゃないんです。男性ってこういうパターンにハマりがちだから、これにハマっちゃってる人は気をつけましょうと。その言い方っていうのは別に全然悪くないし、傾向があるっていうこと自体、当然だろうと思うんですよ。
スー:例えば悩んでいる男性がいたとして、友達が飲みに誘ったり、馬鹿話をしたりして励ます。でも悩みについては一切聞かないっていう男の美しい友情みたいなものも、よく聞きます。
『ルールズ』というアメリカの婚活本があって、結婚にたどり着くためのルールがたくさん書いてある。ざっくりと「男の人に好かれたかったらこうしろ」とか、「プロポーズされたかったらこうしろ」とか、延々と書いてあるんですけど。
もちろんできないことだらけなんですが。「男の人と車に乗ってて、確実に道を間違えると思っても、あなたは指摘しないで」とか書いてある。
(会場笑)
スー:「彼は必ず私を目的地にたどり着かしてくれると信じることが、あなたの仕事です」って書いてあって。確実に「右! 右! ウィンカー出して!」って免許持ってない私みたいなのがいて。ゲラゲラって笑ってたんですけど。
その中の1つに「男性はトラブルがあった時に、真剣に考えることはなく、他のことをして気を紛らわして、リカバーするものです」と書いてあって。それを読むまで全くそんなのわかんなかったです。よく見てみると本当にそうだと思いまして。私の周りの男性は。
嫌なことがあったとき、そのことについて考えたり解決をするんじゃなくて、違うことをするんですよ。DVD見たり、酒を飲んだりして、気を紛らわして。「まぁなんとかなるさ」っていう話。
「ちょっと聞いてよ」みたいなことで友達に集合をかけたり絶対にしないな。これは孤独な戦いで大変だな、男の人は、と思いました。
田中:そうですね。そう思うと女性とどういう関係にあるかっていうことも、この話では重要なことで、そのアドバイスって女性誌でもよく書いてあるんですよ。
『anan』とか『non-no』を分析した社会学の論文を読んだとき、男の人は評価されるのを好まないから「○○さんって楽しい人ですね、と決して言ってはいけません」と。女子が評価していることになっちゃうからね。どう言えばいいのかというと「何々さんといると私が楽しい、と言いなさい」みたいな。
スー:喜ばせる系だ。すげー! メモメモ(笑)。
田中:そんなアドバイスがあって。だから何ていうんですかね、男の人が誤魔化して上にいるという状況を支えるようなアドバイスを、女性誌とかはしているのかなっていう気がしたんです。
スー:ありますね。確かにそうです。
田中:だから男の人が自分の問題を正面から捉えられない問題は、社会全体がそう仕向けている。そういう傾向に男の人がなるように、面子が潰れないように優しくしてあげてるという側面があるのかなと思います。
スー:「向き合ったら壊れるからやめろ!」みたいな(笑)。
田中:「本人のためになってないことが多いのかな?」という気がするのが、僕がこの本を執筆した理由でもあるんですよ。
スー:男性に届くと良いですよね。
田中:届くといいです。でも20年ぐらい前よりは届くようになってきたかなと思うんですよ。
スー:「男は黙って……。」の時代から変わっている?
