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UTokyo Future TV ~東大と世界のミライが見える~ Vol.13 「教えて、渋澤さん!お金ってミライをどう変えるの?」(全4記事)

もしも渋沢栄一が新1万円札を見たら「たぶん激怒する」 玄孫・渋澤健氏が指摘する、日本人の“お金の使い方”

東京大学基金アドバイザーである渋澤健氏がナビゲーターを務めるオンライン対談シリーズ『UTokyo Future TV』。今回はゲストに東大の学生2名を招き「お金はミライをどう変えるのか?」という問いをテーマに対話を行いました。本記事では、お金を使わずに溜め込む日本人の“貯金文化”について触れ、これからの社会を生きるうえで必要なマインドを語りました。

日本に眠る、個人の現預金の総額は「1,000兆円」

渋澤健氏(以下、渋澤):今、日本の一般個人の現預金をすべて集めるとどれくらいになるか、聞いたことあります? 先ほど竹内さんは(預金を)あまり持っていないという話をしていたけど。

川崎莉音氏(以下、川崎):聞いたことないです。

竹内誠一氏(以下、竹内):けっこうでかい額になりそうだなとは思いますね。

渋澤:そうですよね。リサーチセンターでは、天文学的な1,000兆円を超えると言われているんですね。1,000兆円って想像できます?

川崎:想像できないです。

渋澤:タンスにちょっとお金を入れていません? そうか、あんまり現金を持っていないからね。

川崎:はい(笑)。

渋澤:銀行に預けないタンス預金というのがあるんですよ。それでも50兆円になるんです。50兆円がどれくらいのお金か想像したことはあります?

竹内:想像の遥か向こう側くらいの感じですね(笑)。

渋澤:じゃあイマジネーションしてみましょう。先ほどのタンス預金の50兆円分、1万円札を丁寧に重ねたら高さはどれくらいになりますか?

竹内:月くらいまで行きますか?

渋澤:月?

川崎:富士山?

渋澤:富士山。答えは月と富士山の間だけど、なんで月って言いました(笑)?

竹内:途方もない数だったので、やっぱりこういう時に出てくるのは月かなみたいな(笑)。

渋澤:突き破る精神はすばらしいですね。富士山、ちょっと抑えましたね。

川崎:抑えました(笑)。

使わずに貯める日本人は、ある意味“お金持ち”

渋澤:100万円の束ってだいたい1センチくらいなんですよ。そうすると1,000万円は10センチ、1億円は1メートル、10億円は10メートル、100億円は100メートル、1,000億円が1,000メートルで1キロメートルじゃないですか。1兆円は10キロメートルなんですね。そこでもう富士山は3倍くらい越えています。

その50倍なので、500キロメートルなんですね。月までは行かないけど、宇宙には入っている。先ほど話したように、ただタンスに入っているお金ということは、使ってもいない。貯めているかもしれないけど使ってもいないし、寄付もしていないし、投資もしていない。どうですか?

川崎:すごくもったいないなと思います。

渋澤:ですよね。実は日本人ってすごくお金持ちなのに、それを使っていない。タンス預金とはどういうお金かというと、自分の安心のために置いているお金だけじゃないですか。

銀行に預けていないから、融資にも、他に貸し出しにも行かないわけですよね。自分のためのお金だけでそれくらいあるんです。ひどくない? そういう方々に「ひどいです」って言っておいてください(笑)。

竹内:ぜひそういう方々は、東京大学の東大基金(東京大学基金)に寄付をしていただけるとすごく助かります。

(会場拍手)

渋澤:良い締めになりましたね(笑)。

男女間で差がある、大学進学への制限

渋澤:ということで、オンラインから質問をいただいている。こっちで勝手に盛り上がっちゃっていて失礼しました。

「『#YourChoiceProject』は、運動会総務部は共通の思いを持つ人を応援する活動ですよね。どうしてそのような活動をしてみようと思ったのですか?」。要するに、人を応援するという活動をなぜしようと思ったのか。

川崎:私自身が兵庫県の出身だったんですが、自分の同級生とかを見ていて、同じ家庭に生まれて、同じ家庭環境で育ったのに、男の子は近所のすごい進学校みたいなところに行って、東大や京大に進学していく。

なのに、私の同級生の女の子たちはなかなかそういう期待をされずに、地元から出してもらえない。「東京の大学には行かないでほしい」「浪人はしないでほしい」と言われたり、制限を受けているところを目の当たりにしてきて、それをなんとかしたいなと思って。

渋澤:ご自身もご両親に何か言われたんですか?

