2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
第1149回 ペライチ書評『ビジネス書同士の教えが矛盾しているとき、どうすればよいか?』(全1記事)
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本山裕輔氏:今回は「ビジネス書の楽しみ方」についてお話をしていきます。たまに、ビジネス書で読んだ教え同士が矛盾しているシーンに出くわすことがあるかなと思います。例えば「嫌だったら断ればいい」と主張する本もあれば、一方で「いや、どんな依頼も断っちゃダメだ。全部やりなさい」と主張している本もあります。
この二項対立について少し考えてみたいんですが、例えばホリエモンこと堀江貴文さんの本では、「嫌だったら断ればいい。他人の言いなりで過ごすなんて時間のムダだ」といった主張がされています。
一方で別の方が書いた本だと、「どんな依頼も断るな。断らないからこそ相手にも信頼されて、次の仕事ももらえるんだ」といったメッセージが書かれていました。
どちらの著者欄を見ても実績がすごくあって、語り口も説得力があるので、「いったいどっちの言い分を信じればいいんだ?」と、途方に暮れるシーンも多いかなと思います。
ちなみに私は、「嫌だったら断る派」の主張が気に入っていたので、よく職場でも「その仕事、僕はあんまりやる意味がないと思っているのでお断りします」みたいなことを言っていました。
ただ、おかげさまで、周りの方々や上司の方々にはたくさんのお叱りを受けて、嫌なことは断るというふうに、思いどおりに自分の仕事をコントロールすることはできませんでした。
じゃあ、嫌な仕事が目の前にある時に、いったいどうしてホリエモンは断ることができて、私には断ることができないのか。この疑問を持った時に、私はもう1回「どんな依頼も断るな」と主張しているほうの本を読んでみました。
その本の言い分を読み解くと何かヒントが隠されてそうだなと思ったので、いったん自分は嫌だけど、「どんな依頼も断るな」と言っている本を読んでみた。すると、1つの答えが見えてきたんですね。
嫌な仕事が目の前にある時に、なんでホリエモンは断ることができて、私にはそれができないのか。これは答えが単純明快で、ホリエモンさんは代えが効きませんが、私は代えが効く人材だからです。代えが効く人材は、とにかく交渉力が弱い。だから、嫌な仕事も断れません。こういう至極単純なロジックに行き着きました。
もう少し詳しくお話しすると、「嫌だったら断る」を貫くためには、次の2つの条件を満たす必要があるのかなと学びました。まず1つ目が、他の人には真似できないような高いスキル・能力を持っていること。ちょっとMBAっぽく言い換えると、競争優位があることですね。
そしてもう1つの条件は、スキルや能力がいろんな職場や会社で必要とされていること。言い換えると、需要・ニーズがあるということです。この2つの条件がそろっていれば、嫌な仕事もキッパリと断ることができるんじゃないかなと、この本同士の矛盾と向き合いながら気づくことができました。
例えば、私がExcelを使った高度な分析スキルを持っていたとしましょう。かつ、この分析スキルを持っている人が周りにはいなくて、自分の分析のおかげで好調な業績をキープできているとします。
こういった条件がそろっている時に、先輩社員から嫌な仕事を頼まれたとしたら、その時は「嫌です。どうしてもその仕事をやれと言うんだったら、この会社を辞めますよ」と主張する。
そう言うと、恐らく仕事を頼んだ先輩社員からすると「生意気な」とイラッとするかもしれませんが、一方で私に辞められると、職場に必要不可欠な分析スキルを持っている人間がいなくなって大いに困る。だから、先輩社員は強気に出るわけにはいかず、私の言い分を呑んでくれるかもしれません。
逆に、私がそういったスキルを持っていなくて、ただの代えの効く人材だったとします。この状態で、嫌な仕事に対して「嫌です。辞めます」と言われても、先輩社員や職場からすると痛くも痒くもないです。なぜなら、私の代わりはいくらでもいるからなんですね。
このように、「嫌だったら断る」という主張を貫く時が困難な状況の時はけっこう苦しいんですが、修行期間と割り切って、「どんな依頼も断らない」というスタンスに立つ必要があるかなと思います。
「どんな依頼も来るもの拒まず」という姿勢で仕事をこなしていって、そして経験とスキルの幅を広げていく。そうすると、少しずつ代えの効かない人材になっていって、気づけば「嫌な仕事は断る」というスタンスも貫き通すことができる、そんな人材になれるんじゃないかなということに気づくことができました。
今回は何をお伝えしたかったかというと、ビジネス書同士の教えが矛盾している場合は、その矛盾を楽しんでみましょうということなんですね。
「いったいなぜ教えが矛盾しているのか?」「それぞれの著者が置かれていた文脈は何なのか?」と、一見すると矛盾しているように見える教えなんだけど、どういう説明をどんな切り口で説明の仕方を変えると、「教えが矛盾していない」というふうに説明がつくか。
こんな視点でビジネス書とあらためて向き合ってみると、先ほどの「嫌なことは断れ」VS「嫌なことでも断るな」みたいな矛盾も、自分なりにひもとくことができるかなと思います。矛盾を見つけた時は、自分の思考を深める絶好のチャンスということで、ぜひビジネス書同士の矛盾を楽しむ1つのきっかけにしてもらえると、とてもうれしく思います。
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