田中:経済的な事情が悪くなっていることは、男性にとってはチャンスでもあって。「経済の状況がよければ男は働いていればいいんだよ」っていう意識って、たぶん変わらないと思うんですよ。
スー:確かに。
田中:「働いてお金を稼いで何が悪いの」っていう時代だったわけじゃないですか、バブルが弾けるまで。ただ、僕は大学を卒業して40年間、定年まで「1回も休まず働いてください」って言われたとき、到底できないなと思ったんです。男性の生き方が一通りしかないことに違和感がありました。
スー:相当無理ゲーですね。この無理ゲーを、20歳過ぎぐらいから自動的に背負わされている苦労は、女性サイドは理解したほうが良いと思います。本当に。
田中:男の人って本当は不満があったんじゃないかと思うんです。仕事だけの人生っていうことについて。専業主婦のパートナーがお家にいる場合って、言いようがないじゃないですか。
自分が辞めたら家のローンが払えないし、食費も払えない。だから悩みや不満を無いことにして。それはそれで、今定年退職をしたお父さんたちが町に溢れてきて、「あいつら邪魔だ」っていう話もありますけど。悲しいモンスターっていうか。
(会場笑)
田中:僕たちがあの怪獣を生み出した側面もあるんじゃないかという気はするんですよ。
スー:そうですよ。ゴジラ的な日本人が町中にいっぱいいる。
田中:定年退職者はようやく会社から帰ってきたんじゃないかなと思うんです。40ぐらいだとまだ助かるんじゃないかなと思うので、そういう意味でこの本は補助線的なことをやっているわけなんで。
ただ、認識されない問題は無いと等しいので、どうすればいいのかと。ある程度女性は、「男性って問題があるんじゃないか」と思っているのに、それが多くの男性に届かない。
スー:そうですよね。
田中:一番ひどいのは、セクハラだと思うんですけど。
スー:そうですね。
田中:一番悪い例で言うと、「自分はそんなつもりは無い」って言っても、相手はそう解釈しているわけじゃないですか。そのことのズレがうまく理解できないというのは、本人もかわいそうだと思う。人に迷惑かけてるんでね。
スー:いがみ合って生きたいと思っている人って、いないと思うんです。男女ともに。できるだけ仲良く穏便にやっていきたいと思うんですけど、どうしていけばいいんですかね。女性には、40男が嫌われないためにできることあるんですかね?
田中:女性ができることっていうのは。誰でも「男はこうだ」っていうビジョンを持ってしまっているんですよね。それは男性自身が持っていて、自分で自分を縛っている側面があると思うんですけど、女性がそう思ってしまっている側面もあると思うんです。
この本のテーマはリアリティーと現実のズレがあると、大変生きづらいという話なので、皆さんが思われている「自分の夫はこうだ」とか、「パートナーはこうだ」っていうのと、目の前にいる現実のパートナーは違う。
自分の頭の中にあるものですから、目の前の彼が、今どういう状態にあるのかというのは、しっかり見てもらうと扱い方が変わって来るかという気がするんですけど。
スー:さっき裏でも先生と話してたんですけど、男の人は「誰かを食わせてナンボ」っていう呪いをずっと背負って、支えてもらってきた日本社会なわけです。でもそうじゃなくなってきて、物理的にそれは無理になってきて。
先日とある取材を受けていたとき「自分より稼ぎがどうのという話って、ズレてくるんじゃないか」という話をしたとき、それまで理解をして、100パーセント言ってることがわかっていると思っていたインタビュアーの人に「無職の働かないダメ男でも愛せってことですよね」って言われたことがあって。いやいや、その時点でバイアスがかかってるだろうと。
「稼いでいることが最低条件っていうのを、男性に課していることですよ」って話をしたんですけど。意外と身近な人にも多いですね。「男のくせに」みたいな。「女のくせに」って言われたら発狂するのに、「男のくせに」は平気で言う。
田中:「誰でもできるようなことじゃない」と僕は思うんです。日本の男性の90パーセントぐらいが働いてるんですよ。それを40年間みんなが続けてる。全然向いてない人、無理な人、病気を隠している人、案外いるはずだと思うんですけど。
無理している側面があるんじゃないか。もちろん「仕事が好き」っていう人は男女問わずいるわけなので、そういう人はどんどんやったら良いでしょうけど。仕事していないとおかしいというのは、相当きついんじゃないかと思うんです。
