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(2025年再掲版)休みたいあなたのための「休み方」講座(全2記事)

「慢性的な疲労」に気づかずがんばり続ける人のリスク 「病気になる前のシグナル」を見逃さないために [2/2]

活力を高めるには?

片野:ぜひ考えていただきたいのですが、朝起きたところがスタートラインだとはあまり思わないでほしいんですね。朝起きたところが「活動」のスタートラインだとすると、そこの時点で自分自身の活力がどのくらい高まっていて、バッテリーが充電されているかを考えずに行動している人は多い。

例えば(バッテリーが)5パーセントしかなくても、今日やらなきゃいけないタスクがたくさんあって、その5パーセントでどうこなすのか? ということなんですね。「5パーセントではこなせないタスクをどうこなしているんですか?」というと、先ほどのようにマスキングを使って、無理くりやり続けているんです。

長野:やり続けているなぁ。

片野:それって本当にいいんですか? 短期間だったらなんとかなるかもしれない、あるいは若い時は無理がきくかもしれない。でも、だんだんそうではなくなりますよね。みなさんに考えていただきたいのは、その前の段階で準備をしなければならないということです。

明日どういったことをやるか、今日はこのあと何をやるのかといった時に、どのくらいの活力が自分の中にあって、その活力でタスクがこなせるかどうかを考えて、準備してから活動に移すことが大切になるということです。

長野:なるほど。そうなると、今度は「活力の正体って何?」ということや、「活力を養うには何をすればいいの?」ということが気になってきますよね。

片野:そうですよね。先ほどお話ししたことと少し重複してしまうのですが、活力を高めるためには、最初のスタートラインを「活力」からにしましょう、活動ではなくて活力を高めるところからしましょうと、本では書いてあります。

休むことに「罪悪感」を抱いてしまう人へ

片野:最初に長野さんは「(日本人は)働くことが美徳だ」という考え方があるとおっしゃったじゃないですか。逆に言うと、「休むことは罪悪だ」という罪悪感があると思うんですね。

長野:それはあります。

片野:でも、休まないと活力は高まらない。ですから、活力を高めるか・高めないかはとっても大切で、何を目標としているかがポイントになってくるんですね。ちらっとお話ししましたが、「何のために疲労回復したいんですか?」というところを、みなさんは見失っているんです。

長野:目的がないと。

片野:ないんです。「なんか元気がないから嫌だ」と言うんですが、何もやることがなかったら、別に元気がなくてもいいじゃないですか(笑)。

長野:確かにそうですね(笑)。

片野:別に何もやらないんだから、元気がなくてもいいですよね。でも、「自分はこうありたい」「仕事がどのくらいある」という目標があるから、「この疲労状態でそれはこなせない」ということで、疲れている状態が不満だとおっしゃるんだと思います。

長野:なるほど。

片野:そうであるならば、もう一歩突っ込んで、自分自身がこなさなければならないタスクをもう一度整理してみる。そのためにはどのくらいの活力が必要なのかを考えて、準備して、こなす。そうすれば、別にちょっとくらい疲れていても「これだったらこなせるから、それでいいや」「足りないぞ。もっと早めに準備しなければならない」となったりします。

そう考えると、休むことは罪悪ではなくて準備なんですね。結果的に自分たちが何をしたいかというと、生産性を高めたいんですよね。

長野:そうです。

休むこと=寝ることだけではない

片野:生産性を高めるのであれば、休むことで生産性は高まります。「準備をしっかりすることによって、結果的にパフォーマンスが上がって生産性が高まりますよ」というところにたどり着ければいいわけですよね。

そのためにしっかりと休養しましょうね、みなさんも休養のために取り組まなきゃいけないですよねということで、この本の中に書かせていただいた「休養の7タイプ」というものがありますのでご紹介します。

長野:お願いします。

片野:まずは休養を3つに分けています。「生理的休養」「心理的休養」「社会的休養」です。休養というと、この本の表紙には「休むことではない」と書いたんですが(笑)。

長野:最初に話していたんですが、すごくキャッチーでいいですよね。

片野:はい。「寝ることは休むことではない」というのは、「寝ることは休むことだけど、寝ることだけじゃない」ということなんですね。

寝ることは、「生理的休養」の中の「休息タイプ」です。休息タイプは「消極的な休養」とも言うんですが、体をなるべく動かさないということです。ですから、休憩や寝ることが休息タイプなんです。