川崎:私はぜんぜん言われなかったので、ここまで来れたんですが。

渋澤:そういうことですよね。だけど、周りにいる知り合いの子たちはそういうことを言われた。

川崎:そうですね。

渋澤:そうだったんですね。なるほど。竹内さんは?

竹内:自分は最初はそういう思いがあったんじゃなくて。「東京大学運動会の部活は、2年に1回必ず運動会の本部に人を派遣してください」という要請がありまして。

渋澤:無理やり?

竹内:ちょうど自分がその代に当たってしまって、同期でくじ引きをして。4人しかいなかったので、4分の1で25パーセントの確率で僕になったというのが最初のきっかけでした。

ただ、入ってからいろんな部活動の方々と接していくと、部活動に対する熱い思いや勝利への欲求をたくさん知っていって。それに共感して、活動していくうちに「自分も支えられたらいいな」と徐々に思えるようになって、活動もしっかりできるようになったという感じですかね。

渋澤:なるほどね。まさにMeの「M」がひっくり返って、Weのスイッチが入ったということですね。

竹内:そうですね。そこで入った感じです。

渋澤:なるほど、すばらしい。

お金は「目的」ではなく「手段」

渋澤:じゃあ次の質問。「明るいムードのお話をありがとうございます」。どうもこちらこそありがとうございます。「今の若者は将来に向けて夢を持ちにくいと言われています。その中でも夢を持てるようにお金の考え方からのアプローチはありますか?」。

これは私に質問ですね。そういう意味では、お金は目的ではなくて手段だと思うんですよね。手段であるお金が、タンス預金のように「自分が不安だから」といって置いておくお金がある程度あるのは当然だと思う。

ですが、それが1,000兆円くらい貯まるって、なんでそこまで不安になるんですか? と思いたいくらいです。そういう意味では、お金はもっと世の中で循環するもの。だからお金の4つの使い方があると思う。

ですからアプローチとしては、Meのことだけを考えないで、Weのことを考える。お金というのは、寄付、投資、いろんなかたちで社会や世の中に循環することなんじゃないのかなと思っています。ちなみに、2024年の7月に何が起こるか知っていますか?

川崎:何が起こるんですか?

渋澤:そっか、お金を見たことないからな(笑)。今の1万円札の顔って誰になっています?

竹内:今は福澤諭吉ですが、ついに渋沢栄一が……。

渋澤:なりますよね(笑)。

(会場拍手)

もしも新1万円札を渋沢栄一氏本人が見たら「激怒」する?

渋澤:私は渋沢栄一の孫の孫なんですが、亡くなったのが1931年で私が生まれたのは1961年なので、会ったことはないんです。ちょっとイマジネーションしてみたんですが、もし渋沢栄一がいて、自分の顔が1万円札になって社会に流通していたのを見たら、何を言うかなと。何を言うと思います?

川崎:「自分が世界を回しているぞ」みたいな(笑)。

渋澤:「俺だ、俺だ」みたいな? やっぱり警察は考えることが違うな(笑)。

竹内:やはりうれしいんじゃないんですかね。そういうふうに自分の功績が評価してもらえるって、うれしいのかなと思いました。

渋澤:あの人、けっこう怒るんじゃないのかな。どういうことかというと、「わしゃあ、暗いところが嫌いじゃ」って言うと思うんですよね。だから先ほどのように、タンスの中に入れっぱなしにしないでおいてくれって思うんです。

渋沢栄一が日本初の銀行を立ち上げた当時、銀行は存在していなかった。スタートアップだったんですね。それも、新しい日本の時代を導くための社会的課題を解決する課題解決型のスタートアップだったんです。

