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頭のいい人が話す前に考えていること(全4記事)

頭のいい人になるための「7つの黄金法則」とは? 60万部突破のベストセラー著者が語る「知識」と「知性」の違い

「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」にて、ビジネス実務部門賞を受賞した『頭のいい人が話す前に考えていること』。著者である安達裕哉氏がイベントに登壇し、頭のいい人の思考術やコミュニケーションのコツを紹介。本記事では、頭のいい人の土台にある「7つの黄金法則」について解説します。

『頭のいい人が話す前に考えていること』執筆の背景

井上陽介氏(以下、井上):安達さんの対談役を務めさせていただきます。グロービスで教員を務めております、井上陽介と申します。安達さんからも一言ご挨拶をいただいてもよろしいでしょうか。

安達裕哉氏(以下、安達):安達と申します。よろしくお願いいたします。今は、ワークワンダースとティネクトという会社を2社やっております。(ティネクトでは)Webマーケティングをしています。ワークワンダースという会社は、2023年7月に立ち上げたばかりのまだ若い会社なんですが、生成AIの事業をやっています。

今日は楽しくお話させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

井上:よろしくお願いいたします。ここから1時間強にわたって対談します。今日は大変多くの方にご参加いただいてますが、みなさんからの質問もいただきながら進めていきたいと思っていますので、ぜひ質問も書き込みをお願いいたします。後半では、質問を拝見してピックアップさせていただいて、安達さんにお聞きできればなと思っています。

安達さんのご著書『頭のいい人が話す前に考えていること』という本ですが、今日ご参加の方々はどれぐらい読んでいただいていますでしょうか。この本を読んでご参加の方もいれば、まだ読んでいらっしゃらない方もいると思います。読んでいない方は、すぐにポチッていただいて、手に取っていただきたいなと思っています。

この本の最初に「この本を読むと、誰でも頭のいい人になれる」という一節があります。何よりも、おそらくここにいる多くの方が、「頭が良くなりたい」と思っているんじゃないかなと思うので、ぜひポチッていただきたいと思います。安達さん、「誰でも頭のいい人になれる」って、けっこう思い切って書かれましたね。

安達:そうですね、大半の方が「うさんくせえな〜」と感じたと思うんですが(笑)、一応理由がちゃんとありまして。「頭がいい」という話で言うと、上司や先輩から「ちゃんと考えてよ」と言われたことのある方は、けっこういらっしゃるんじゃないかなと思っています。

実は私も新人の頃、「安達さん、これちゃんと考えたの?」って言われたんですね。じゃあ、その「ちゃんと」とは何なのかって、実は教えてくれる人があまりいなかったなと思います。「ちゃんと考える」とはいったい何なのかを掘り下げるのが、この本の目的ですね。

井上:そうですね。

“ちゃんと考えること”ができていない人は多い

井上:本の冒頭にも書かれていますが、人間は誰しも考えている。だけれども、実は「ちゃんと考える」ということができていない人が多く、安達さんご自身も昔はそうだったと書いていらっしゃったと思います。

安達:はい。

井上:そういう意味では、今の問題意識もこの本を書くきっかけにはなられたと思うんですが、実際に書かれてみて、周辺からの声や反応から、あらためて多くの人がちゃんと考えてくれるようになったなという実感を得ていらっしゃるのか。それとも、まだまだ課題感を感じていらっしゃるのかでいうと、どちらの感覚でいらっしゃるんですか?

安達:そうですね。私が一番うれしいなと思ったのが、もともとビジネスパーソン向けに書いたつもりではいたんですが、8歳とか14歳とか、本当に若い方や子どもたちからアンケートが届くんですよね。「頭がいいとはどういうことなのか、すごく理解できました」というコメントをいただくのが、もう本当にうれしいなという感覚があります。

井上:8歳も読まれているんですね。この本では、かなりはっきりとポイントを整理いただいています。書籍をもう見られた方もいらっしゃるかもしれませんが、こういったシートまで準備されていて、これが手元にあればサマリーを常に確認できます。