長野:「ハードな活動をしない」みたいなことですね。

片野:そうですね。体をなるべく動かさないということです。「休養=休息タイプ」と、みなさんはステレオタイプ的に思っているんですが、そうではなくて。それ以外にも6つあります。

長野:一般的なイメージは休息タイプですよね。「寝て休んどけ」と。

片野:そうなんですよ。「寝れば回復するよ」とか。もちろんそれもあるんですが、それ以外のタイプも知っていると、自分で上手に休養を取ることができるようになるんですね。

体を動かすことも休養になる

片野:2つ目が「運動タイプ」です。これは「積極的な休養」とも言うんですが、激しい運動のことを言っているわけじゃなくて、軽度な運動、疲れない程度の運動です。ジョギングでもウォーキングでも、あるいは体操やヨガみたいなものでもいいです。

運動タイプとは、血液を循環させることなんです。疲労すると老廃物が溜まりますし、フレッシュな酸素が必要になります。それを運ぶのは血液ですから、血液を循環させないと疲労回復につながらないんですね。

激しい運動をしたあとに、よく「グラウンド一周、アップしてきなさい」と言って、ウォーキングのように歩いたり、軽く走ったりします。あれは、血液を循環させて老廃物を回収して、酸素を届ける活動をしているんですね。

長野:なるほど。血の巡りをよくするということですね。

片野:そうです。ですから、軽微な運動は休養につながるんですね。

長野:へぇ〜。でも、まだこれもイメージがつきますね。「散歩する」みたいなものは、リフレッシュにつながっていそうなイメージです。

片野:そうですよね。ですから生理的休養でも、寝るだけじゃなくて体を動かすことも休養につながることを知っていると、「ちょっとリフレッシュで歩いてこようかな」となる。

長野:言われてみれば、という感じがしますよね。

片野:はい。ただ、みなさんはそれを休養だと思わないので、それも休養なんだと知っていると、散歩も取り入れたりできるようになります。

「生理的な休養」と「心理的な休養」

片野:3つ目の「栄養タイプ」は、「消化器系を休めましょう」ということです。例えば、お正月の三が日はたくさん食べますよね。そのあとに何が来るかというと……。

長野:七草粥。

片野:そうなんです。あれは「消化器を休ませましょう」という、昔の人の知恵ですよね。時にはファスティングのように、あまり食べないという選択肢もあると思います。栄養学では「カロリーをどのくらい摂取するか」が中心になりますが、休ませること・摂取を抑えることも、休養学では栄養タイプになります。この3つが生理的な休養です。

ただ、生理的な休養以外にも「心理的な休養」があります。「親交タイプ」とは、人と接する・人とお話をすることが休養につながるタイプです。立ち話でもいいです。本の中に書いたんですが、うちの奥さんはよく近所の奥さんと外で立ち話をしているんです。別にそれを咎めるつもりはまったくなくて、それが彼女にとっては休養につながっているんですね。

あとは会社の中でも、給湯室で会話するのもいいですし、お昼時間に近くの方と会話する(のもいいです)。それが休養につながる、それがとても大切だとお気づきの方は、ぜひ積極的に取り入れていただければと思います。

人ではなく自然と親交するのであれば、森林浴があります。あとは動物と触れ合うとか。

長野:「アニマルセラピー」と言いますよね。

片野:そうですね。心の安らぎにつながりますので、それも親交タイプになります。

ゲームや日曜大工、妄想も効果的

片野:また、「娯楽タイプ」というのは、みなさんが好きなことをやることです。ゲームが好きだったらゲームやればいいと思いますし、カラオケが好きだったらカラオケに行けばいいと思います。

もちろん依存するほどやり続けるのは問題ですが、休養のためだったら一定は必要だと思っています。お子さんでも、ゲームをやっていることは休養だとご理解いただけると、ある程度、腹も立たないかなと思います(笑)。

長野:はい。度を越さないというのがポイントなんですよね。

片野:そうです。度を超すのはよくないです。「これは休養のためだ」と、本人も理解した上でやることが大切だと思います。

「造形・想像タイプ」は、何かを作るということです。例えば、日曜大工をされる時をイメージしていただきたいんですが、その時ってストレスはどこかに置いていると思います。集中していますから、没入していると思うんですね。それは心理的な休養になります。

あとは「想像」と書いてありますが、迷走や妄想でもいいんです。「自分は今、空を飛んでいる」でもいいですし、「きれいなビーチで休んでいる」でもいいです。そうやって目をつぶって想像してみるだけでも、心の安らぎになるということです。


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