【3行要約】
・多くの人が「お金があっても、まだ足りない」と感じる原因には、終わりのない欲望のサイクルがあります。
・フランスの思想家ルネ・ジラールは、私たちの欲望は自分の内側からではなく、他者のものが欲しがる「模倣」が本質だと指摘しています。
・経済的自由に近づくには、表面的な欲望を見極め、本当に必要なものだけを求めることが重要です。自分の深い欲望を理解すれば、必要なお金の量を減らすことができます。
「欲望」とは何かを理解できる1冊
井上ヨウスケ氏(以下、井上):どうも、ファイナンシャルプランナーの井上ヨウスケです。今日は、「経済的自由をいち早く達成したかったら、自分の欲望の本質を知ることがとても大切だよ」というお話をしたいと思います。

『欲望の見つけ方 ―お金・恋愛・キャリア』という、ルーク・バージスが書いた、2024年に読んで一番おもしろかった本があります。ルネ・ジラールという方の「欲望の模倣」理論を解説している本で、めちゃくちゃおもしろいんですね。

これを読んでいくと、自分の欲望ってどこから来ているのかがわかります。そして、その欲望を満たすために、僕らはお金を必要と感じているわけなんです。けれども、この欲望を「薄いもの」「濃いもの」と分けていった時に、薄いものを除外できた人ほど経済的自由が近くなると思っています。この本の紹介と、その理論についてお話をしていきたいと思います。
欲望の正体は他人の模倣
では、時間がない方もおられると思うので、まずは動画のポイントを解説していきます。まずポイントの1つ目ですが、僕たちはお金を欲しているということです。なぜお金が欲しいのかといったら、欲望が多いからですね。欲望の数だけお金が多く必要になるということは、欲望が多い人ほど経済的自由は遠いと考えることができます。
「じゃあ、欲望って何なのか?」と考えた時に、ポイント2にも書いてあるとおり、欲望の正体は他人の模倣です。つまり、他人の真似をしているだけなんですね。僕たちはただ、人が欲しがっているものを欲しているだけです。
僕たちの中から生まれた欲望というよりか、誰かが欲しがっているものを見て、僕たちもその影響を受けて、それを欲しがっているだけ。この理論が、ルーク・バージスの本の中にある、ルネ・ジラールの欲望の模倣理論なんですね。
そしてポイントの3番目です。これは『欲望の見つけ方』の中に書いてあることではないんですが、人は手が届くものを欲しがる傾向があるんですね。例えば1,000万円ある人は、その人の手が届きそうな範疇で何かを欲します。
けれども、その人が1億円を手にすると手が届く範囲が伸びるので、またそこから見えるものが欲しくなる。なので本質的に欲望は満たすことができない。終わらないんですね。
だからこそポイント4にも書いてあるとおり、欲望の模倣理論から考えると、できる限り、遠い存在を模倣できれば、僕たちは浅い欲を減らすことができる。そうすると必要なお金の量が少なくなる。つまり経済的自由がすぐそこにあると考えることができます。このあたりの解説をしていきたいと思います。
2億円あっても不安を解消できない人
今日お話しする内容は、2024年の頭ぐらいに読んだ、ルーク・バージスの『欲望の見つけ方』という書籍の内容をもとにお話をしていきたいと思います。これはめちゃくちゃおもしろいです。

ルネ・ジラールの(考えた理論の中に)欲望の模倣理論というのがあります。ルネ・ジラールの本自体もめちゃくちゃおもしろいんですが、けっこう難解です。フランス人が書いている本って、3割は意味がわからんというか、変なことを書いていて読むのがつらいんです。けれどもそれをわかりやすく解説してくれている本で、これがめちゃくちゃおもしろかったんですね。
実際、僕はこの本を読んでからルネ・ジラールにどっぷりハマってしまいました。例えば『欲望の現象学』という本ですね。これを読んだ後に(同じ著者の)『サタンが稲妻のように落ちるのが見える』を読んで、今は『世の初めから隠されていること』を読んだりしました。

あとルネ・ジラールの理論を違う角度から解説している本を読んだり、という感じで、かなりどっぷり欲望の模倣理論の虜になってしまっています。
もともと僕は、いろんな方の個別相談を受けている時に、例えばとある方は、「2,000万円あれば本当に安心して生活していける」と、実際に自分が持っている財産で安心できている方もいれば、1億円あるけれども「まだ足りない」と思っていたり、2億円あっても「足りない。もっと欲しい」と思っている人がいます。
僕たちの持つ不安は欲望の裏返しだと言われています。つまり僕たちがお金を欲するのは、それだけ自分の満たしたい欲望や不安が多いということなんですね。
お金は幸福度に直結しないという研究結果
「じゃあ、この不安ってそもそもどこから来たんだ?」という話で、僕はこれにずっと興味がありました。だから(バールーフ・デ・)スピノザとか、(アルトゥル・)ショーペンハウアーとか、哲学系の本を読んだりとか、心理学の勉強とかをしていたら(わかったことがあります)。残念ながら、お金があること自体はそれほど幸福度に寄与しないのは、心理学の研究である程度出ている結果なんですね。
哲学的に考えていったら、「欲望は尽きることがないよね」という話になっていって、それをばーっと読んでいった時にたまたま出会ったのが、これは2023年に出た本ですけど、『欲望の見つけ方』という本で、この中で、「僕らは欲望の模倣理論に従って物を欲している」と言っています。この理論が何なのかをお話ししていきたいと思います。

そもそも論として、欲望や欲求を説明する時に、よく「マズローの欲求断層」と呼ばれるものが使われます。けれども、僕自身はあんまりこの考え方は好きではなくて、もともとエピクロスの考え方のほうが正しいと思っていました。これはまた後でそういった諸々を全部説明します。
まず、マズローの欲求断層って何かと言ったら、「まず、生理的欲求が一番土台にあるよ。これが満たされたら安全欲求があって、これも満たされたら親和欲求があって、その上に承認欲求があって、それも満たされたら自己実現欲求がある」と、常に下から満たされていって、上に上がっていくみたいな考え方なんです。