スー:仕事が得意な女性が「子供産んでいないのがおかしい」とか「若い時期に結婚してなかったらおかしい」と言われたら、こっちも相当キツイですしね。
田中:僕が前に市民講座をしてたときに、男で無職の人でもいろんな事情があるんだと。例えば、ご病気されて働けなくなった人もいるでしょうし、ご夫婦で話し合って専業主夫に選ばれた人もいると思います。
「それにいちいち指摘するのはどうなんだ」って話をしたら、会場に男性で、何の理由もなく無職の方もいて、すごく肩を落として帰られたんですよ。
「先生の話を聞いたら助かると思ったけど、やっぱり理由がなくて働いていないのはダメっすよね」みたいな感じになっちゃってて。だから僕は言い方を間違ったと思って。何の理由もなく働けなくなることもあると思うんです。
「なんで結婚しないの?」って言われてるのと一緒で、「なんで働いてないの?」って言われたとき、「自分でもよく理由がわからない」という人がいたとき、僕は言葉を間違っちゃったかなと、思ったんです。
スー:難しいですよね。
田中:難しいです。
スー:働かざるもの食うべからずとまでは言いませんけど、自分が働いていると、他人も働けるものだと思っちゃうんですよね。
田中:そうなんですよ。部活やサークルをやめた経験がある人もいると思うんですけど。毎日来てる人間からすると、不登校も一緒ですけど、「なんで学校来れないの?」とか。「なんで部活来れないの? こんなに楽しいのに」みたいなことがあるわけじゃないですか。
僕が後悔したのは、そういう人の話を聞いてくれる可能性がある分野って、男性学ぐらいしかなかったと思うんです。チラシを見て、彼は頑張って来たのに、僕がそんなことを言っちゃったというのは、よくなかったと思ったんです。
何の理由もなく社会から「あなた変ですね」っていうレッテルを貼られて、なんとかしたいけどならない人も一定数いらっしゃるし、数の問題ではなくて、そういう人がいるときに無視して良いっていうのは、僕は違うと思ったんですよ。
スー:この本を読んで「なるほど」と自覚をした男性が生活をしていると、女性から思い切り男性差別をされる瞬間というのが、頻繁に気づくようになると思うんです。
今までだと鼻高々になるところが、実はすごく差別的なことを言われていた。そのときに、言ってほしいですよね。「それ偏見だよ」とか「君、それ性差別だってわかってる?」ぐらいの喧嘩を売って欲しい。指摘は怖がらず、プンスカ怒る女性もいると思うんですけど。
田中:でも僕、それ良いと思います。「それは言われたら傷つくよ」って、男はあまり言わないんです。
スー:そうそう!
田中:言われちゃうと自分が傷つくし。例えば女性が交際相手に「不安だ」とか言うことってあると思うんですね。それは「経済状況が不安」なのか、「2人がずっと一緒に生きていけるか不安」なのかっていうのは、言われた男性は不安になってると思うんです。そこで男性が「いや俺も不安だ」ってなったら関係が崩れちゃうじゃないですか。
女性にご理解いただけると僕は助かると思うのは、男がリードして女の人を引っ張ってくれるっていうのは女性からしたら理想的だし、男らしさとしても正しいと言われている訳ですが、いつも求められているとしたら、男はしんどいっていうのは正直あるかなと。
スー:それって、女性に100パーセント選択の決定権がないことですからね。
田中:そうなんですよ。強い男の人が好きとか、リードしてくれる男の人が好きっていう人はいると思うんですけど、その関係性を長期維持しようとしたとき、「ずっと自分は下ですよね」っていうことになりますし。その辺もうちょっと考えたほうが、お互いにとって良い関係が作れる気が僕はしてるんです。
スー:100パーセント、すべてのシーンでイーブンよりは、「持ちつ持たれつ」でできるのが一番良いですよね。
田中:そうですよね。そう思います。
スー:先日の「子供用のベビーカーに乗った1歳児をおじさんが殴った」って事件、ナンセンスですよね。私も同じような体験をしたことがあって。この話を他のトークイベントでもしたことがあるので、お聞きになったことがあるという方がいたら申し訳ないですけど。
私と女友達が41とか2の時の話ですよ。家の前で自転車を止めて喋っていたら、友達の耳元で「わあー!」ってでっかい声を出して自転車で走り去っていった男の人がいたんですよ。