ビジネスパーソンの方だけでなくて、おそらく学生の方もお読みになるんじゃないかなと思ったんですが、8歳のお子さんもいらっしゃると。

安達:そうですね。80歳のおばあちゃんから(感想コメントが)届いたこともあって、けっこう驚いています。

井上:もちろんこの本を読まれている方も多数いらっしゃると思うんですが、今、チャットにも「読んだ」とたくさんコメントを書いていただいております。

安達:ありがとうございます。

井上:チャットには「即、本を買った」という方もいます。

頭のいい人になるための「7つの黄金法則」とは

井上:本の中身についてもう一段具体的に、日常の忙しい日々の中でどうやって実現していくのかというあたりも、ぜひおうかがいしたいなと思っております。

もちろん、この本の中で書かれていらっしゃる思考力やコミュニケーション力はリーダーに不可欠ではあると思うんですが、おそらく「それで十分なのか?」という問いも立つのではないかなと思っています。

今日はグロービスのイベントでもありますので、加えてリーダーにはどういう思考、知識、知性が必要なのかも、後半でぜひおうかがいしたいなと思っています。そういった構成で進めながらも、いろんなところに脱線するのではないかと思っていますので、よろしくお願いいたします。

本の中では、頭の良い人になるための知性を「根っこ」と「幹」と表現しています。根っこ、つまり土台の部分としての黄金法則がある。幹は、武器としての道具立て、思考力、思考術があるんだという提示があったと思います。

まずは土台の部分からおうかがいしたいなと思っています。「7つの黄金法則」というものがあるわけですが、この7つがどういうものなのかを解説いただくことは可能でしょうか。

安達:はい。手元にPDFがあるので出させていただきます。これが本の折り込みに入っていて、本の内容を読み返さなくてもいい本を目指したので、これだけ見ればすべてわかるようになってます。

最初に、頭がいい人がどういう人なのかを表現したのが、この7つの切り口だという話です。言ってしまうと、まず1番は「とにかく反応をしてはいけない」。

2がけっこう肝なんですが、今までは「頭の良さ」というと、ロジカルシンキングとか、あるいは勉強ができたり、パズルが得意であったり、とにかく頭脳の話にフォーカスがあたっていたと思います。この本で言う頭のいい人は、これとはぜんぜん定義が違います。

実は頭の良さというのは、自分で決めたり、テストの成績で決まるわけではないというところが最大のポイントです。結論から言うと、頭の良さは他人が決める、特に目の前にいる人が決めるんですね。「目の前にいる人が私のことをどういうふうに思うのか」ということが、頭の良さの本質です。

そこに付帯して言うと、人は「ちゃんと考えてくれる人」を信頼する。そして「人と闘うな。課題と闘え」。

これもとかくありがちなんですが、「話し方」って非常に重要だと言われます。でも、話し方ではなくてやっぱり中身のほうが重要ですよね。これは「考え」が足りないせいです。知識は他人、人のために使って初めて知性となります。そして「承認欲求を満たす側に回る」ということ。これら7つに関して詳しい説明をしています。

井上:ありがとうございます。

仕事において“聞き手を意識すること”の難しさ

井上:この書籍を読むと、思考力は自分自身で掘り下げるだけでなくて、誰かとの間の中に存在していくものであるとわかります。だからこそ、頭の良さとは他人が決めるものであるという結論は、「そうだよなぁ」と思いながら拝読していたんですが、ここをもう少し詳しくおうかがいしたいなと思っています。

我々グロービスには、「ビジネスプレゼンテーション」や「クリティカルシンキング」という科目もあります。自分の考えを主張するのではなくて、相手や受け手を意識する必要があるのと、相手や受け手が聞きたいこと、考えていること、捉えている課題に対してまっすぐにコミュニケーションをしていく必要性があるということを学んでいただくんです。

とはいえ、「聞き手の方を意識し続けることが非常に難しい」という声をよく聞くんですね。ビジネスの現場ですと、例えば誰かにプレゼンテーションをする時に、最初は聞き手の方々を意識しながら話すけれども、(説明しながら)PCに向かっていろんなことを書き始めると、だんだんいろんなことが思い浮かんできてしまう。

気がついたら聞き手の方がいることを忘れて、思考がぐちゃぐちゃになっていってしまう。そういうことが往々にしてあるなと思います。聞き手を意識すること、他者が決めるからこそ他者に配慮をしていくことについて、日常の中でどう意識していったらいいのか。安達さんはどんなふうに捉えていらっしゃいますでしょうか?

