2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
#11 入り口の「地雷」に気づくとコミュニケーションが変わる(全1記事)
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『無敗営業』をはじめ数々のビジネス書を出版し、東京都千代田区で「かぴばら書店」という本屋も運営する高橋浩一氏が、営業力を人生や仕事に活かすコツを配信するVoicyチャンネル『毎日が楽しくなる営業力のヒント』。今回は、相手の地雷を踏んでしまうNGな話し方について解説します。
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高橋浩一氏:今日は「入り口で『地雷』を踏んでいることに気づくと、コミュニケーションが変わる」というお話をしたいと思います。
僕が営業に関わるようになって、自分で営業をやるようになった時に、やはり一番最初に悩まされたのは、お客さまの典型的な断り文句というやつです。
例えば、課題やニーズをヒアリングすることが大事って言われるじゃないですか。商談で当たり前のように「御社の課題は何ですか?」と、最初のほうに聞いていたんですが、その瞬間にお客さまの態度がちょっと冷たい感じになる。これをけっこう何回も経験して、「いやー、どうしたらいいかな?」と思っていたわけですね。
僕は、会社の中のイチ営業担当として目標を追うという経験をしないうちに、自分で起業して営業を始めてしまったので、営業を上司として教えてくれる人は実はいなかったんですね。これは他の回でも話しましたが、自分にとっては「ビジネス書」が1つの先生の位置付けだったわけです。
よく「高橋さんが営業で一番気づきがあった本は何ですか?」と聞かれることがあるんですが、僕が20代の時に出会ってガラッと考え方が変わった本が1冊ありまして、それは『凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク』という本だったんですね。今、タイトルを見ても「よくできているな」という感じなんですけれども。
有名な話で、「ホームセンターに来たお客さんは電動ドリルを買いたいわけじゃなくて、穴を空けたいんだ」という話があるじゃないですか。ざっくりどういう話かと言うと、ホームセンターにお客さまが来て「電動ドリルを買いたいんですけど」と聞かれても、そこにいきなり電動ドリルを案内してはいけないという話です。
どういう理由で電動ドリルをお求めになっているのかをちゃんと聞いていくと、「実は家の板に穴を空けたいんです」「だったら、穴が空いている板はもうありますよ」とか、あるいは「こんな道具もどうですか?」というふうにおすすめできるじゃないかと。
ざっくりこういうストーリーで、よくマーケティングの世界では「お客さまはドリルを買いにきたのではない。穴を空けたいんだ」という話があります。
実はこの『凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストーク』という本にも、こういった話が載っているんですが、「ドリルを買いにきたわけじゃなくて、穴を空けたいんだ」という概念は理解をしても、じゃあ具体的にどうしたらいいのかという話があるじゃないですか。
そこで本の内容を引用させていただくと、この本の中の「魔法のセールストーク ステップ1」に、「ファースト・マジック・クエスチョン」というものがあります。お客さまは本当の欲求を語っていないという話ですね。
さっきのドリルと穴の話なんですが、そこに対するファースト・マジック・クエスチョンというのは、こういう聞き方なんですね。本の中で紹介されています。「今回○○なわけですが、今の××に何かお悩み、あるいはご不満でもおありなんでしょうか?」。これに穴埋めするだけでかまいませんということなんですね。
「今回○○なわけですが」の○○のところは、実際はお客さまとの接点ですね。例えば「今回お会いできたわけなんですが」「今回お問い合わせをされたわけなんですが」「今回資料請求されたわけなんですが」とか。こちらからテレアポでお会いした場合も、「今回お電話口でアポイントいただいたわけなんですが」と、その経緯を言うわけですね。
そして「今の××」というのは、お客さまの現状についてですね。例えば広告の営業をされている方であれば、お客さまに対して「今の広告の出し方に何かお悩みでもおありなんでしょうか?」というふうに聞く。あるいは研修をやっている人事の方に営業をするのであれば、「今やられている研修で、何かお悩みでもおありなんでしょうか?」と聞くということですね。
ただ、これは「御社の課題は何ですか?」みたいな堅苦しい聞き方ではなくて、わりとナチュラルに相手のお悩みに切り込んでいきやすいということで、すごく参考になるなと思います。
ただ、これをもう少し営業の現場でさらにパワフルにしたいということで、僕はさらに『無敗営業』の本で「核心質問」というものを提唱しています。