2人ともびっくりして、ゲンナリして。「数少ない『女に生まれて嫌だなと思う瞬間』だね」と。私たち男だったら絶対やらないですから、これ。男の大人だったら。同い年の同じ体格の男性だったら、自転車に跨がってる時にほぼ同世代の男性が近くに寄ってきて、耳元で「わあー!」って叫ぶなんてやられないわけですよ。
女だったら、やられる可能性が出てくる。これは自分より弱いと思われてるからで。その女友達と2人で喋って「確実にあの男の人、社会でうまくいってないよね」と。社会でうまくいっている人は見知らぬ女の耳元で「わあー!」と夜中に言わない。
田中:そうですね。
スー:男の中の「男らしさ問題」を解消してくれないと、女子供に余波が来るんですよ。とばっちりが。でもこちらからは何も助け舟が出せない。
田中:その問題なんですけど、最近、社会心理学の論文を読んだときにおもしろいデータがあって。「所属集団の社会的評価が低いのに、自己評価が高い人間」ていうのがステレオタイプを補えて、その集団を蔑みがちだと。
昨今の例で言うならば、ヤフーの掲示板とかって、中国や韓国のことを非常に見下した発言を書く人がいらっしゃいますよね。40代以上の男性が中心なんじゃないかっていうデータが、先日出てましたけれども。
つまり、会社とかで低い評価を受けたり、あるいはそもそも評価が低いような企業に勤めてたりするけれど、自分は有能な人間だと思っている。そういう方が中国とか韓国の方を、ステレオタイプ的に理解して見下しているっていう構造があるんじゃないかということで、今の話は解けるわけなんです。
必要以上に自尊心を高めているときに、相手を集団として見てステレオタイプ化したら、「女子供が悪い」とか、「女が最近こっちに進出してきてるから俺の食いブチが無いんだ」とか、なりやすいと思うんです。
スー:進出してごめんな(笑)。
田中:そうですね。それって結局僕がその論文を読んだとき、適切な自己評価を男性は持たないといけない。それは周りの本にもこの本にも書いたことで、スーさんにも共感していただいて。男の人って小っちゃい頃から「ビッグになりなさい」と言われて生きてきて、それは呪いだと思ってるんですけど。
スー:先生に言われるまで気がつかなかったけど、かわいそうで仕方がないですよね。
田中:小1の子を捕まえて「何になりたい?」って聞いたときに、1位は、何十年も「プロスポーツ選手」なんですね。他にも「宇宙飛行士」とか、「総理大臣」みたいなのが上がってくるわけですよ。誰もなれないじゃないですか。そこで、「地方公務員」とか、小1の子が言ったらたぶん怒られると思うんです。
大人になればわかるけど、地方公務員て結構激戦で、そう簡単になれないわけなんですけど。どうしてそこで変な植えつけをしちゃうのかなと。「男の子なんだから大志を抱かないのはおかしい」っていう。
だから中学生ぐらいになって野球部に入っていたときに、レギュラーにもなれなかったら、プロ野球選手になれるわけがないじゃないですか。
スー:そうそう。
田中:「なれない」って言うのは嫌だなぁって、すごい思うわけなんですよ。
スー:かわいそうですね。その話をラジオでしたとき、とある女性アナウンサーが息子さんがいらっしゃるんですけど。「この間息子に、将来何になりたいか聞いたとき、そんなに大きなこと言わなかったから、もっと大きいことを言いなさいって言っちゃいました、私」って言ってて。「すごく反省します」って言ってましたけど。
そういう偏見にやっぱりこっちも相当押し込んでるんですよね。
田中:そうなんですよ。だから男の人は見栄張りだとか、意地っ張りだとか、現実が見えてないという話はこの本にも書いたし、僕もそうだと思うんですけど。そうさせている仕組みは男性個人ではなく社会に原因があって、その仕組みを解体していったほうがよくて。
例えば経済が右肩上がりに上がっていくんだったら、「その夢を抱け」って言って、プロ野球選手とかにはなれなくても、自分はいっぱしのものになったぐらいのことを思えると思うんです。
でもそういう経済的な成長を見込めない中、ただ「大きな夢を抱きなさい」と、煽りで男性を育てていくのは、男女を問わず、沈めていったほうがね。
最近お坊さんが書いた本って売れるじゃないですか。
スー:はい。
田中:あと「10着しか服が無い」とか(笑)。
(会場笑)
田中:そういうブームじゃないですか。悪くはないという気がするんですね。
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