安達:今のお話は、実は6番(「知識は他人のために使って初めて知性となる」)や7番(「承認欲求を満たす側に回れ」)にものすごく関わりがあります。

私は昔コンサルティング会社にいましたので、勉強をちゃんとやろうとしている方が多かったのは事実なんですね。例えば新人さんが入ってきて、「先輩、成長したいです」と言った時に、最初に彼らが何をするかというと、とにかく知識を身につけようとするんです。

現場で経験を積むとかいろいろありますが、とにかく自分の中にいろんなものを溜め込みたいと言うんですかね。自分の中にたくさん入れたいという欲が一番最初にくる。それ自体はすばらしいことではあるんですが、そのままだと「知識」で終わっちゃうんですね。「知性」までには達しないので、「頭がいい」とはならないというのが6番です。

マウントを取るのは、単に知識をひけらかしているだけ

安達:じゃあどうするのかというと、溜め込んだものは人のために使わないといけない。人のために使った時に、初めて「あ、この人は頭がいいな」となる。とはいえ、知識でマウントを取ったり、「お前、知らねえだろ」みたいに他人をバカにしたりするのは知性でもなんでもなくて、ただ単に知識をひけらかしているだけです。

目の前の人やお客さま、あるいは家族でもパートナーでもいいんですが、「持っているものをどうやって役に立てようか?」という習慣になってくると、「なんかこの人はオーラがある」「あの人は違うな」というふうに一目置いてもらえるようになる。これは組織においてもよくある話なので、あえて強調させていただいた感じですね。

井上:なるほど。そういう意味では、2番(頭の良さは他人が決める)は後半にもかなりつながっていく。知識を溜め込みがちになるのではなくて、相手のためにどうやって活動していくのかということに意識を持ち続けるということでしょうかね。

安達:そうですね。知ること自体が目的になってしまうと、もちろん自分の満足感は満たされるとは思うんですが、「頭がいい人だ」とはならないのが本質かなと思っています。

井上:なるほど。チャットでも穴埋めのように四角の中を埋めていただいていて、みなさんもクイズのように答えていただいてる感じかもしれません。

聞き手を意識し続けて、その方に対してしっかりと伝えることができることによって、初めてコミュニケーションが成立する。結果として、「この方は頭がいいんだよね」とか、ビジネスの現場でいうと成果や課題の解決につながっていくということなんでしょうね。

安達:そうですね。おっしゃるとおりです。

井上:ありがとうございます。

成果を出そうとすればするほど、意見は必ず対立する

井上:もう1つ、根っこの部分の黄金法則でいうと、4番の「人と闘うな、課題と闘え」というのがずしっと刺さります。ビジネスの現場では、何らかの課題解決を仲間とともに、多くの方々とともにやっていく。

うまくいってる時はいいんですが、どこが課題か見えなくなってきたり、課題が複雑になっていく。担当しているチームや部門を超えて、いろんな方々を巻き込みながら課題解決をしなければいけないとなると、どうしても優先順位が変わってしまうことがあります。

課題解決に向き合う仲間かと思っていたら、突然足を引っ張られたような感覚になったり、下手をすると部門間の対立になったりする。気がついたら人と闘っているというか、「あいつ、何やってくれんだよ」みたいになってしまうケースは我々も起きがちです。

今日の聴衆の方々の中にも、いろんな現場でそういうことに悩んでいらっしゃる方も多いんじゃないかなと思うんですね。なので、「人と闘うな、課題と闘え」は、あらためて大切だなと強く感じたんです。ただ、これまた日々の中で意識し続けることの難しさは、極めて大きいなと思ったポイントだったんですよね。

安達さん、ここに関してはどんな処方せんがありますか? どういうことをやっていくと、「人と闘うな、課題と闘え」が日々実践できるのでしょうか。

安達:私がそこまでいきなり実践できたタイプではないので(笑)、インスタントにやる方法があるのかと言われると、かなり難しいなと思います。ただ、当時のコンサルティング会社の上司が「熱心にやればやろうとするほど、あるいは成果を出そうとすればするほど、絶対に意見が対立する」と言っていました。

特に社内の会議では、意見が対立しない限り、逆に「これは意見としてはぜんぜんおもしろくないね」という判断になっていたので、上司がめちゃくちゃ対立を煽ってきたんですよ(笑)。そうすると、やはりすごく険悪なムードになります。

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