僕が営業の経験があまりない時に、「ファースト・マジック・クエスチョン」という考え方で、裏側にあった本当の欲求を語ってくれるわけじゃないお客さまに対して、型どおりに話してしまうと、入り口の段階で地雷を踏んでいくことになる。これは本当にすごく学びになりました。
では次に、もう少し具体的な話をしていきたいなと思います。「入り口段階で地雷を気づかないうちに踏んでいる」。これに気づくと、コミュニケーションが変わるというお話の具体です。
例えば営業で言うと、お客さまに商談の冒頭部分で「御社の課題は何ですか?」というふうにオープンに聞くことが、地雷を踏んでしまうことにつながるということなんです。「御社の課題は何ですか?」というふうにオープンに聞くと、お客さまの頭の中に「これは危ないぞ」と、警報が鳴り響くわけですね。
どういうふうに危ないかというと、「御社の課題は何ですか?」という、オープンすぎるざっくりとした質問をいきなり投げてくるということは、過去に出会ったあんまりよろしくないレベルの営業とけっこう近い。
「たぶんこの営業の人も、そんなに腕のいい営業じゃないだろう。じゃあ、そんな腕の良くない営業の人に時間を取られるわけにはいかない」と警戒する。
あるいは「御社の課題は何ですか?」というのは、典型的な売り込みを感じさせるセリフなので、「売り込まれないようにガードをしよう」みたいな感じで防御反応が働くということです。
この防御反応は何かということなんですが、私の話し方の本(『「口ベタ」でもなぜか伝わる 東大の話し方』)の中に、脳みその構造の話がちょっと書いてあるんですよ。
僕自身は脳みその構造の専門家ではないんですが、久保健一郎先生という脳科学者の先生が書かれている『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 脳 』という本がありまして、人間には「古い脳」と「新しい脳」という2つの脳がありますよという話なんですね。
どういうことかと言うと、古い脳みそというのは、昔から人間に至るまでの動物の進化の過程で、例えば哺乳類、馬とか犬にも同じようにある脳みそ。「危ない!」と思ったら、「危険だ。身を守ろう」と咄嗟に反応する。少し専門的な話になってしまうんですが、これが脳みその構造で言うと大脳辺縁系の扁桃核。
一方で新しい脳は大脳新皮質ということで、これは理性をコントロールする脳の部位。他の哺乳類にはない、人間ならではの部分ということですね。ざっくり言ってしまうと、古い脳は本能的に咄嗟に判断する部分で、新しい脳は理性的に考えて判断する部分ですね。
入り口段階で警報が鳴ってしまうというのは、古い脳みそのアラートに引っかかってしまって、「危ない! 身を守らねば」となるわけですね。だから、お客さまとしては瞬間的に防御反応が出てしまう。
自分が「あんまりレベルが高くない他の拙い営業と同じですよ」みたいな雰囲気を漂わせてしまうと、お客さまとしては「そういう人たちにムダに時間を奪われることは避けたい」と瞬間的に思ってしまう。それで咄嗟に判断として、「もうムダな時間を奪われないようにしよう」みたいな感じで働いてしまうわけです。
じゃあ入り口段階の言葉で(地雷を踏まないような聞き方とは)、先ほどご説明した「今回○○なわけですが、今の××に何かお悩みでもおありなんですか?」。同じように悩みを聞いているんじゃないかと思われるかもしれないんですが、ここが大きな違いですけど、文脈をちゃんと作っているわけですよね。
多くの営業の方は、文脈を整える前にいきなり売り込みオーラを漂わせてしまって、お客さまにシャットアウトされてしまうことが多い。
「今回○○なわけですが」と、ちゃんと前提を踏まえる。そして「御社の課題は何ですか?」だとちょっと大きすぎますので、「今の××に」というふうにちょっと限定をつけてあげて、「お悩みでもおありなんですか?」と聞いていくわけです。
ただ、もう少し具体的な言い回しのバリエーションがあったほうがいいので、僕は今回の話し方の本の中では「質問の枕詞」とはまたちょっと違って、「伝え方の枕詞」ということで、「太陽メッセージ」「相談モード」「限定」「NOキャンセリング」という4つの枕詞で解説をしています。
いきなり攻撃的な雰囲気を感じさせてしまったり、あるいは相手に対して負担を感じる物言いをしてしまうと、相手はやはり防御反応が出てしまいますよね。これが、気づかないうちに地雷を踏んでしまうことにもなりかねない。
じゃあ、その地雷を踏まないように4つの枕詞を添えてお話ししましょう、ということを書いておりますので、もしよろしければこの話し方の本をお手に取っていただけると大変うれしいなと思います。
今回は、「入り口段階で地雷を踏まないように気をつけましょう」ということでお話をしてまいりました。少しでもお役に立てればと思います。
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