日本人には銀行という言葉さえ存在していなかったので、使った例えがありまして、「一滴一滴のしずくが大河になる」。

しずくだけだったら垂れ流し状態になっているんだけど、銀行に少しずつ集まってくれれば流れができて、その流れが一緒にもっと太くなって、大きな大河になる力があるというイメージなんですね。

そういう考えを持って日本に銀行や資本主義を導入した人物から見ると、自分の顔を刷ったお金がタンスの中や金庫の中だけに入っているのは、たぶん激怒するんじゃないかなと思うんです。ただ、イマジネーションだけなんです。

好奇心を持って、自分の“枠の外”に飛び出す

渋澤:自分の身の回りのことっていつもすごく大事だから、そこを良くしたい気持ちもすごくあると思うんですが、自分の身の回りはけっこう枠の中で考えていると思うんですね。

枠の中もすごく大切にしたいと思うんですが、「枠の外にどういう世界があるのかな?」という好奇心。あるいは今の現状から壁があるとしたら、俯瞰して「壁の向こう側の景色はそうなっているんだ」とか、それくらいでもいいと思うんです。

(スマートフォンをタップする動作をしながら)特に今のネット世代だと、世界って指先で見えちゃうじゃないですか。それが本当の世界かというと、違いますよね。

そういう意味では、世の中でどういうことが起こっているかという一次情報も体感する。すべてがわかることは当然できないんですが、感じることがすごく大事なんじゃないのかな。そういうことによって、眠っていたスイッチがオンになるんじゃないかと思うんです。

同じ環境になると同じスイッチがオンになって、他のスイッチがオフになっている状態なので。たぶん地方から東京に来て、違うスイッチが入ったわけじゃないですか。

私もアメリカでずっと育って、日本に戻ってきた時にスイッチが入ったこともあった。そういう意味では、常に違う環境に自分の身を置くことによって、スイッチを入れることが大事じゃないかなと思っております。

お金の使い方を「Me」から「We」へ広げていく

渋澤:「そろそろまとめに。それぞれ感想を」と書いてありますので、じゃあどっちからいきますか? (竹内さんが川崎さんに譲るのを見て)そういう時に譲るんですね(笑)。

川崎:私自身は、お金についてそんなに身近に思ったことがなかったというか。経済系の学部でもないですし、自分がお金を扱う側になるとは思っていなかったんです。でも、それこそ寄付であったり、今回のお話を聞いて投資がちょっと身近に感じてきたり、お金について親近感が湧いた時間だったなって思います。

渋澤:良かったです。ありがとうございました。

(会場拍手)

渋澤:それじゃあ竹内さん。

竹内:「Me」と「We」の話がすごく印象に残っていて。自分もWeを広げて、もっと視野を広く持って、自分の中のWeの範囲をどんどん広げていけると、もっと未来も明るいものになっていくんじゃないかなということを実感できたので、すごくありがたい対談でした。ありがとうございます。

渋澤:良かったです。ありがとうございました。

(会場拍手)

渋澤:私も今回はすごくリラックスして話ができたなと思って(笑)。だって、ノーベル賞を受賞されるような先生に何を話すのが良いのかって感じなんですが、今回は本当に楽しくて。偉い人かどうかという意味じゃないですが、これからの未来を築く2人といろいろお話をおうかがいすることができた。

いろいろ投げかけると、ちゃんと打ち返してくれたことが頼もしいなと思いますし、打ち返す中でスイッチがちょっとでも入ったようであれば、すごくうれしいなと思っております。

今日は初めてのハイブリッド型で、会場にご来場した方々もいらっしゃいまして、ありがとうございます。ただ、来場者から質問を受けられずすみません。こっちの話が盛り上がっちゃって申し訳なかったです。ありがとうございます。

(今後開催のイベントの)詳細については、基金のWebサイトやSNSなどでご案内いたします。ご登録、フォローをぜひお願いいたします。最新の情報を受け取っていただけますように、まだの方はぜひご登録をお願いいたします。それでは今日は以上です。UTokyo Future TV、渋澤健でした。どうもありがとうございました。

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